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再創世記 ~その特徴は『天使の血筋』にあてはまらない~  作者: タナカデス
第7章 第3学年
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235 授業〜合同練習挨拶


雷の月から始まった学院生活はほどほどに順調だった。


今、武術の授業では槍術を教わっている。

俺は長剣ばかりで、あまり槍を使ったことはなかった。というかシリウスに吹き飛ばされた記憶しかない。

だからこの授業はとてもいい学習になっている。



芸の授業はランク別に行われるようになった。

下 : 芸ができる〜解名ができない

このクラスでは解名を1つ出せることを目標に授業が行われる。


中 : 解名はできるが威力・精度が低い

このクラスはできる解名の精度を高めていくことが目標だ。


上 : 実践組

解名を対人・対芸獣戦で使う練習をする。


俺は実践組に割り振られ、他にはシルヴィア、コルネリウス、パシフィオがいた。

たった4人の授業だがバノガー先生が指導してくれている。

二名一組になる時は基本時に俺とシルヴィア、コルネリウスとパシフィオで分かれて練習し、たまに総当たり戦的に試合を行う感じだ。



音楽の授業では特定の楽器を習うのではなく、それぞれが別の楽器を担当してみんなで一曲を演奏する練習になった。


「それではぁぁぁぁぁ!!!!!来年度の卒業生に贈る曲をぉぉぉ!!!頑張ってぇぇぇぇ練習していきましょぉぉぉぉぉ!!!!!!まずはぁそれぞれの楽器をぉぉぉぉお決めまぁぁぁぁす!!!!!!」


相変わらずなビブラート先生の声で、各々がやりたい楽器の近くに集まった。

ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノ、ハープなど様々ある中で、俺はリュウしかできないのでリュウが置かれてる場所に向かった。


「お!シルヴィアもか!」


そこにはシルヴィアもいた。

俺の言葉に周りの生徒が「え。」みたいな顔をし、シルヴィアも冷めた目を向けてきた。


『通常、天使の血筋はリュウを選びます。だからあなたも来たのでしょう?』


「え?!!あ、おぉん、そうだよ?!」



   そうだったんだ。

   知らなかった。



リュウを選んだ人は意外と多く、何人かは別の楽器に行かねばならなくなった。

さて、話し合いだ!


「うーん……でもアグニがリュウを吹いていいのだろうか……」


「え?なんで??」


同じくリュウを選んでいたカールが、話し合いの時に急にそんなことを言い出した。俺には意味がわからなかったが、周りの生徒はうんうんと頷いている。


「たしかに……アグニが吹くと…… 」

『演奏どころじゃなくなるかも…』

「た、たしかに……それは困る…」


周りの生徒は気まずそうにしながらも、口元がニヤついていた。絶対茶化されている。


「演奏中に目とか光られたら困るしな。」


「『「『 ぶはっ!!!! 』」』」


カールの言葉にみんなが吹き出した。シルヴィアですらくすくす笑っている。


「ええ?!!そんなぁ!!ひどくない?!!」


「『「『 あはははは!!! 』」』」


いよいよみんな本気で笑い出した。

完全にいじられている。


「あらぁぁぁぁぁ!!皆さん、楽しく話し合いができてますねぇぇぇぇ!!!!!どなたが移動するか、決まりましたかぁぁぁぁ?!!!!」

  

先生がリュウのグループに来て笑顔でそう聞いてきた。


「アグニ、一緒に別の楽器に移動しよう。」


「えぇ、でも俺まじで他の楽器弾けないよ?」


「チェロは去年習ってたんだから少しはできるだろ?俺も教えるから。」


   

   ん〜……

   まぁカールがここまで言うなら仕方ない。



「……わかった!それでは先生、俺とカールが移動します!」


「わかりましたぁぁ!!!お二人とも偉いですねぇぇ!!!」


「「 ありがとうございまぁぁぁす!!」」


ビブラート先生に引っ張られて俺らの語尾も伸びてしまい、また周りの生徒がクスクスと笑っていた。


その後、各楽器ごとにパート分けをし、練習に少し入ったところで授業は終わった。



そんなこんなで日々を過ごし、無事に期末試験を終えた。


「はぁ〜とりあえず一段落だな!」


「だわね!いよいよだわ!」


「……だね……!」


バルバラとセシル、2人とも何かを心待ちにしている様子だった。


「なに?なんか今後あったっけ?」


「あらアグニ!忘れちゃったの?いよいよ来週は一年生と合同練習よ!」


「ああ!あれ来週なのか!!」


来週いっぱいは一年生が三年生に付いて回って色々と学ぶらしい。俺は一年生の時にこの学院にいなかったのでよくわからないが、バルバラはとても興奮していた。


「上級生の皆さん、とてもキラキラしていて、知的で、気品があって……私もあのようになりたい!って思ったの。」


「………わかる……。」


セシルもこの意見に同意らしい。

バルバラはなおも興奮した様子で語った。


「しかも本当の王子様に会えたのよ?それも天使の血筋の!!」


「あ、シャルルのこと?」


「他に誰がいるのよ!!」


そうか、言われてみればシャルルは天使の血筋の王子様だ。

街で売られている恋愛小説で一番多い設定は『国を追われた金色の髪の王子様を偶然町娘が助け、恋に落ちて結ばれる話』だって前に聞いたことがある。みんな金髪の王子様に憧れるのだ。


「本当にそんな人がこの世にいるなんて!って最初シャルル様を見た時に胸が高鳴ったわ!!」


セシルも頷いて言った。


「そもそも……王子様……普段は見ないもんね……」


「あ〜たしかになぁ。」


俺が呑気に2人の話を聞いてたらバルバラは大きなため息をつき、ビシっと俺を指差した。


「アグニわかってるの?今度はあなたがその立場なのよ!」


「え?いやいや、俺は別に王子様じゃないし。」


「天使の血筋でしょう?!」


たぶん一年生は黒髪の天使の血筋なんぞ見ても何も興奮しないと思うぞ、という言葉を飲み込んで俺はコクコク頷いた。


「格好って普通に制服でいいんだよな?」


「もちろん制服よ!ただ、格好良く振る舞ってね!アグニは私たちの代表なんだから!」


「代表はシルヴィアさんに任せております!!!」


「んもう!!いつまでもそんなんじゃ…あ、こらぁ!!」


俺はそう言い残し、逃げるように去っていった。

後ろからバルバラの怒る声が聞こえたが、、、

俺は、逃げきった!




・・・・・





雷の月 6の週1の日


さて、合同練習の週です。


朝、講堂に集まるよう指示を受け向かうと、そこにはぴしっと横一列に整列した一年生達がいた。

俺らの学年と比べるとみんな少し顔が幼いように感じる。普通はニ年間でこんなに違いが出るのか。


「え〜〜〜小さ〜い!」

『かわいい〜!』

「緊張してる〜かわいい〜!」

『誰が一番強そうだ?』

「あ、あの子髪の毛の色明るい!」


俺ら三年生は小声でそんなことを喋りながら一年生に近づいた。

こちらは特に整列はせず、なんとなく一年生の近くに集まった感じだ。


一年生達の芸素からは緊張が伝わる。その緊張も含め、たしかに言われてみれば可愛く見えてきた。


「上級生の皆様!」


横一列の中央にいた男の子が強張った表情をしつつも貴族的な振る舞いも忘れぬように気をつけながら、必死に声を張り上げていた。かわいい。


「学年代表となりました、メテオ伯爵家が長男、グリムでございます!!本日は貴重なお時間を頂きまして、ありがとうございます!!」


グリム・メテオはミルクティーのような薄茶色の髪を額が見えるほど短くしていた。そして緊張の色を浮かべながらもまっすぐに前を向く薄緑の瞳に好印象が持てた。



   けど、なんだろ……

   なんかめっちゃ目が合うな…?



グリムは三年生に感謝の言葉を述べながらもチラチラと俺の方を見てきた。

もちろんみんなに向かって喋ってはいるのだが、妙に目が合う気がした。


「この1週間と今後の学院生活、よろしくお導きの程お願い致します!!!!」


「『「『「 よろしくお願い申し上げます!! 」』」』」


一年生全員が口を揃えて頭を下げた。みんな本当にいい子そうだ。




コツ・・・




シルヴィアが俺たちの一歩前に出た。


その途端、一年生の緊張が先ほどとは比べ物にならないほどに増した。


たしか今年の一年生は全員が貴族の家柄だと聞いたが、学年代表が伯爵位ならば他の生徒は伯爵位以下のはずだ。ほとんどの学生は天使の血筋をこんな間近で見るのは初めてだろう。



ーーしかも本当の王子様に会えたのよ?それも天使の血筋の!!ーー


バルバラの言葉が蘇る。

シルヴィアは皆んなの瞳にどれほど綺麗に映っているのだろう。

存分に見ていただきたい。俺らが誇る、学年代表のことを。


シルヴィアは無表情のまま、凛とした声で告げた。


『第一学院へようこそ、歓迎いたします。』


「『「『「 っ!!!!  」』」』」


シルヴィアの言葉で一年生全員が嬉しそうになった。可愛い。


『この学院内では私たちは同じ生徒、同じ机に向かう者。学年の違いはあれど、身分や家柄は関係ありません。』


みんながシルヴィアの言葉をじっと聞いていた。


『……なにかあれば、大いに頼りなさい。』



   うわぉ?!!!

   シルヴィアがデレた!!!!

   珍しい!!!



ざわっ…!!!!!!!


一年生全員が笑顔で顔を見合わせている。一部の生徒からは歓声も上がった。シルヴィアに言われた言葉が本当に嬉しかったのだろう。


「『「『「 ありがとうございます!! 」』」』」


素直にお礼を言う姿はもはや可愛い以外のなにものでもない。かわいい。異論は認めない。



『……シュネイ、あなたからも言葉をかけなさい。』


「んへぇ?!!!!」



後ろの方で今の様子をニヤニヤしながら眺めていたら、シルヴィアが急に俺にも話をふってきた。



   えええぇぇぇまじ?!!!



一年生全員、『なんでこの人?』って思っているのだろう。不思議そうな顔で俺のことを見ていた。




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