24 「天使の血筋」
『そう。君も「天使の血筋」なんだよ』
はぁ??
いや、、、はあ??
ちょっと何言ってるのかわかんないなぁ
………いや、はぁ?!!!!!!
「ちょっと待て!!!嘘だろ?」
座ってた椅子を倒す勢いで立ち上がってしまった。
けれどシリウスは変わらず笑顔で告げた。
『いいや、確かだよ。君は「天使の血筋」だ。』
「え!だって!たった今『天使の血筋』の髪の色は金だって言ってたじゃん!」
『天使の血筋の第一条件は、「芸石を使わずに芸を出せること」だ。今まで髪色に例外はなかったけど、ぶっちゃけ目の色にも髪の金色の濃さにも個人差があるんだ。』
「でも今まで黒髪の『天使の血筋』はいなかったんだろ?」
『けど君の瞳は金色だ。瞳の色で考えると君ほど「天使の血筋」な人はいないんだよ』
髪は例外だけど瞳の色が根拠になるのか
けどそれだけで決めるのは早とちりじゃないか?
シリウスの言葉に頭を悩ませていると、さらに追い打ちをかけてきた。
『君のお父さんの名前も「アグニ」だよね?』
「え、なんでそれを知ってるんだ?そうだよ。」
俺は父親の名前をそのまま継いでいる。
けどそれをシリウスに言ったことはないはずだ。
『もう一つ、お父さんから継いだ名前があると思うんだけど、それが何か知ってるかい?』
「……確かに生前、お父さんが『秘密の名前』って言って教えてくれたけど‥それがなんなんだ?」
『実は僕、君のもう一つの名前が「誰」なのか知らないんだ。お願い。教えてくれないか?』
いつも以上にシリウスが真剣な顔で言った。
この名前で何がわかるんだ?
確かにもう一つ継いだ名前がある。
それは・・・
「 シュネイ 」
端的にそう答えると、シリウスはまるで雷に打たれたのかってくらい驚いた顔をしてうつむいた。
その場の雰囲気がとても真剣で、冷たくて、息苦しく感じた。
「な、なぁ。この名前がどうしたんだよ?」
俺の声はシリウスに届いてないのだろう。
暫くずっと下を見たまま黙っている。
『・・・・・・そうか。 シュネイか。 』
「……親父から聞いた名前は、シュネイだよ。」
もう一度そう答えると…もう、いつものシリウスに戻っていた。そしてまたいつもの笑顔を見せて言った。
『「天使の血筋」の名前は代々継ぐんだけど、全員「シ」から始まる。…もう確定だね。君は間違いなく天使の血筋だよ』
なっ!なんだと!!
俺が右往左往しながら戸惑っていると、シリウスから最大級の爆弾が落とされた。
『あ、ちなみに君。本当は16歳じゃないよ。たぶん、64歳だ』
いやいやいやいや、はぁ????
さすがにそれは嘘!!
「お前、今は冗談やめろって。一瞬本気で驚いたよ」
『残念だけど本当。君、一年間に春・夏・秋・冬はそれぞれ何回ずつあると思ってる?』
え??さすがにそれは間違えませんよ?
「それぞれ4回ずつだろ?」
そう答えると笑いを抑えきれなかったのか、シリウスが爆笑し始めた。
『あっははは!はい!不正解!!!1年にそれぞれ1回ずつです!君、お父さんにそう言われたんだろ?騙されてるよ!だから単純計算で君は、君自身が思っていた年齢の4倍、64歳になります!』
えええ????
え、待って。さすがに待って。
「いやおかしいだろ!64歳って言ったら、それこそエメルくらいの外見に見えるはずだろ??たぶん俺の村には4回季節がくるんだよ!」
一生懸命理由を並びたてるが、シリウスはヒーヒー笑ってて全然聞いてない。
『4回季節が来る地域なんてないから!っひー!!だからね、君が「天使の血筋」なのは確定なんだよ!本来「天使の血筋」は寿命が人の何倍も長いんだ。けど子供を持つとその瞬間、寿命は一般人と変わらなくなる。今の時代、希少な「天使の血筋」の血を絶やさないために程よい年ごろになったらみんなすぐ子供を持つんだ。だからあんまり知られてないことなんだけどね。あー面白い』
あーもーパニック。パニックだわ…
俺が天使の血筋だって証拠は、①芸石を使わなくても芸ができる。②「シュネイ」の名を父から継いだ。③もうすでに64年生きてるのに外見が16歳に見える。ってこと?
もう…衝撃が強すぎて吐きそう・・・
開いた口が塞がらないとはこのことだ。
「……シリウス、そしたらお前も『天使の血筋』で間違いないな?」
もう諦めの道に入ってしまった俺は最後の確認をした。
『ああ。僕も君と同じ、天空人の血を引いてるよ』
「はぁ~……こいつが他の人と違って見えた理由がようやくわかった。」
俺が徐々に落ち着きを取り戻した時、シリウスが紅茶を片手に言った。
『けどね。君は髪の色が黒いからぱっと見「天使の血筋」だと思われない。そして今この世界で「天使の血筋」だと認められてないにもかかわらず、そうだと明言した場合重罪になる。下手したら死罪にもなるんだ。』
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
『君はしばらく「天使の血筋」であるということは黙っておくしかない。君を、誰の目にも明らかに「天使の血筋」だとわからせる場が必要なんだ。けどそれは時と場所を選ぶ。もしかしたらその場はすぐに来ないかもしれない。けど、言わないでいられるかい?』
そんなん余裕だ。
今まで言ってなかったんだから。
「ああ。言わんきゃいいんだろ?わかった。俺ももう少し自分で整理する時間が欲しいしちょうどいいよ」
『言わなきゃいいだけじゃないからね?そう思われないように振舞うことも忘れずに』
「わかった。…つってもどうすればいいんだ?芸石を持ってればいいのか?芸石無しでも芸ができるって知られちゃまずいんだもんな?」
『そうだね。とりあえずはそれでいい。ずっと首に芸石を付けていきなさい。』
「わかった。…いや~ちょっともう…疲れたわ」
『あはは、そうだろうね。じゃあもう部屋に案内させるよ。明日から街の外に出て大会の練習するからね?』
「ああ。よろしく頼みます。」
こうして、俺すら知らない、
俺自身の出生の秘密を知らされたのだった。
いや、まじあのくそ親父!!!!
いやぁ、驚きですね。3話目でアグニが「あ、今俺16歳の1度目の年なんです。」って言って、シリウスが言葉に詰まるシーンがあります。それを回収しました。
なので、アグニの「ずっと一人で生きてきた」ってのは本当にその通りで、40年くらい本当に一人で生き続けてたんすよ。相当、孤独だったでしょうね。
けどそんな長い期間ずっと鍛冶で芸を扱っていたからこそ、すんなりと芸素や芸をコントロールできるんです。経験という最大のメリットを得てたんですね。




