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再創世記 ~その特徴は『天使の血筋』にあてはまらない~  作者: タナカデス
第1章 名はアグニ
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30 恐怖論


怖いと思う瞬間とはいつなのだろう。


これまでの俺の人生にも、もちろん怖いと思う瞬間はあった。



例えば初めて鍛冶を父から教わった時、

火の熱を肌で感じて「火傷するのではないか」と思い怖かった。



例えばシリウスと出会った森の滝で落ちた時、

「落ちた先にある滝つぼで全身を打ち付けて死ぬほど痛い思いをした後に死ぬのではないか」と思い怖かった。



例えば山賊と戦った時、「ここで斬られて殺されてしまうのではないか」と思い怖かった。



考えると俺にとっての恐怖とは、

「今後予想される最悪な状況の一歩手前に今現在立っていることに対しての恐怖」なのかもしれない。


いや、きっとほとんどの人がそうなのだろう。



多くのことに恐怖を感じないのは、

一歩手前まで切羽詰まった状況に立つことが少ないから。

それと、単なる「最悪」を想像できない想像力の欠如だ。



実際そうだろう。


街の道を歩いていて、最悪の状況-例えば上から大きい岩が落ちてくる-なんてことを考え続け、常に恐怖している人間なんていないわけで。



しかしそうした状況が限りなくゼロに近いことだとしても、それを想定できないのは想像力の欠如、もしくは怠慢以外の何物でもない。



だからこそ俺は今まで味わったことのない…いや、そんな生ぬるい言い方をしたら失礼だな。


心の底から湧き出て、一生深く根付くような絶対的な恐怖を感じたことがなかった。



先ほど言ったように、恐怖とは想定し得る「最悪」の一歩手前にいることがわかったときに感じる。


つまりは、ある意味自分自身を客観的に捉え、その場の最悪とは何かを考える冷静さと時間的余裕が無ければなりたたない。




・・・・



シリウスは攻撃していなかった。


いや、正確にいうならば、いつもと何も変わらない。

「最悪の状況」と直接結び付けられるような行動ではなかった。




俺がわずかに動いて、一瞬の思考の停滞。

その直後、気が付いた時にはシリウスに起こされていた。



殺気もなく、恐怖もなく、予感もなく・・・


けど俺は、確実に今の間に死ねた。



起こされた後、思考が途切れていたことを認識した。

やっと頭が追いついた時、かつてないほど、恐ろしいと感じた。



自身の認識・想像していない中での「死」という「絶対的な最悪」を、後々になってから感じている現状に恐怖した。



シリウスは俺を起こしながら、微笑んでいる。



・・・確実に、今こいつに生(・)か(・)さ(・)れ(・)た(・)んだ。

   こいつは俺を殺すことができた。

   何もせず、一瞬で。



   その絶対的な力の差




けどな 

俺、最近になって漸く自分の性格がわかってきたんだ



今お前に、


「最高の恐怖」を与えてくれたことに 感謝してるよ



・・・



「なぁ、さっきの芸…だよな?」


シリウスに起こされた後、その日はもう移動せず、川の近くで野宿をしようということになった。エメルさんがくれた花の薬用茶をシリウスが淹れ、焼いてる最中の鴨の肉と野菜串を見ながら聞いた。



『ああそうだよ』


「解名(かいな)、だよな?」


『うんそうだね』


「…お前いつ『ギフト』と芸の名前言った?」


『君が一瞬川に目をやった時に「ギフト」は言っていて、芸の名は君と同時に』


「……まじか。お前からは絶対目を離してないと思ってたのに…」



   ぶっちゃけ落ちこむ。

   思った以上に自分の行動が掴めてない。



俺が大きくため息をついて落ち込んでいると、串焼きをひっくり返しながらシリウスが言う。


『無意識の行動はよくあることだよ。それが命取りにもなるけど、逆に命を助けたりもする。だから制御しすぎることは考えちゃだめだよ』



「…なぁ、なんて名前の芸?」


『 色 鷹(しき たか) 』


 色鷹(しきたか)…


 鷹が食べ物を奪うように、景色の色を奪っていく



「俺にもできる?」


そう聞いた時、シリウスが焼き終わった野菜串を渡してきた。



『まだ早い。芸にもう少し慣れてからかな。この芸は、感じた通り強力だから下手なうちにやってしまうと自分にも降りかかってくる。けど自分でできるようになれば、もう人の色鷹(しきたか)にはかからないから。』



「へぇ そうなんだ。あぁ~まだまだ先は長いな~」


もらった串を食べながら言うと、シリウスは薄く笑って


『ふふっ…それを感じてもらえたならやったかいがあったというものだ。』


「正直お前を超すことなんて一生できないんだろうなー」


『え?それは困るな。超してもらわないと』


「え、なんでだよ。」


『超してもらう可能性があるから教えてるのに…』


焼き終わった肉の串を渡されながらそう言われる。



   弟子に過度な期待持ちすぎだろ…



俺はきちんとシリウスに向き直って告げる。


「俺な、頑張るよ。お前が超してほしいってんなら超してやるよ。お前の芸全部盗んで、俺が最強になってやるよ。」



親指を上に立てて、シリウスに突き出す。


その行動を見てシリウスは同じポーズを取った。



『頼むよ。アグニさん』




・・・・・・


シメリア公国領にある巨大な森


実はこの森も竜ちゃんがいた森と同じく、芸獣がでにくい。


けれどあまり人は立ち入らないのだという。


迷いの森とも言われ、一度誤って奥まで入ってしまうともう出てこれなくなるのだと言われている。


実際この森に入って行方不明となった旅人や冒険者は数知れず。



「なぁー…なんでそんなとこ入るんだよー…?」


『一番お薦めの素材があるからだよ。君のためだよ?』


   そんなこと言われてもなぁ

   そんな死にますみたいなところに入りたくは…


ぶつぶつと文句を言っていると、前を歩くシリウスが振り返って言う。



『あとね、君に見せたいものがあるんだ』


「え?なに?見せたいものって」


『バカなの?見せたいんだから今言うわけないでしょ?』



   うっわ。うっわ。でました。

   そのバカな子見るみたいな目

   やめてください泣きますよ。



迷いの森なんて言われているのにシリウスは迷う動作を見せず、奥へ奥へと進んでゆく。


この森によほど慣れてないとこのペースでは進めないだろう。


   え、でもどうしよう。

   シリウスが盛大に勘違いして歩いてたら。

   そしたらもう終わりじゃん…!


その可能性に気づき始めた俺は焦りながら


「なぁなぁ!ほんとにこっちであってる??大丈夫?!」


『…あってるよ。全然信じてないじゃん』


   いやぁだって、ここ俺知らんし。

   お前が間違ってたら誰も正す人いないし。



『大丈夫だから。時期にわかるよ。迎えがくるから』


「…うん?」





新しい芸出てきました。

これ強すぎん?って思いますよね。

けど述べた通り、自分がマスターしちゃえばもうかからなくなるって短所があるんですね。

んじゃ誰がマスターできてんだよって話ですけどね。

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