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再創世記 ~その特徴は『天使の血筋』にあてはまらない~  作者: タナカデス
第7章 第3学年
258/281

244 デボラと久しぶりの再会

年末やん。

ちょっとまってよ年末やん。



「な、な、な、な…!!!!!」


「よっすデボラ!久しぶり!!ごめんな急に!」


「本当に急よ!?!?!」


デボラの家は知らなかったけど、芸素探知すれば居場所はわかる。だから家なんてすぐわかる。


デボラんちは意外と森の家から近かく、徒歩で30分ほどだった。デボラの住んでる家は赤煉瓦の細長い家で、屋根裏を入れて4階建てに見える。


「デボラの部屋はどこら辺なんだ?」


「ちょっと?!答えないわよ?!!!」


「え!なんで?」


そんな変な質問したか?

普通に部屋の場所を聞いただけだぞ…?


「アグニあんたねぇ!!やっていいこととダメなことがあるの!!!住所教えてもないのに女の子の家に勝手に来るのはやっちゃダメなこと!!!」


「え!!そうなの!!!??」


「そして部屋の場所を聞くのは……なんか最早気持ちが悪いわよ!!!!」


「きぃ?!?!?!?!」 


き、気持ち悪い…!!!!

黒髪だから気持ち悪いと言われたことはあれど、内面的に言われたことはなかった…!!

この言葉って内面に対してだとこんなにダメージが大きいのか…!!!!


「ぐふっ……ごめん…なんだけど、いまいちなんでだめなのかわかんない……」


「狂気じみててストーカー気質っぽくて気持ちが悪いからよ!!!」


「ぐふぅ…!!!!」


だめだ…なんでかわかんない……


「え、例えば公爵家の馬車とかで迎えに来てたら……?それも気持ち悪いのか…?」


「それはなんか……気持ち悪くないわ…。というかむしろ怖い。うん、怖すぎる!!」



   なぜだ!!

   仕組みは一緒じゃないか!?

   徒歩がだめなのか?!



「まぁ、私はアグニが優しい人で、単純に善意で迎えに来たんだなとわかるけども!!でも他の人にやっちゃだめよ!!!」


貴族の文化だと家まで迎えにいって一緒にパーティーに行くって習ったのに……!あ、それは事前にそうするって伝えてたからか…!!


「じゃ、じゃあさ……家まで迎えにいくねって手紙で伝えてたら…平気だった……?」


デボラは少し悩んでから頷いた。


「そうね、それなら平気ね。けどあんた、もう『アグニ』じゃないんでしょ?貴族が徒歩で迎えに来たら、やっぱ意味不明だからビビるわ。」


おっけおっけ。

つまり事前承諾して馬車で迎え行くなら大丈夫ってことね。それ以外は基本的に気持ちが悪いと!……ぐふぅ!!





・・・





会話でダメージを喰らった後、俺はその辺で馬車を借りてデボラと一緒に公爵邸に帰っていった。

馬車の中では色々な話をした。

帝都第5部隊の話や学内の恋愛話とかも。デボラは最近、暇な時に日雇いの護衛バイトをしているらしい。


「じゃあまだどこで働くかは決めてないんだ?」


「ええ。秋ごろに決まれば万々歳って感じだから、まだまだよ。今は各家の情報を集めつつ、経験を増やしてるってとこ。まぁ就職の心配はそんなないんだけどね。」


「え、そうなの?なんで?」


デボラは俺の質問に笑顔でため息をついた。


「アグニのおかげじゃな〜い!」


「え、俺??」


デボラは綺麗な笑顔を俺に向けた。


「去年の社交の狩りよ!!」


そういえば昨年のシド公国の社交で狩りがあった。その日にデボラは帝都子爵家、シド公国の辺境伯爵家、帝都男爵家、シャノンシシリー公国の辺境子爵家などなど、全部で7つの家に将来のことを問われ、その場で推薦状を貰ったらしい。


「そうか!じゃあいい条件のとこを最大限見極めて就職…って感じなんだな!」


「そうね!それが理想だわ!」


そんなことを話しているとすぐに公爵邸に着いた。

そして敷地に入った途端にデボラが緊張し始めた。


「なに?急などうした?」


「いやだって……ここ大きすぎるのよ……」


まぁ、帝都で一番大きな家だしな。


「お昼食べたら武芸の打ち合いしようぜ。」


俺がそう言うとデボラは少し安心した芸素を出した。


「もちろんよ!」





・・・






『やぁデボラ、久しぶりだね。』


「あら!ほんと久しぶりね。」


「シ、シリウスさま……!!シーラさま…!!!」


デボラは2人と会えるとは思っていなかったのだろう。興奮と緊張が入り混じる様子で挨拶をしていた。


「そんで、こちらがカイル。俺の従者兼友達だ!」


そう言ってカイルの方を見ると、カイルはなぜか「まじで?」という顔を俺に向けていた。そんで驚いた顔のままデボラを見ていた。


「初めまして、デボラと言います。アグニとは昨年知り合って……ってもう説明はしてるわよね?」


デボラの質問に俺は頷いた。


「うん、前に説明した。カイル、おいどうした?」


「いや、いやだって……なんか…まじで…」


カイルは頭を掻きながらデボラから目線を逸らした。その様子を見てシリウスがぷぷぶと笑った。


『あれ?あれあれ??』


「カイルはデボラみたいな子がタイプなのね?」


「んなっ?!!!!」


シーラの言葉にカイルは目を見開いて振り返り、すぐに否定した。


「いや、いやいやいや!!!!そうじゃなくて!いやまさかこんな美人だとは思わなくて!!騎士志望って聞いたからどんなゴリラ連れてくるのかと思ったら…」


『ゴリラ!!あはははははっっ!!』


シリウスはヒーヒー笑いながら床に転がった。そしてシーラは残念そうな顔をカイルに向け、デボラはキョトンとしていた。




・・・




そのあと5人で昼食を食べ、俺とデボラは武芸をしに行った。シリウスとシーラはそれぞれ出かける用事があるらしく、練習場には俺とデボラとカイルで向かった。


護衛騎士は何よりも接近戦に強くなければならない。


だからまずは武術のみで打ち合いをした。

体術、短剣術、棒術、そして長剣を使う。


「……すげぇ!デボラ強いな!!」


棒術と長剣、体術では俺のが上だが、短剣術はデボラの方が上だ。細かな剣裁きが見事だった。

デボラは汗を拭いながら笑顔で答えた。


「護衛騎士は短剣持ち歩くことが多いからね。一番練習してるもの。」


「すげぇよ、まじ即戦力だよ!!!」


デボラは嬉しそうに笑った。


「あらありがと。けど今私、第5部隊にいるでしょ?本物の軍人と比べちゃうと私なんてまだまだよ。」


「うっそだぁ~」


「ほんとよ!」


カイルからハーブ水を受け取り、休みながら2人で飲んでいた。


「あ、そうだ。軍部にいるならさ、ヴイって人を知ってるか?俺と同じくらいの身長で、同じ黒髪で、年も…若そうだったな。」


ヴイはカイルらと脱獄した時に会った軍人だ。並外れた運動神経を持ち、俺は芸石をつけていなかったにもかかわらず、ヴイの体術に俺は手も足も出なかった。


「ぐふっ……!!げほげほ!!」


俺の言葉にデボラは激しくむせ始めた。


「知ってるも何も……!!」


デボラは口元を吹きながら答えた。


「帝都軍第1部隊隊長シーグルド様、そして第1部隊の副隊長がヴイさんよ。」


「そういえばシーグルド隊長が云々って言ってた……!そんでコルの兄ちゃんのリオンさんが今は世話役?なんだろ?」


「なんでそんなこと知ってるのよ?というかヴイさんに会ったことがあるの?!」


カイルは腕をこすりながら呟いた。


「あいつは怖かったな……狂人って感じだった。」


「カイルも会ったことあるの!?どうして!?」


「いや、まぁ……」


まだデボラには、ブガラン王殺害未遂でカイルが捕まっていたことを伝えていない。そして俺がカイルを脱獄させたことも、普通にあんま知られちゃだめだからできれば伝えたくない。


「俺前にちょっと戦ってさ、死ぬほどぼこぼこにされたんだよ。」


「えっ、ヴイさんと戦ったの!?ほんとになんでよ!?」


「いや、まぁ……ちょっとね。」


デボラは俺の煮え切らない返事に答えを求めるのを諦めた。


「まぁ深追いはしないけど……ヴイさんて本当に強いのね……。」


「強い。本当に強かった。」


「だってアグニ、私とは全力で戦ってないわよね。」


「ごふっ…!!!!」


デボラの急な発言に驚いて、飲んでいた水が変なとこに入ってしまった。


「そうでしょう?だって天使の血筋であるあなたが、私と互角なわけがない。」


デボラはまっすぐに俺を見て言った。


「空を飛べるほどの芸力を、今のあなたからは感じないわ。」


そうか、デボラは俺が空を飛べることを知っているんだ。たぶんブガランで俺がした行動が軍部内に広まっているんだろう。


「………すごいねデボラ、どうしてわかったの?」


「……なんだかすごい、動きにくそうだもの。」


「ははっ!そうか。そう見えちゃうんだな。あーー…俺もまだまだだなぁ。」


俺は耳につけていた芸石を外した。


「そうだね。それじゃあこの芸石を外すから、俺ともう一度戦ってくれる?」






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