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愛をさらけ出した王太子と愛の深さを知った王太子妃はこの先も永遠に愛し合う

 


 人気のないライトアップされた庭に出るとルチアーノはゆっくりと歩き出す。


「騙しててごめんな」


「驚いたけど……許すわ」


「良かった」

 

 安堵したようなルチアーノの声。手を引かれ誰もいない温室に入るとすぐに強く抱きしめられた。

 確かに感じる男らしい腕とルチアーノの鼓動。いつもの爽やかな香りとは違う甘い香りにくらくらしそう。もう、ドキドキしすぎて胸が弾け飛びそうよ。


「リーハの心臓の音、響いてくる」


「ルチアーノの心臓の音も感じるわ」


「ああ。重なってるな」


 私だけじゃなくルチアーノの心臓も同じペースで早鐘を打って、まるで2つが重なっているみたい。


「鼓動みたいに同じくらい好きだったらいいのに」


 ふと出た言葉。私のこの大きな想いくらいルチアーノにも好きになって欲しい。なんて思うとルチアーノが笑う。


「それはないな。俺の方が絶対好きだ」


 ルチアーノの言葉に思わず口元が緩んでしまうけど、こっちこそ、それは絶対にないわ。だって死ぬほど好きなのよ?言い返そうとするとルチアーノの手が私の頬に触れ唇に親指を当てた。


「言い返さなくていいよ。間違い無く俺の方が好きだから……」


 吸い込まれそうなほど真剣な瞳が熱っぽく揺れる。ルチアーノの親指が数度私の唇を撫でて止まった。


「いい?」


「……はい」


「好きだよ」


 囁かれ重ねられた唇の甘さに身体がとけそうになる。立っていられなくなって膝から崩れ落ちそうになるとルチアーノがしっかりと腰と背中に腕を回し支えてくれた。


 唇が離れても「好きだ」と囁かれ続けられる口付け。

 もう何回「好き」を言われたかわからないくらいの所で満足したのか、顔を離し頬に手を添え見つめてくる。


「…………すぐに結婚しよう」


 すぐにって無理に決まってるじゃない。でも私も同じ気持ちよ。微笑み婚約者の可愛い提案に頷いた。


 すると言葉通り国王陛下に「早く結婚したい」と掛け合ったルチアーノ。本来であれば学園を卒業してから1年間みっちり王妃教育を受けた後結婚式が普通なのに、私は在学中にも関わらず平日は通い、週末になると王城に泊まり込みスパルタ教育を受ける事になりました。


 そうして婚約発表から1年と数ヶ月が経つのだけど、些細な事から大きな事まで色々な変化があったわ。

 まず、家にジャレットのサイン入り絵画が届いた事。私ジャレットだと聞いていなかったのでかなり驚きましたわ。

 ルチアーノ含む家族が楽器を演奏している後ろでお父様が椅子に座って聞いている絵。言うまでもなく素晴らしく、普段は自慢なんかしないお父様が友人をご招待しては絵を披露しているのよ。


 ポルトナス家とコルトナーレ家は王家を欺こうとした罪とハイドリア家を貶めようとした罪と私への侮辱罪に虚偽を広めた罪に問われ領地の多くを失った。

 ウィカとスーザンは罰として学園を卒業するまで平民街の清掃と言う奉仕活動をさせられている。


 お家が領地を没収までされたのに厳しすぎるのではないかと思ったけど、ルチアーノは「リーハを傷つけたんだから当然だろ。奉仕活動など生ぬるい。俺はリーハを噴水に突き飛ばしたあの瞬間を忘れてないぞ。本当なら国外に追放してやりたい」と口走っていて激しい一面もあるのだと知ったわ。


 本物のルイスはソニアと婚約。実はソニアは本物のルイスの見た目が好みだったみたい。つい目で追ってしまっていたから私が本物のルイスを好きじゃないのにもすぐに気付いたし「鬼ごっこ」の時話せて本当に嬉しかったんだそう。

 あの当時は本物のルイスをルチアーノ殿下だと思っていたから大きな声で言えなかったと打ち明けられたわ。


「見た目に憧れてたけど思ってたよりずっとずっと毒舌なのよ!見えないでしょう?そこがまたいいんだけどね!」


 と大きく口を開けて笑うソニアはとても幸せそう。話によるとお2人の婚約はルチアーノが助言したとか。確かに2人はお似合いだと思いますわ。


 そして私は今沢山の人々に祝福された結婚式を終え、興奮冷めやらぬまま入浴し用意されたネグリジェに着替えドキドキしながら部屋に向かっています。はい、もうすぐルチアーノと初めての夜を迎えるのです。


 部屋に入るとガウンを着たルチアーノに待ち切れないとばかりに引き寄せられベッドに押し倒される。

 覆いかぶさり大きな手で私の両手を捕まえると空色の瞳がじっと見つめた。もう何回もキスをしたのに黒い髪の毛がかかりそうなほどの距離で見つめられると恋しすぎて涙が出そうになるわ。


 はぁっ、緊張する……また「いい?」って聞かれるの?自分本位じゃなくいつもちゃんと確認してくれるところも優しくて素敵だと思うの。


 去年よりも男らしくなった表情と、ガウンから覗く鍛えられた胸元。胸に広がるキュンとした感覚と甘さに酔いしれる。暫くお互いウットリと見つめ合っていたけど、ふとルチアーノの綺麗な唇が動いた。


「いい?」


「はい……」


「俺がどれだけ愛してるか伝わるといいけど」


 もう伝わっているわ。だってきっと同じ位愛しているし愛されているもの――



 窓から差し込む朝の光と聞こえてくる鳥のさえずり。目を擦り寝ぼけながら辺りを見ると壁に掛けられたジャレット作の私とルチアーノの肖像画と目が合う。隣を見ると愛しい人が寝息を立て眠っていて、こっそりおでこに口付ける。そんな幸せな朝に思うのは…………昨晩の言葉は撤回しますって事よ。


 私、自分で思っていたよりもずっと深く愛されているかもしれませんわ。でも、その……顔が緩んでしまうほど幸せです。

 愛する人(ルチアーノ)の婚約者に選ばれて……良かったわ!






*********


このお話で完結となります。

追いかけて読んで下さっていた皆様、最後までお読み下さった皆様、ありがとうございました。

good luck!皆様に幸運を。



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