75 編入試験
火の月が終わり、風向かう1週目1の日に帝都に着いた。
編入試験があるのは今週の7の日だ。
森の家に着き、バンと扉を開けて叫ぶ。
「ただいま~!!!!!!!」
「アグニィ~!おかえりなさぁ~い!」
ダイナマイトなボディの女性が両手を広げて俺を抱きしめてきた。
「シーラ、ただいま!」
「ちょっとちゃんと顔見せて?あら?少し格好良くなったかしら?」
「え、そ、そうですか??」
だめだよシーラそんなことを軽々しく言っちゃ。
その一言で今日を生きれちゃうよ、俺。
シーラの後ろからクルトがひょこっと出てきた。
「アグニさんシリウスさん、おかえりなさい!」
俺の後ろにいたシリウスが返事をする。
『ただいま、クルト。シーラ、はい。』
そう言ってシリウスはシーラに真っ赤な花を渡した。そういえば砂漠で取ってたかもしれない。シーラは何も言わずにそれを受け取り、見つめた後シリウスの方を向いて聞いた。
「どうだったの?今回は。」
『楽しかったよ。久しぶりにフォードにも行ったしね』
「そう、それはよかったわ。二人ともお昼はどうする?もう食べた?」
「ううん、まだだよ。」
俺が答えるとクルトが腕まくりをしながら答えた。
「わかりました。今ちょうどお昼を作り始めるところだったので、お二人の分もお作りしますね。もう少しお待ちください!」
「ありがとうクルト!」
・・・
クルトがお昼ご飯を作ってくれてる間、俺とシリウスとシーラは居間でお茶をしていた。
隣に座るシーラが俺の顔を覗き込んで聞いた。
「アグニ、あなた編入試験で戻ってきたのよね?こんなギリギリで大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。編入試験は面接と実技だけだから。」
「面接の対策はしてるの?」
「え?対策?」
前に座るシリウスが答えた。
『面接で社会情勢や地理とか、あと軍部のこととかを聞かれると思うよ。』
「え………そうなの?」
いやいや待って。え??
なんでそれ早くに教えてくれなかった?
俺が固まっているとシリウスがふっと笑った。
『大丈夫だよ。よほど論外な答え方をしなければね。なんのために各国を回って、僕が国ごとの特徴を教えてると思ってるの?』
「え?もしかして面接対策でこの1年色々な国に行ったのか?」
『そうだよ?』
「そうなの?!!」
明かされる衝撃の事実。てっきりシリウスに振り回されてるのかと思ってたけど、なんと俺のための諸国巡りだったらしい。シーラがシリウスに問う。
「アグニに実技の話はしたの?」
『ああ、まだだね。今からする。』
「え?次はなんなんですか?」
その時、クルトがシリウスに包み紙を渡した。シリウスはそれを開け、中の物を俺に差し出してきた。
『アグニ、これ。耳に付けといて。』
「ん?あれ?ピアス?」
渡されたのは、少し垂れ下がるくらいの長さで作られたピアスだった。黒い半透明の芸石の中に金色の芸石が入っている。とても美しくて、綺麗だった。
『これはね、君専用の芸石だ。このピアスを通して芸を出すと、芸が10分の1になる。』
「抑えるの?!増やすんじゃなくて?!」
芸石は芸をより効率的に行ったり、芸を手助けするのに使う物だ。なのにその逆…芸を抑えるための芸石など聞いたこともない。
『君はこれから、この芸石を使って芸をしなさい。実技もこれを付けてね。』
「はあ?!!!!!」
いやいや落ちるわ!!!!
さすがにそんなのしたら無理だって!
しかしシリウスは、にや~っと笑いながら言う。
『君がきちんと全力でやればいいんじゃない?』
「まじでこれ付けて試験受けさせるのかよ?!」
隣に座っているシーラが俺の膝に手を置く。
「アグニ、実技は芸と武術両方見るはずよ。武術に芸石は関係ないわ。芸を失敗したらそっちで挽回しなさい。それと芸の威力が弱くなる分、精度を上げなさい。」
「精度?」
「ええ。的があったら中央を狙い、美しさなら誰もが魅了するものを出す。防御では一切の隙をみせないように。わかった?」
「うん………わかった……」
シーラもこの芸石を付けることは覆さないつもりだってことはわかった。
『まだ数日あるから、その間によくその芸石を自分に慣れさせておきなさい。』
「……わかった。」
・・・・・・
その後の数日間はシーラとともに芸石慣れに行い、ハーロー洋服店で編入試験の時に着る洋服を買い、フォード公国で狩った芸獣の殻を売ったり、面接での振る舞い方を学んだりした。
そして、編入試験の日。
「いい?アグニ。落ち着いて、礼儀良くね?」
「大丈夫だよシーラ。頑張ってくる。」
『ちゃんと芸石付けた?』
「ちゃんと両耳に付いてる。」
『そう。じゃあ頑張ってね。』
「ああ、行ってくる!!」
「『 行ってらっしゃ〜い 』」
愛剣、芸石、大量の推薦状を持って森の家を出た。
第1学院まで馬車で送ってくれたクルトに礼を言い、巨大な赤茶色の煉瓦門を潜る。
こっから先は1人での戦いだ。
・・・・・・
「アグニさん、ですか?」
「え、あ、はい!」
入ってすぐに髪を後ろにまとめたお姉さんが話しかけてきた。
「お待ちしておりました。こちらにお願いします。」
「はい!」
言われた通りお姉さんの後に続いていく。歩きながらお姉さんが説明を始める。
「まず最初に面接を行います。面接場所は応接間で行います。応接間に着きましたら、私にお持ちの推薦状を渡して下さい。」
「はい!」
「面接終了後、屋内訓練場で実技を判断します。もしお着替えが必要でしたら訓練場の建物にドレスルームがございますので、そちらにご案内します。」
「あ、着替えはないので、大丈夫です!」
「かしこまりました。……こちらです。」
お姉さんに案内された部屋に入る。
大きめの応接間で1人掛けのソファが8つもあった。けど全く狭く感じない。
室内は茶色と濃紺で統一されており、窓からは木々が見えていた。洗練された美しい部屋だった。
「こちらにおかけください。数分後、当学院の教授陣や王宮所属文官陣がいらっしゃいます。」
「わかりました!」
そこでお姉さんは俺の顔をみて、初めてニコッと笑った。
「お話会だと思って、緊張せずにね。」
「っっ!!!!」
か、かわいい……おいおいおい。嘘だろ?
合格したら会えるってことか?
まじで受かるしか選択肢なくなったなぁ!!
「あ、ありがとうございます!!!!」
何に対してのお礼なのかはわかんないがお姉さんに礼を言う。まぁお姉さんのおかげで緊張はしなくなったので、そのお礼ということにしとこう。
お姉さんが部屋から去り、数分後身なりの良い貴婦人や紳士が入ってきた。
さぁ、お姉さんのために…頑張りますか!!!!
・・・・・・
面接は本当にお話会のような感じで、度々俺の意見を聞かれたり、この事について知ってるかと問われたりする感じだった。
まぁたぶんそこまで変な答えはしなかったんだろう。
そのまま実技の試験を行うとのことで、屋内訓練場に移動した。そこには他に4人ほどいて、全部で11人もの人に武芸を見られる形になった。少し恥ずかしいけど、まぁ我慢だ。
実技のうち武術の方は、筋骨隆々な男性と木剣と真剣での打ち合い。
芸の方は………
「芸素を感じれますか?」から始まり、
「芸を出せますか?」と続き、
「もしかして解名何かできる?」と聞かれ、的を狙った精度確認や防御方法などをみられた。
………ぶっちゃけ全然大丈夫だった。
「アグニさん、本日はお疲れ様でした。数日後に合格通知をお送りしますので今日はこれでお帰りいただいて構いません。」
ん?合格通知が送られるの?もう決まったの?
言葉ミスっただけかな?
「あ、はい!どうぞ、ご検討のほどよろしくお願いします!本日は私の編入試験にお付き合い頂き、ありがとうございました!!」
最後の印象は大切だとシーラから言われたので、できる限り綺麗に腰を折り、学校を後にした。
・・・・・・
『おかえり〜どうだった?』
「おかえり、アグニ。」
「ただいま〜。んー……たぶん、大丈夫かな。あ、クルト、ありがとうね。」
シリウスとシーラに返事をして、馬車で迎えにきてくれたクルトにお礼を言う。
『へぇ?自信あるんだ?』
「んー…そんな悪い気はしなかったかな。というか芸の試験が簡単だったんだけどあれなんなんだ?」
シリウスの隣のソファに座って2人に聞くと、2人とも肩をすくめて答えた。
『今のこの帝国…第一学院での芸のレベルだよ。』
「…まじで?だって俺、芸素出せるか聞かれたぞ?」
「芸ができない人もいるでしょう?だから最初の質問はそうなのよ。」
「あぁ、そうか。けどなんか……ちょっとバカにされてるのかと思ったくらいだったよ。」
俺の言葉にシリウスが口に手を当ててわざとらしくニヤつく。
『まぁ〜随分生意気になったねぇ〜』
「いや別にそういうわけじゃないけどさ!!」
『あははっ。まぁ数日待ちましょ。結果がでるまで』
・・・
数日後、送られてきた手紙には大きくと『編入許可』と書かれていた。
来年の雷の月から、俺は帝都第1学院の2年生に編入することになった。
受かりました……
教授陣はアグニをどう思ったのでしょう?
次話はその話から入ります。