表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再創世記 ~その特徴は『天使の血筋』にあてはまらない~  作者: タナカデス
第2章 各国外遊
63/268

59 シャノンシシリー公国の特殊部隊


軍の所有する外の訓練場に直接馬車で着き、馬車を降りて……固まった。



   おおおおお?!!

   急になんだ?!びっくりした~……



そこには百人くらいもの軍人が頭を下げ、膝をついて待っていた。誰一人喋らず、動かずに。

馬車から降りた先の道を邪魔しないようにとの配慮なのか、馬車の横にずらーっと並んでいる。


一人(たぶん偉い人)が我々の近くに来て、再度膝をつく礼をした。


「大公閣下!ならびに天使の血筋様!御客人様!シャノンシシリー公国総司令官のテイレヒトと申します!!ご親臨(しんりん)頂き、恐悦至極でございます!ここからは私テイレヒトが案内させて頂きます!」



   ひぃええええ!!!固いよ!固すぎるよ!!

   俺らただの旅人だよ?!!

   こんな丁寧な挨拶なの?!!!



俺と双子は三人であわあわしていたが、さすがの大公とシリウス。まったく動じてない。


『テイレヒト、頼むぞ』


「ははーっ!!!」


大公の言葉でテイレヒトという人は立ち上がり、敬礼をした。ちなみにまだ他の人は顔も上げずに膝をついている。


シリウスがのんきな声でテイレヒトに聞いた。


『この国の特殊部隊を見たいんだけど』


シリウスの言葉にテイレヒトは少し戸惑う様子を見せ、すぐ大公の顔を確認した。大公が一つ頷くのを確認してテイレヒトははっきりとした声で言った。


「……はっ!かしこまりました!ご案内いたします!!」


『うん、よろしくね』


「あ、よろしくお願いしますぅ……」


「『よろしくお願いします……」』


「はっ!!!」


さすがのレベッカも声が小さい。レイなんかほとんど声が出てないくらいだ。それもそうだろう。こんな大勢の軍人に膝をつかれるなんてことなかったし……。




・・・




テイレヒトが案内してくれる道を行くと(俺らの両脇と後ろにめっちゃ軍人が付いてきてる…)大きな塀と門に着いた。どうやらすごく警備がされている場所っぽい。


門を数回くぐって中に入り…またもや固まった。


驚いた



そこには、芸獣に乗って地を駆ける軍人や空を飛ぶ軍人らがいたのだ。



「…はぁ?!!!!!!」


「『 っっ!!!!!!!!! 』」


双子が一瞬で戦闘態勢に入った。


それを見たシリウスがすぐに双子の肩に手を乗せた。


『大丈夫だよ。この国の「特殊部隊」……それは芸獣を自在に操る芸獣使い、「アルダ」だ。』


「……アルダ……」


思わず呆けてしまう。

「見たら殺処分」、「狩るべき対象」……帝国内でずっとそう言われ続けている芸獣を自在に操り、地面を駆け、空を飛ぶ彼らは……とても輝いていた。


大公はアルダを見ながら教えてくれた。


『彼らはね、小さい頃から軍に入隊している。13歳程度までに芸獣に勝てるほど武芸を極め、その上で芸獣との親和性が高くないと芸獣使いにはなれず、アルダには入れない。しかしもちろんそんな人材はそうそういない。一年に一人いるかどうかだ。けれど…強い!一騎当千とはまさに彼らにある言葉だと思えるよ。』


軍人の乗る芸獣が空で炎を吹き、地を駆ける芸獣が竜巻を起こした。



   すごい……すごい!すごい!!

   こんなことができるのか!!

   こんな可能性があるのか!!



「シリウスすげぇよ!!本当にすごい!なぁ!レイ、レベッカ!…あれ?どうした?」


俺が興奮気味に二人に問いかけると、二人ともじっっと黙って芸獣使い…アルダと呼ばれた部隊を見ていた。


シリウスがレイとレベッカの頭に手を当て、顔を覗き込むように話しかけた。


『二人とも、もう少し近くで見てみようか?』


「………いいの?」


『うん!見たい…!見たい!!お願いします!!』


『あははっ。シャノン、いい?』


『ああ、もちろんだよ。テイレヒト。』


「はっ!!!こちらへお願いいたします。」


テイレヒトに案内され、芸獣使いの方へ近づいた。


するとすぐに芸獣も芸獣使いも訓練場に並んだ。驚くことに芸獣が大人しく座っているのだ。

双子がその様子を見て目を輝かせている。


芸獣使い、アルダに所属しているであろう若めの女性軍人が一人、元気そうな笑顔でこちらに来た。そして敬礼をして、大きな声で言った。


「大公閣下に敬礼!!」


その言葉で他の芸獣使いも皆敬礼をした。大公も敬礼を返し、その女性に話しかけた。


『客人を連れてきたんだ。練習を見せてくれるかい?』


「はい!もちろん喜んで!」


その女性は明るい笑顔で返事をし、自身の芸獣(羽のあるトカゲみたいなの)にヒラリとまたがると、他の芸獣使いに告げた。


「アルダ!!『中央攻撃陣形』!!!」


「『「 おう!!! 」』」


他の軍人が皆元気よく答える。そして皆がそれぞれの芸獣に乗り、地上を走る者、空を飛ぶ者で『中央に攻撃対象を囲んだ時の陣形』になった。


それは圧巻の演技だった。


物凄く格好良かった。



「……すげぇ……」


『ふふっ、そうでしょう?この国だけなんだ。芸獣使いがいるのは。』


「へぇ~!!そうなんだ~!猶更格好いいなぁ!!」


先ほどの女性が乗った芸獣が陣形の中央に氷の芸を出した。そしてそれを合図に陣形が解消された。


先ほどの女性が再び空から降りてきて、俺たちに敬礼をした。


『ご苦労。』


「はっ!ありがとうございます!」


シリウスがその女性に話しかけた。


『ねぇねぇ。君たちの芸獣って他の人は乗れない?』


その女性は変わらず満点の笑顔でシリウスに答えた。


「もちろん乗れます!芸獣使いと同乗する形になりますが…」


『そう。じゃあさ、この二人を乗せてやってくれないかな?』


そう言ってシリウスがレイとレベッカの背中を押した。二人ともびっくりした顔でシリウスを見上げる。しかしすぐにそのお姉さんが元気な笑顔で答えてくれた。


「もちろんです!!二人とも別々の芸獣でよろしいですか?」


『うん。レイ、レベッカ、大丈夫だよね?』


シリウスが二人に聞くと、二人とも少し不安そうに、けれども心なしか嬉しそうな顔でシリウスを見続けていた。


「レイ、レベッカ。せっかくだから行ってこいよ!今しか乗れないぞ?」


俺がそう言うと、二人とも俺の方を見て、コクンと頷いた。


「行く。」


『わ、わたしも!行ってきます!』


「おう!気を付けてな!」


『いってらっしゃーい』


レベッカの方には先ほどのお姉さんが、レイの方には別の軍人が一緒に乗った。そして二匹の芸獣はぴったりのタイミングで共に空へと飛んでいった。


けっこう上空の方まで行ったようだ。空を駆ける姿を見続けていたいのに陽の光が邪魔をする。


けど二人の楽しそうな声が聞こえて、嬉しくなった。




・・・



数分後に二人とも地上に戻ってきた。

二人は芸獣から降りると、乗せてくれた芸獣使いにそれぞれお礼をして、その後こちらにもうダッシュしてきた。


「二人とも!!どう?楽しかった??」


「『 楽しかった!!!! 』」


「おー!そうかぁ!!!」


二人とも目がキラキラしてる。興奮覚めぬようで口々に感想を伝えてくれた。すると先ほどのお姉さんが再びこちらに来て、俺たちに教えてくれた。


「二人ともとても安定して乗ってくれましたね。芸獣も安心したようで、気持ちよく空を飛んでくれました。二人とも芸獣との親和性が高いのかもしれませんね!」


「へぇ~だってさ、二人とも!嬉しいなぁ!」


『うん!!!!』


「……うん。」



   あれ?レイが元気ないな…

   どうしたんだろう?疲れたのかな?



俺がレイに質問しようとした時、シリウスが言った。


『よし!じゃあそろそろ帰ろうか!長々とお邪魔するのも悪いしね!』


「お?お、おう。」


『なんだシリウス??もう少しここにいてもいいのだぞ?私の仕事をさぼる口実になってくれよ』


『あっはは。ちょっと何言ってんのかわかんない』


『おい!?冷たいなぁ~っはは!』


『明日の昼は?昼食』


『おお!明日も来るか!じゃあ昼食は天気が良かったら庭園に用意させよう。他の三人も明日また来てくれるかい?』


「はい!もちろんです!」


『はい!!』


「…はい。」


『そうかそうか!では今日はもう戻るとしよう。邪魔をしたな』


大公の言葉で、その女性が笑顔で再び敬礼をした。


「いえいえ!大公閣下、お客人の皆さま、良い夜を!」





そうして俺たちは、シリウスの家に帰ったのだった。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ