362、惑わしの建国際 36(コントンが食べた)
(コントンどういうことぉぉぉぉぉ!?)
今すぐ本人に問いただしたかったがここであの魔獣を呼び出すわけにはいかない。地面の抉れには卵だけでなく赤黒い液体も、シミ一つ残さずきれいさっぱり無くなっていた。
(食べたの? 貴方もしかしてあの卵を食べたの?? 美味しそうって言ってたし! ……――て言う事は……え? さっきの音まさかクエストの完了音!? あんな音だったっけ!? いやそうじゃなくて!!)
頭の中がひっちゃかめっちゃかのアルベラをよそに、マールは冷静に穴とその周辺を観察していた。
「これは?」
とマールが丸眼鏡を光らせ尋ねる。
脳内の騒ぎをぴたりと止めてアルベラは笑みを張り付け返した。
「――穴ですね」
「何の穴でしょうか?」
「さぁ……なんでしょう。瘴気はそこから感じられたんですか?」
「原因がここかは分かりませんが、その残滓は感じられます。ディオール様、この穴について何もご存じありませんか?」
「多分戦闘の時に出来たものかと。あの人たちも魔法を沢山放ってましたから。もしかしたらその中に呪具での攻撃があったとか」
「確かに……それでも残滓は残りえます」
「そうですか。では彼等を調べる際は呪具の所持についても調べておきましょう」
「ディオール様……」
「はい」
マールの視線がアルベラの額へと向けられる。
「ディオール様のお怪我の治療は大丈夫でしょうか……。もしよろしければ今のうちに私が」
(聖職者の癒しはちょっと……)
「いいえ。後で専属の者に治してもらいます。お気遣い感謝いたします。皆さまには彼等……と、彼の回復として頂ければいいので。それ以外で手を煩わせるつもりはありません。他のお仕事の最中に呼びつけてしまったのです。出来るだけ早くお返しできればと思っています」
「はい……」
余計なことをせず用を済ませて早く去れ。マールはそう言われているような気がした。
(警戒心の強い子……。これ以上は何を言っても無駄かしら。余計な介入はせず彼女の目的を果たす事だけに徹しましょう……)
マールはそれ以降は口を閉じ、仲間達のと共に淡々と己の役目を果たした。
***
治療師たちは刺客たちの治療を終え荷をまとめていた。後はこの場を去るだけとなったマールはあのお嬢様の背を眺める。
――良いんです
――彼等は私を殺しに来ました。アレはその罰だと思ってください。
あの時の、腹を抉るという行為を作業としか見てなさそうな少女の顔。終始微笑んだままのあの表情――。
(……あの子は、人の命を握る事をどう考えてるのかしら……それとも考えるのを止めたのか……)
刺客を捕らえて腹を抉ってもう一度尋問するなど、そんな事を考えるだけでなく実行できてしまう彼女が気味悪かった。そして恐ろしさよりも哀れみを抱いてしまった。
「どうしたらあんな風に育つんでしょうね……」
マールの耳が、共に来た治療師達の小声のやり取りを拾い上げる。
「やっぱ高等貴族の英才教育ってやつ? 冷酷な教師でもつけられて育ったんじゃない?」
「環境って奴か……可愛そうに」
という者の言葉は同情というよりも皮肉ってのものだった。だがマールの心境はそれとは違う。
(環境……)
アルベラは刺客たちの腹を抉った男性の使用人と何かを話し終え、女性の使用人に指示を出してどこかに行かせるとマールたち治療班の元に来る。
自分の元へやってくるその少女を眺め、マールは今まで出会い治療してきた不遇な環境に晒されていた子供たちの顔を思い浮かべる。
戦争に参加するしかなく日々の命のやり取りに大人びるしかなかった子。生まれつき体が弱く自室しか知らない空虚な目をした子。
(もしもあの子にも……素直に笑ったり泣いたりする幼少期があったなら……それを周りの人間が許さなかったなら……我慢を強要されて辛い日々を送っていたなら……その中でゆっくりと心が麻痺していったのなら……)
年のせいか涙もろくなったマールの目がじわりと潤む。
「お疲れ様です。ありがとうございまし た……」
言いかけたアルベラはぎょっとした。マールがそっと彼女の手を包み込んだからだ。
「ディオール様……」
「は、はい?」
「人はだれしも、生きた分だけ苦労を重ねてくるものです……。貴方の身の回りにもきっと貴方の助けになってくれる人はいらっしゃいます。どうか人生に失望なさらないで……誰にだって明るい未来への道はあるものです。どうか希望をお持ちください……」
「は、はあ……」
目の前のお嬢様が父に甘やかされ好き放題に幼少期を過ごしていた事をマールが知ることはない。
(あれ? 引かれてたと思ったら同情されてる……?)
魔術具の回収を終えたアルベラは、癒しの教会へ帰る治療師たちにユリを共に教会へ連れて行ってもらうよう頼み、人の立ち入りを防ぐために路地周りに配置していた兵士達へはキリエを学園へと運ぶよう頼んだ。
ユリは治療師の一人がおぶり、キリエには馬車を手配しそれに兵士を同行させた。
部外者が退いて肩の荷が下りたアルベラは「ほう」と息を吐きエリーへ次の指示を出す。
「おかしなババアだ」
去り際のマールの変化にガルカがこぼす。アルベラは「ババアじゃなくマダムとおっしゃい」と返しエリーへ声をかけた。
「この通りで空いてる部屋を探して。彼等が全員収まる広さをお願い。アネス(アパート)でもホテルでも倉庫でも良いわ。あと魔術具師を呼んどいて。それはお母様に連絡して手配してもらうのが良いか」
「全員学園に連れていくわけにはいきませんものね。了解しました」
(魔術具は取り出せたし、あの人たちもすぐ死ぬわけじゃない。魔術具師が来るまでどれくらいかかるか分からないけど時間の心配はもうしなくていいか。……ああ、けど舌噛んだりとかで死なれないよう注意はしないと)
部屋探しをエリーに任せアルベラはガルカに声を掛ける。
「彼等は? まだ目を閉じてる?」
「ああ」
「あんたが許すまで目を開けないし動かないのね」
「そうだ」
「分かった。じゃあそっちはほっとくとして――」
アルベラは使いなれて暗記した印を描き、刺客たちの周りと自分達の周りに一つづつ防音の魔術を張り直した。魔術具を取り出す最中にもかけていたが、一定の時間が経てば薄れて解けてしまう魔術なので念のため張り直した。外にも、そして目を閉じて視界を奪われている刺客たちにも、これからの会話は聞かれたくなかった。前者には単純に通報されないため。後者は、これから生き残るかもしれない彼らにこれ以上こちらの情報を与えたくないからだ。
「コントン」
――グルル……
のそりとアルベラの陰から出てきた彼は興奮しているようだ。
普段閉じている額の眼は開き、辺りをぎょろぎょろと見回していた。
「なるほど。確かに少しまともじゃないようだ。なぜこうなった」
「ユリが持っていた聖獣の卵を食べたの。正確には卵の殻だけど。それで、その殻だけど見るからにやばい感じで……多分瘴気を纏ってて……あ、ほら、あの玉と同じ。アスタッテ関係の奴。コントンがそれを食べちゃった瞬間はエリーが見たって」
「ほう。確かに少しの間だがアスタッテの匂いが濃くなっていたな。あの匂いはそれか……。で、その後コントンはアレを吐き出したと」
「ええ」
アレとは、ユリと共に治療師たちへ預けた卵の事だ。
ガルカが刺客への「拷問」――もとい「魔術具回収」に「夢中」――もとい「勤しんでいた」時、アルベラの傍らから「ぺっ」と吐き出す音が上がり卵が地面に転がり出た。ともに「マズイ」というコントンの声も陰の奥底からひそりと聞こえた。
「卵!」とアルベラがそれを抱え上げると、卵は割れる前に比べ幾分か軽くなっていた。(それでも思いには変わりがないが)
つるりとした白い表面にはオパールのような輝きが加わっており、サイズも殻が二枚分無くなり一回り小さくなっていた。
(これが本来の聖獣の卵の姿……?)
とまじまじ観察していたが、聖なる気という物を卵のうちから纏っているのか、教会にいるときのような寒気を感じたため鞄に入れてユリの傍らに戻した。
妖精たちも適当に鞄に突っ込み、毛様済みだとアルベラは一つ深く息を吐いたのだった。
「貴様らが何かやっているのは見えていたが……ふむ、卵の中に黒い卵か。少し見てみたかったな。コントン、美味かったか?」
――バウ!
コントンは頭を下げ尻を高くし、千切れんばかりに尾を振る。
テンションが上がってる犬そのものと言った姿だが、アルベラには彼の真っ黒な巨体と額の眼にいつもの微笑ましさは感じられなかった。興奮したコントンの姿には彼が魔獣だという事を再認識させる凶暴さや禍々しさがあった。
『アスタッテサマ……クライクライフノアルジ……ニオイ……オイシイ オイシイ……ニオイ……』
(コントンの瞳孔、いつもより大きく開いてる気が――)
「――わ、」
ぐい、とコントンが鼻でアルベラの体を押す。
『オイシイ…ウラミノニオイ……モット……モット……』
「大丈夫なの、これ?」
コントンの大きな口からはだらだらと涎が垂れ落ちていた。
飢えた獣を前にしているようでアルベラは落ち着かない。
「アスタッテの力にあてられ錯乱してるだけだ。正気も残ってるようだし大丈夫だろう」
「コントン、祠にあった玉の時は食べずにいたじゃない。竜血石だって」
「祠のあれは触れられなかったなが、竜血石の方は口の中に入れていたんだろう」
「まあ……袋越しだけど……」
「玉が触れられなかったのは、それほどまでに沢山の人を食って来たからだ。あれには既に過去に取り込んできた人間どもの負が凝縮されていた。濃度が高すぎたんだ。だからコントンも匂いや気配だけで満足できた」
「じゃあ、あの卵はそうじゃなかったから食べたと?」
「さぁな。見ても無い物をどう推測しようが無駄な話だ。玉は無理だが卵は食べれた、それが全てだろ」
「そうだけど……。ねえ、コントンを正気に戻す方法知らない? このまま連れまわして大丈夫かな」
「ああ? 放っておけば治るだろう。そのうち消化しきる。不安ならどこか遠くに行ってくれと地に額を擦り付けて頼んでみろ」
面倒臭げにガルカは答え、そんなガルカをアルベラは軽く睨み付けた。
「それあんたが見たいだけでしょ」といい話を戻す。
「消化ね……。アスタッテの力ってただの瘴気とかとは少し違うんでしょう? 大丈夫――」
「知るか」
「……?」
「貴様なんでも俺に聞いて解決すると思うな。俺はアスタッテの専門家でもコントンの専門家でもない」
(あ……質問攻めにし過ぎた。飽きてきたか)
「ごめん、つい魔族だからヌーダの知らない事知ってるかと――」
「魔族だからこそなんでも真実を話すと思うな。それは人間同士でも同じはずだ。真実が知りたいのなら貴様の目で見て学び取れ。俺の知識を安く思うな」
(あぁ……扱いづらいやつ……。ころころ気分変わるんだから)
「ご、ごめんて」
「ふん……――まぁ、今は腐っても魔術で契約した主だ。だが明日はそういう質問攻めも答えてもらえると思うなよ」
「明日? ――あぁ、大丈夫だから。一日自由にしなさいって。社会的なマナー内で」
明日はガルカが一日休暇をとるという約束の日だ。アルベラはわかってる分かってると、うんざりしたように片手で払う仕草をする。
「その代わりちゃんと今日は働いてくださいませ。で、魔族の奴隷様。アスタッテの力の消化は? アスタッテの瘴気って魔獣とか取り込んでも大丈夫なものでございますか」
「何を言ってる。炎雷の魔徒を訪れた時の話を忘れたか。魔族はアスタッテの墓に供物を供えて力を授けてもらうと言ったろう。人が神に祈って聖力とかいう小汚い魔力を与えられるのと同じようにな」
「なるほど。魔族が手にして扱えるって事は魔獣も……」
「聖力だろうが瘴気だろうが魔力は魔力だ。体に良い物でも悪い物でも取り方によって薬にも毒にもなる。つまりだ」
「つまり?」
「上手くコントンの力となる事もあれば毒となりこのまま狂い続ける事もある。俺が知るか」
「はぁ!? 良くなるんじゃないの!?」
「アスタッテに供物を捧げ力を分け与えられ、凶暴化し暴れる魔族もいるからな。力を与えられても良い結果だけではないの事実だ」
「なんで魔族ってそんなリスキーな事してるわけ!?」
「人は魔族を危険視し狩るだろ。狩られる側の弱者は人を恐れる。だから命からがら力を求める」
「そ、そっか……」
(それを聞くとなんか哀れ……)
「まぁ、恐れる対象が人と限った話ではないがな。――気にすることは無いだろ。駄目だったときは野に放つか消滅させるかすればいい。どうせコントンが貴様を襲えばあのオカマも迷わず手を下す。俺もこの魔術がある限り貴様等に牙を剥く奴は始末しないとだしな」
「……」
(凶暴化する事があればコントンは傍に置いて置けない。だからと言って危険な状態の魔獣を野に放つなんて倫理的にそれはもっとだめでしょ……。どうするかな……)
「……ていうかエリーはあんたと違ってそんなに薄情じゃないし。多分」
「ならいざという時はあのオカマ男を餌にするんだな。腹を壊せばコントンも大人しくなるんじゃないか」
「あんた、エリーが聞いてたら頭捻り潰されてるわよ」
「いない奴の事など知るか」
――バフ……
「――!?」
アルベラの隣で突然伏せをしたかと思うと、コントンはべろりと大きな舌で彼女を舐めた。ドライアイスの様に煙を上げるコントンの涎が、アルベラの体半分に纏わりつく。
『――アルベラ、オイシイ……タベテイイ?』
「コン トン……」
じゅるじゅるとただならぬ量の涎を垂らしているのは、まさか自分を食べるのを我慢しているからだろうか。アルベラの胸にそんな不安が過る。
「コントン」
ガルカの呼びかけにコントンが「バフ!」答える。
「こいつを食えば俺はお前を消滅させる。手は抜かん」
ぎろりと金色の瞳がコントンを睨みつける。
コントンの尾が揺れるのを止めた。額の瞳がゆっくり動きアルベラとガルカを見た。
「分かったな」
『ワカッタ』
ガルカが冷たい声音で尋ねると、コントンはぐるぐると唸って陰に潜った。
『アルベラ オイシソウ……ケド タベナイ……キエル イヤ』
まるで拗ねているような言葉が影の中から聞こえてくる。
(そこはせめて『アルベラが好きだから食べない』とか聞きたかった……)
コントンにとっては物の好き嫌いより先の生存の方が重要だった。分からなくもないが、と思うもアルベラは肩を落とす。
(感情よりも本能。流石獣……)
『――グルル……アルベラ スキ……タベタラ ズットイッショ……――グルル……』
「そっち……」
「貴様分かってるんだろうな?」
――バウ!
ガルカの言葉に答えるコントン。
未だ目がギンギンに開いたままの魔獣をアルベラは冷汗を背に感じながら、不安に目を据わらせて眺める。
(コントンの様子には要注意だけど……)
このままコントンの事だけを気にしてもいられない、とアルベラは切り替えることにした。
(ま、まあ……これで卵のクエストは完了したわけで、何はともあれ一つ命の危機は脱した! よ、よし! 結果良ければすべてよし!)
半ば空元気で拳を握る彼女へ「動作と感情がバラバラだな」とガルカが呆れる。
「――さて、あとは」
気を取り直し、アルベラは「残りは一つ」とキリエの花冠を手に取った。
せーの、と心の中で声掛けをし花冠を壊すべく左右に引っ張る。
周りの花などはアルベラに強く握られあっけなく潰れ、幾つかの茎はぷつりぷつりと千切れた。しかし、花冠の芯となっている蔦のようなものが思っていたよりも少し硬く頑丈だった。
(クエストクリアの音はないし、これじゃまだ『壊れた』と認識されてないか…)
それでも己の腕力で壊せる範囲だろう、というのが冠を握ってみたアルベラの所感だ。
「結構頑丈ね」と呟き、巻かれたリボンや散りばめられたパールのような装飾品を外していく。そこら辺に捨てるのは長年日本で育て上げられた道徳心が許さず、ガルカにポイポイと渡していった。ガルカも反射的に、手を受け皿のように出していたので装飾品がそこら辺に捨て散らされることはなかった。
アルベラはこんなんで蔦の強度が変わるとは思っていない。が、装飾が邪魔で芯の部分が見えずらかった。見えなくとも力の限り引きちぎってはしまえるが……言うなれば「何となく」だ。
手の上に置かれた装飾品を呆れた顔で眺めていたガルカだが、リボンをつまみ上げ目の高さに持ち上げた。他の装飾品も幾つか同じようにし、柔そうなものは指に力を入れて砕く。
すると砕けたパール(見るからに安い偽物)から魔力が光の粒子となって器から漏れだし空に溶けていく。
「……?」
ガルカは先程まではなかった匂いや気配に気付き、その出所へと顔を向けた。
そこではアルベラが「んー!」と声をこぼし、両手で力一杯あの花冠を引っ張っていた。
やはり、先程にはなかった力をその冠から感じた。
「待て」
ガルカは冠を見据えたまアルベラを止める。
「なに?」
「貴様、これはなんだ」
「何って」
『アスタッテサマノ ニオイ』
「……!?」
コントンが鼻を寄せて来たのでアルベラは冠をコントンから遠のける。
「食べちゃダメよ」
『イラナイ』
「これはいいんだ……」
(基準謎だな……)
コントンに気を取られているアルベラからガルカは花冠を奪う。
「ちょっと、」
「これもアスタッテの匂いか」
冠をいろんな角度から観察するガルカ。
「――……悪い?」
とアルベラは開き直って腕を組む。頭の片隅では「卵だけじゃなくこれも?」と自分も知らなかった事実に首を捻っていた。
(卵も冠も、ただの悪役令嬢業の仕事とおもいきやあの賢者様の撒いた種の回収だったか……。私が分かってなかっただけで、今までの嫌みとか水かけとかもまさか『種』関係だったのかな……。いやいや、『嫌み』が変な力を払うとは思えない。てかなんでキリエがこれを? ……手作りって言ってたのは嘘だったとか?)
「ふん。何を警戒してるか知らんが、俺はただ気になったからこれを見ているだけだ。貴様がアスタッテの瘴気を集めていることに関して問いつめる気はない」
「集めてないし。偶然そうだっただけよ」
「ほう。だがあの玉もアスタッテの物(匂いが濃いもの)だった。この二つが偶然とは思わん。貴様には『いつか話す』とかいう、今は話したくないやましい何かもあるようだしな」
(何がやましだ。――転生や役のことは話せないし、そりゃ聞かないでくれるのはありがたいけど……)
本当に何も企んでいないのだろうか、と訝しるアルベラだがそこへエリーが戻ってきた。
「お嬢様ぁ~。場所、とれました~! それなりに良い広さですよ~!」
防音の魔術内に入ってきた彼女はそう声を上げ、「さあ褒めろ」と言わんばかりに手を振っていた。





