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再創世記 ~その特徴は『天使の血筋』にあてはまらない~  作者: タナカデス
第3章 第一学院
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89 授業④



   あーあ、まずいな。ぐっすりだったわ。



歴史の授業…はじめましての先生だったので最初に挨拶したのは覚えている。品のあるゆっくりとしたおじちゃん先生だった。けど恐ろしいことに63歳らしく、俺より年下やーんとか思ってるうちに……意識が……



「じゃあ…これで授業を終わります。」


ずっと寝てて何も聞こえてなかったのになぜかその言葉だけはっきりと耳に入ってきた。怖い。なんでだろう。けどそのおかげで、礼をするタイミングでみんなと一緒に立てた。なのでたぶん寝てたのはバレてない。



『アグニ。ずっと寝てたね。』


「え?!ばれてた?!」


コルネリウスがけらけらと笑いながら伝えてきた。


『そりゃあね。僕、授業を聞かずに寝てる人初めて見たよ。』


「ええぇ?まじ?みんな授業で寝たことないの?」


カールがにやにやしながらこちらにやってきた。


「この学院で…体面を極端に気にする貴族の子が授業中に寝ると思うか?」


「そ、そうか…みんな大変だな…」


「異例の編入生で、武芸の才を見せつけ、入学3日目にして授業中寝る。もうお前は伝説になりつつあるぞ」


「嫌な伝説だな……………」





・・・・・・





学院には『礼法』という授業がある。


式典や挨拶の方法、言葉使いやアクセント、男性は女子のエスコートの仕方、女性は男性に言い寄られた時の対処法などを学ぶ。


以前シーラが言っていた。

頭を下げる、その動作だけで平民にも姫にもなり得ると

だから礼儀作法はきちんと学びなさい、って。


なのでこの授業はめちゃくちゃ真面目に受けた。


1限の不真面目を取り戻すべく、昼食の時間はカールから歴史のノートを借りて急いで写していた。



『授業を聞かないことは感心できません。』



突然前から降ってきた言葉にその人の方を向いた。


「あ、シルヴィア!おはよう!」


『……おはようございます。』


急に喋りかけてきたことに驚いたが、とりあえず居眠りの言い訳をした。


「いやぁ、ごめん。なんか思ったよりも疲れてたっぽくて…。まだ環境に慣れてないのかな?」


『自分の気力、体力に合わせて所属する研究会の数や参加頻度を決めなさい。授業を聞かない姿勢は先生方に対する侮辱にもなります。』



   おっ…アドバイスだよね?

   なんだ、やっぱ優しいじゃん。



ぎこちないシルヴィアなりのアドバイスだと受け止め、俺は笑顔で礼を言った。


「そうだな!これから気をつけるよ。ありがとな!」 


シルヴィアは押し黙り、その後溜息を吐いて去っていった。 



   ん?なんだったんだろ?

   まぁ、早くノート写そっ。




・・・・・・





そして……気がついたら5の日だ。明日は初めての休日!この学院は好きだが早くシリウスとシーラに会いたい気もする。


そして今日も1限から歴史の授業があったけどちゃんと起きてましたよ!!


2回ほどシルヴィアが俺の方を向いて寝てないかの確認をしてきたので、きちんと手を振りかえして寝てませんよアピールをしておいた。



   

・・・




この学院には特殊な授業が多いが、その中でも特に異質なのが『お話し合い』の時間だ。


その名の通り、ただ学年の子とお話しするだけ。



各学年で一つずつ談話室が与えられる。

そこでは紅茶や焼き菓子、軽食がいくらでも出てくる。そして専属のメイドや執事が在中しており、執事に学外宛ての手紙を渡しておけば宛先に届けておいてくれる。そして自分宛ての手紙が来ていたらその談話室で受け取るのだ。


昼食の直前の時間にお話し合いの時間が設けられているので、その日は基本みんな談話室で昼食を取るらしい。



『アグニ、君は週末どうするんだい?家に帰るのか?』


コルネリウスが真紅のベルベットのソファに座って聞いてきた。俺も前にある同色の1人がけのソファに座った。


「うん。セシルと帰るよ。公爵に話を聞きたいから帰ってこいって言われてるし。」


『あれ…待って!そういえばシーラ様ともお会いするのか?!』


「そりゃ会うだろ。一緒に住んでんだから。」


「今シーラ様って聞こえたが?!」


カールがコルネリウスの隣に座って俺に叫ぶ。その声を聞いてか数名の男子がこちらにぞろぞろと寄ってきた。


『カール聞いてくれよ。シーラ様に会うのかって聞いたら、「そりゃ会うだろ。一緒に住んでんだから。」だってよ。どう思う?』


「鞭打ち50回だな。」


『まったくだ。』 


2人のくだらん会話も聞きつつ身体強化で遠くの女子達の話を聞くと、買い物の予定を立てていたり、どこの家のランチに誘われたとかそういう話をしていた。たぶん本来はそういう話をすべき時間なんだろう。


「なぁ、シーラ様って家の中だとどんな感じなんだ?」


カールの近くに立っている男子が質問をしてきた。俺は腕を組みシーラのことを思い出しながら答えた。


「んー…朝が弱いかな。眠そうな感じで起きてくる。」


「「 はぁ〜起こして差し上げたい!!!! 」」


「夜にのんびり風を浴びながらお酒を飲むのが好きで」


「「 ひぃ〜お酌をさせていただきたい!!! 」」


「たまにダンスを踊って見せてくれたりとか」


「「 のぉ〜世界の宝が輝く!!! 」」


「ちょっとさっきからこの掛け声何?!!!」


訳の分からない合いの手に思わずつっこんだ。

けれどカールもコルも誰をそんな合いの手を気にすることなく俺の方に身を乗り出して真剣に聞いている。


「大体、お前らそんなにシーラに興味ある?」


みんななんだかんだ言って、騒がなきゃいけないと思ってるから騒いでるだけなんじゃないか?だって実年齢は言わずもがな、見た目年齢もシーラの方が上だし。そんなみんな年上に興味あるぅ??


「ばかやろう!!!!!!」


カールが勢いよく立ち上がった。汚い言葉をいい慣れてない感じがして笑いが込み上げてくる。しかしカールの演説は続いた。


「シーラ様に付き添われパーティ―に出席する!これが一度でも叶ったならばその人の社交界での立場は確実なものになり、一目置かれる存在になるんだ!」


「へぇ~」


コルネリウスが説明を加えてくれた。


『そのためにみんなシーラ様に付き添いを頼み、様々な贈り物を渡し、手紙を送り、何度もお願いするんだ。見事付き添いに選ばれた者は、シーラ様に最高級のドレスや装飾類をいくつも送り、当日に着て頂くドレスを選んでもらう。けれどもしその中でお気に召すドレスがなかったら、シーラ様は黄色の花を相手に贈るんだ。』


「黄色の花?」


「黄色の花はお断りの意味。その花にもランクがあって、黄色のバラであれば『あともう一歩』、黄色のアヤメなら『どれも微妙』、黄色のチューリップなら『有り得ない』とかだな。」



   シーラさん、そんな事してたの?!!!

   俺全くそんなこと知らなかったんだけど!!



「あとシーラ様は1度も赤いドレスを着て夜会やパーティーに出られたことがない。だから誰のパーティーで、誰の付き添いで、赤色を着られるかが1番の注目ポイントでもある!」


「へ、へぇ〜……」


『シーラ様が付き添いになられるということはそれだけでセンスの良さが保証されるってことだ。流行やセンスに敏感な貴族社会ではそれだけでも十分に立場固めにもなるし、それに加え財力があり、誘い文句が上手で紳士的な人物だと判断される。つまりシーラ様に付き添われた人物は()()()()()って社交界では判断されるんだ。』


シーラの行動1つで社会での立場が変わる。



   俺の考えていた数倍もシーラの地位が高い…

   シーラの意見やアドバイスは素直に聞こう……



「そして最大の喜びは付き添って頂いている間、シーラ様とお話しし、ともにダンスを踊り、天の国へ行けるということだぁ!!!!」


「「『 意義なし!!!! 』」」


「ほ、ほう……。」


コルネリウスが急に全力で「貴公子」のキラキラ笑顔を見せた。


『僕はこの前のパーティーでシーラ様のファーストダンスを頂いたからな!!』


「おおおおこのやろう!!!!」


『いやね、もうだめだよ……極上を知ってしまったんだ。いっそ知らない方がよかった!……みんな、知ってるかい?シーラ様の肌の輝きを!それに僕、腰に手を回したんだよ?!』


「誰かこいつを殺してくれ!!!!」


『前を向けば…絶世の美女が俺を見つめていて……俺にだけ見せる笑顔を…』


「殺せぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


「飛びかかれぇ!!!!!」


「口を封じろーー!!!!!!」



身内の事でこんなに盛り上がられると小っ恥ずかしくなるもんなんだな。知らなかったぜ。



・・・




そんな話を聞きながら昼食を取り、午後の地理と生物の授業を受けた。

そして放課後、セシルに技術発展研究会へ連れていってもらった。



「部長……」


セシルの呼びかけに反応したのは日焼けした肌にグレーブラウンの髪で、筋肉粒々の背の高い男だ。振り返って太陽のような笑顔をこちらに見せた。


「セシル殿!!お?その隣の男性はどなただ?もしかして新しい部員か?!」


「あ、初めまして!アグニと申します。今年度から2年生に編入しました。技術発展研究会に興味があるので見学をしたいんですが…」


俺の言葉にニカっと笑って元気よく手を差し出した。


「見学も入部もいつでも大歓迎だ!!私はこの研究会の部長、3年のマッハ・エドヒルドだ!!編入生が入ったと聞いていたが、君だったのか!」


「あ、はいそうです。よろしくお願いします!」


「うんうん!君は何に興味がある?!技術を用いて何を生み出したい?!」


何を生み出したいかと問われしばし考えてみたが、そもそも俺は技術のことをほとんど何も知らない。


「んー……すいません、まだよくわかりません…」


「いや、構わないさ!では質問を変える。君の得意なこと、好きなことはなんだい?!」


「俺、元々鍛治師だったんで鍛治をするのが好きです」


「なに!?鍛治師?!」


「え、はい……」


やっぱ貴族の御子息には受け入れ難い職業かなぁと思った矢先、マッハ先輩は両手にガッツを作って叫んだ。


「素晴らしいじゃないか!!!では君の鍛冶場を学院内に作ろう!!!」


「…………はい??」



   ちょっとすぐには飲み込めなかった。

   鍛冶場を…学院内に作る?!

   え?そんなことできるの?!



俺の疑問を他所に、マッハ先輩は筋肉隆々な両腕を広げて説明を始めた。マッハ先輩の二の腕はセシルの頭くらいありそうだ。


「君には好きなことがある!!しかも技術の要素が入っている鍛冶を!部員のやりたい事を最大限支援するのが部長の務めだ!!鍛冶場を作ろう!!」


セシルが背伸びをして俺の耳元で教えてくれた。


「部長は…建物を作るのが好きなの……」  


「あ、そうなんだ………」


「ではすぐに何が必要なのか、場所をどこにするかを決めようではないか!!!!」














かわらず学院での日常話でした!次は久しぶりに公爵邸に帰ります。

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