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人は死んだらどうなるの?
天国や地獄へ?
それとも全部終わりなの?
いいや、神様がきっとまたチャンスをくれるんだよ…
ここはどこだろう?
ああ、私死んじゃったんだ。
目の前にどこまでも広がる青い空を見て希楽はそう直感した。
「ようこそ。奏宮希楽さん。」
「きゃあっ」
空に突然ぽっかり机が現れてたように見えて希楽は思わず叫んだ。
そこには青年が座っていた。
柔和な笑みをに浮かべている。
きっと彼と机は実際、突然現れたのだろう。
気付くと自分の隣にももう1人、人がいた。
男だ。
ちょっとカッコいいかもしんないvv
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そんな気持ちも次の瞬間打ち砕かれたのだが。
「ウザイ。じろじろ見んな…」
「…っ。なんなの!あなたいきなり初対面の人に対してねぇっ」
くってかかった希楽をおだやかな声が制した。
「あのぉ、仲がいいのは良いんですが話聞いていただけますか?」
例の青年が困った笑みを浮かべている。
「誰の仲がっ、…じゃなくて、そうよ、これはどういうことなの?私は死んじゃったの?」
とりあえず現状を把握することにしたらしい。
希楽は青年に向き直って訪ねた。
「それはあなたがよくわかっていると思いますが?」
「…」
希楽は黙り込んでしまった。
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「俺は自分が死んだのかさえわかってねーんだけど…。
そもそもなんでここにこんな風にいるんだ?」
少年が口を挟む。
「では、始めから説明しましょう。まず私は天使部長の叶です。」
「奏宮希楽さん、有村咲斗さん。
確かにあなたたちはもうこの世の人ではありません。
ですがあなたたちは選ばれた人なのです。」
「天…使部長?選ばれた…?」
「ええ、あなたたちは記念すべき今年になって999、1000人目の死者です☆」
「ふざけんな、死んだならさっさと地獄でもなんでもつれてけ!」
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あまりに突拍子のない叶の発言に呆れてる2人。
「そういうわけにはいきません。
あなたたちは天使として選ばれたわけなのですから。
仕事をこなさなければ、この状態より先にさえなれません」
突然真顔になって叶は話し出した。
『は…?』
全くわけがわからない。
2人の声がダブる。
「われわれ天使というのは要するに死者の魂を天界まで運ぶ運び屋なわけです。
天界ではその仕事を手伝っていただける人を定期的に選んでいるわけです。
それがあなたたち、というところでしょうか。これでわかりましたか?」
「…(わかるかっ)。俺達はずっとこのままなのか?」
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「仕事を拒めばそうなります。
天界へ行くことも生まれ変わることも出来ずに、この空をさまようでしょう」
希楽はぞっとした。
この広い空に永遠に1人…。
「ですから天使として働けばよいのです。
一定の時間が過ぎればあなた方は他の人が辿る道へ戻れますよ。
天界へ行き生まれ変わることができます。どうですか?」
「ここまで言われて断れる奴はいないだろう…」
不快気に咲斗が呟いた。
「ええ、それでよいのです」
叶は意味深な笑みを浮かべながら言った。
「それではあなた達新人を指導する先輩を紹介しておきましょうか」