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再創世記 ~その特徴は『天使の血筋』にあてはまらない~  作者: タナカデス
第3章 第一学院
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92 授業⑤



7の日の夜に寮に帰って、びっくりするくらい早く寝付いた。そして今日は朝から全身倦怠感と筋肉痛がひどい。


俺はだるだるな姿勢のまま教室に入り皆に挨拶をした。


「みんなおはよう………」


『おはよう、アグニ!どうしたんだい?随分疲れてそうだね?』


コルネリウスが俺の様子に気がついて声をかけてきた。週末のことを説明しようと思ってとりあえずコルの横の席に座った。

 

「……去年洪水で潰れかけた村あっただろ?」


『そんなのあったっけ?』


コルネリウスが首を傾げながらカールに聞いた。他の子達も首を傾げていた。


「あー……えっと…エール公国のどっかの村じゃなかったか?」


カールは辛うじて知っていたようだ。


「あ…そっか。帝都にいたら知らないのか…」 


辺境の村の住人が餓死しそうだったのに、ここでは洪水があったことすら耳には入らないんだな。


『それで?その村がどうしたの?』


コルネリウスが俺の話の続きを促した。


「昨日その村に行って、それで思った以上に疲れて…」


「ちょっと待て。」


カールが俺の話を止め、眉を寄せながら聞いてきた。


「その村、エール公国だよな?しかもそんなに帝都に近い場所じゃないだろ?」


「うんそうだよ。だから疲れたんだよ?」


『え?どういうこと?昨日と一昨日でエール公国に行ったってこと??』


「だからそう言ってんじゃん。走っていって…」


『「「「 走って?!!!! 」』」」


近くで話を聞いていた他の子達も一緒に大声を出した。パシフィオが帝国の地図を持ってきて俺に聞いた。


「アグニ!なんて村だ?!!!どこだ?!」


その地図には道の名前や村の名前がびっしり全部載っていた。俺は帝都の東の門から北に向かう直線上に『ハイセン』の名を見つけ、そこを指さした。


「ここ!このハイセン村。」


「「「『 ここ?!!!! 』」」」


「こんなとこ……馬車でも1週間くらいかかるだろ?!」


パシフィオは裏声になりながら俺に言った。俺は頭を掻いて渋い顔をした。


「そうなんだよ…だからまじでしんどくてさぁ。さすがに2日間で行く場所じゃなかったわ。ははっ。」


『馬車で1週間の所を走ったってどういうこと?!!』


コルネリウスが俺にぐっと近づいて聞いてきた。


「え?身体強化と風の芸でずっと走り続けるだけだよ」


「………え?さすがに嘘だろ?」


パシフィオが頬を引き攣らせて呟いた。隣のカールはじっと地図を見続けて、途中にある川を指さした。


「アグニ、この川はどこで渡った?あとこの山は??」


「川も山も、身体強化と風でそのまま突っ切んだよ」


『川は無理だよね?!鳥でもないんだし!!』


「けどこの川そんな大きくないから走ってってそのまま飛べば対岸に着くぞ?」



辺りが静寂に包まれた。



   あれ?説明が悪かったかな?

   伝わってない??



「えっとだから、手前で踏み込んでそのまま飛んで…」


「わかんないわけじゃねぇよ!!!!!!!」


高身長のパシフィオが立ち上がって俺を上から覗き込んだ。怖い。コルネリウスが真面目な顔で俺に質問した。


『アグニ、本当にその村に行ったの?』


どうやら俺が冗談を言ってると思ってるようだ。なので俺はきちんと真面目な顔で返した。


「おう。本当に行ったよ。」


『………そうか。……ははっ。ほんと…恐ろしいな。』


その後すぐに先生が来て、この話は終わった。




・・・・・・




今日の生物の授業では海の芸獣を軽めに習った。そもそも海洋研究はまだそれほど進んでおらず、学院で教えられる生物も限られている。だから「出没率トップ3」を細かく習う感じだ。



   そういや俺、一回しか海行ったことねぇな。

   シュエリー公国に行った時が初めてだったよな

   シリウスは海に出たことあるんかな?

   ………今度行ってみたいって言おう。



俺が決意した直後、先生が決して海へは行かないようにとみんなに伝えた。心を読まれたかと思ってびびったぜ。まぁ気にせず行くけどね。




・・・




放課後の武芸研究会の時、今日はコルネリウスと俺で擬芸獣を使って遊……練習だ。

平な形の擬芸獣に蓄芸石を入れたら以前戦ったことのある芸獣と動き方が似ていた。


「ちょっとこいつの動きオオトカゲの芸獣に似てるな」


『え?こんな感じなの??』


「似てる。オオトカゲはこれに火も出すけどね。」


『オオトカゲとの戦い方…上から刺し殺すんだよね?』


「あーそう習うけど、実際は上から刺し殺せる距離にいたら火吹かれて危ないんだよなぁ。」


『え?そうなの?でも上向きには火を吹けないから危なくないんじゃないの?』


「それがな〜反射良いやつだと火当たるんだよ。俺も火傷しそうになったわ〜」



   あれは確か最初の頃だった。懐かしいな…

   シリウスが後ろで笑ってやがったんだよな。



『じゃあどうやって退治するのがいい?』


「1番良いのは遠くから芸を当てることだけど…剣だけでやるなら刺すんじゃなくて、シンプルに剣を振る。平らだから首とか斬りやすいぞ。」


『へぇ!!!!』


コルネリウスは面白そうな顔をしていた。


『アグニは今までにどれくらいの芸獣と戦ったことがあるの?』


「え?………んー……たくさん?」


『正確に数はわかる?』


「数ぅ〜??!」



   んなのだいぶ前から数えるのをやめた。

   俺は自分の年齢までの数しか数えん!!



「わかんねぇ。1000は超えてないよ。」


俺の答えにコルネリウスは最大限に目を見開いた。


『アグニはどうしてそんなに戦ったことがあるの?!』


「今までずっと旅してたしな。今もよく帝都から出て狩るよ。」


俺の言葉を聞いたコルネリウスは両肩をガシッと掴んで真剣な顔で言った。


『僕も連れてってくれ!!!頼む!!!』


「えっ…え??」


『だめ?次行く時に教えてくれれば合わせるから!』



   いや、まぁ全然俺はいいんだけど…

   シリウスはどうだろ?まぁいっか。

   なんか仲間増えたみたいで嬉しいし!



「わかった!じゃあ次に帝都から出る時は事前に言うよ。言っとくけど…まぁまぁ厳しいぞ?」



   シリウスが、ね。俺は別に厳しくないけど。



コルネリウスは覚悟を決めた顔でしっかりと頷いた。


『今朝の話を聞いてレベルが違うことはもう十分にわかってる。けど…俺は強くなりたい。だから逆に、遠慮はしないでくれ。』


コルネリウスは貪欲に知識を吸収し、強くなるための努力ができる人だ。普通、伯爵家の子息が平民に頼み事をするっていうのは尋常じゃなくプライドが傷つく行為だ。けれどコルネリウスは強くなるためにそのプライドを捨ててしまえる。



   俺は良い友達を持ったな……







「あ!そこにいたのかアグニ殿!!」


後ろから聞こえた声の方を見ると技術発展研究会のマッハ部長だった。武芸研究会の生徒の間を堂々と剣ではなく鋸を持って歩いてきた。


「マッハ部長!」


俺が部長の方へ急いで走っていくと、部長は腰に下げていたサイドポーチから紙の束を取り出した。


「見てくれ!設計図を作り終えた!」


「え?!!もうですか?!」



   嘘だろ?!早すぎないか?!

   作るっていってからまだ3日だぞ?!



俺に紙に書かれていた設計図を見せてくれたが、もちろんなんの知識もないのでこれがどうなのかがわからない。けれどマッハ部長は勢いよく喋り始めた。


「ここが扉でここが窯だ!窓はこことここで、水を汲める場所は…」


マッハ部長が次々に説明をし、聞いている限り足りない設備はなさそうだった。なのでとりあえず頷いておいた。説明を終えたマッハ部長がマッチョな腕で力こぶを作り力強く言った。


「お昼の時間に少しずつ建てる!明日からはすぐに昼食を食べ終えて研究室に集合だ!!」


「はい!!!ありがとうございます!」



いよいよ、俺の鍛冶場が学院に造られ始めるのだった。




・・・・・・




3の日


昼食を皆よりも早くに食べ終え、そのまま小屋の建つ場所…学院の北へと向かった。昨日は材木や道具などを運び終わるだけでお昼の時間が過ぎてしまったので実質今日から造り始めるのだ。


そしてマッハ部長の指揮の下、研究会の人たちと一緒に指示通りに作業を行っていった。たぶん今週一週間は土台作りで終わるだろう。


まだまだ、鍛冶ができるまでには時間がかかりそうだ。




・・・




そして放課後、鞄を持って廊下を歩いていたバルバラを大声で呼び止めて走り寄った。


「バルバラ!!」


バルバラはくるっと振り返って笑顔で俺に話しかけた。


「あら?どうしたのアグニ?」


「あぁ、これ。本読んだから返すよ。面白かった!ありがとな!」


先週バルバラから借りた恋愛小説だ。それを受け取り、バルバラは驚いた顔で聞いてきた。


「もう読み終わったの??セシルは?」


「セシルももう読み終わってるよ。」


セシルは7の日に読み終わったらしく、寮に向かう馬車の中で渡されていた。そしてその後、俺も夜に少しずつ読み進めていたのだ。


「……早すぎない?アグニ、あなた武芸研究会にも行ってたわよね?それにお昼だって本を読んでないし…。いつ読む時間があったの??」


「え?普通に夜だよ。寝る前に。」


「………何時間くらい寝てる?」


バルバラが化け物でも見るような顔で聞いた。俺が本を読むために睡眠時間を無理やり削ったと思っているのだろう。


「えっ!ちゃんと4時間くらいは寝てるよ!!別に無理してるわけじゃない!」


「4時間??!!」


バルバラが悲鳴のような声を上げた。廊下を歩いていた数名が振り返ったが、バルバラはそんなことお構いなしで大声を出した。


「4時間しか寝てないの?!いつも?!就寝時間は10時でしょう?!授業が始めるのだって9時じゃない!!テスト前でなければみんな8時間くらいは寝るわよ?!」


「え?!!8時間?!!!」



   おいおいおい寝すぎだろ!!俺の倍じゃねぇか!

   逆にそんな寝たことないわ!!



「バルバラ…寝すぎじゃない?もしかして体調悪い?」


バルバラを気遣うように問うと、大きくため息を吐かれた。そしてバルバラは俺の腕を引っ張って歩き始めた。


「え?なに?どこ行くの?」


「今日だけ特別に女子文学研究会に連れて行ってあげるわ。課題の本も読んできたことだし。他の人にも睡眠時間を聞いてみなさい。」



「………え???」












次は男性初の女子文学研究会への参加です。

アグニ、ファイト!!


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