40 シド公国
ちょっと更新遅れました。
一段落ついたので、また更新していきます!
シド公国は帝国の北西部に位置し、余裕を持った馬車の旅で帝都からは2週間程度を要する。
国土の北部が海に面している。そして、その海の先にある島に蛮族が住んでいる。
「その蛮族の別称が『戦闘民族』?」
『まぁ蔑称って言った方がいいかもね。「戦闘しかできない、荒れ狂いども」みたいな意味でつけらた名前だから』
「へぇ。その人らは自身たちをなんて呼んでんだ?」
『なんだっけな……「黒の一族」とかだったかな。彼らは全員、髪も目も黒色なんだよ』
「へぇ~。…疑問なんだけど、どうして人によって髪とか目とかの色が違うんだ?」
『うーんと……天空人の血が濃いほど色素が薄いと思われてるよね』
「実際そうなのか?けど天空人の血を継いでるのは『天使の血筋』しかいないんだから、血が濃いとかないだろ?」
『……うーんと……まぁそうだけど。うーんと……まぁ。うん。』
「え、なんでそんな答え方??」
『いやぁ。まぁ。そのうちわかるよ。……間違いではないって。』
「は?どういうこと?」
『まぁいいから!とりあえずシドに向かいますよ!』
実は今、シャルルの街を出たばっか。
これから移動です。
『はい、ここで新しい移動方法を教えたいと思います!』
「ほお。なんですか?」
『風の芸で足を速くする方法はもうできるでしょ?それに加えて、身体強化で足を強化します!そうすると、爆発的に移動が速くなります!』
「うっわ~疲れそうですねぇ!」
『けど、急いだほうがいいでしょ?』
そう。もしかしたら人の命がかかってる。
・・・・・・かもしれない。
それが本当かどうかを確認するために行くのだ。
「そうだな…わかった!急ごう!」
『おー!!』
俺らは風の芸に加えて足を身体強化し、それこそ爆発的な速度で走っていく。
芸獣を薙ぎつつ走りまくる。
2日走りまくって、3日目の午後にシド公国の首都、「シド」に着いた。
「はぁ、はぁ、はぁ……死ぬ……」
『ちょっと~たかだか2日程度で何言ってんだよ~。そんなんじゃいざという時死んじゃうよ?』
「はぁ、はぁ、はぁ ま、まじで?」
世の中そんなにレベルが高いのか?!
「けど、とりあえずついたな。街の雰囲気も殺気立ってないし…まだ事は起こらなそうだな」
『そうだね。とりあえず軍の駐屯地にでも行って何か仕事がないか聞いてみようか』
「おう!」
シド公国の首都シドは、整備の行き届いた大きい街で市民の服も質が良く、この国が裕福であることが伺える。また珍しいことに漁業も盛んらしく(この世界は海の芸獣のせいであまり漁業は行われていない)活気もある。
街はオレンジ色の屋根で統一されていて、壁の色は白、黄、薄紅色など様々で歩いていて楽しい。
そんな街の中を歩き、駐屯地の前についた。
「で、ここからどうするの?」
『ん~どうしようかな。とりあえず、何か募集かけてないか入って見てみよう』
一階は市民も入れる場所で、手続き等を行ったり軍の募集や合格者が張り出されたりするらしい。
『ん~何もないかな?』
「…あ、これは?傭兵?を雑用で募集してるっぽいけど」
『あ、ほんとだ。これしかないね。よし、応募したいって言いに行くよ!』
「おう!」
奥にある窓口に行き、軍服を着ているお兄さんに話しかける。
「あの~すいません。あそこにある傭兵募集に志願したいです。」
「あぁ、あれか。あれ今日までの募集なんですよ。ギリギリでしたね。明日さっそくテストがありますけどいいですね?」
「テスト?」
「そうです。使えない人は雇えないんでね。明日、国軍と一緒に訓練に出てもらいます。それで判断して、採用を決めます。」
「あ、そうなんですね。わかりました。」
「お二人でいいですか?」
『あ、一人です。』
「え??!」
シリウスが笑顔でそう答え、俺は急いで振り返る。
「おい!お前はどうすんだよ!」
『大丈夫だから!ちょっと待って!』
そういうとシリウスはずいと前に出て、窓口のお兄さんに綺麗な笑顔で言う。
『私、傭兵ではないのですけど…傭兵と同じ期間、治癒師として雇ってもらえませんか?』
治癒師?治癒専門の人?
それ需要あるのか?
『あぁ、もちろん他の芸もできますよ。なので芸師としてもお役に立てるかと思います』
シリウスがキラキラした笑顔でそう告げると、窓口のお兄さんは顔を赤くして急いで立ち上がった。
「な、なんとか言ってきます!ちょっと待っててください!!!」
『ありがと~』
・・・
「おい!ちょっと待て!お前傭兵にならないのかよ!」
『うん。やだよそんなめんどいの。』
「で、その代わりに治癒師??」
『うん!その方がいいかなって。治癒師なら、教会の服着てもおかしくないしね』
「どういうこと?教会の服着たいのか?」
『教会の服が今着てる民族衣装に似てて、髪を隠せるやつなの。』
あぁ!そういうこと!
「目は?どうするんだ?」
『目の色は…まぁ君と同じ色だし、大丈夫でしょう。あとは~あ~なんかてきとうに芸石持っとかないとな。』
「あぁ!たしかに!今日のうちに買っとなかきゃな」
暫くすると明らかに幹部クラスの軍人が現れ、その後ろに窓口のお兄さんが付いて帰ってきた。
そしてその幹部クラスっぽい、険しい顔の中年の軍人がシリウスに問う。
「あなたか?治癒師だというのは」
『はい。そうです』
シリウスが花の咲くような笑顔で返すが、その軍人は笑うでもなく再び問いかける。
「本当か?」
するとシリウスは首をかしげて微笑んだ後、目にも止まらぬ速さで自分の腕を切りつけた。
その軍人も後ろのお兄さんも瞬間的な出来事に驚いて目を見張る。しかしその時にはすでに短剣は収められており、シリウスの腕から血が出始めた。
『 ギフト 治癒 』
その言葉でシリウスの腕に金色の芸素が漂い、傷を覆っていき、ものの数秒でシリウスの腕は元通りに戻った。
『本当です。』
シリウスが再び、優しく微笑む。
ここでたぶん落ちた。
厳しい顔から力が抜け、でれっとした顔に変わった。
「あ、ああ。では、こちらで書類の手続きを。明日から是非お願いします。あ、あと、治癒師様は傭兵たちとは別の建物での滞在になりますのでね、そちらの手続きも。おい。」
「あ、はい!!!」
その軍人に呼びかけられたお兄さんが急いで書類の用意をし始めた。
そして軍人は再び険しい顔になり、俺をみる。
「君は傭兵志望だね?」
「あ、はい。そうです」
「なら明日、またここに来なさい。治癒師様がいるからといって甘くはしないからな」
「はい!!頑張ります!」
『ありがとうございます』
「う、うむ。では。」
軍人はたぶん本当にシリウスに落ちた。
こんなにわかりやすい人もいるのか…
シリウスの手続きと俺の申し込みを終え、芸石を買い今日の宿に帰った。
明日は朝から軍との合同訓練だ。
なんか緊張してきた…眠れるかな…
なんてことを考えながらも、俺は気合十分で眠りについた。
シドの街はイメージとしてはクロアチアのドブロブニクです。
行ったことはないので行ってみたいっす…