284、翼を取り戻す方法 16(ハンカチ回収係)
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「―――それって宗教みたいな物?」
「みたいなもんだナー」
アルベラの言葉にマンセンは装飾用の花を齧りながら答える。
「始めた奴はちょっとしたおふざけみたいだっタ。ついてない人間どもの不安煽って、救済だとかの大義名分掲げテ。瘴気にあてられて酔ってる奴らは先導したドガァ・マ・ンラを『正しき先導者』とか『真の救世主』だの言って拝めテ。それも気づけば百年前の話ダ。時間てのはホントあっという間だナ」
一つの宗教の成り立ちを見てきた口調で語るマンセン。「マンセンっていくつ?」と内心疑問に思いつつ、アルベラは「ドガァ・マ・ンラじゃない人たちの方が多いドガァ・マ・ンラの集団なんておかしな話ね」と返し切り分けた肉を口に運ぶ。
「マンセン殿とダタ殿はその『ドグマラ』の所属ではないんでござるか?」
「俺は覗くだけダ。活動ってのにゃ関わってネー」
「俺も特に興味ない」
「そうでござるか」
「中には口うるさいのがいるから面倒なんだよ。人の喧嘩に口出して『やるならその矛先を神の哀れな奴隷共に向けてやれー』ってな」
「神の奴隷とは一般人の事でござるか? それとも聖職者?」
「どっちもだ。けど後者の意味合いの方がつえーナ」
「ほう。聖女殿達が聞いたら気が気でないでござるな」
「そいつらがドグマラドグマラ言いふらして活動してるって事? 口にした人間殺してまわるとか、集められた騎士や傭兵を壊滅させたとか」
「『ドグマラ』って単語が知られ始めたのは確かにあいつ等からかもな。『我らが神を滅ぼさん』ってナ。けどドガァ・マ・ンラなんて長寿の奴らなら知ってておかしくない言葉だ。昔は魔族やら良く無い物なら全般を指してた言葉だシ、罪人や狂乱者もナ。それが経過の中で、偶然俺らみたいのを指してドガァ・マ・ンラって言った長寿な奴らの言葉を聞いて、短命の奴らが俺らを指す言葉と勘違いしたってこっタ」
「なるほどねー」
「では虐殺や何かはマンセン殿やダタ殿は濡れ衣でござるか」
「騎士殺したり傭兵殺したりは俺らもやっタ。そいつらとは別件だけどナ。目撃者は即処分、長生きの秘訣ダ」
「物騒な秘訣……」
(あのウサギ男が『死は快感』だとか言ってたし、そこら辺はこの人たちも同じって事か……)
「ダタ殿はこの国の生まれでござろう。いつ自分がドグマラと気づいたんでござるか?」
「俺もマンセンに教えられたよ」と、ダタはパンをスープに着けて気だるげに答える。
食事を始め、アルベラと八郎はダタやマンセンを質問攻めにした。気の乗らない問いには答えずな彼等だったが、「ドグマラ」という存在についてはアルベラと八郎の知りたい部分は大概教えてもらう事が出来たのだった。
会話も落ち着いてきた頃アルベラはお手洗いへと席を立った。
使用人を連れてのドレスの着脱作業を視野に入れられた広い個室から一人で出て、手を洗い二の腕まで丈のある長手袋を付け直していた時だ。
「―――まぁ!」
静かに開かれた扉から、女性の使用人を二人連れた貴婦人がお手洗いへと入ってきた。
彼女は大きな羽で作られた扇を口に当て、目を丸くして扉の前に立ち尽くしてる。
「まあ、まあ……、なんて酷い傷跡。一体どちらのご令嬢? レディがこんな傷を……とても辛かったでしょう……」
と彼女はアルベラの元へするりとやって来て両手をとった。
突然の出来事と相手の流れるような動作にアルベラは思考が遅れ呆然としてしまった。
「え、……あ、え……?」
「癒しの聖女様にはもうご相談にはいかれて? あと西のパテック領を訪れた事はあって? あちらには私のおすすめのお医者様がいらっしゃるの。もしよければ紹介状を準備するけれどどう?」
「あ、の……いえ、お気遣いありがとうございます。ですがこちらは今治療を受けている最中ですので、」
「あら、じゃあちゃんと治るのね……。良かったわ」
突然にやって来た彼女は心からの安堵にとろりと目元を和らげた。
「それで、貴女はどちらのご令嬢? お名前を伺っても?」
尋ねられアルベラはコクリと唾を飲み他人の名を口にする。
「コルディネ・アントワーニュと申します」
「―――コルディネ・アントワーニュ様。ブルガリー騎士団に所属しているご令嬢だそうです。本日はアルベラ・ディオール様のご紹介のもとこちらを使用されていると聞き及んでおります。他の騎士の方々といらっしゃっているようです」
(おい個人情報!!)
さらりと答えた相手方の使用人と彼女に情報を漏らしたであろう店側へアルベラは内心声を荒げる。
「もう、貴女に聞いたのでは無くてよ……。ごめんなさいね、安全のためお店には今日この時間いらしてる客人の情報を貰っていた物だから……」
青みのある銀髪をピンクや黄色の花で飾り立てた彼女は悩まし気に息をつく。
「い、いいえ。私はそちらの方がおっしゃったとおりの者でございます」とドレスをつまみアルベラは頭を下げた。顔には出さないが「ここから出してくれ、逃がしてくれ」と言わんばかりに心臓が内側から胸を打ち付けている。
「失礼でなければ貴女様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか……」
問うてはみるもアルベラの中には既に一人の候補が上がっていた。
(今使用人からオリヴィアって呼ばれてたし、店に来てる貴族たちの情報を集められるだけの地位でそれだけの警戒が必要な『オリヴィア』っていうと……)
「突然話しかけてしまってごめんなさい。私、オリヴィア・クォッツコーズ・ワーウォルドと申します。以後お見知りおきを」
お手洗いから出てアルベラは何とも言えない気持ちで渋い表情を浮かべた。
「失礼、アントワーニュ様……―――その顔だと中でオリヴィア様と話したみたいだな」
歩き出したアルベラを呼び止めたのはジーンだった。
「……」
振り返り赤目赤髪の騎士様の姿を認めたアルベラは「どうした?」と尋ねる彼へ作り笑顔を浮かべ首を垂れる。
「まあ……、クランスティエルの騎士様が私に何のお話でしょう」
ジーンは目を据わらせると言葉選びだけ他人行儀に棒読みで返した。
「主人のハンカチを返してもらいに参りました」
「あら、てっきりくださったのかと思いましたわ」
「あとついでに……暇だから面白い話があれば是非聞いて来いと仰せつかってる。―――見つかったのが運の尽きだ。諦めろ」
「―――そうね……」
くそ、と口の中で小さく毒づきアルベラは肩を落とした。
「ちょっと外に出てくる。すぐ戻るから」
部屋に戻ったかと思えば上着を掴んですぐに出て行こうとするアルベラ。
八郎が「了解!」と答え快活に彼女を送り出す。
テーブルの真ん中に座り込んでいたマンセンは、真ん丸な目を彼女に向け「余計な事はいうなヨ」と忠告する。口調や空気感は先ほどまでと大して変わらないのに、その無機質な瞳がやけに冷たく感じアルベラの肌が無意識に粟立った。
「貴方達の事は誰にも漏らさないわよ……」
一階に下り少し風に当たると店員に伝え外へ出れば、端によって待っていたジーンが「こっちだ」と片手を上げた。
「オリヴィア・クォッツコーズ・ワーウォルド。第二王子ダーミアス様のお相手の方でしょ? 何でいるの?」
店の外、店の敷地内に設けられた庭園ではなく、ジーンは敷地外の店傍の公園へアルベラを連れた。彼曰く、ここは店の窓から死角となるとの事。
(他の王子様方や護衛の目につくとまずいか……)
と考えながら、先ほどまで自分がいた店を見上げアルベラはベンチに腰かけた。
防音の魔術を展開したジーンが彼女の問いに「ダーミアス様が来てるからだ」と答える。
「ダーミアス様が? じゃあそれはともかく何であの人が三階にいるの? 最上階にもお手洗いはあるでしょ?」
「さあ。多分店内を散歩でもしてたんだろ。あの人食後に散歩するの好きだから。俺もあの人をあそこで見た時はびっくりしたよ。―――それでお前はどうしたんだ。変装して偽名を使ってまであの店に行かないといけない用があったのか?」
「接待よ。靄を消してくれた人が『あそこの飯驕れ!』て」
「あの二人か……。貴族なのか?」
「いえ。だから偽名が必要だったの。今はタイガーとガイアンの名前を借りてるわ。店への紹介状はディオールご令嬢名義でね」
「なるほど。本人が書いた紹介状なら成功率は高いな」
「ええ。実際上手くいって安心してる。―――いえ、してた。あなた達に会うまでは……」
アルベラはため息を吐く。
「ジーンは……殿下は何で私って分かったの?」
「あいつは何でだろうな。俺の場合、初めはあんま自信なかったんだけどラツの奴が寵愛を出した時に分かった。表情とか雰囲気で。凄いな、ああやって足止めて合わなきゃきっと気付かなかった」
「でしょ!? ……じゃなくて、あの王子……あの寵愛……。おかげで店のスタッフが二人魂半分持ってかれてたわ」
ジーンの肩が僅かに揺れ視線は気まずげに逸らされる。
「あの二人の店員には悪いと思ってる。一応詫びを渡して解決って事になったけど……」
「金で解決したと。流石王子様、良い身分ね」
無関係な人間が二人、主の「寵愛」と言う名の毒牙にかけられてしまった。そのことについては騎士様は己の良心からちくちくとお咎めを受けているようだ。
「……まぁいいわ。あの二人に対して私が何か言う事じゃないし。どうせ生活には支障はないんでしょ」
「どうだろうな……」
「え……」
自信のないジーンの返答に二人の間に不穏な空気が流れる。アルベラは深堀して嫌な物を見るのはごめんだと、彼等については良くなる事を信じ話題を変えた。
「……そ、そういえば……今日は何なの? 王子様が全員揃って食事だなんて。第二王子様―――来年公爵位を得られるんでしたっけ―――はご夫婦でいらしてるし」
「ああ……ただの食事だよ。たまにダーミアス様がこうやって集めるんだ。ちゃんとそろったの何て二年ぶりだけどな。その前は三年ぶりだったし」
「ダーミアス様が兄弟い皆を? 異母兄弟にも隔たり無く?」
「ああ」
「律儀な方なのね」
「そうだな」
「滅多に揃わないって事は大方第三王子様がお誘いを蹴ってたとか」
「そういう事だ。一緒にルーディン様も付き合わされてたから、大体ダーミアス様とオリヴィア様とラツとの食事になる事が多かった」
(ふーん。家族団らん、兄弟団らんであれば腹違いの第五王子抜きでやればいいと。第三王子様的にはそんなところか。……第三と第四が誰だかの手紙がどうとか、会うの久しぶりとか話してたから彼等はもしかして別件で偶然あの店に来てたのかとか思ったけど、んなわけなかったか……。都合よくとも運が悪くとも、皆が皆別件で集まるなんてすごい確率だもんな)
「お前は―――『アントワーニュ様』はなんであんな顔してたんだ? オリヴィア様と何を話した」
アルベラは先ほどの事を思い出し「ああ」と呆れの笑みを浮かべた。
「『ディオールご令嬢』の話をね」
「お前の話?」
「そう。可愛い義弟の婚約者候補。特に仲良くしてる様子の数人の内の一人がどうもよくないらしいけどどうなのかって。……私は今日、ディオールのご令嬢彼女の紹介であの店に行ってるしね。紹介状を出して貰えるまでの仲だし何か聞けると思ったみたい」
「へぇ、オリヴィア様がそんな事をな」
「そういう事あまり気にするような方ではないの?」
「どうだろうな。女性同士で何を話してるのかはよく知らない。けどラツと話してる時のあの人は、おっとりした『人のいい人』って印象が強いな。あの人から誰かの悪口とかはあまり聞かない」
「そうね。私も話しててそんな感じした。……気になった点と言えば寧ろ人が良すぎて付け入られやすそうって……」
「そうだな……。人の口車には乗せられやすい人かもしれない……。良くも悪くも素直過ぎる」
ジーンは心当たりがある口ぶりで薄く苦笑する。
「ちなみに『特に仲良くしてる様子の数人』って?」
「アルベラ・ディオール、スカートン・グラーネ、ラン・ウェンディ、クラリス・エイプリル―――ですって」
「エイプリル嬢か」
「従妹でしたっけ」とアルベラは意味深に笑む。
「オリヴィア様、どなたからか学園のディオール嬢のお話を聞いたんですって。―――平民苛めは日常茶判事。ラツィラス殿下やその周りに薬を盛ってるだとか、他の婚約者候補を脅したり、手を回して協力者へと引きずり込んだり―――一体どなたから聞いたのか気になるわ。聞いても教えてもらえなかったけど」
「その四人は実際、他の令嬢方よりラツと顔を合わせてる機会が目立ってるかもな。この休み中にウェンディ嬢とエイプリル嬢それぞれの家からの茶会の誘いも受けたしな」
「あらそうでしたの。きっとディオール様もお妬きになってる事でしょうね」
ふふふと笑うアルベラだが、笑いもせず無表情に見返してくるジーンに少々困りながら笑みを引っ込めた。
「何……?」
「もし……」
「もし?」
「もし……あいつがお前以外の誰かと友人以上の関係になったら……お前は本当に妬くのかなって、悲しむのかなと思って」
「あら、私が嫉妬に狂う様が想像できない?」
「そういう訳じゃ……なくはないな」
ジーンは正面へと顔を向け遠くを見るように目を細める。アルベラもどこへともなく視線を落とし、考えるように目を細めた。
「―――『私と』ってのは勿論だけど、あの王子様が誰かと恋仲になってる想像が出来ないんだよなぁ……。あぁ、いや……一週回って誰でも隣に置いている図も想像できるっていうか……」
「あぁ……まあその感じは分かる……」
とジーンも誰のことも妃として向かい入れていそうな王子様象に苦々しく頷く。
(あの王子様と私が恋人……通り越して夫婦だもんな……)
アルベラは自分がラツィラスの隣で妃の座についている図を想像する。そして今、少し間を空けて隣に座っているジーンを見て胸のもやつきを感じる。
(うーん……この……)
王子様が誰と仲良くなってどうのではないのだ。自分の気持ちにアルベラは苦笑を零す。視線を感じジーンの赤い瞳が「なんだ」と言いたげに彼女へ向けられた。アルベラは気を取り直しいつもの口調で質問に答える。
「一つ言えるのは、嫉妬に嘆き狂うって言うのはなさそう。―――正直、彼とは今の距離感が心地いの。これはちゃんと言っておくけど異性として魅力がないってわけじゃないから。寧ろあり過ぎてそういう次元で考えられないっていう……」
「そう、か……」
「あ、でも」とアルベラは懐かしい感覚を思い出した。
「きっと寂しくは思う」
「寂しい?」
「ええ。あの人はもう誰かのものなんだって離れていく感じ。もう気安く関わっちゃ行けないのかもって、思ったり思わなかったり……。近しければ近しいほど、同性でも異性でも。反射みたいなものね」
(人によっては『なんでこいつが』ってシンプルに腹が立ったりもあったけどね……!)
と顔の思い出せない嫌みな上司を思い出し今改めて「不幸になれ」と心の中拳を握り呪う。
「親しいなら今まで通りにすればいいだろ。なんで寂しがるんだ?」
「そうなんだけど……何となくよ。―――だからきっと殿下の婚姻が決まった時は少くなからず寂しくはなる……かなと思う。相手への嫉妬とかは無いでしょうけど」
「誰か……仲のいい使用人とか結婚した事があるのか? 俺はそういうのまだ無いせいか、正直お前が言ってる感じよく分からないな。―――カザリットがあれだし。あいつが結婚したら嬉しいけど、その前にドッキリか何かじゃないかって疑って信じてやれないかもしれない」
「まぁそんなところだけど……カザリットの件は聞いてて哀れね。本人があれだし疑うのは仕方ないけど……」
「結婚の報告があったら騙される覚悟でまず精一杯祝おうと思う」
「祝うのに覚悟が必要なのどうなの……」とアルベラは静かな突っ込みを入れる。
風が吹きいつもと違う色の髪がアルベラの視界にはいった。目蓋に当たったそれを払って、彼女の視界がふと持ち上げられた。
公園の周りから聞こえる賑やかな声と街の灯に照らされた裏から眺めるこの国の城。
「婚約者候補、第一妃ね……。あまりなりたいものでもないけど……」とアルベラはぽつりと呟く。
(もし何かの間違いがあって本当に私が第一妃とかになったら……かなり困るな……。八郎から原作でアルベラが王妃になるエンドは無いって聞いてるから……王妃になる覚悟全然してきてないし、できればなりたくないし、第一妃争奪戦もそこでの悪役業果たしたらタイミングみて抜けるつもりだし、落第という形で……)
「―――……なんでだ?」
ジーンは前を向いたまま尋ねた。
「すごい不自由そう」
気の抜けただるそうな声で返され彼は「は?」と返す。
「贅沢し放題もいいけど、何もせずそうすると恨む人が沢山いるでしょ。面倒な輩も沢山寄ってくるでしょうし、国の為にどうのとか公爵家で生ぬるく育てられた平民苛め好きの我が儘なお嬢様には無理。……地位や財は大歓迎だけどそれ相応の重い責任とかごめんよ、息が詰まる」
アルベラは我が儘なお嬢様さながらはらりと手を振って冗談ぽく言って見せた。が、実は結構な本音だった。
妃の座など人によってイメージは其々、実際の歴史上でも妃の活動具合は其々。なので国の運命を一人で背負わされるような重圧を感じる必要はないのだが、彼女の根っからのマイナス思考が必要以上に重い想像をさせてしまう。
(爵位を持って一つの領地を治めるのもなかなかな印象なのに……一つの国はちょっとね……。回りの国との関係もあるし、他の国の行政とかも気になり出したら精神おかしくなりそ……)
アルベラの言い分に呆れ「なんだよそれ」と溢すも、ジーンはくつくつと声を押さえて笑いだした。
「―――けどその台詞かなりしっくりくるな……本当に我が儘し放題のお嬢様ぽかった」
笑いながらそう言われ、正面から彼の笑顔を受け止めてしまったアルベラは自分の頬がほてり上がるのを感じ目を逸らす。
「で……」
「ん?」
「今の台詞殆ど冗談だと思って良いんだよな。まさか公爵令嬢ともあろう方が、『国の為にどうのとか無理』『地位と財だけ欲しい』だなんて俺達民に喧嘩を売るような言葉本気じゃないよな」
「は、ははは……」
否定もせず不自然に笑って誤魔化すお嬢様にジーンは「おい……」と目を据わらせる。