4話 異世界再召喚
城の中は慌ただしかった。というのも元の世界に帰っていった異世界の英雄である良太が帰って来たのである。1回目の転生の時と同じく王城の中にある謁見の間に突然良太が現れたからである。丁度魔王の謁見時というのも魔が悪かった。何故なら魔王は良太の妻だからだ。
今にして思えばあの時の行動力は人生で一番だったと思う。
私、オフィーリアは前魔王の娘として育った。父親が魔王という事で私には友達がいなかった。同級生は魔王の娘という肩書きを畏れて近付いて来ない。私に近付いて来るのは私と結婚して魔王の肩書きが欲しい男どもと将来魔王としての戦闘を教えてくれる父親だけだった。
父親からの愛は確かにあったと思う。将来の為に戦いを、生き残る術を教えてくれた。それ以外でもちゃんと甘やかしてくれたし親の愛をきちんと受けて育った。
しかし父親が病気が原因で亡くなり私が魔王として上の立場に着くと肩書きの為に寄り添ってくる奴らが増えた。とても気持ち悪かった。更には肩書きだけではなく私の身体を見て近付いてくる者も現れた。その時点で私は男というものを信じられなくなっていた。
そんな時だ。異世界から魔王を倒す為に勇者が召喚されたのは。私は悟った。次は私だと。過去に勇者に倒された魔王がいたように。私自身何か悪いことをしたわけではない。でも魔王という肩書きの為に殺される。
殺されたくない私は部下を使って召喚された勇者を調べた。そしてその報告を聞いているうちに勇者のことをもっと知りたいと思った。今なら分かる。私はこの時点で勇者に惚れていたのだと。
そして勇者が魔王城に乗り込んできた。しかも1人で。普通なら敵陣に1人で乗り込むなんて自殺行為だが勇者のことを観察していたオフィーリアは、彼が自分だけで戦い誰も傷つけない様にするのを知っていた為そこまで驚かなかった。
魔王である自分の部下を殺さず無力化していきオフィーリアは敵だろうと殺さない勇者に少し感動した。
そしていよいよオフィーリアが勇者と顔を合わせた。勇者はイケメンという訳でも無く至って普通の顔立ちをしていた。身体付きも至って普通。全てが普通の一般人だと思った。
そしてそれはオフィーリアにとってはひどく新鮮だった。魔王の肩書きが欲しい男や身体を見てくる男は両極端でイケメンかブサイクかのどちらかだったからだ。故に勇者の顔を見て少しときめいてしまった。さらに自分の調査で勇者の性格も分かっている。外面と内面を見てオフィーリアは完全に勇者に惚れていた。誰かを本気で愛した事が無いオフィーリアはとんでも無いことを言ってしまった。
「わ、私と結婚してくれ!!」
私は困惑していた。
勇者である良太の妻である私は良太が異世界人だという事を知っている。勿論、この世界に生きる人なら誰でも知っているため私達だけの秘密という訳ではないが。
異世界人は女神からの使命を受け持ってこの世界に来ることが殆どだ。だから女神の使命を終えるとそこからは自由だ。元の世界に帰るもの、この世界で一生を過ごすのも自由だ。
ただ殆どの異世界人は使命を終えたら元の世界に帰っていく、らしい。らしいというのは私は良太しか異世界人を知らないからだ。さっき言ったのも昔の本に書いてある情報だ。
その為良太が使命を終えた時異世界に帰りたいという願いを言った時は私は一晩中泣いた。世界で一番好きな人と二度と会えなくなるからだ。それでも私は良太の願いを受け入れた。
死ぬ訳じゃない、会えなくなるだけだ、と自分に言い聞かせながら良太が異世界に帰るところを見ていた。やっぱり堪えきれなくて目から涙が溢れてきて良太のことがよく見えない。
でも何とか良太の姿を見ようと瞬きをずっとしていたらとうとう涙が頬を伝っていった。それに気づいた良太は笑顔を見せつつも少し悲しそうな目で私に近づいてきた。そして涙が流れている私の頬に軽くチューをした。
それから私は勇者の妻として様々なことをした。勇者がいなくなってこの世界のパワーバランスが壊れるのを守るために圧倒的な力を手に入れたり、魔族達の王としても人間たちと話し合いをしてこの世界を平和にしていった。そして今日も人間の王との会談があり人間の城に行き謁見の間で王達と顔合わせをした時だった。
突如謁見の間が光り出しその場にいた者達を眩しい光が覆い尽くした。光が収まり目を開けると其処には私が世界で一番好きな良太と気を失っている良太をお姫様抱っこをしている見知らぬ女性がいた。
私もしたかった。