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そう言う意味の好き×2人

 


 今私の目の前にはルチアーノ殿下が立っている。しかも笑顔で。

 そのお隣には顔を引きつらせたウィカとスーザン。


 ルチアーノ殿下とは出来るだけ関わらず生きていこうと思っていたのに、まさかランチに誘われるなんて思っても見なかったわ。


 教室内の視線が嫌と言う程私達に集まっているのは気のせいではないわね。


 殿下のお誘いを断る事はかなり失礼な事よ。一言で言うとあり得ないわ。

 でも、私はあえて断ろうと思うの。ほら、ルチアーノ殿下の背後でルイスも頷いているわ。


「申し訳ございませんが私他の方と昼食の約束をしておりますの。どうぞ3人でお食べ下さいませ」


 私の返事にざわつくクラスメイト。

 それでもルチアーノ殿下は笑顔を返して下さったわ。


「それは残念だな。また誘うよ」


 ルチアーノ殿下は爽やかで良い人だけど何処か心がこもっていないように感じるのはなぜかしら。


「殿下のお誘いを断るなんて……」


 ここぞとばかりにスーザンが冷たい目線を浴びせて来る。


「先に約束している方を優先するのは当然でしょう?」


 今までだったら黙って耐えていた事もこうやって口に出す。悪を演じるのではなくこれだけで私の印象は最悪になる事に気付いたわ。


 これが正解だったみたい。ほら、ルイスなんか満足気に手で大きく「まる」を作っているし、何故かソニアも大きく頷いているわ。


 ……何故ソニアが?

 首を傾げるとルチアーノ殿下達は「じゃぁまた」と去っていく。前の席に横向きに座り私達の会話を聞き大きく頷いていたソニアもコソコソと去って行った。


 一体ソニアは何だったのかしら?友人達の輪に入って行ったソニアを見つめているとルイスが声を掛けて来る。


「誰と昼食の約束を?」


「……ただの口実ですから誰ともしておりませんの。ルチアーノ殿下の婚約者に選ばれないためにはこうやって積み重ねが大事ですわ」


「……はぁ、分かってるんだけどね……」


 ルイスは何故かボソリと呟き胸を押さえた。


「ルイス?何処か具合でも?」


「いや……じゃぁ俺と一緒に食べようか?」


「はい」


 笑顔で答えるとルイスの口元も笑顔になる。

 ずっと心がくすぐったいわ。


 人目を気にして一緒には移動しないけどいつもの場所で待ち合わせ。

 ルイスの背中を見送った後にサンドウィッチの入ったカゴを持って移動する。


 ベンチには当然先に教室を出たルイスが腰掛けている。私が隣に座った途端ルイスは私の髪を解きメガネを外し顔を覗き込んでくる。


「やっぱここでだけの特別感があって良いよな」


 特別感。これが2人だけの秘密の醍醐味なのですね……!

 私もルイスのメガネを外して髪を整えようかしら?はぁ、でも今それをしてしまうと心が甘くなりすぎて危険な気がするわ。倒れてしまうかも。


 あえて手は出さずにニコっと微笑むだけにとどめると、ルイスは自分からメガネを外し髪を撫でた。艶のある黒髪がサイドに流れてスカイブルーの瞳が現れる。


 ああ、なんて素敵なの?ルイスはまとっている空気からして他の人とは違うのよ。

 ぼうっと見惚れているとルイスの手は襟元に伸びネクタイを緩めた。


 きゃー!何なの?ルイスのこんなにリラックスした仕草が見られるなんて、ルチアーノ殿下のお誘いをきちんと断れた私へのご褒美かしら?


 それにしてもネクタイを緩めただけなのに絵になるなんて素晴らしいわ。神様ありがとうございます。ありがとうございます!


 心の中で強く神に感謝しているとルイスの視線が私を射貫く。


「よければ毎日2人でお昼を食べる約束をしておこうか?誘いを断る口実になるだろ?」


 自分の都合の良いように聞こえているのかと一瞬耳を疑いましたが聞き間違いじゃありませんわ。毎日2人でお昼の約束とおっしゃいました……


 良いのですか!?なんて確認はしないわ。やっぱりダメとか言われたら泣くもの。


「はいっ。ありがとうございます。嬉しいです」


 私がルチアーノ殿下の婚約者に選ばれないように応援してくれるのは本気だったのね。なんてお優しいのかしら。


 ニヤニヤ顔を見られているというのにあまりの嬉しさにニヤつきが止まりませんわ。


「……凄く嬉しそうだね?」


「はいっ!ルチアーノ殿下の婚約者に選ばれないように応援して下さるんですもの。とても心強いですわ」


「……ん~……」


 浮かれすぎたのかルイスは少し小首を傾げて唸った。


「そのさ、ルチアーノ殿下って言葉に出すの、やめない?」


 言われてハッと気付く。

 そうだわ。ルイスはルチアーノ殿下のご親戚ですものね。あまりいい気分ではないですわよね……


「申し訳ございません」


「ああ、そんなに俯かないで。大したことじゃないからさっきみたいに笑ってよ」


 笑う?ニヤニヤしてしまった事かしら?

 不思議に思って見るとルイスはニコリと微笑んで手を伸ばし、そっと私の髪に触れる。


 優し気な手付きで髪を梳く姿は色気さえ感じて勘違いしてしまいそうなほどよ。

 前も髪を触りたかったと言っていたけど、もしかして髪の毛が好きなのかしら?


「あのっ、ルイスは……もしかして私の髪を触るのがお好きなのですか?」


「ハハ。バレたか……好きだよ」


 はぁっ。「好きだよ」の部分がまるで優しく囁くようで……心臓が止まりそうですわ!私の聞き方、神でした。まるで私の事を好きって言ってくれたみたいに聞こえたもの。

 地面に転がって悶え、好きって叫びたいけど我慢よリーハ。でもニヤニヤは我慢出来ない!


 またまた抑えきれずニヤニヤしながらルイスを見ていると「フッ」と笑ってくれる。


「また凄く嬉しそうだね?もしかしてリーハは俺に髪の毛触られるの好き?」


「はい……好きです」


 恥ずかしいけど好きですに心を込めて言ってみましたわ。

 ルイスは少し目を見開いた後とても嬉しそうに笑ってくれた。そして褒める様に頭を撫でてくれる。


 髪を触られるのが好きなんじゃなくてルイスの事が好きだと言いたいわ。


 ウットリ、ドキドキ、キュンキュン、もうそんな言葉じゃ言い表せないほど心が暴れてるの。

 

 大好きすぎてもうどうしていいのか分からないわ。とにかく頑張る。何をって、全部よ!



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