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「ああ、どっかで見たことあると思ったら!」
思わず仕事を忘れて騒ぐ希楽と咲斗。
そんな2人を、青年は呆然と見つめていた。そして、一言口を開く。
「……。オレ、いま全然話がわからないんだけど…。アンタ達は誰?というか、オレって死んじゃったわけ?」
「あ、ごめんなさい。私ったらはしゃぎすぎちゃった」
我に返る希楽。
「大丈夫、多分君はまだ、死んでないよ。今のところは、ね」
「へぇ。今は、か…」
青年は里空の言葉に、不思議な笑みを浮かべてそう答えた。
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―――Pleasant Noise. 4人からなる人気絶頂のバンド。
ボーカルのYUNAを初め、メンバーのほとんどがまだ10代にもかかわらず、
ルックスと確かな演奏技術で、去年のCDセールスNo.1のバンドチーム。
細かなプロフィールは全てが非公開。
ボーカルのYUNA、こと芹川 佑那。いままではTV画面でしか見たことのなかった本人が、目の前にいる。希楽達の仕事は、死者の魂を運ぶことで……。
「今はってどういうことですか?」
希楽が里空を見上げる。
「今の俺達とよく似てる感じがする。転生の準備が整っていない魂……みたいな」
自分達と同じ……。自分達は何か生前に強い未練があるために転生することが出来ず、今ここでこうして天使として働いている……。
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「俺達ってあんたたちは何者なんだ?」
会話についていけない佑那が、いらついた調子で割り込む。
TVで見ているよりも、少しキツイ感じの話し方をするな、希楽はそう思った。勿論、こちらが本来の彼なのだろうけれど。
「俺達は、天使だよ。信じてくれなくても構わないけどね」
「天使?じゃあ、オレは死んでるってわけだ。さっさと地獄でもどこでも連れて行けばいいだろ」
「うーん、それが出来れば困らないんだけどね…、どうも無理なようだから困ってるんだよ」
困った様子の里空を見て、雅貴が口を挟む。
「芸能人でもしてりゃあ、そりゃあ生前に未練もあるだろうさ。それが原因だろ」
「へェ、お兄さんはそんな風に思ってるんだ」
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「何だと?」
佑那の言い方にカチンと来た雅貴が突っかかる。
そんな彼を里空がまあまあ、となだめる。
すると突然表情を変え、彼は言った。とても冷たい、突き放した声で。
「でもね、それは違うよ。オレは全然芸能界になんか未練ないから
「どうして…」
希楽の呟きに、佑那が答える。
「楽しいモンじゃないよ、あんなドロドロした世界。そんなワケだから、オレは全然生前に未練なんてないから。早く地獄でもドコでも連れて行って欲しいくらいだね」
「と、言われてもなあ……。とりあえず、いくつか質問答えてくれる?何しろ、なにもこっちに情報来てないからさ」
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「いちおー、個人情報は非公開で通ってるんだけど??」
「大丈夫、俺達もう死んでるから。差し支えはないよ」
佑那の毒舌に応じず、笑顔で答える里空。
「ここは、しばらく里空さんにまかせようぜ……」
咲斗が小声で希楽にささやく。
「そうだね……私にはムリだ」
改めて里空は大物だと再認識するのだった。
「ってことで本名と生年月日は?」
相変わらずの笑顔で問いかける里空。
諦めたのか佑那は素直に答えだした。
「芹川 佑那。歳は多分18だけど、誕生日はわからない」
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