35 軍部と武芸大会観戦
あぁ~コンタクトがなくてメガネがありません。
詰みです。
シリウスと共に再び馬車で2時間
ひたすら南の方に行き続け帝都の競技場へと向かう。
「帝都は…馬車がないと移動しづらいな…」
『忘れがちだけどそこそこの大きさだからねぇ』
馬車から降りると、溢れんばかりの人混みだった。
大会と同時に外ではお祭りが開催されているらしく、音楽が聞こえ、露店が並んでいた。
『ここで何か少し食べる物買ってこうよ。お酒は?』
「飲みたいけど、何があるんだ?」
『なんでもあるよ。麦も米も葡萄も…あっちには他の果実酒もあるね。』
「なんだこの街。酒飲みだな。」
『年齢に関係なく飲んでいいからねぇ』
そうなのか。けどそりゃそうか。
16歳程度の外見でお酒買えてるんだもんな。
「んーじゃあ飲んだことないから、米かな。」
『ほぉ〜なかなか……最初から飛ばしますなぁ』
「はぁ?!まってそうなの?じゃ変えるよ」
『いやいや、いいよ。米にしよ!行こう!』
なかなかって……味やばいのかな。
けど売れてそうだしな。
米のお酒をそれぞれ一杯ずつ、その他にも白シチューパンや鶏のハーブ唐揚げや、ピリ辛ごぼうスティックなどをバカ買いし、競技場入り口へと向かう。
・・・・・・
「うっわーー……すっげぇ!!!」
競技場はどデカかった。
そして何千にもなる観客がいた。
『この競技場、コロッセウムっていう名前が付いてて世界で一番大きいんだよ』
「へぇ〜!!コロッセウムかぁ…流石だなぁ!」
主観ではシリアドネの競技場の2倍はありそう
なのに客席はほぼ満員のような混み具合だ。
『席どこ空いてるかな?あ、あそこ空いてる。』
2席空いてるところを見つけて急いで行き、シリウス(民族衣装)が席の隣の人に話しかけた。
『すいません、お兄さん。こちら座っても?』
「えっ……あぁはいぃ!!!!どうぞどうぞ!!!」
おぉ〜さすがシリウスさん。
「ありがとうございます。お邪魔します〜」
「えっ…あぁはい」
おぉ〜俺には冷たいな兄さん。
・・・・・・
大会はもう中盤に差し掛かってて、今も誰かが戦ってた。
『アグニ、どう見える?』
「んー…なんか…本当に目の前の人しか見てない戦い方だな…」
とても危うい。ちょっとフェイントを入ればすぐ勝てそう。
『ははっそうだね。まだ闘い慣れてないんだよ。この大会に出れるのは帝都軍に入軍してから5年以内までの新人だけだから。』
「あ、そうなの?なんで?」
『この大会は「お披露目」なんだよ。新しく帝都軍に入った人を見せるのが目的なの』
「へぇ…それは街の人を安心させるために?」
『まぁそうだね。あとは貴族らに対してかな。この大会で目ぼしい軍人を自分の家の騎士に雇いたいってスカウトする、とかね』
ほぉ!なるほどそう言う働き口もあるのか!
「実際、軍と貴族の騎士だとどっちの方が働いてて良いの?」
『ん〜……軍の下っ端よりは貴族の屋敷の方がいいけど、幹部レベルなら軍の方がいいかな〜』
「あーなるほどねぇ…一長一短なのね…」
世の中上手いこといかねぇんだなぁと思いながら米のお酒を飲む。…慣れない味だけど意外と爽やかで甘くてイケることが判明した。
『まぁ貴族の家の大きさにもよるね。けど貴族の騎士なら礼儀とか、常に良くないといけないし…色々大変だよ。だけど、良いステータスになるし。本当に一長一短。』
あぁ〜なるほどねぇ〜
なんか見えたわ 世の中。
そんなことを話しつつ決勝戦になった。
決勝は前回優勝者との戦いになる。
今回決勝に進出したのは入隊5年目の男性らしい。
(決勝前に軽くその人の自己紹介がアナウンスされた)
一方、
前回優勝者は明るめの茶髪に茶色の目の美形男子。
会場内のお姉様方が一気に身を乗り出す。
うっわ美形!!ありゃあ世で言う美形だ!
席を隣のお兄さんが教えてくれた。
「あの人なぁ、一昨年入隊したばっかなのに去年優勝したんだよ。しかもあの顔であの若さで…現 帝都軍総司令官様の息子なんだ。しかもな、まだ婚約者も恋人もいねぇんだってよ。まだ新人だからっつって自分で断ってんだってさ。」
ほぉ~~~それは……モテるな。
そんな人おるんか。
ところで、恋人かぁ。
俺の今までの人生にはいなかったなぁ……
そして見事に前回優勝者は、また優勝したのだった。
・・・・・・
大会が終了し、再び露店を見ていた。
うん。帝都軍のレベルは高かった。
優勝したお兄さんとか、結構なものだった。
『ねぇ、わかったでしょう?みんなケガしても「治癒」はしないって』
「あー…それは、はい。」
『しかもみんな芸を出すのは2つ…多くても3つ。つまり君みたいにどの種類の芸も出せるわけではないんだよ。』
そう。今回の大会は武芸大会だった。なのでもちろん芸も出していた。けれど…大変失礼だけど芸は上手くなかった。解名は決勝の2人しか出してなかったし。
「なぁシリウス、なんでみんな芸ができないんだ?」
正直、芸を練習してない感が否めなかった。軍人なのに。
するとシリウスは皮肉気な顔で笑った。
『この世界は…平和なんだよ? 芸を練習する必要もないくらいに。』
「平和なの?」
『ただ一人の皇帝の下、全ての民が集まり国家間の戦争も起こらない。たまに現れる凶悪な芸獣を倒せば、すぐにまた平和な世界。その世の中で、芸は日常生活を豊かにする方に発展し、人は戦い方を忘れていった。』
滑らかにそう説明するシリウスは、どこかこの世を小馬鹿にしてそうだった。
『君と僕が本気を出せば世界が手に入るかもね』
・・・・・・・
「あ、この店は?どう?」
『うーん。いいよ。入ろう』
夕飯の場所を探しつつ街を散策し、レトロな看板の酒場に目を付けて入った。
中は温かい雰囲気で、ほとんど満席状態。
皆が酒を飲み、騒いでいた。
「いらっしゃい!何名様?2人?」
「あ、はい。2人です。」
「そ!じゃこっち座って!」
元気のよいお姉さんに案内された席に座り、シリウスに話しかける。
「このお店いいな!料理上手いかな~楽しみ~」
『……あ。ああ、そうだね。』
「? なに?どうした?」
シリウスが話を聞き逃すのなんて珍しい。
しかもずっと集中した顔してる。
『………今、盗み聞きしてるの。』
「はぁ?!お前っ…なんか少し真面目な顔してると思ったらそれかよ!!」
呆れるわ!!なんだそりゃ!
大概にせぇ!
俺がキレ気味に言うと、シリウスが噴き出しながら答えた。
『くくっ…ちがっちがう…くくくっ。確かに今の言い方は僕が悪かった。ふふっ…』
「は?どういうことだよ?」
シリウスは周りを見渡しながら言った。
『こういう所が一番いい情報収集の場なんだよ。仕事の話とかしててさ。帝都以外の情報も手に入るんだよ。……あ、例えば今あっちの人がシリアドネの武術大会のこと話してる。この前のやつ、見に行ってたのかもね。』
シリウスがそう言って指さした人は、そこそこ遠い席にいる2人組の男性だった。
およそではないがこのうるさい店内であっちの人の話は聞こえない。
「…いや、聞こえねぇよ。どんな耳してんだよ」
『あ、ちょうどいいから「身体強化」の芸の練習しようか?』
目は悪いですが今日はもう一つ絶対上げます。
ほんと視力!!!!カムバック!!!!!




