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アスタッテの尻拭い ~割と乗り気な悪役転生~  作者: 物太郎
第4章 第一妃の変化(仮)
324/411

324、初めての宿泊学習 20(特別休暇のファスン)



 クランスティエルの城内。美しく整えられた庭とそれを囲う回廊。その回廊を騎士二人とガルカを連れラーゼンが歩いていた。彼らはつい先ほど、定期的に行われている統領主の会議を終えたところだった。

 みずみずしく鮮やかな発色を披露する草花には目もくれず、ガルカは自分の上後方に感じる暗い魔力に気を向けていた。

(ここまで漂ってくるとは)

 前にもラーゼンに連れられて何度か訪れていた城内。以前には感じなかった香しさが、彼の魔族の本能をねちっこく刺激してくる。

 首筋をチクチクとこそばゆく刺激されるような感覚に、ガルカはつい片手でその辺りを押さえるように撫でていた。

 ラーゼンとその護衛の騎士達もだが、この辺りを歩いている者たちにはガルカの感じているそれが分からないらしい。

 和やかな雑談に笑みを浮かべる者、声を潜め誰かの噂話に興じる者、何かしらの書類や書物を抱え足早に通りすぎていく使い走り、いつもとなんら変わらない様子の人々―――。

(ここにいるヌーダ共では気づけないか……だが、無意識に惹かれてる者はいるようだ)

 偶然ガルカの目がとらえた使用人の女性は、一見健康的で仲間たちと楽しそうに笑っていた。彼女の浮かべる明るい笑顔とは真逆に、その周りには彼女を取り囲うように暗い気配が、あの香しい香りがまとわりついていた。

 それはあのダークエルフの死に際に出た黒い靄や、ついこの間に久々に見たあの緑の宝玉の気配に似ている。

()()がこの先どうなるのか、気になるとこではある……。そのうちまた見に来るか)

 軽い風が草花を揺らした。ともにどこかで大きな魔術の気配がし、二度目の風には僅かにその魔術の余波であろう魔力が乗ってきていた。

 大きな魔術に膨大な魔力。それは二日前の午前中に起きたものと同じ気配だった。

 ガルカは顔を上げ建築物に囲われた先の空を見上げた。

(帰ったか)



 ***



 日本でいう金土日の曜日を使っての宿泊合宿を終え、学園には生徒たちが戻っていた。

 本来なら登校日である一週間の頭の平日月の日(ファスン)。今日は特別休暇となり今週の登校は明日からだ。



「お帰りなさい、ユリさん」

 清めの教会、ユリの目の前には清めの聖女ジパード・コール、癒しの聖女メイク・ヤグアクリーチェ、恵みの聖女シャイ・グラーネがいた。

 三聖女そろっての空間にユリの手は汗でびっしょりだ。

(この状況は一体この状況は一体この状況は一体……)

 皆和やかではあるが一介の平民であるユリは否が応でも緊張してしまう。分不相応という言葉は今まさに事の時のため、などとユリが考えている間にも、聖女たちはユリの持ち帰った大きな卵を肴に会話を弾ませていた。

「ずいぶん育っているっていうのに、まだまだ孵りそうにはないわね」と癒しの聖女メイ。

「ですがこの感じは何でしょう。聖獣の卵には間違いないんでしょうが、たまに妙に落ち着かない感じが……」と恵みの聖女シャイ。

「やはり恵みの聖女様も感じましたか。私だけだったら気のせいかと思っていたでしょうが」と清めの聖女ジパード。

「あらあら、清めの聖女様ったら。それなら私も感じていましてよ!」

 と負けん気強くメイが声を上げる。

 幼い姿をした聖女の言葉と表情に、清めと恵みの二人はくすりと笑みを浮かべ「そうですよね、申し訳ございません」と柔らかく謝った。

「聖女そろって何かを感じているんですもの。念のため、こちらで少し預かって調べさせてもらいたいのですがどうでしょう?」

 清めの聖女が二人の聖女とユリへと尋ねる。

 卵の固く滑らかな殻を撫でながら、彼女はその中を魔力で探ってでもいるのか瞳の奥を金色に輝かせていた。

 「そうね、それがいいわ」とメイが頷く。

「いいかしらユリ?」

「は、はい!」

 返事と共に背筋を伸ばす彼女に「そんな緊張することないじゃない」とメイが笑う。

「湖の主には卵から孵すか、親元に返してやってほしいって言われたのよね。見たところドラゴンなんでしょうけど、ドラゴンの聖獣は数頭。しかもみんな気難しいのよね。人間が接触しようとして答えてくれるかどうか」

 恵みの聖女はうなずき、「にしてもなぜ」と腕を組み顎に手を当てる。

「聖獣の卵が湖の底に……。もし人の手が加わっての事でしたら大問題ですね……。幼い聖獣や神獣を狙った密猟者は絶えませんから……」

「捕まえても捕まえても減らないんだもの。不思議よね……。むしろとっ捕まえてやってることに感謝してほしいってのに。自分が命拾いしてるってことわかってない子が多いもの」

「お二方、魔獣や魔族が狙うこともありますから、まだ密猟者の仕業とは言い切れませんよ」

 「あら、わかってますわ、清めの聖女様」とメイがすまし顔で返す。

 そのしぐさも表情も、まるで大人ぶった子供の見栄にしか見えないが彼女がこの中で一番の年長者なのはここにいる全員が知っていることだ。だから他の聖女たちは微笑みながらも「彼女は知ってて当然だろう」と、彼女の言葉を軽くあしらうことはない。

「魔獣にしてみれば神獣も聖獣も栄養豊富なご馳走。魔族からしてみれば、神獣はご馳走、聖獣は天敵ってね。卵のうちに狩ってやろうって輩や、幼い聖獣をいたぶって発散する輩もいるって聞くわ。―――この子たちってば、人からもその他からも卵のうちから大人気ね」

(嫌な人気だな~……)

 聖女たちの話を聞きながらユリは苦笑する。



 卵について話し合い、面倒は変わらず預けられたユリがこのまま見るべきだという事でまとまった。

 聖女たちに言わせると、聖獣の卵が預けられたのは「神のご意志」であり、きっと何らかの試練なのだと。

 「なぜ自分がそんな試練を」と思うも、ユリは妖精たちや湖の主に頼まれた時から自分が面倒を見るものと、自然とそう思いこんでいたので卵の面倒については特に何とも思っていなかった。むしろ人に預けるかもという選択肢がここで出てきて、「そういえばそうか。普通聖獣の卵なんてあずかれないよな」と納得したくらいだ。

「ドラゴンの卵は気温には強いし、この国の室内ならどこも全く心配ないわね。ドラゴンが孵るのに必要なのは上質な魔力や精気。そして生まれてくる子はその環境に流れるにそれらの質に影響されるわ」

「メイ様、ドラゴンについてもお詳しいんですね」

 ユリの流石聖女、という期待の視線にメイは「ふふん」と胸を張る。

「いい、ユリ。怒りや憎しみ、悲しみの気を帯びた争いの地で生まれる子はすべてを憎み、悲しみ、哀れで粗暴なドラゴンとなる。清い空気、人のいない自然豊かな地で生まれた子は獣たちの長たる気高いドラゴンとなる。そして人に囲われ豊な感情に触れて生まれたドラゴンは―――」

 間をためて、メイはユリの目を見て楽しそうな笑みを浮かべた。

「個性豊かな、その環境の映しとなったドラゴンとなる。ドラゴンである気位は大抵変わらずだけど、人のそばで生まれた子たちっていうのはね、自分たちを囲う人間の感情や思考に影響を受けているの。卵の中にいるときから周囲が自分にとってどんな存在かを把握して考えてて。傍にいる生き物は危険か安全か、彼らは理解し生まれた後もその情報をもとに周囲との付き合いを構築していく。今もきっと、この子は一番傍にいるユリの魔力や感情や、王都を満たす精気の質を感じ取っているはずよ」

(私の魔力や感情……)

「この子がどんな子になるか楽しみね」

 「はい!」とメイの言葉にユリは気合に満ちた返事を返す。

 卵から孵り力強い羽根でのびのびと空を舞うドラゴン。それを地上から見上げる自分。そんな光景を想像し、彼女の胸は高鳴った。

 清めの聖女は精気に満ちた若い聖女見習いの姿にまぶしそうに眼を細める。

「もし生まれたらこちら(清めの教会)の厩にも数等ドラゴンがいますから、そこに預ければいいでしょう。学園にドラゴンの幼体、しかも聖獣がいるとなると問題の種になるでしょうから」

「はい。ありがとうございます、コール様」



「それでユリ、建国際のドレスについてだけど」

「はい……建国際ですか……?」

「ええ、貴女も今までに参加したことはあるでしょう」

「はい。王都もその周辺も、一週間いつも以上にお祭り騒ぎですよね。王都で過ごしたこともありますが、どちらかというとお隣のストーレムやマーブル、バブラーディーを回ることの方が多かったです」

「ふふふ、お父様の仕事の都合ってやつね。けど、今年はそうもいかないでしょう。貴女はここクランスティエルの都立学園の栄えある生徒なんだから。あの学園の生徒も貴族に開放している城内の会場に立ち入る権利があるのは知ってるでしょう」

「はい」

 健国際についてなら、学園に入学してからリド達とも話していた。通常なら気軽に立ち入れない城内に平民である自分たちが立ち入れる。七日間のうちの一日目が一番入場者が多く盛り上がる。

 ユリとリドは、その一日目には城に行こうと約束していた。もちろん一日目以降も、また城に行きたければ行けるので一週間のそのお祭り騒ぎどう過ごすかはこれから更に作戦会議と行くことだろう。

(出店には普段目にできないような珍しいアイテムも並ぶっていうし、今まで頑張ってバイトしてきたんだもん。こういう時に楽しまなきゃ)

 ぐっとこぶしを握るユリに、「気合十分ね」と嬉しそうなメイ。

「それで、そのドレスを私からプレゼント。学園のものを借りる予定だったんでしょう? 貴女の誕生日も近いんだし、ここはぱーっと腕のいい職人に頼んで素敵なドレスで楽しんでらっしゃい。ドレスと靴と、小物もまとめて頼んであるから今週中に店に行って寸法を取ってくるのよ。その店のセンスや腕は私が保証するわ」

「え、あ、あの、ドレス……寸法て……え……!? ドレスをオーダーするんですか!?」

「ユリさん」となだめるように清めの聖女。

「は、はい」

「急に高価な品を渡されて驚いているというのなら、少し難しいお使いを頼みましょうか? そうすれば貴女も、それに見合った対価という事で納得できるでしょう。ねぇ、恵みの聖女様」

「ふふ、そうですね。人手が必要なお仕事でしたら恵みの教会にも沢山ありますから」

 癒しの聖女の手厚いほどの贈り物は、聖女になりたての頃彼女らも通った道だった。

 まだ正式な発表もされてないうちから気が早いものだと思いながら、清めの聖女は本人が決めた以上いくら断ろうともそれが通らないことは重々知っていた。だから受け取り手が少しでも気楽になれる方法を提案する。

「あら、いいわね」

 とありがたいことにメイも乗り気だ。

「清めと癒しと恵みの教会の仕事。とってもハードなのをお願いしましょう。―――どう? こちらもそれなりにきつい仕事を準備するんだもの、貴女も安心して報酬を受け取れるわね」

「は、はい……ですが、」

 どれだけきつのだろと不安に思うも、ユリにはもう一つ気になる点があった……。

「あら、何か口答え?」とメイ。

 何を言われようと説き伏せる自信があるように、彼女は腕を組みユリを見下ろしていた。

「メイ様……私の誕生日まだ三か月先です」

「あら、三か月なんて三週間と同じじゃない。いや……三日かしら―――うん、明日みたいなものよ」

「ぜ、全然違います!」

 流石にその時間感覚はメイだけのものだったらしく、他の二人の聖女は苦笑を浮かべ、清めの聖女からは窘め交じりの訂正が入った。



 ***



 ユリが三聖女に囲われ翻弄されている特別休暇の昼時。

 アルベラはエリーにみっちり扱かれ、自分たち以外出入りのないトレーニングルームで大の字になって体を休めていた。


『こんにちは、アルベラ・ディオールさん。宿泊学習は楽しめましたか』


 陣の描かれた天井を見上げ思い出したのは昨日学園に帰ってからの理事長とのやり取りだ。

 宿泊学習二日目の晩、ユリとミーヴァが森で迷った件について話をききたいという彼女の声は穏やかで、表情も優しい婦人そのものだった。

 理事長からの使いが来たのは宿泊学習の三日目、ラツィラス達との茶会を済ませ、自室で話を整理していた時だ。八郎が「アルベラ氏、多分この後すぐ理事長に呼出されると思うでござる」と言って少し経ってから。彼の言葉通り、理事長からの使いが来て、「学園に戻ったら理事長室へお越しください」というお呼出しがあった。



『―――昨晩のその件だけど、ディオールさんはどこまでご存じ?』

 ふくよかな婦人の頬からは優しい印象を受ける。「圧迫」という言葉の一切を知らないような円らな瞳が向けられ、アルベラは気が緩まないよう己を律していた。

『どこまで、とは。その二人の帰りが遅かったというお話は噂で存じておりますが……』

(あの二人、森で私と会った事をばらしてないだろうな……)

 さらさらとペンの走る音がした。理事長の隣の席からだ。そこにはひとりの女性がおり、彼女はいかにも役所勤めというかっちりとした装いで、ペンと紙でこの会話を記録しているようだった。

『申し訳ございません、どういった用件で私が呼ばれたのか伺ってもよろしいでしょうか』

『ええ、そうね……。では、順を追って話しましょう。二人が昨日、午後の授業終わりに探し物をしに森に行った事はご存じ?』

『いいえ』

 短いやり取りがさらりと書き足され、手が空いた記録係が顔を上げた。彼女の鋭い視線がアルベラに向けられる。

『そうですか。実は、二人はある生徒の無くしものを森に探しに言っていたようなんです。そしてそれを見つけて、屋敷に帰る工程で道に迷ってしまったの』

 なんでそんな話を自分にするんだろう、と思いながらアルベラは「そうでしたか」と頷く。理事長は「ええ」と頷くように柔らかい笑みを軽く浮かべ話を続けた。

『その無くしものというのが一年のサンドーレ・ベッジュという子の物だったのだけど、ディオールさんはベッジュさんをご存じ?』

『はい。同学年ですので』

『どれくらい親しいのかしら?』

『学園内では会えば挨拶をしますし、授業でも何度かお話したことはあります。ですが、プライベートで頻繁に会うほどではありません』

『特別親しくも、親しくなくも無いくらいと言う事かしら?』

(親しく『無く』も『無い』……? あぁ、)

『はい。不仲であったり敬遠していたりという事はありません』

『そう。ではディオールさん、ここでまた質問なのだけど……ベッジュさんの無くしものが何か、貴方はご存じ?』

 アルベラの脳裏にユリの持っていた耳飾りが過る。

『いいえ。彼女が無くしものをした事を知りませんでしたから』

『そうよね、変な事を聞いてしまったわ』

 理事長が記録係の手元へ目を向けアルベラに戻す。

『彼女が無くしたのは耳飾りでした。それには離別の魔術というのがかけられていてね、発動させると親となる陣の元に子の陣を持った人が近づけないよう惑わす効果があります。今回で言うとベッジュさんの持っていた耳飾りが親でした。迷っていた二人が持っていたのは子。だから、その耳飾りに何か魔術が施されていると気づくまで、二人は幻を見せられ間違った道を辿っていたという事です』

(なるほど、そういう事だったのか)

『ディオールさん』

『は、はい』

『この魔術はご存じでしたか?』

『いいえ』

 さらさらペンの走る音が聞こえる。

『では、ベッジュさんが()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っている事は?』

(―――は?)

 柔らかい笑み。円らな瞳の奥から、確かに自分を伺っている気配をアルベラは感じた。

『いいえ。存じませんでした』

『知らなかった……という事は、あの耳飾りは』

『はい。私が送った物ではありません』

 疑いがあるのなら晴らしておくべきだ。アルベラは『全く心あたりがございません』ともはっきりと付け足した。

 


(あれで疑いは晴れたのかな。特に言及もされず返されたけど)

 彼女らについてはユリへの嫌がらせの件で、癒しの聖女から上位の貴族としての責任を果たせと何らかの対処を要求された。

 アルベラとは良い関係とは言い難い癒しの聖女。だがピリの治療を果たしてくれたという事情もあり、彼女の要求を無視するわけにもいかなかった。

(だから宿泊合宿後に茶会でも開いて……と思っていたのに。その前はいろいろあって茶会なんて開く余裕ない、とか思ってたけど……形なんて気にせずとっとと開くが吉だったのかな……)

 ダンストとの茶会は開けたのだ。今思えば一時間でも三十分でも、彼女らを捕まえて軽く話すことくらいできた気がした。

 ―――ダンストたちとの茶会で起きたこと、捕まえた使用人、先ほどそれについて送られてきた母からの手紙―――。ユリの持ってきた卵の事も気にしなければいけないというのに、アルベラの脳裏にラツィラスの顔が、あの時の鮮血がよぎって落ち着かない。

(ていうかあっちはあっちで全く音沙汰無しってどうなの……)

 ラツィラスについては具体的な話題が上がっていなかった。

 ―――殿下は体調が悪いようで、宿泊学習は先に帰ったそうだ。

 今はふわりとしたこんな話が流れている程度だった。話としては間違っていない。

 この内容に「アルベラ・ディオールと茶会をして血を吐いて倒れた」が加われば大騒ぎになったのだろうが。

(見事なまでにそれが表に出てない……)

 彼には今日手紙を送っていた。

 その手紙の返事も受け取っておりラツィラス(正しくは彼の執事)からの手紙は読後に灰も残さず消滅してしまった。

 あちらからの手紙の内容は「今週の後の休息日、見舞いに来て欲しい」というものだ。

(……見舞いか)

 「どっちだろ」とアルベラは呟く。

 演じたに過ぎないのか、それとも本当に体を壊したのか。

普段かの王子様とのやり取りで手紙が隠滅されることはない。それほど人の目を気にしていることが伺えた。

(せめて一言でも様態を書いてくれればいいのに。落ち着かない―――)

 仕方がない。今は約束の日が来るまで耐えるしかないのだ。

 早く事情を聴きたいとはやる気持ちを抑え、アルベラは大人しくし―――例の件でユリに嫌がらせをしたという令嬢たちとの茶会を済ませたり、ダンストとの茶会の時に捕まえた使用人の件で母と連絡を取ったりとしながら―――一週間を過ごしその日を待った。



 ***



 そして迎えた一週間後の今日。後の休息日、日本でいう土曜。

 アルベラは城に呼ばれ、床に伏せているという第五王子の見舞いに来た。

「やあ、先週ぶり」

 私室、私服で笑顔を浮かべ寛いでているラツィラスの血色は、どう見ても健康そのものだった。



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