表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/30

27

 それから改札を通ると、雲へ昇るような不思議な階段があり、それを登ると彼らはホームに出た。

 そこからは青空と雲しか見えず、ホームは空中にあるようだった。

 そしてしばらくすると、その一九六四年行き「特急オリンピア号」が見えてきた。

 空中に線路があったのかどうか、彼には記憶がなかったが、説明のしようのない形の機関車に引かれ、列車は滑るように入線してきた。

 引かれる客車は深緑色で黄色いラインが入っていたが、それ以外、彼には記憶がなかった。


 客車の中に入るとマホガニーの壁とクリーム色の天井があり、家具のような座席は房咲水仙をあしらったうす紫色のシートだった。

 そして窓からも青空と雲しか見えなかった。

 しばらくして、他の魔人たちもちらほらと乗ってきた。

 いずれも、王侯貴族とでも言うべき出で立ちで、それに比べるとみすぼらしい姿の彼らをその「貴族」たちはじろじろと見た。

 電天様はそんなこと気にも止めず、木札に書いてある訳のわからない文字を見ながら、ひいふうみと数え、自分たちの席を見付けた。

「指定席じゃ。お前さんの席はここじゃ」

「すごく豪華ですね」

「この列車に乗れるのは、時を越える資格を持った者だけじゃ。魔人の中でも特権階級の連中じゃからな」

「だからみんなあんなに着飾っているのですね」

「そうじゃ」

「もうちょっとましな格好をしてくれば良かった。昨日から着たままの服だし」

「気にするな。関係ないわい」

「でも、時を超える資格って、どうしてそんなに厳しいのですか?」

「時を超える、とりわけ過去へ行く場合は、とても厳しい条件が課されるのじゃ。じゃが、詳しいことはさておいて、本当の理由はじゃな。奴らが既得権益を守ろうとしておるに過ぎん。過去へ行ける利権を独占しておるのじゃ」

「独占すると、どうなるのです?」

「未来の情報を過去へ持って行き、一儲けをたくらんでおるらしいのじゃ」

「そんなことを…」

「厳しい条件厳しい条件と言いながら、既得権益を持った連中が時を旅する者のルールを破りおる」

「時を旅する者のルール?」

「そうじゃ。じゃからこれだけは覚えておくが良い」

「はい」

「これからお前さんは過去の人物に合うことになるが、決してその人物に未来のことを喋ってはならん。そんなことをすると…」


 突然、「ゴトン」と音がして、列車が走り出した。

 同時に窓の外が星空になった。

「とにかく、その人に未来のことを喋るんじゃないぞ」

「わかりました」

 それから彼らは眠くなり、そのまま眠ってしまった…


〈みなさまおはようございます。列車は現在、時刻表通り1965年付近を走行しています。もうしばらく致しますと、終点の1964年、東京オリンピックの年に到着いたします。どなた様もお忘れ物のないよう、お支度ください〉


 列車の車内放送に、彼らは目覚めた。

 そのとき彼は、物凄く長い時間眠っていたような感覚に襲われた。

 それから少しして、列車は1964年の正月に到着した。

 ホームに降りると、とても寒かった。


 そして彼らはローカル線に乗り換え、同じく1964年の初夏に到着した。

 そこはとても暑かった。

「さて、ここからは空間移動じゃ。わしの得意技じゃ。これからわしが言っておった、その人に逢える場所まで、お前さんを連れて行ってしんぜよう」

 どろん!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ