12 洞窟④
その芸は凄かった。圧倒的だった。そして新しい芸の存在は、俄然俺をやる気にさせた。
早く教えてもらいたかったが、名のある芸をきちんと使えるようになるのは、芸と芸素を使いこなせてからだとのことなので、残念だが今は諦める。
アリの死骸を横に奥へ行くとすぐ行き止まりについた。
けれど下の洞穴にはなかったあるものが存在していた。
「これは…アリの卵か?」
『そのとお~り!使える素材っていうのは、このアリの卵の殻のこと』
そう言われ、近づいてよく見てみる。
「これ…純度の黒水晶みたいだな」
『実はアリの成体より卵を包む殻のほうが質がいい。成体でも加工すれば結構な値段の武器になるけどね』
「そうなのか。これどうやって持って帰るの?」
『ん~一回剣で刺して中から出てきた液体を取れば大丈夫。まだ卵の中はどろどろだから』
「そうか。…じゃあ、失礼します」
多少の申し訳なさを感じつつも、思いきり剣を刺す。
すると中から黒い液体が出てきた。
液体が出きった後の殻を頂戴する。
2つを取ったところでシリウスが俺に話した。
『他は取っておこう。ここの芸獣全部狩っちゃったら次取れないから』
「そうだな。いくつかは残そう」
・・・・・・
俺とシリウスは元来た道を戻り地上に上がった。
陽は傾いており、橙から藍色まで空が色づいている。
『それじゃあサントニ町に戻ろうか』
「おう」
帰りとは別の道を通ったいた。
『…あのねぇ怒るかな~って思って言ってなかったんだけどね~?』
え、なに。
「なに?」
『こっちが正式な入口』
そこには門のように大きく穴の開いた洞窟があった。
何人も人がいて、いくつか露店も出ていた。
「お!兄ちゃん達凄いな!!こんなに狩ったの見たことねえよ!」
近くにいた男が話しかけてきた。今俺とシリウスはアリの成体5匹と卵の殻2つを背中にぶら下げている。
「え、あの。アリって…狩るの難しいですか?」
「何人かで頑張って1匹、一日で多くても3匹じゃないか?それ以上は疲れて無理だろ。今日は何人で狩ったんだ?」
シリウスの方を向くと、思いきり目をそらされた。
あいつ…!!
「あ、7人…くらい?です」
そう答えておいた。
・・・・・・
帰り路、野宿をしていた。
今日のご飯は今話題のアリです。
肉はプルプルで弾力があり、噛むとスパイスの効いたような痺れを舌に感じるがそれが良いアクセントになっていた。正直めちゃくちゃ上手い。
感動しながら食べていると、
『これの食べ方教えてあげたんだから、許してね』
・・・許すかぁ!!!!!!