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アスタッテの尻拭い ~割と乗り気な悪役転生~  作者: 物太郎
第3章 エイヴィの翼 (後編)
237/407

237、行きの旅 4(国境の市と美味しい肉と城の使い)



 ***



 途中で昼食とそれ以外の休憩を点々と挟み、夕方にはアルベラ達一行は国境の関所へと辿り着いた。

 関所周りはテントが張られ賑わっていた。旅人や商人達が明かりを灯し、各々の使い古した品や使いどころのなかった未使用品、足の速い食品等を並べたフリーマーケット会場と化しているのだ。

 今晩、アルベラ達は国境を越えずに「こちら側」で夜を越す。冒険者曰く、森があるあちら側よりも、木の少ないこちら側の方が安全なのだそうだ。



 アルベラは見た事のない騎獣や、品を表に並べたテントの間を適当に歩いていた。

 冒険者達は野営の準備をし、アルベラは関所の伝達所へ行きガウルトの城に関所に到着した報せを送って来たところである。

 アルベラと共に居るのはエリー、ガルカ、騎士二人だ。

 ガルカとは昼食時に合流しており、アンナが適当についた嘘よろしく、彼は本当にあの丘やその周辺の様子を見に行っていたらしい。関所では神獣が暴れたということは確定で、その相手が何だったのか、神獣は今何処におりどのような様子なのかを気にいしているらしい。

(まさかここらの魔獣を退治してくれると重宝されていた神獣が、もう魔獣にやられて何処にもいないだなんて……いつ誰が気づく事か……)

 アルベラはポケットに手を入れ、三センチ前後の石を軽く握った。

 手の中に魔力を意識すると、その石がピリリと小さく電気を発しアルベラの手を弾いた。亡き神獣からちょっとした仕返しをされたように感じアルベラは顔をしかめる。



『嬢ちゃん、関所に着く前に確認だ。あんたはあの獣をどうしたい? 道中でどうにかするあてはあるかい?』

 今朝の一件後、ある程度の距離を移動し、ハイパーホースを休ませている時の事だった。

 アンナに小声で尋ねられ、アルベラは考えながら答えた。

『……八郎に速達を出せば、もしかしたら手を貸してくれるかもって言うのと、コントンだけ町に戻らせて八郎の家に獣を置いて来させるってのは考えたけど』

 アンナはクツクツ笑う。

『わんころに食べさせようってのが出なかったあたり現金だね』

『だって貴重なんでしょ?』

『ああ、そりゃあもう。……それで相談だ。私らにはあれを直ぐにどうにかできる手がある。片付けの手を貸すから山分けってのはどうだい?』

『いいわよ。そうね……一応九人で綺麗に割ってもらえるなら。手間賃で偏りが出るって言うならそれは姐さんに任せる』

『ああ?! 九ぅ?!』

 アンナが声をあげ、一行の視線が彼女に集まる。すぐに声をひそめ彼女は捲し立てた。

『関わったあんたと私、それと魔族の兄ちゃんにミミロウに、これからひとっ働きさせるナールの野郎で五等分だろ。何で関係ないエリーの姉さんやビオゴヤスナ坊まで数に入ってんだ』

『じゃあ綺麗にじゃなくてもいいからその人たちの分も幾らかお願い。色々な手間賃やお礼金よ。特にビオさんやゴヤさんスナクスさんは直接この件に関係なくても他の件でよくしてくれてるもの』

(特に姐さんの抑止力的な意味で)

『……エリーは、まあボーナスってことで』

 来るときに幾つかの部位で五百万という額を聞いていたアルベラは、他の部位を売り捌いたとしたら少なくとも一人百万ずつは行くのだろうと想像した。

(三桁行かなかったとしても、数十万のお小遣いが前触れなくもらえれば誰だって喜べる範囲のはず……)

 アンナは暫し考え、『分配は私に任せるって言ったね』と確認する。

『ええ。あるか無いかわからない姐さんの良心のままに』

『はーあ……。はいはい。じゃあその四人の方は最終的な額を見て。嬢ちゃんと魔族の兄ちゃんはともかく、私とナール坊は特に多めで取らせてもらうよ。ナール坊はこの後ルートの方で特に重要になってくるからね。納得できる割り合いを出しときゃこの後の旅は今よりもっと仲良くやってけるだろうよ』

『ええ。じゃあそれでよろしく』

(ナールの奴がこれからどれだけ動いてくれるのかは知らないけど……姐さんって様子見に来ただけだよな。服洗ってくれたりその場の指示は出してくれたけど……多めにって、一体どれだけ持ってく気だろう。気になる。―――合計額も知れないし予期せぬボーナスだし、今回はご機嫌取りで多めに持ってってもらっても良いか。その方が良くしてくれるだろうし)



 そのやり取りの後、アンナはナールを連れて一行から離れた。その際アルベラはコントンを彼女と共に行かせ、そのコントンはアルベラに頼まれた通り、離れた先で獣の亡骸を彼女アンナに預けた。

 適当な理由を言って離れた彼女らは、用を済ませ午後には合流した。

 野営の準備をする今、アンナが冒険者達に今朝の騒ぎが神獣出没のものだと説明しているはずだ。―――神獣を討伐してしまったことを除いて。

 アンナ曰く、

『神獣が綺麗に売り捌き終わってからか、旅が終わってから話すさ。特にビオのためにはその方がいい。あの子ストレス耐性が弱いから、旅の間に爆発されたら困るしね。―――どうだい? 私って気が利くリーダーだろ?』

 だそうだ。

 一番のストレスの元凶であろうにどの口が言う。とアルベラは思ったがその言葉は飲み込んだ。

 彼女がポケットに忍ばせていたのはその時にアンナからもらった石である。

(一部前払い、とか言ってたな。自衛の役に立つしって)

 通りがかったテントの前、アルベラは並べられた品を軽く眺め目的の物を見つけた。

 探していたのは輪郭周りにうっすらと透明感のある、彩度の低い淡い色味の石だ。光の加減によって暖色系にも寒色系にも見える明るい灰色の石。

 アルベラは品名も値段も表示されていないそれをよく観察した。そして自分が持つ神獣の石と同じ物であることを認めエリーの服を引っ張る。

 ちょんちょんと商人を指差すアルベラに、エリーはこくりと頷き前へ出た。

「ねえお兄さん、この羽や石って、ここら辺にいるっていう神獣様のものかしら?」

 中年の店主は「ええ」と答えて顔を上げ、迫り来る美女の胸元に言葉を失った。

(よし、あとはエリーが価値なり価格なり使い方なり全部聞き出してくれる。―――関所周りの臨時店か。聞いてた通り値札は出さず、品の説明もなく……売り買いは交渉次第。物品でのやり取りも可、ね……。知識がないと良いように搾取される弱肉強食の場か。商人じゃ無い人間からしたら不便で仕方ないな)

 商人の体を撫でまわすエリーに、アルベラは「相変わらず」と目を据わらす。

「そ、そちらは『神獣の恵石めぐみいし』と言って、ここらを縄張りにする神獣の魔力の結晶でして…………ひゃぁん! ……他の獣と争って欠片が落ちたり、不要となった物が定期的に落ちることがありますアハァン……! 前者は結晶の魔力をうまく操作できれば神獣の扱う魔法が使え、後者の方は殆ど魔力は無い状態なので弱い獣や魔獣避けに使割れることがアァン主となっておりまぁ……あ、あぁ……お、お姉さんこんな所でそんな……だ、駄目ですって……!!」

「あらぁ、良いじゃないちょっとくらい。所でこちらの相場ってどういう感じなのかしら。……あらあら、ふふ、……かぁわいぃ……」

「あ、あぁっ……! そ、そちらの相場について……は……ハンッ!」

 アルベラが頭を無にしてエリーと店主を眺めていると、後ろから大きな手が現れそっと彼女の視界を覆った。

「お嬢様、失礼いたします……。これ以上は刺激が」

 と、ガイアンの声。

 隣から「今更この程度……」とガルカが鼻で笑ったのが聞こえたが、「おいタイガー」というガイアンと「はいはい……」というタイガーのやり取りの後耳も塞がれ何も聞こえなくなってしまう。

「……」

 アルベラは視界と聴覚が奪われたまま、胸のまえに腕を組み黙って事が終わるのを待った。



(羽一枚に五千リング。新鮮な魔力片は小さくても五万リングから、か)

「神獣様って凄いのね」

 棒読みでそう言い、アルベラは神獣の羽飾りを指先でクルクル回す。先程の店主がエリーにプレゼントしたものだ。

 アルベラは羽に満足するとそれをエリーに返し、エリーはというと、受け取った羽をタイガーへと渡す。

「奥さんのお土産にどうぞ」

「……。あ、ありがとうございます」

 善意しか感じない美しい笑みを向けられ、そして先程の店主とのやりとりが頭を掠め、タイガーは曖昧な表情を浮かべてその羽を受け取った。

 ガイアンは頭が重たそうに片手を額に当てて問う。

「お、お嬢様……毎回エリーさんにあのような事を……いや、エリーさんは毎回あのような振る舞いをお嬢様の目の前でなさって……」

「ええ。とっても便利でしょう? お父様には秘密でお願いいたします。あ、お母様は多分存じてるので大丈夫です」とアルベラは微笑む。

 エリーは「一役かってまーす♡」とノリノリで片手を上げた。

「流石にああも堂々とズボンに手を突っ込む事はなかったがな。あのシュチュエーションであの男もよく果たせたものだ。しかもこんなオカ……ぐっ」

「あらあらガルカさん、頭におかしな虫が……」

 ガルカの頭を物凄い早さでエリーの片手が捕らえる。

「何で貴様はそうも容易く俺の頭を……」

 足をとめてちょっとした攻防を繰り広げる二人を置き、アルベラは黙々と先へ行く。

(なるほど。レミリアス様……)

(そうか……レミリアス様が存じているならこの件には口を出さないでおこう……)

 タイガーとガイアンは其々同じような事を考えながらアルベラの後に続いた。

 後方からはちょっとした野次や盛り上げるような口笛等が聞こえ始める。

(流石に手を突っ込むまでは見た事なかったな……いつかやるだろうと思ってたけど……見なくてよかった)

 アルベラは置いてきた二人を一度も振り返ろうともせず、自分達の泊まるテントがもう張られているだろう野営の地へと向かった。



 ***



「あぁ……もしもか。もしもだが、神獣を殺した罪は『森の賢人様方にちょっくら悪印象になる』って程度だね。まあ他にも細々とあるけど、主にはそれだね」

 アンナは軽い調子で答え、焼き立ての骨つき肉に豪快にかぶりつく。新鮮な赤身肉からは肉汁がぽたぽたとしたたり、彼女はそれを美味しそうにすすった。

 そんな食欲をそそる光景に、アルベラも焚火の周りに刺した串の様子を見て、丁度いい焼き加減の物を取る。

「『森の賢人様』って、エルフの事? エルフに嫌われるって冒険者としてやっていき辛くないの?」

「いーのいーの。冒険者界隈じゃたまにあんだよ」とアンナ。

「あと、言っておくけど『森の賢人様』ってのは総称だからね。エルフは代表格だけど、他に木霊やニュムペードなんかもそうだ。」

「ニュムペードって、神聖な森とかにいる人みたいなやつでしょ?」

(この世界でいうドライアドみたいな奴だっけ……。だめだ、自信ないから後でザッヘルマ兄さまから借りた本で確認しよう)

「あーあ……? 神徒ではあるけど、奴ら神聖な森でなくても点々といるよ。森では奴らが近くにいないか気を付けないと、目の敵にされて意地悪されるんだよ」

 アンナはニッと笑み、言外に「あんたもこれから気を付けな」と示す。

 そして偶然目に入ったナールもニヤリと笑み、その顔には「ざまあ」と書かれていた。

(エルフや神徒に嫌われるのは今更だからどうでも良いか。―――ていうかあの野郎、おこぼれ(神獣の素材)貰っておきながらあれか? 自分だって禁忌組の癖に! 今すぐコントンに匂い辿らせて神獣取り上げるぞ、ん?)

 アルベラとナールが視線のみで喧嘩をしていると若い兵士がやって来た。

「―――失礼します! 『ミクレーの散歩』の御一行はこちらでしょうか?」

 関所からの使いの彼に、アンナが「そうだよ」と答える。

「こちらにガウルトから速達が届いております」

「ありがとう」

 アルベラは兵士から手紙受け取った。

 手紙を開いて確認していると、スナクスが苦笑し仲間たちに「馴れねえな」と零しているのが聞こえた。それは「ミクレーの散歩」というパーティー名に付いてだ。

 この旅行に限り、アンナのパーティーはそのように名乗る事にしたらしい。

 アンナは旅の目的により出先で名乗る名をコロコロと変えるらしく、そうする冒険者パーティーは多くは無いが他にも稀にあるそうだ。

 彼等にも一応、冒険者同士の内で定着したパーティー名はあるのだが、こうやって出先で名を変えるためその名が一般的に広く知られることは無い。―――むしろそれが狙いだ。

 名を上げずに必要な時に必要なだけの稼ぎを得る。まさにアンナが自分の為に作った都合のいい副業パーティーなのだ。

 アルベラは短い内容を読み終え、顔を上げる。

「明日の朝、日の出の頃に迎えに来るって。そこからお城まで運んでくれるそうよ。馬は使いの人が指定の店に運んどいてくれるって。明日の昼食とお部屋の方も準備しておくって。我が国をゆっくり観光していってくれですって……」

(うわ……正直不安でしかない)

 また毒でも盛られるのだろうか。

 アルベラは手紙を近くにいたタイガーへ渡し、一応内容を確認しておいてもらう。

 話しを聞いた関所の兵士が緊張に体をこわばらせる。

(ガウルトの王城からの手紙に、食事と宿泊の招待……?! 偉い貴族か王族か?)

 そんな彼に揶揄う様な目を向け、アンナは串を一本彼に差し出す。

「あんたもお疲れさん。ホレ、一個食べてきなよ。こんな時間だし腹減ってんだろ」

「あ、ありがとうございます! …………こ、これは……とても美味しいです……!! 野菜もですが、このお肉、しっかりした噛み応えがあるのに筋張ってなくて、噛めば噛む程出てくる肉汁がほんのりと香ばしくて甘くて……」

「だろう? うちのシェフは腕が良くてね」

 ちらりと視線を向けられ、「けっ」とナールが横を向く。

 それを見て、アルベラは今日の下処理はビオでなくナールだったのかと驚いた。

 確かに、今食べている串焼きは美味しい。特にこの肉は絶品だ、とアルベラも兵士の彼同様心の中で感動していたのだ。

(………………ん……まてよ。肉……ナールが下処理した肉……?)

 アルベラは手を止め、何の動物のどこの部位かも分からない肉を見下ろす。

「あ、骨があったらここに入れな。串は火に入れてくれ」

 アンナが地面に置いて口を開いた袋を示す。

「はい、ご馳走様です! 失礼いたします!」

 若い兵士は一瞬名残惜しそうにしながらも骨を袋に入れ、串を火に入れて去っていった。

 それを見て、アルベラは「何で骨は回収するのかな?」と、何となく予想は付いていながらも首を傾げる。

「上手いかい?」

 アンナがにんまりとアルベラに笑いかける。

「ええ。このお肉、とても特別なお肉みたいね」

「ああ。なんの肉か知りたいかい?」

「いい。分かった」

「違うかもしれないだろう」

「それでもいい。そこらのウサギや鳥とでも思っておく」

「もう、つれないねぇ。分かったよ」

 アンナは諦めたように息を付き「よーし、酒だ! 酒よこせビオ!」と腰を浮かす。

 「明日早いんだから絶対ダメ!!」とビオから飛んできた返答に、アンナが「ケチ」だの「ちょっとだけ」だのと幼稚な返答を返す。

 二人のやり取りを聞きながら「ほう、」と息をついたアルベラの耳元、アンナが早口で、かなりの小声で言葉を残していった。

「神獣の肉だ」

(……?!)

「だからいいって言ったのに!!」

 突然声を荒げたアルベラに周囲の者達が視線を向ける。

 「姐さんのばか! 意地悪!!」というお嬢様の罵倒と、すっとぼけるアンナ。

 皆の意識がそちらに向いている隙に、大きめの骨付き肉を差した串を、コントンが影の中から爪を引っかけて持ち去っていこうとする。

 それを唯一見つけたミミロウが、「駄目。これスナクスの」と言って別の大き目な肉を二つ影の中に「とぷり」と落とす。

 影の中からコントンの嬉し気な唸り声が上がるが、冒険者も騎士達も、自分達や周囲のテントからの賑やかな声に気付くことは無かった。



 ***



 翌日の早朝。

 手紙に書かれた時間―――つまり日の出の頃に、関所の兵士がアルベラ達を呼びに来た。

 早い時間から起きて旅立ちに備えていた門の傍の人々は小声で言葉を交わす。

「なんだ? もう開いたのか?」

「いいや。まだ時間じゃねぇよ」

「ありゃあどっかのお偉いさんだろ」

「へぇ。こんな時間によくもまぁ……」

「時間外の通行料って一人頭一万、馬一頭五千だったか。……えーと。ありゃ幾らだ」

 辺りがまだ薄暗いなか、アルベラ達はかんぬきのかけられた大きな門の横にある関係者使用口から国境をこえる。

 扉に入り、短い通路を通り、また扉を出ると、実感はあまりないがそこはもう隣国だ。

 アルベラが眠たげに欠伸をすると、後ろにいたガイアンが小声で伝える。

「あちら、使いの方々かと」

(……!)

「は、はい」

 彼女は慌てて背筋を伸ばした。

 アルベラ達が出た扉の左前、大きな門の正面。そこに大型のドラゴンが数頭待機していた。

 ドラゴンの鋼のような鱗が、登り始めた朝日を反射する。呼吸の度に上下する背や腹、動きに合わせて変化する鱗の重なり。

 彼等の大きさに圧倒されたのは当然だが、その存在感と造形美にアルベラの目は釘付けとなった。

「凄いわね。大型種、初めて見た……」

 お嬢様の呟きにタイガーが答える。

「そうでしたか。けど彼等は別格ですよ……。私もここまで立派なのは初めて見ました……。見た所シーバの亜種のようですが……これは本当に凄い……」

 彼の声は感動で僅かに震えていた。

 他の者達も感嘆の声を漏らし銀のドラゴンを見上げる。

 彼等の熱い視線を受ける中、一番豪華な屋根付きの鞍を設置された、ドラゴンの中でも一番体格のいい一体の金の眼が、ゆっくりと瞬きアルベラを捕らえた。

 彼は初対面の少女を見つめ、大きく息を吸い込み背中を膨らます。

『ゴォォォフ……』

 深く長く息を吐いたドラゴンは、アルベラから瞳を逸らし静かに瞼を下した。

 「……くくっ」と笑いながら、ガルカがアルベラの隣に現れる。

「あいつ……今貴様を見てため息をついたぞ。『こんな汚物、誰が乗せるか』だと……くくくっ」

「はあ゛……?」

 今にも吹き出して大声で笑いしたい。そんな様子で肩を震わせ目の端に涙を浮かべる魔族を、アルベラは眠気の残る頭で柄悪く睨みつけた。



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