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蛮族の王  作者: 八百万
第1章 蛮族の王
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転移先での戦い

(どのくらい寝たのだろう? ここはどこじゃ?)


 為朝は森の中で大の字に寝ていた。


(夢でも見ていたか?)


 周囲を見渡したが、そこは都ではなく人気ひとけのない森の中。


(ここはあの世なのか? 俺は本当に別の世界に来たのか?)


 為朝が周囲を見渡していると、近くの茂みから音がして体長は3メートルはある大きなイノシシが現れた。


「なんじゃ? イノシシか。それにしても、これは大きいな……」


 少し驚いた為朝だったが、戦のあとで腹も空いており、この大イノシシを狩って食べることにした。


「もしかしたら森の主かもしれぬが、悪いが、そなたには我が血肉となってもらうぞ!」


 為朝が弓矢をイノシシ目がけて放つと、矢はイノシシの体を貫通し、巨大なイノシシは一撃で倒れた。


 為朝は懐に入れていた火打石で火を起こし、巨大なイノシシを丸焼きにして食べ、久しぶりに空腹を満たす。


「美味かった。それにしても大きなイノシシであったな。あのような巨大なイノシシは見たことがない。この世界はやはり元居た世界とは別の世界か……」


 為朝が元の世界では見たこともない大イノシシのことを考えていると、近くから子供のイノシシの鳴き声が聞こえる。


「キュー、キュー、キュー」


「う、うり坊か。まさか子供がおったとは」


「キュー、キュー、キュー」


 子供のイノシシは為朝が親を食べたとも理解できず、すり寄ってくる。


「そなたの母とは知らなかった。すまない許せ……」


 言葉など通じないのに為朝は言い訳をし、このまま放置すれば子供のイノシシも他の獣の餌食になるか野垂れ死にすると思い保護することにした。


「うり坊、そちも一緒に来るか?」


 為朝は子供のイノシシを懐に入れて、森の中を進むことにした。


(それにしても、どこに行けば人里があるのやら)


 そんなことを思いながら森を歩いていると、近くから子供たちの悲鳴が聞こえる。


(ん? なんじゃこの声は?)


 為朝は悲鳴が聞こえた方向に走り、茂みの中から山道を眺めると荷台に積まれた檻の中に耳が尖り色白で金髪の子供たちが閉じ込められており、その近くで盗賊が休憩を取っている。


(あの盗賊は異人じゃな、髪の色も目の色も俺とは違う。しかし、奴らの話す言葉がわかるのは不思議じゃ……)


 為朝はこの世界の言葉を理解できることを不思議に思ったが、捕らわれている子供を救うために盗賊が休憩をしている場所へ静に近づいて行った。


 為朝は茂みの中から盗賊が止めている馬車に向けて矢を放つ、その強弓ごうきゅうの威力は凄まじく、馬車は破裂するかのごとく荷台が壊れた。


「誰か矢を射かけてきたぞ! 武装しろ!」


 盗賊たちは剣や弓など様々な武器を手に取り攻撃に備える。


(敵は10人程度か)


 為朝は茂みから飛び出し、盗賊目がけて2発目の矢を放つ。

 矢は盗賊3人の体を貫通し、盗賊は一気に10人から7人に減った。


「なんだこの大男は? 魔物か? とにかく一斉に斬りかかれ!」


 盗賊の頭目らしき男が部下たちに指示を出すと、盗賊たちは一斉に斬りかかるが、為朝は腰に下げていた大太刀を抜刀し、一太刀振るうと盗賊たちの体は真っ二つに切り裂け盗賊は頭目だけになってしまった。


「な、なんだコイツは? お前、こんなことをしてバルモンド様を怒らせてただで済むと思うなよ!」

「バルモンドじゃと? そんな奴、知るか! 襲ってくれば殺すまでの話よ」


 盗賊は近くに繋いでいた馬に飛び乗り、一目散に逃げていくのであった。


 為朝は弓矢を構え、盗賊を射かけようとしたが、檻に閉じ込められている子供たちの救出を優先し、構えた弓矢を背にかけ、子供たちのが閉じ込められている檻の方に向かうのであった。


「おい、お前ら怪我はないか?」


 為朝が近づくと、子供たちは目の前で盗賊を一気に殲滅した大男に怯えて震えている。


「おい、大丈夫かと聞いておるじゃが、言葉が通じぬか?」


 為朝は子供たちを気遣い、声をかけるが、為朝の鋭い眼光とどうみても聖騎士ではなく盗賊に近い風貌を見て、子供たちは檻の中で真ん中に固まっているのであった。


 為朝を見て完全に委縮している子供たちを前に為朝もどう接してよいのか困り始める。


 その時、森の中から一人の女が現れると一本の矢が為朝目がけて飛んできた。

 

 為朝は矢に気づくと、腕に取り付けていた矢受けの盾で弓矢をいなす。


「待て! 俺は盗賊ではない!」


「その風貌ふうぼうでよくもぬけぬけと、どこから見ても盗賊ではないか!」


 弓矢を持った女は二発目の矢を放とうと為朝を狙う。


 おりの中で二人の戦いを見ていた子供たちは、先ほどまでの為朝の戦いぶりを見ていたので、このままでは女戦士が殺されると思い、恐怖を抑えて声をあげる。


「サファイア様、その騎士様は私たちを盗賊から救ってくれたのです。誤解でございます!」


「なに騎士だと! どう見ても盗賊の頭目にしか……」

 

 女戦士は子供たちの為朝は盗賊ではないという言葉に疑いの念を持ちながらも構えていた弓矢を為朝に向けるのを止める。


「失礼なおなごじゃ! このガキどもの言う通り、俺はこいつらを助けただけじゃ!」


 為朝は女戦士を失礼な奴と思いながらも、子供たちが閉じ込められている檻に向かい、檻を腕力でこじ開け、子供たちの腕や首にめられていたかせも取ってやり自由にしてやるのであった。


「ありがとうございます。助けていただいたのに怖がってしまい、本当にごめんなさい」

 

 子供たちは為朝の怪力に驚きながらも、盗賊から助けてくれた為朝に感謝する。


「まあ。無事ならよいわ。それよりもお主らは人間なのか? 耳も長いし、我らとは違うように見えるが」


「この子たちも私も森に住むエルフ族よ。私はこの子たちを助けに来たエルフ族の戦士なの。さっきは誤解して攻撃してごめんなさい」


 女戦士は子供たちを助けてくれた為朝を盗賊と誤解して攻撃してしまったことを詫びながら、頭を下げた。


 よく見ると女戦士は金髪で色も白くて瞳も青い宝石のようであり、為朝が現世では見たことのないタイプの女である。


「俺は源為朝みなもとのためともと申す」


「私はサファイア、良ければ一緒に私たちの里まで来ない? まだこの辺には敵の盗賊や強力な魔物もいるの、護衛をしてくれるなら歓迎するわ!」


 行く当てのない為朝は護衛を引き受けることにし、サファイアたちと一緒にエルフ族の村を目指すことにした。

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