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96、玉の行方 3(八郎と大ミミズ)



 ***



「じゃあな、嬢ちゃん。訓練頑張れよ」

 ゴウリウスが馬の背から片手をあげている。五本の指の先に、魔法で小さく明かりが灯されていた。彼が手を振ると、それが残像となって線を作る。

 日もしっかり沈んでいた。日光石をぶら下げる二人の馬は街中へと遠ざかっていく。

「はーい。ありがとう。お疲れ様~」

 手を降り返すアルベラの元に、二人の会話が聞こえてくる。

「いやぁ。報酬のわりに楽で割にあう仕事だったなぁ。ここの公爵様のご依頼はこれだから断れない」

「それはそうだが、そういう話はもう少し離れてからしてくれ。俺の品格が疑われる」

 たった三日間だったが、あの二人とはそれなりにいい関係を築けた気がした。この出会い、いつか何かで役立てたいものだ。

(訓練………いつかしてくれても良いって言ってたなー)

 ニヤリ。

 アルベラは「言質は得た」と、小さな笑みを浮かべる。

 エリーとガルカに、二日分の宿泊の荷物を屋敷に運びこませ、アルベラは自室で身を整えて父の部屋へ向かった。

 しっかり帰宅の挨拶と礼をしなければ、あとでいい歳の父にいじけた様を見せつけられてしまう。



 エリーとガルカに父の元に行っている旨を伝え、二人が荷物の片付けをするなか、アルベラは玄関からまっすぐに一階の父の書斎へと向かった。

 書斎を訪ねると、ソファーに腰掛けた母の姿もあった。

「ただいま戻りました。お父様、旅の手配の方ありがとうございました」

「お帰り、アルベラ。三日間、危険は何も無かったかい? 楽しめたかな」

 父は部屋奥の机からアルベラを迎えつつ、母の座る室内中央に置かれたソファーの、向かいへ座るよう促す。

「ええ。とても快適な旅でした。護衛のお二人も頼もしかったですし、滝も、とても大きくて素敵でした」

 そこに目的の物が無かったのは残念だったが。

 アルベラはソファーに腰掛け父を見上げた。

 魔族に出会ったことは言わないでおこう。問題は何もない、安全な旅だったと微笑む。

「それは良かった。それで、ガルカ君はどうだった? 何か問題や気になる事は? ―――3日間共に過ごして、魔族の奴隷に対する君の感想を聞かせて欲しいのだが」

「あれは―――」

 アルベラは正面を見たまま思考する。

 生意気だった。しかも、自分にかけられた魔術の、発動しない程度を(わきま)えてるのが厄介だ。完全に従順でない辺り、エリーと同じくらい厄介だが、それでいてエリーと同じくらい役立つ面もある。人の扱いの面でも、死なない程度をよくわかっているので、からかう際も死なないギリギリラインを攻めてくる。逆を言えば死なないことは保証されているわけで、守ってくれる側であるなら、魔術がかかっている限りは頼りがいはあるだろう。良くも悪くも魔族であり、人にはさせられないような頼みが不思議としやすいのは魅力だ。こき使った時の罪悪感は人に対するものよりも軽いし、物事に対する、特に悪事に対する頓着が―――というより物事に対する価値観の基準が、人間社会と異なるのだろう。それもあって悪事面では人よりも頼りになるかもしれない。

 いや。悪事などと、そんな人聞きの悪いことを望んでしたいとも思わないが………だが、いざという時はあるかもしれない。

 一瞬の思考。アルベラは視線を父へ向ける。

「あれは―――使えますね」

 ニヤリと笑う。その年の少女には似合わない笑みだ。

 その言葉に父の口元も弧を描いた。アルベラの斜め向かい、母もクスリと笑う。

 親子三人の間に、共犯めいた空気が漂う。

「問題ないようですね。仲良く出来てるようで何よりです」

「いやいや、よかったよ。アルベラも彼を気に入ってくれたようで」

「あ、いえ。気に入ってはいないです。性格がくそ………こほん。とても生意気なので、たまにカチンと来てしまうことはあります」

 「くそ生意気」と言いかけ、笑む母の、鋭い視線に圧されたアルベラは言いなおす。

「そうかい? 生意気か………。私といる時は割と従順でいてくれてるようなんだがね。よくあくびをかいているので、退屈している様子ではあるが。………やはり子供が相手だと態度が変わるのか? 動物も自分より弱そうな相手には容赦ないものだし。いや、それは人も一緒か。つまりこういう面でも人と魔族にそう違いはないという事か」

 ふとした思考に夢中になっている父に、母は微笑みアルベラへ向き直る。

「ところで、今年も来ていますよ」

 机の上、そっと、母の白く滑らかな手が深紅の封筒を差し出した。王家の印が押されている。

 アルベラは「そういえばそんな時期か」と受け取ったそれの中を出す。封はもう空いている。

「ラツィラス殿下も、もう十三になられるのね。この間いらっしゃったようだけど、挨拶ができず残念でした」

(ああ、あの日か………)

 アルベラは、フライに乗って半泣きした日を思い出す。

 あの日母は、お貴族様のお茶会に招待されて留守だったのだ。

「仲良くして頂けるのは有難い限りですね。アルベラ、いくら殿下が親しくしてくれるとはいえ、思いあがってはいけませんよ。無礼がないように、親しい中にも礼儀を重んじるのですよ」

「はい、気を付けます」

「………ところで、アルベラは殿下から何か話を伺ってますか?」

「なにか………とは?」

 どの話だろうか。話なら色々思い当たるが、どれも母には関係ないものの気がする。変に口を滑らせて、いらぬ説教………いや。いらぬ心配をかけるわけにはいかないので、とりあえず首をかしぐ。

 母の言葉を拾っていたのか、先に思い当たった父が身を固くした。

「レミリアス………まさか君は」

「はい。貴方が話さないようなので私から」

 母が涼しい視線を父へ投げかける。父は観念したように肩を落とした。

「ジュオセの一の月ですね。城から手紙が来ていたんです」

「はぁ」

 ジュオセの1の月と言えばもう2ヶ月前だ。

「婚約候補者の知らせです」

「………は、はぁ」

 そうか。もうそんな時期だったのか。と、驚くよりも納得している様子のアルベラへ、母は更に続ける。

「その知らせを、あの人がほぼ反射的にお断りいたしました」

「は………はぁ?! ………あ! し、失礼しました! ………あの、えーと、あれって断れるんですね」

「まあ、少ない例ではあるでしょうが。闘病中など、ご令嬢に何か特別な事情がない限りは、皆さんお受けするのが通例ですね。城もまだ、この段階では社交辞令みたいなものですし。………当たり前ですが、城からも他のお貴族様からも、印象が良いものではありません」

「………ですよねー」

 アルベラは乾いた笑みを浮かべる。

 まさに「印象のよくない行為をした者の妻」であるはずの母は、他人事のように柔らかい笑みを浮かべていた。なんとも余裕のある様子だ。娘として頼もしい限りだ。

「しかもそれを、ラツィラス殿下がわざわざ受け取りに来たのです。ちょうどこの人が速達便で、すぐにでも手紙を送り出そうとしていた際に。殿下が城から音通術を使用していらっしゃったんですよ。『来週そちらに伺うので、手紙はまだ送らないでください』と言って」

「そ、それがあの日………」

 そうか。王子はあの日、ただ自分に会いに来たわけではなかったのだ。もっとも、一番の目的はフライに乗る事、だったようにも思えなくもないが………。何しろ、王様がフライの騎乗にあまり乗り気じゃないだとか、王都内の人目は面倒くさいだとか漏らしていた。初めは用事のついでにフライに乗ろう、という予定だったのかもしれないが、あの楽しみ様を目の当たりにしている身としては、当日には「目的」と「ついで」がひっくり返っていたように思える。

「で、お断りしてからは何か? 王様や王子から連絡が来たんですか?」

「いいえ。お断りして終わりですね。今のところ。あちらかの反応はありません」

 母は目を細める。

 その切れ長の目と合って、暫し時間が流れた。アルベラはまだ何かあるのだろうか、と母の言葉を待つが、帰ってきたのは「そういう事です」という言葉だった。どうやら、この話題はこれで終わりのようだ。

「殿下の誕生日、きっと興味の目を向けられるでしょうが………あまり気にせず、お行儀よくしていらっしゃい。ラツィラス殿下も、今回の手紙については、多分あまり気にしてもおられないでしょう。ニベネント殿下も。きっとお父様とは色々お話にはなると思いますが、あなたに何かの矛先が向けられることはないと思いますので、例年通り、好きに楽しむのですよ」

「苦労を………かける。すまないな、アルベラ」

 父は面目ない、という様子で項垂れていた。



 アルベラが退室し、ラーゼンはレミリアスへ視線を向ける。

「騎士様のお手紙については………わが子に気を使ったまでです。害があるとすれば、殿下の手紙を断った噂が広まっていた場合の方でしょうから。騎士様のご令息とは、仲が良いようですし、会った時に本人達の間で知れる程度でも良いでしょう。今からいろいろ考えすぎても疲れるでしょうし」

「そうだな。ありがとう、レミリアス」

「いいえ。………もっとも、あなたとしては、周りからの目より、娘の意識の変化の方を恐れているようですしね」

「ああ。その通りだ」

 ラーゼンは机の上に肘をつき、手を組んで額を預ける。

 もしも娘が騎士様からの見合いの話を知ったら―――。王子。それにあのお付きの少年。ずっと傍で見ているわけではないが、あの三人は父が見る限り、現状ただの友人だ。それに余計な切っ掛けを与えて、変な意識を生んでしまうのは、父として避けたかった。

(でなくても、最近バスチャランと顔を合わせる度に嫁だ婿だと、笑えない冗談を言われているというのに………)

「もしも、もしもいまあの子に、知り合い相手の見合いの話が来ているとしてみろ! 多感な年ごろだぞ! 『今までただの友達だったのよ?! そんな、急に異性としてみるなんてできない!』からの『やだ、この人意外と頼もしい………』に切り替わった日には、もう誰にも止めることが出来ないだろう! 悲しい! 私はそうなったら悲しいのだ! 父として! 耐えられない! 生きていけない!」

「自分がそうだっただけに、ですか? ………あら失礼。自分達が、でしたね。ふふふ」

「れ、レミリアス………」

 ラーゼンは痛い所を付かれたと、苦い表情を浮かべる。

「もっとも、私たちの場合は友人でも無かったですものね。名前のみ知る関係。それが見合いの一つで………ふふふ」

 ラーゼンは、妻と一時期ライバルのような関係だったことを思い出す。今よりも幼さの残る、凛々しい妻の姿。それを思い出し、少し表情が緩んだ。が、考えるべきは娘の将来だ、と頭を振ってしかめ面に戻す。

「そうだ。何が切っ掛けであの子が嫁いでしまうとも限らない。私はまだ、そんな心の準備はできていない! したくもない! せんぞ!!!」

「そうですね。今はいいですが、………あの子が十五になる頃にはできていて欲しいものです。お願いしますよ」

「………くぅ!」

 父は「YES」と言えず唇を噛み締めた。



 アルベラは部屋に戻り封筒を眺める。

 なんだろう。母は最後、何か言おうとしてやめたように見えた。

(婚約候補を断った話。その後の誕生日会。そして更に何か? いやいや。そんな幾つも面倒が重なるなんてこと………………………)

 アルベラは目を据わらせる。

 何より今、自分は宝玉などと言う、よく知れぬ面倒を抱えていると言うのに。

「な、無いといいなー」

 ため息をつき、部屋の中央の椅子に座った。丸テーブルに上体を預ける。

(もう、こんな時期なのか………早い。感慨深い)

 誕生日会。奇異の目でみられることを覚悟しなければ。

『アルベラ?』

「あら、コントンね。お帰り。玉は見つかった?」

 足元に落ちた、自分とテーブルと椅子の影から、獣の低いうなり声が上がる。その声に、アルベラの首の後ろにいたスーが飛び発ち、カーテンレールに止まると、不快気に身を揺らした。

『ナイ タマ ナイ ………。ムカツク ハラタツ 人間キライ ドロドロニシテヤル』

(ドロドロ………?)

「お願いだから、私の周辺で暴れたりしないでよ」

『シナイ』

「良い子。で? ガルカの方には帰らないの? まっすぐこっちに来たわけ?」

『ウン。アルベラ オチツク。ニオイ アスタッテ様』

 足にの裏にコントンが擦り寄るのを感じた。

「なるほど。………………………………ん? ああ、そっか。なるほど。ふふふ」

 アルベラは陰に潜むコントンの存在に、とある想像をし笑みを浮かべる。コントンはクンクンと鼻を鳴らす。

『コノニオイ スキ。ワルダクミ アクジ ニオイ。イイ』

「悪事だなんて人聞きの悪い。………ねえコントン。今度あなたを人がいるところに連れてってもいい? 凄く明るくて賑やかな場所なんだけど、そう居場所は嫌い?」

『カゲ アル? 神イナイ? セイイキハキライ』 

「神はいない。聖域でもない。人が開催するパーティーなんだけど」

『パティー?』

「ほう。そのパーティーだがな」

 自分の真正面から声がした。アルベラは驚いて顔を上げる。

 丸机の正面、いつの間にやら少年姿のガルカが座っていた。いかにも悪戯好きな猫目が、笑みを浮かべている。

「あんたいつからいたの?」

「貴様がにやにやと気色の悪い笑みを浮かべた辺りからだ」

「言っとくけど、今のあんたもそんな顔してるから」

 アルベラはため息をつく。ガルカは体を横に向け、肘をついて足を組み、それを横目に見やった。

「そのパーティー、俺も行くことになった。有難がれ。………ん? なんだその顔は」

「………いや。何となく想像できてた。どうせ青年姿で来るんでしょ。丁度いいわ。ぞんぶんに他のご令嬢やご婦人を垂らし込んでちょうだい。私への目があんたとエリーに分散されてくれるだけで大助かりだもの」

「なんだ。結構乗り気だったか。つまらん。もっと手の込んだ悪戯を考えといてやろう」

「手が、何かしら?」

 アルベラの後ろからエリーの声が上がる。

 見なくとも分かる。ニコニコと怒りを湛えているのだろう。

(私、スー、コントン、エリー、ガルカ。随分と人口密度が上がったものね)

 内二つは動物で、一つは魔族なので人口と呼べるか謎だが。

 アルベラはオカマと魔族の言い合いを聞き流し、テーブルの上に伏して思想にふける。

 もう一度、どこかのタイミングで八郎に会いに行ってみるか。

 まずスーに伝言をあずけ、会える日程を聞いておくのがいいだろう。

(あと、何か面白い薬開発しててくれたら嬉しいなー)



 ***



 王都の南。

 最近この辺りを頻繁に出入りするのは、災害にあい壊れた家を修理する土木業者か、その周囲の環境を見に来る研究員たちだった。

 八郎は、彼らがその辺の植物の様子や、土や水を回収していく様子を遠目に眺める。

(やはり、あのミミズ。特殊な生物だったんでござるな)

 口に沢山の牙を持つ、凶暴な肉食種であるのは聞いていたので知っていた。土を耕す範囲は広大なもので、普通のミミズ同様、耕やされた大地の恩恵は、植物にとってはありがたい物らしいが、人にとっては生活区域を壊されかねない迷惑極まりない物らしい。成体が本気をだせば、村一つ分の地盤を、簡単に崩しかねないとのことだ。

 八郎は自分の手を眺める。

(あれをひっぱたいた時、反応を感じたんでござるよなー)

 役割を完了した時の感触。

 自分がここに来るまでにやっていた事。自分をこの世界に転生させた老人から、与えられたクエスト。それを達成した時に感じた、体の中で何か、ピースが奇麗にはまった時のような「カチリ」という感覚。自分とあの害虫の接触が、何かを果たしてしまった。そんな予感がした。

(拙者の役目は終わったはず。けど、残された仕事は、そのまま消えてないって事でござるか? ご老人が準備した仕掛け。その仕掛けの条件をそろえた時、途中で投げ出された拙者の残りのクエストが、完遂されてしまう、という事でござろうか。………あの害虫。ブリーダー殿の話だと、幼体の時に北から入手してきたという事でござったなぁ………)

 北。つまり、北の大陸、という事だろうか。だとしたら、自分との可能性は大だ。確か、大ミミズの生息地に「とある餌」を撒く仕事があった。「とある餌」とは、自分が材料を集め、調合した特製の餌だ。こんなもの食ったら、普通の生物なら悶絶して死んでしまうだろうに、と当時思ったのを覚えている。このミミズは、その餌を食べた生き残りか、その子供かもしれない。もしかしたら、あのまま自分の役割が継続していたなら、自分があのミミズを殺す事で大地を汚染するという仕事があったのかもしれない。

 幸いこの地で死者は出なかった。

 だが、ミミズが地底を肥やしたせいで沈んでしまった家々があった。ミミズの体液により、一帯の植物が枯れ、水が穢れてしまった。

 地に沈んだ家を、数人がかりで魔法で持ち上げ、その間に魔法で地盤を固めている業者の者たちを眺めながら、八郎は「ぽん」と片手で頭を叩いた。

「いやー! やってしまった! やってしまったでござるな! 不覚不覚! はっはっは! はーはっは! はーはっはっはっはっは………はぁーーーー」

 自分を元気づけるように明るく笑ってみるが、罪悪感に負けて肩を落とす。

 解毒しなければ。

 八郎は土や水や草の回収を再開する。

 大ミミズの死骸はファミリーで回収している。ファミリーの中に、転移に長けた魔法を使えるものがいるので、その者によってブリーダーの隠れ家に送り届けてあるのだ。今度その死体の一部も貰いに行こう。

 ミミズを送った隠れ家は、確か、ストーレムの街から更に東の地。東北東の山中にあると言っていたか。

(遠出でござるか。ま、途中いろいろと素材も集めてくればいい旅になるでござろう。最近の試作品も試したいでござるしな)

 八郎はサンプル収集もそこそこに、近くに置いていたパンパンのリュックを背負った。重厚な重みを感じ、少しうきうきした気分で近くの木々の中へと入っていった。



 ***



 王都とチヌマズシの間の地。

 ジュノセからオノディへと月が替わろうかという頃、とある町で小さな変化が始まっていた。

 人々が気付かない程度に空気が澱み、本人たちの気付かないところで、その精神が荒み始めていた。

 敏感に感じ始めた者たちもいるが、皆自覚するのは「最近少し、怒りっぽくなってしまったかもしれない」という程度だ。

 鼻の良い魔族も、まだその匂いには気づかない。

 混ざり込んだ変化は、魚の水合わせをするように、その地の空気に薄く溶け込んで広がり、少しずつ、ゆっくりと濃度を上げていた。



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