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アスタッテの尻拭い ~割と乗り気な悪役転生~  作者: 物太郎
第4章 第一妃の変化(仮)
375/411

375、惑わしの建国際 48(花冠の決着)



「じゃあねディオール!」

「突然お邪魔してすみませんでした。また明日」

 ラヴィとルーラがアルベラの部屋から出ていく。

 ラヴィは足取りも軽くご機嫌だった。

 何故二人がアルベラの部屋にいたかというと――夕食前、謹慎明けのアルベラの元に「婚約者候補仲間のよしみ」だとかで、ルーラを引き連れたラヴィが押しかけて来たからだ。

 ラヴィはあの建国祭最終日の舞踏会――アルベラがユリのドレスに盛大にワインをかけたあの現場を目撃していた。しかもラツィラスにダンスを誘ってもらえるよう、アプローチをかけるべくアルベラ達のかなり近くにいたのだ。

 彼女はアルベラがいない一週間、特等席で見た世の話題となっているショーの感想を話したくて話したくて(謹慎になったアルベラの事もあざ笑ってやりたくて)うずうずしていた。

 そして謹慎明け祝いを名目にご馳走を持ち込みたった三人での晩餐会を開催した。そこで一週間我慢していたものを吐き散らかしてご満悦で帰っていったというわけだ。

(嵐のように去っていったな……)

 アルベラは二人が出て行った扉をあきれ顔で見つめていたが、少しして先ほどの夕食を思い返し「ふっ」と小さく噴き出していた。



 ――『ははははは! ざまぁ見ろよ、あんたもジャスティーアも! 私を差し置いて殿下と戯れようなんてでしゃばるから!』

 ――『ディオール! あんた! 私が思っていたよりおまぬけさんだったようね! 笑っちゃうわ! ――いい? ああいう時は人を使うの。私たちのような高位な貴族が直接動いて平民に手を出すなんて悪手よ、あーくーしゅ! ほら、返事! まさかあんたがこんなことも知らないお馬鹿さんだったなんてね~。やっぱり貴族としての育ちは私の方が上だったようね~!』

 ――『だけど本当に意外だわ。ディオール公爵家はこういうところに抜かりはないと思ってたのに、やっぱり歴史が浅いと穴が多いようね。あんたがそんなんなら私の第一妃への道も少しは明るくなったってもんよね。――……けど、簡単に自滅されたら張り合いがないの、わかる!? 今まで散々人をコケにしておいて、あんなつまらない事故が原因で勝手に退場されたら、散々ため込まされてきた私の腹の虫がおさまらないんだから。こんなんじゃいざ勝ったってスカッとしないじゃない! 気をつけなさいよね!』



 あれはいったいどういうつもりで言っていたのか。

(どう思い返しても私を心配してたようにしか聞こえなかったんだけど……ラヴィったらもう……――お手本のようなツンデレ……――どうしよう……最後の方はもう、あの子の事お馬鹿可愛いチワワにしか見えなくなってた……)

 くすくすと笑いながら腹を抱えるアルベラの髪が、外から吹き込む風を受けて揺れる。

 夕食の片づけをしていたニーニャとエリーが顔を上げた。ニーニャは「またぁ……」と困った顔をし、エリーはイラつきを口に出して「また礼儀もクソもなく……」と拳を握っていた。アルベラが「暴れるのは後になさい」と言ったことで、エリーはその拳を抑え片づけを再開した。

「おい。夕食は終わったな」

 当然と窓から入ってきたガルカが、そのまま窓に腰かけアルベラへ尋ねた。

「ええ。けど今朝の件についてはちょっと待って。用事ができたの」

「用事だ?」

「そ。ビエーももう少しで来るでしょうけど、皆で仲良く大人しく待ってるのよ」

「ふん。なんで俺があんな化けエリーと共に……」

 と、ガルカは部屋を出て行こうとするアルベラの後に続く。その後ろ襟へエリーの長い腕が伸びて掴んだ。

「言われたでしょう、あんたも る す ば ん。――あと誰が化け物だって?」

 どす黒い笑顔の美女の口から野太い男性が吐き出される。

「この化け物、知能は人間以下か……哀れな」

 ガルカは懲りもせず「自分が化け物と言われたことも理解できてないとは、残念な脳みそだな」と余計な一言を付け足しエリーの怒りを煽る。

「あ゛ぁ゛?」

「はあ?」

 とにらみ合う二人。それを振り返りもせず、アルベラは「ちょっと温室の方に行ってくるだけだから。すぐ戻るから勝手にどっかふらつくんじゃないわよ~」と部屋を出ていった。

 残されたニーニャはその状況に呆然として「行ってらっしゃい」と言うのも忘れていた。

 バチバチと火花を散らすガルカとエリーを前に、ニーニャの顔はさぁ……と青くなっていく。

「――ぇ? ……ふぇぇ!?」

 部屋の中央に居ては巻き添えを食らってしまう。

 我に返ると、ニーニャは素早く部屋の隅に避難し、スーを呼び寄せて彼女を逆さまに抱きしめた。

(ビビビビエーさん、早くきでぇぇぇぇぇ!)

 怖い、死んじゃう。と怯えるニーニャの腕の中、スーは迷惑そうに身じろいでその腕から抜け出そうと藻掻く。それを「スーさん一人にしないで……!」とニーニャは必死に引き留めた。



(なんだこれ……)

 ノックへの返事はなく、だが室内からは人の気配がありありとしており……。ビエーは「何かあったら……」と護衛心で扉を薄く開いて中を覗いた。

 そこには部屋を荒さないよう両腕で高速の攻防を繰り広げるエリーとガルカ。

 部屋の隅にはべそをかいて震えるニーニャと、その腕から逃れようと足掻く青いコウモリ。

「なんだこれ」

 次は口に出る。ビエーは頭を掻き、このままでは目立つだろう、ととりあえず部屋へ入ってニーニャとは逆の部屋の隅に寄ってお嬢様のお戻りを待った。



 ***



 学園の温室は夕食後は締め切っている。

 学園で「野庭のにわ」と呼ばれている温室の周りの庭園にもさまざまな植物が植えられてはいるが、見た目重視よりも教材としての役割重視となっているため「美しさ」には比重を置ていなかった。

 毒草や薬草も植えられているだけでなく、虫や魔獣など一定の種を引き付けるとされている特殊な植物も植えられている。最も、そういった植物は特殊な柵で囲っているため生徒が間違って触れてしまうことはないが、前期の内に「とある生徒が散歩でここを訪れ、知らないうちに何かの汁をつけてしまい足の皮膚を焼いてしまった」という話が広がり、熱狂的な植物好きを除いて生徒たちが夜にここを訪れることは少なかった。

 学園側もあまりここを遊び場やたまり場にはしたくないのだろう。

 学園内にあるどの庭よりも、ここの照明や装飾は簡素なものだった。少なくともムードを求める生徒たちが来る場所ではない。

 アルベラがここを訪れたのはキリエからの手紙を受け取ったからだった。


『謹慎お疲れ様。建国祭の時に渡せなかった花冠が完成したよ。良かったら受け取ってくれないかな。

 ついでに少し話をしたいんだけどいい? 夕食後、アルベラの都合がよければ温室前の“野庭”で待ってます。

 キリエより』


「アルベラ、来てくれたんだ!」

 先に庭で待っていたキリエは、待ち人の来訪にパッと顔を上げた。

「キリエ、待たせてたみたいね。ごめんなさい」

「いいや。さっき来たばかりだから。――あ、嘘じゃないよ!」

「そう? ならいいんだけど……。花冠、できたんですってね」

「う、うん」

 もぞもぞと恥ずかしそうに、キリエは体の後ろに回していた手を前に出した。

 大ぶりな花と小ぶりな花と、丸くつるっとした実のような蕾のようなものがバランスよくちりばめられた華やかな冠。

「本当は建国祭の間に渡したかったんだけど……なんでだろう。今思うと建国祭にこだわる理由なんて無かったんだよね」

 花冠自体、老婆にもらった恋のまじないのかかっている物だからこそ渡したくて仕方なかったのだが、今となってはもうそれもどうでもよかった。

 せっかく冠を渡すなら、彼女専用に作った冠を彼女のために渡すべきだと思った。

(だって、()()()はアルベラのためじゃなくて俺のために渡そうとしてたから……)

 あれは相手を思ってのプレゼントではなかった。キリエはそう思い返し、あの時の自分を恥じていた。

「これ、もらってくれるかな?」

 キリエは冠を差し出し、同時に少量の魔力を手元に集中させた。

 冠にちりばめられた小さな白い花が柔らかい光を灯す。

 「これ……」とアルベラは零した。その表情には過去を懐かしむような笑みが浮かぶ。 

「ありがとう」

 アルベラは冠を受け取り「綺麗ね」と素直な感想を零した。じっと冠を眺め、彼女は首をかしげる。

「……前の冠と全く違う物の用だけど?」

 自分が奪ったというのになんて白々しセリフだろう。とアルベラは自分自身に思った。

「実はさ……あれ、もらい物だったんだ」

「もらい物?」

「うん。街で出会たお婆さんがさ、体調が悪かったらしくて。お医者さんへ連れて行ったらお礼にって。贈り物に最適だって言ってくれたんだ」

「あら、そうだったの」

(お婆さんがキリエにあの呪具を……)

「けど無くしちゃったんだ。どこかに落としちゃったみたい。おばあさんには悪い事したな」

「そう……それは残念……――どう?」

 アルベラは謎の老婆の話に思考を持っていかれそうになっていた。キリエと共にいることを思い出し、手の中の冠の事も思い出し、受け取った冠を頭に乗せて見せた。

「ふふ、良いわね」

 自分に似合わないものなどないと言い切るような強気な笑み。

 キリエは後ずさりそうになるのを堪える。

 素敵だった。

 眩しかった。

 照らすのは簡素な照明だというのに、自分の憧れの人は変わらず強く凛々しく輝いていた。

「と、ととととっても似合ってる! あ、……ええと――」

 緊張して強張ってしまった。キリエは自分の口を押えるように片手を当て、もう片手を「ちょっと待った!」というように突き出した。

 彼は大きく深呼吸をし、小さな咳をした後背筋を伸ばす。

「――似合ってる。うん、本当に……綺麗だよ、アルベラ」



「――」

 アルベラは思わず言葉を失ってしまった。

 照れくささや恥ずかしさは完全にはぬぐい切れず、かの幼馴染は控えめな笑顔を浮かべていた。

 臆病で恥ずかしがり屋のはずの彼が真っすぐに自分を見ている。昔の様に背を丸めもせず、長い前髪の下に目元を隠すこともせず。

(……)

 アルベラはつい視線を逸らしてしまう。うっかりドキドキしてしまった自分に「これは反則だ」「不可抗力だと」言い訳する。

 「暗がり」に「プレゼント」に「綺麗だよ」だ。そんなの、どんな女も男も(?)ムードに乗せられてしまうのは仕方ないだろう、と。


 だから……?

 それで……?


 胸の内の言い訳に首を振り、アルベラはキリエを見つめる。

(私は、キリエの事は好きだ。幼馴染として、友達として……)

 ――優しいところが、穏やかなところが、その態度を分け隔てなく他者に向けられるところが。そして真面目で、筋トレと動物に関しては一生懸命で、……お嬢様の我儘に振り回されながらも好いでいられるくらい堪え性があって……

 なぜ? とアルベラは自分に問いかける。

 なぜその「好き」は「恋」にならなかったのか、と。

 ()()()()ヒーローなのだ。

(なのに……)

 アルベラの脳裏にあの赤髪のヒーローの後ろ姿が浮かぶ。



 ――『綺麗だよ、アルベラ』

 キリエは自分が言ってしまった言葉を頭の中反芻し、鼓動を高鳴らせていた。

 耳の奥を叩くバクバクと煩い心音に目を回しそうだった。

「キリエ」

 アルベラは冠を持ち上げ、キリエの頭に冠を移した。

「貴方、まだ私の事が好きなの?」

 キリエの顔がぽんっと破裂するように赤くなる。

 いつかの自分も他人からはこう見えていたのだろうか、とアルベラは小さく苦笑した。

「――うん。好きだよ……ずっと」

「そう……」

 長い紫のまつ毛が花冠の光を受けて影を落としていた。

 だがそれはすぐに持ち上げられ、吸い込まれるような緑色の瞳が姿を現す。

「私がなんで謹慎してたか知ってる?」

 知らないはずがない。

 そんな視線が向けられ、キリエは胸の高鳴りも忘れて「……うん」と首を縦に振った。

「私はジャスティーアが嫌いよ」

 アルベラの一言にキリエは呆然としてしまった。

「平民の分際であんなドレスを着て、殿下と踊って、貴族と親しげに話して。おまけに殿下の婚約者候補なんて話もあるじゃない。あの子どこまで調子に乗るのかしら。気に入らない」

「え? アルベラ……?」

「私のこの気持ちは、すぐに変えられたりできない。誰に何と言われても」

 それでも好きなのか? と見つめてくる瞳に、キリエはこくりと唾をのんだ。

「俺も一緒だ。――この気持ちは、すぐになんて変えられない」

「ジャスティーアがどうなろうとどうでもいいのね。貴方たち友達だと思っていたのだけど」

「友達だ」

「友達を虐めてるのに、それでも私の事が好きなのね?」

「うん。だけど、アルベラが虐めてるところも、ユリさんが虐められているところも見たくない」

「なのに……? 貴方どうかしてるわね」

 これも惚れた者負けというやつか。と、アルベラは目の前の幼なじみが哀れに思った。

「勘違いじゃなくて? キリエはただ、周りに目を向ける余裕が無かっただけじゃない? 私の事を好きだと思い込んでいたから、他の人へ目を向けようとしなかっただけで――」

 「違うよ」とキリエがアルベラの言葉にかぶせた。アルベラが言葉を切ると、彼は「違う……違うんだよ、アルベラ」と悲し気に首を振った。

「俺、中等学園に入ってできるだけ他の人と関わるよう努力してきた。アルベラと一緒に居て恥ずかしくないように、もっと頼もしくなれるようにって。それで、先輩や後輩も出来て、色んな人がいることを知って、触れて。それで思ったんだ――『やっぱり、俺にとってアルベラは特別なんだ』って」

 感情の乱れが魔力の流れに影響したのか、キリエの頭に乗せた冠の輝きが揺らめいて強くなった。

 まるで天使の輪っかだ。

 アルベラは目元を覆い深くため息を吐いた。

 アルベラはどうしようもなく呆れていた。

 盲目的な幼馴染にも、こんな……相手の好意を試すような事を聞いている自分にも。

「ア、アルベラ?」

「キリエ」

 やはり、一方的に気持ちを縛り付けるのはフェアじゃない。知っていれば避けれる浪費もある。そう思った。

 だから――

「私ね、気になってる人がいるの。貴方じゃない、別の人」

「……」

 桃色の眼が大きく見開かれた。それはぐらりとゆらめき心を痛める。

「だから貴方の気持ちに応えられない」

「――そっか……」

 「それって」とキリエは何か言おうとしたが言葉を飲み込んだ。

 堪えるように唇をかみしめ、自分を落ち着かせてから口を開く。

「その人の事は『気になってる』なんだね。……『好き』じゃなくて」

 アルベラは首を横にふる。

 『好き』などとは口には出せなかった。心ではもうそうなのだろうと受け止めていた。この気持ちはもう、「気になってる」の段階をこえているのだろうと。

 だがまだキリエのように盲目的なほどまでに育ってもいない。

 口に出してはいけない。そんな気がした。口に出し誰かに言ってしまえば急速にこの気持ちは膨らみだしてしまいそうで……。それは避けたかった。

(全部が終わってから向き合う。だから)

 それまではあの騎士様も他のヒーローと一緒だ。

 時として警戒対象であり、騙す対象でないといけない。あの、「友達」という存在に執着する寂しがり屋の王子様だって。

「……そっか」

 キリエは悲しそうに笑い肩をすくませた。

「アルベラにとって、俺がそういう存在じゃないって事はわかったよ」

「ごめんなさい、キリエ。――けど」

 アルベラはキリエの顎を軽くしたから押し上げる。

「後味が悪いわね」

「え……?」

「私の言葉なんかで気を落としてるんじゃないわよ。背筋を伸ばしなさい。大したことないって前を向きなさい」

「……」

「人に好意を伝えるのはとても勇気が要る事でしょう。今回は私が無理やり聞き出したようなものだけど」

「いや、そんな風には……」

「貴方にはそれだけの勇気がある。それは凄い事よ。ほら、褒めてるんだから胸を張りなさい」

「……――っ、……はは……そういところが さ……」

 ぽろり、とキリエは涙をこぼした。それを袖で拭い「ちょっと待ってて」とアルベラに背を向けた。

 涙をこらえて空を仰ぐ。

「うん」

 振り返ったその目に涙は無かった。目元に赤みを残し、キリエは胸を張った。

「アルベラ――やっぱり、俺の気持ちはすぐには変えられないよ。……というか、この気持ちをどうやって捨てたら良いか分からない。捨てたくない」

 アルベラにも前世の物ではあるが失恋の経験はあった。だからその切り替えの難しさは知っていたし共感もできた。

「貴方の気持ちよ、好きにしなさい。けど、私はちゃんと伝えたからね」

「うん……。ありがとう、教えてくれて。あとこれ――」

 キリエは自分の頭から冠を持ち上げ、それをアルベラの頭の上へ戻した。

「君のために作ったんだ。受け取ってほしいな」

「……わかった。ありがたく受け取るわ」



 部屋に戻ったキリエはソファに深く腰掛け脱力した。

 同室の友人は部屋には居ない。きっと他の部屋へ遊びに行っているのだ。だから心置きなく、情けない声をあげられた。

「はぁぁぁぁぁぁぁ……」

 建国祭はとっくに終わっているというのに、キリエの中ではあの冠を渡せてようやくあの一週間にけりが付いた気がした。

 冠を渡さねばと焦っていた一週間。

 呪いなどという他人の力と自分のためだけの利益に惑わされてしまった一週間。

 ――『私ね、気になってる人がいるの。貴方じゃない、別の人』

「ぅ、ぐぅぅぅぅ……」

 先ほどの衝撃的な言葉を思い返すと、まだ新鮮な痛みが胸を締め付けた。

 キリエは胸を抑えうずくまる。

(あぁ……フラれた……フラれた……――)

 だが、少し前から心に引っかかっていたものは解けた気がした。

「はぁー……そっか……そうだよね……はは、ははは……」

 彼女も人間だ。いつかは恋をする。それはあの王子様か、騎士様か、はたまた噂の冒険者なのか……。

 それを本人の口から聞き受け入れることができた。

 リミットはあるのだ。それは彼女が正式に第五王子の婚約者となった時か、又は彼女が抱いている恋心が膨らみ切った時。

 けどそれまではまだ――

 ――『貴方の気持ちよ、好きにしなさい。けど、私はちゃんと伝えたからね』



(うん、好きにするよ。これは、俺の気持ちだ)



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