253 2度目の学院交流:第2学院①
みんながコルネリウスの回復を祝っている。
それに対してコルネリウスも笑顔でお礼を言っている。なんとも平和で幸せな空間だ。
ただ、この幸せの中には『異質』が混ざっている。
『お久しぶりですね、シルヴィア様、シュネイ様。第3学院の交流会に参加できず申し訳ございません。コルネリウス・リシュアール、本日より復帰いたします。改めて、よろしくお願いいたしますね。』
その『異質』は、コルネリウスから強く感じた。
「コル、まだ……悪夢を見るか?」
『アグニさん?どうしたのです?』
シルヴィアが怪訝な顔つきで俺にそう問いかける。周りのみんなも、俺の質問の意図がわからず不思議そうな顔をしている。
そりゃあそうだろう。こんなに幸せな空間で、俺だけが笑っていないのだから。
『……ああ、悪夢ですか。』
コルネリウスは、平然と答えた。
『お見舞いにきてくださったあの時の、一度だけですよ。』
・・・であれば、
お前から感じる異質な芸素はなんだ?
って、その場で聞いとけばよかったんだ。
・・・
第2学院の学生たちがやってきた。
彼らはキョロキョロと校舎を見ながら歩いていた。去年の俺も同じように第2学院の中を歩いたな。
『……やっぱ第1学院ってお金持ちなんだな。』
「……ここに花瓶置く必要あったか?」
「……おいここ見ろ。窓枠がオシャレだ。」
『…カーペットがふかふかして歩きにくいな。』
皆ほどほどに文句を言いつつ、ちゃんと芸素で興奮してるのが伝わるから可愛らしい。
今年の第2学院の総長はオズムンドだ。
オズムンドとは交流前のパーティーで既に会って喋っている。
「よっす、オズムンド!元気?」
「まぁ普通にそこそこ。」
オズムンドはいつも通りの淡白な返しをした。けれどちゃんと答えるのがオズムンドの最高に可愛いところだ。態度の変わらないところもいい。
「リカルドさんが、よろしくって言ってました。」
「おおそうか!!」
それは「第2学院をよろしく」なのか、それとも「オズムンドをよろしく」なのか。まぁどっちもだろうな。
第2学院との交流会の内容は基本的に普通だ。第1学院の授業を体験してもらいつつ、午後は各自研究会に参加する。
「今年は何か変なことしないんですか?」
オズムンドは少し不貞腐れた顔でそう聞いてきた。
去年『芸獣ごっこ』をしたことを指しているのだろう。
「ん~特殊なことは何も考えてないな〜…。あ!ならさ、第2学院の生徒に校舎内の地図を覚えてもらうために、陣地取りゲームをしないか?」
「陣地取りゲーム?……ルールは?」
「うーん、そうだなぁ…」
俺はその場で考えたルールを口にしてみた。
「色が違う旗を校舎の色々なところに置いて、そんでその旗と同じ色の印がある陣地を探して、先に見つけて置いたチームの陣地になる、とか?」
「黄色の旗を見つけたら黄色の印がある場所を探さなきゃいけないってことですか?」
「そう!第1学院の生徒も印のある場所はわからないから、ある程度平等だろ?あ、それか第1と第2で混合チームにするか。」
「混合にしましょう。他学院の知り合いを作った方がいい。」
へぇ意外。オズムンドもそんなこと思うんだ。
「けどそれだけじゃあつまらないかなぁ……。旗を奪取できるようにする、とか加えるか?」
「……それ、学院内で戦闘するってことですか。校舎壊れますよ。」
「芸は無しで、体術か武術だけで!」
オズムンドは少し考えて頷いた。
「それで行きましょう。」
「うおっしゃ!!」
ほとんどその場のノリだけで本日の放課後の催しが決まった。
俺とシルヴィアとオズムンドは監視役 兼 旗と印を置く係をする。そのため陣地取り合戦には参加しないことになった。
そして放課後
各班4〜5人で第1第2混合チームを作って、それを赤・青・紫・緑の4グループに振り分けた。
「一番多く陣地を得たグループは優勝商品として……優勝商品として……」
やばい。何も考えてなかった。
優勝商品何にしよう!?
『優勝商品として、今年のシルヴィア公国の社交パーティーにグループ全員をご招待いたします。』
『『「「「え?!!」」」』』
全員が驚いていた。
まさかそんな大層なご褒美を貰えるだなんて……
そういえば昨年からシルヴィア公国はシルヴィア大公主催ではなく、公女であるシルヴィアが主催することになっている。だから今のシルヴィアには招待者を選ぶ権利があるけど……。
「い、いいのか…?」
俺のオドオドとした質問にシルヴィアは丁寧に頷いた。
『二言はありません。優勝者全員を、シルヴィア公国の社交パーティーへご招待いたします。』
『『「「おおおおお〜〜〜!」」』』
これはアツい!!
昨年はシルヴィアの初主催ということで、お昼の時間帯にガーデンパーティーをした。
つまり今年が、シルヴィアが初めて主催する正式な社交パーティーとなる!!
当代シルヴィア最初の社交パーティー……その価値は計り知れないな!
「社交パーティー!?お、俺らも!?」
『一生無縁だと思ってたぁぁぁ!!!』
「まじで絶対優勝する!!」
第2学院の生徒の中には社交パーティーに出たことのないものも多い。しかし、将来的にも経験的にも、絶対参加した方がいいということは皆わかっている。
「よぉし!とびきりの優勝賞品が決まったところで、ゲームスタートだ!!!」
皆のやる気は最大級に高まった。
最高の交流会が始まった。
庭には二羽鶏がいる(いません)




