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蛮族の王  作者: 八百万
第1章 蛮族の王
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サファイアを救出せよ!

 地下牢で仲間を手に入れた為朝はバルモンド討つための策を伝える。


「バルトと晴明はバルモンドの部下が来たら術で眠らせろ!」


「ゴルドーと土方はバルモンドの部下になりすまし、俺をババアの元へ連れていけ!」


「それから、段蔵、お前は俺の仲間のサファイアって女を見つけて逃がしてやってほし!」


 段蔵はふと笑みを浮かべ頷く。

 

 地下牢でとんでもない作戦が決行されそうとも知らずに、バルモンドはサファイアを抱けることを思い、気持ちが高まっていた。


「あのエルフの女にはこの特別な媚薬でも飲ませて朝まで楽しむか、ババアはあの目つきの悪い野犬みたいな男でも食ってればいい」


 妄想にかられたバルモンドは我慢ができなくなり、時間より少し早いが部下にサファイアを部屋に連れてくるように命じた。


 サファイアは後ろ手を縛られており、魔法を使おうにも口に布を巻かれており、詠唱できないようにされていた。


「さあ、バルモンド様の部屋に入れ!」


 バルモンドの部下はサファイアをバルモンドの部屋の前に連れてくると、扉を開けて、バルモンドのベッドにサファイアを押し倒した。


「バルモンド様、エルフの娘を用意しました」


 部下はサファイアをベッドの上に置いて部屋から出て行った。


「せっかく賊を差し出してくれたのに残念だったな。でも、喜べ、たっぷり可愛がってやる」


 バルモンドはそう言って、サファイアの太ももを触った。


 バルモンドは用意していた媚薬をグラスに入れて飲まそうとしたが、その時にバーバラの呼ぶ声がした。


「おい、バルモンド、飯の時間だ。あの男を連れてこい!」


「ちっ、ババアめ、せっかくの時に。おい、姉ちゃんちょっと待っててくれ、あの大男をバーバラの部屋にぶち込んだらすぐに戻ってきて可愛がってやるから」


 バルモンドは部下に為朝を連れてくるように命じた。


「バーバラ様が夕食を召し上がる。あの男を俺の前まで連れてこい。俺があいつをバーバラ様の部屋にぶち込んでやる」


 バルモンドの部下たちはバーバラの空腹が続くと危険なのを知っており、急いで為朝のいる地下牢に向かった。


「なあ、土方、あのバーバラってババアは何者なんじゃ?」


「呆れたね、敵の情報もなしに乗り込んできたのか? バーバラは食人鬼だ。まあ、鬼婆おにばばみたいなものだ」


「そうか、なら楽勝じゃな。一方的にぶちのめしてくれるわ!」


 為朝の自信に満ち溢れた笑みに土方と段蔵は顔を見合わせて苦笑いする。


「なんだか、この方にやられるバーバラが不憫に思えてきましたよ」


 晴明は人喰い鬼のところに連れていかれるのに笑っている為朝を見て、どちらが正義かわからなくなってきた。


「おいおい、別に戦いに善も悪もないじゃろ! 敵に回った奴をぶちのめすだけじゃ」


 為朝は笑みを浮かべて、バーバラの元へ連れていかれるのを嬉しそうに待っていた。


 そこへ、バルモンドの部下が地下牢に入ってきた。


「おい、大男、バルモンド様がお呼びだ、一緒に来い!」


 その言葉を聞いてドワーフのバルトは睡眠魔法を放ち、晴明は幻惑を見せてバルモンドの兵士たちを眠らせていく。


 倒れた兵士の服をはぎ取り土方とゴルドーはバルモンドの部下の軍服に着替えた。


「よし、為朝、行くぞ!」


 土方とゴルドーは為朝を左右から抑えながらバルモンドの元へ向かった。


 バルトはスリープの魔法で次々にバルモンドの部下を眠らせて、捕らわれている者たちを解放していく。


 バルトはエルフたちからサファイアだけ連れ出されて、バルモンドの部屋に連れていかれたことを聞き、為朝に伝えた。


「まずいな、急がねばならぬが、俺はこのまま連れていかれないといけない。段蔵、バルモンドの部屋に行ってエルフの女を助けてやってくれないか?」


「ああ、任せろ」


 為朝が段蔵の返事を聞いて振り向いた時には既に段蔵の姿はなかった。


「バルモンド様、賊を連れてまいりました。」


 バルモンドの部下に扮した土方とゴルドーが、バルモンドの前に為朝を突き出す。


「ご苦労。その男を連れてバーバラ様の部屋の前まで来い!」


 バルモンドはバーバラの部屋まで3人を先導し、バーバラの部屋をノックした。


「バーバラ様、人間の男を連れてまいりました。中に入れます」


 バルモンドは部屋の扉を開けて、為朝を押し込むとすぐに扉を閉めた。


「あの男も終わったな、俺はエルフの娘でもいただくことにしよう!」


 バルモンドは為朝をバーバラの部屋に押し込み、安心すると、自分もサファイアと楽しもうと足早に部屋へと向かって行く。


 バルモンドを背後から攻撃しようと土方とゴルドーが剣を抜こうとすると、廊下の奥から複数の何かが走ってくる音がした。


「なんだ、この足音は? 20体くらいいるみたいだが」

「ゴブリンどもが向かってくる。おそらくバーバラの手下だろう。」


 足音に気づいた土方とゴルドーだが、魔族出身のゴルドーは直ぐにそれがゴブリンの足音であると気づいた。


「行く手を遮るなら殺すまで!」


 土方は腰から剣を抜くと向かってくるゴブリンたちを次々と切り伏せていった。


 ゴルドーも負けじとバルモンドの部下から奪った槍で次々とゴブリンを串刺しにしていった。


「話にならんな。」


「ゴルドー、お前強いな。あとは為朝と段蔵の爺さんがうまくやれるかだな」


 土方はゴルドーと顔を見合わせ、為朝と段蔵のことを話す。


 一方、晴明は眠っているバルモンドの部下をロープや手錠で拘束しながら、バルトが城外に逃がした囚人の護衛に向かった。


 そして、バルモンドの部屋では、バルモンドが寝ているサファイアにいきなり抱き着いたが、何やら感触がおかしいことに気づいた。


「おい、それは丸太じゃ! 丸太を抱いて喜ぶなど変態もよいところじゃ」


 バルモンドは声のする方を振り向くと、段蔵がキセルたばこを吸って笑っていた。


「おまえ、女はどこにやった!」


 恥をかかされたバルモンドは頭に血が上り、いきなり段蔵に斬りかかる。


 段蔵は体さばきでひらひらと剣をかわす。


「バルモンド、その程度の剣さばきでわしを斬れると思っているのか?」


 段蔵は剣をかわしながらもバルモンドを挑発する。


「俺は竜神流の剣の使い手だ! じじい、舐めるなよ!」


「竜神流ね、稽古が足りないんじゃねぇのか? あと、わしにばかり気を取られていると、足元救われるぞ!」


 バルモンドはふと背後に気配を感じて振り返るとサファイアがバルモンドに向かって呪文を唱えていた。


「あなたに殺されていった同胞の恨み晴らさせてもらうわ、『ファイアーボール!』」


 サファイアは火炎魔法をバルモンドに放った。


「舐めるな小娘!」


 バルモンドはそう叫ぶと、剣を抜いてサファイアの火炎魔法を切り裂いた。


 そして、バルモンドはサファイアに斬りかかろうとしたとき、自分の体から血が流れているのに気付いた。


 バルモンドが下を見ると、段蔵がバルモンドの背後から小刀を突き刺していたのだった。


「すまんな、隙だらけじゃったものでな。あと、刺さっている小刀には毒を塗っておいた!」


 段蔵がバルモンドから小刀を引き抜くと、バルモンドはそのまま前に倒れて力尽きた。


「あとは為朝のところだけか」


 段蔵の言葉を聞いたサファイアは為朝がバーバラのところに連れていかれたことを知り、部屋を飛び出した。


 サファイアはバーバラが最悪の宴の真っ最中であることを知らずに、為朝を助けるためにバーバラの部屋に向かうのであった。

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