表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再創世記 ~その特徴は『天使の血筋』にあてはまらない~  作者: タナカデス
第6章 名はシュネイ
235/282

222 セシル固有技

皆さん、もう2023年が終わりますよ……

今年も大変お世話になりました!来年もつらつらと書き連ねていきますので、是非遊びにきてくださいね!



「シュネイ様、学院内ではどのような変化がありましたか?」


俺はアイシャにそう聞かれ、一度ティーカップを置いた。

次々と運ばれてくる料理を全て平らげ、今はのんびりと紅茶と小菓子を食べていた。

今食べたのはゼリーの菓子で、口に入れた瞬間に溶けてしまった。ゼリーの周りにざらめがついており、ゼリーのくちどけと砂糖のザラザラ感が合わさって大変美味しい。


「んーだいぶ変化があったよ。最初はみんな話してくれなくてさ、距離も開いちゃって。みんなから『恐怖』も感じだし。」


「あら、そうなのですね?」


アイシャはそう言ってバルバラとセシルの顔を見た。バルバラは気まずそうな顔をし、セシルは頷いていた。


「でも一回はまた元の関係に戻れそうだったんだよ。だけど……」


「………戻れなかったのですか?」


アイシャは俺をじっと見ていたが、それは心配している眼差しではなかった。というよりも『興味深い』という眼差しだった。


「…コルネリウスがね……」


セシルが小さな声で話し始めた。


「コルネリウスは…アグニが変わったことを、受け入れられなかった…」


「まぁ……!あのコルネリウス様が?」


アイシャは驚いた表情をしつつ前のめりになって話を聞き始めた。


「私の印象では…コルネリウス様はアグニ様のことを大層お気に召していたように見えましたが……?」


「たぶんまだアグニが天使の血筋だということに戸惑っているのだと思うわ。それは仕方がないことだもの。」


バルバラがそう言った。バルバラはなぜか必死そうに見えた。



   あぁ、そういえば……

   バルバラはコルのことが好きだった



「コルネリウスはアグニと仲が良かったのよ。なのにずっと知らなかったわけじゃない?だから戸惑ってしまって、よくわからない態度をとってしまっているだけなのよ!」


バルバラの必死の説明をアイシャは黙って聞いていた。そして一度頷き、答えた。


「……そうでしょうね。戸惑うのは仕方ないわ。けれどコルネリウス様は相手が『天使の血筋』であることを理解するべきだとも思います。」


「……どういうこと?」


アイシャは前のめりになっていた姿勢を戻し、しっかりとバルバラの方を向いた。


「シュネイ様が天使の血筋だと認められた以上、コルネリウス様はどんなに困惑していても決して反抗的な態度を取ってはいけないはずだわ。それは不敬罪になると、伯爵家のご子息がわからないはずない。」


バルバラははっとし、息を詰めた。そんな様子を視界に入れつつ、アイシャは続ける。


「コルネリウス様は…シュネイ様のことを侮っていらっしゃる。シュネイ様が自分を罰しないとわかっていて、意図的に傷つけようとしているわ。」





・・・・・




昼食と軽食を終え、俺らは日が暮れる前に解散することになった。

結局あの話し合いの後、バルバラは難しい顔をして黙ってしまった。


「……アグニ、」


「ん?どしたセシル?」


バルバラとアイシャを送り、馬車に乗り込んだ時だった。


「私……解名……できた。」


「え?!!」


俺はすぐに馬車から降りた。


「なになになんの解名??!」


「 双極磁体(そうきょくじたい) 」


「そうきょくじたい……カッコいい名前だな!俺知らないわ!どんな解名なんだ?!」


「………私が…名前をつけた。」


「え?セシルが名前をって……え?!固有技ってこと?!!」


セシルは眠いのか真剣なのかわからない表情で頷いた。


「うん……だから、一度…シリウス様に……見ていただきたくて……」


「シリウスに?なんで??」


「シリウス様はたぶん……誰よりも……多くの解名を知ってそうだなって……」


「んあぁ確かにね。わかった!けどシリウス、いつ帰ってくるかわかんなくて……たぶん明日は家にいると思うんだけど……」


シリウスはなんだかんだ俺が帰る日に家にいることが多い。今日いなかったからたぶん明日は家にいる気がする。


「わかった……行っていい…?」


「もちろん!昼過ぎに公爵邸に来てくれ。昼までにシリウスが帰ってなかったら通信用芸石で知らせるよ。」





・・・・・・





次の日の朝、シリウスはまだ帰ってこなかった。

シリウスは芸石を使えないし、1人で動いてしまうので全く連絡が取れなくなる。

まぁ芸素を全力で放出すればシリウスは気づいてくれるだろう。しかし特に緊急性の高い話ではないので、わざわざ呼びつけるのもどうかなと思う。


なのでとりあえず、俺とシーラとクルト、カイルで森の家に行った。朝食がてらルシウスとクィトに会いに行くのだ!


「うっわーい!アグニさんにシーラさん!皆んな来てくれたんですねー!」


「……天使の血筋って暇なの?」


正反対の態度を取るルシウスとクィトに思わず吹き出してしまう。ルシウスは犬っぽくて、クィトは猫っぽいな。


「あら、寂しがり屋さん。お姉さんに会いたかったでしょう?」


シーラがどんどんとクィトに近づく。厳密に言うと、シーラの胸がクィトに近づいている。2人に身長差があるせいで。


「うおおおおぉ?!!それは教育的じゃないんじゃないか?!」


すぐにカイルがクィトとシーラの間に入り2人の距離を離した。しかしそんな正義的な行動を取りつつも、カイルの目がシーラの胸元から離れていないのは残念だ。


「ハーブティーをご用意しましたよ。さぁどうぞ!」


今の騒動の間にクルトはハーブティーを淹れていたらしい。

どんだけ動じないんだよ!!


ガチャ・・・


ドアの方から物音が聞こえた。


「あ、シリウスだ。」


『大集合だねぇ。皆んな家にいなくてびっくりしたよ

〜』


シリウスは片手に花を持って家に入ってきた。

すぐにその花をシーラに渡し、シリウスは平然と席についた。クルトはシリウスがそう動くことがわかっていたのか、シリウスの分のハーブティーをすぐに用意し机の上に置いた。


「西側行ったんだろ?どうだった?」


シリウス曰く、西側の芸獣が強くなっているらしい。だからたぶんその『西側』に行っていたのだろう。


『僕も朝ごはんが食べたいな。』


シリウスはにこやかにクルトにそう告げ、クルトは「もちろんです」と言ってキッチンへ向かった。

カイルとクィトはクルトの後を追ってキッチンへ向かい、ルシウスはシリウスの斜め前の席についた。


「西側って……帝国の西側ってことですよね?西側の芸獣が強くなっているんですか?なぜです?村や町は被害にあってないですよね?」


俺もルシウスと同じ質問がしたかったから黙ってルシウスの隣…シリウスの前の席についた。シーラはシリウスの隣に座り、芸で花瓶に水を入れている。


『うんそうだね。強くなっているよ。』


「強くって…具体的にどういう事なんだ?そんな危ない状況なのか?」


『どうだろうねぇ〜?』


シリウスは含み笑顔をこちらに向けるだけで、それ以上は何も言わなかった。



   ちぇ、なんだよ。

   なんか知ってるなら教えてくれればいいのに。



「あ、昼にセシルが公爵邸に来るってさ。すげぇんだよセシル!固有技ができるようになったって……」

『固有技???セシルが造ったって??』


シリウスは先ほどとは打って変わって目をギラギラに輝かせながら俺にその美しい顔を近づけてきた。


「うぉ!なんだよ!近いって!……シリウスに見せたいって言ってたけど、今日シリウス暇か?」

『暇ひま!全然暇!今すぐ行こう早く行こう!!』


シリウスは朝ごはんのことなどもう知らない。そんなことよりも固有技の方がよほどシリウスの腹を満たすのだろう。



「ちょっ!セシルが来るのは昼過ぎだってば~!!!」





・・・・・・





『やぁセシル待ってたよ!ささ、早くおいで。』


「……お久しぶりです……シリウス様……」


シリウスはセシルをエスコートしながら演習場へ案内した。その態度にいつも眠そうなセシルですら目を見開いている。


『さぁセシル。君のこと、全部見せて?』


甘いマスクで柔らかく語尾を上げ、魅惑的に囁く。この言葉で一体何人が命を差し出すのだろう。


「この固有技は…」


セシルは自身が編み出した固有技をいとも簡単に説明し始めた。


「ちょっ!セシルいいのか?!固有技は基本的に人に喋らないんだろ?!」


「……いいの。」


セシルはシリウスの顔をじっと見ていた。そしてシリウスも天使のような笑みでセシルを見続けている。


『セシル…僕に教えてよ?』


「はい……固有技の名は、双極磁体(そうきょくじたい)


『美しい名だね……いったい君はどんな解名を生み出したの?』


セシルの手を握り、シリウスはじっとセシルの目を見つめ続ける。それに耐えられなくなったのか、セシルが目を逸らし離れようとする……が、シリウスは離さない。


「だ…め…」


『何がダメなんだい?君のことを見ちゃ…だめ?』


「離れないと……解名…出せない…!」


『ああ、それはごめんね。離れがたいけど、、、』



   ふぁ??!!

   シリウスが…謝った!??

   謝罪なんて初めて聞いたぞ!?



シリウスの態度がこんなに変わるなんて思わなかった。

でもそれはつまり、これほどまでに『固有技』というのは珍しく貴重なものなのだろう。


『それじゃあ、見せてくれるかい?』


「はい……ギフト……双極磁体(そうきょくじたい)


ギャキィィィィィン!!!!!!バリバリビリビリビリィ!!


『っ!!!!』

「うわぁぁあ!?」


急に下に引っ張られ、俺は体勢を大きく崩した。両手・両膝を床についてしまうくらい強い力だった。



   身体が……床に引っ張られてる…?!

   なんだこれは?!!



解名の『威圧』に似ている。

しかし『威圧』は芸素量で相手を叩き抑え、押し付けられる感覚に似ている。()()にはそのような「恐ろしさ」はないし、押し付けられるわけではなく引っ張られる感覚だ。


『………なるほど…磁気、だね?』


シリウスは体勢を崩さなかった。しかし立ったままで、一歩も動かなかった。


「その通りでございます……。」


セシルはシリウスに向かって綺麗にカーテシーをした。



   セシルは…動けるのか?!



この解名はセシルには効いていない。つまり解名の範囲を指定できるか、対象を指定できるということだ。


「シリウス……どういうことだ?」


シリウスの後ろから俺がそう問いかけると、シリウスは首だけを横に向けて言った。


『まだわからないけど……僕と床が引き合うよう磁場を作った…のかな?』


「磁場を…作った?!!」


「…………流石でございます、シリウス様。」


セシルはまた丁寧に礼をした。


「シリウス様とアグニのいる範囲に磁場を生成し、体と床が引きつけ合うよう調節しました。これにより、相手の行動に制限をかけるのです。」


「引きつけあってるの?床と俺が??」


セシルの説明を懸命に理解しようとするが、体が動かないことに驚いてあまり頭が働いていない。


『……君は本当に…面白くて発想の豊かな子だね、セシル。』


シリウスはゆっくりと一歩足を前に出した。


「っ…!!」


セシルはそれに驚き、すぐに一歩後ろに下がり、解名の芸力を強めた。


「うわっ……んぅ!!?」



   全然動けない……!!!



『身体強化をしなければ……僕もギリギリかな。』


シリウスは軽やかに笑ってそう言い・・・


タンッ……!


「っあ……!!」


「セシル!!!」


シリウスは一度大きく跳躍し、セシルの真後ろに着地した。着地した時にはもうシリウスはセシルの喉元に手を当てていた。


『………ねぇセシル?』


「……は……はい、」


セシルは……振り返ることができない。

シリウスの手がゆっくりとセシルの喉を撫でているからだ。


『これからもっともっと、僕に面白いものを見せて。ね?』


シリウスは艶やかに微笑んでいた。


「……は……ぃ…。」


今この時だけは、その目にセシルしか映っていなかった。







良いお年を!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ