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123、玉の回収 7(生存者探索と参考)


「ねえ、ジーン」

「なんだ」

「王子は?」

「は?」

 二人は雑談を挟みながら、家の扉を開いていく。

 玄関から見える扉は六つ。右に三つ、左に三つだ。右側の方が扉同士の感覚が広く、左の方は若干狭い。特に、左の一番奥の扉は、隣りの扉との距離感が倉庫を思わす物だった。

 ジーンがまず手を掛けたのは、玄関から見て左手側。一つ目の扉だった。だがそこは鍵がかかっていた。

 その隣の、玄関から二つ目の扉へと向かう。

「一緒じゃないの? どうせどこかに隠れてるんじゃない? って、さっきから疑ってるんだけど」

「いるわけないだろ。今回は流石のあいつも空気読んだよ」

「………あの王子、空気読めたんだ」

「その気持ちは痛く分かる。残念だ」

 ジーンがドアノブをひねる。扉はすんなりと開いた。中には、六つのベッドが、三つずつ向かい合って並んでいた。その上には、男女六名の亡骸が横たわっていた。

 扉を開いた瞬間に感じた異臭。見るからに不衛生な寝具。

 室内を観察するジーンの表情が、どこか痛ましそうに見えた。

「一つ目の扉も、この部屋のか。………酷い有様。これが一般的な孤児院?」

「なんだ。知ってたんだな」

 ジーンは扉を閉め、隣りの部屋のドアノブをひねる。

「ええ。一応ね。地図に書いてあったから」

「へえ。お前の探し物、何でここにあるんだ?」

 中は予想通り、物置だった。その隣には二階へ続く階段、ダイニング、キッチン、と続いている。

 階段もキッチンも無人だ。

「私の、っていうより他人のね。色々あって、この村にあるんだって」

「ふーん。なんでお前が?」

「ご縁で」

「あの魔族や、エリーさんと来たのか?」

「そ。エリーは外で待機。中はガルカと、その他と一緒に捜索中」

「その他?」

「そう。ガルカのお友達みたいなものが。………だから私の身の安全なら心配しないでね、騎士見習い様。あわよくば私を村の外に保護しよう、とかの心配なら御無用ですから」

「そうか。ならよかった」

 ジーンは「はいはい」とでも言うようにあっさりと返す。

(正直腑には落ちないけど。今は深く突っ込んでもいられなそうだしな)

 ジーンにとって、今のアルベラの言葉はどれも胡散臭く聞こえていた。事実を話しているようで、煙に巻かれているような。まるで城で待って居る誰かさんと話しているような気分だ。



 玄関から右手側、三つの扉の内二つも開けてみたが、どちらも無人だった。

 一つは、キッチンとダイニングのスペースに、向かい合うようにある扉だ。一人用の生活用品があり、男物の衣類が幾つか目に付いた。

 もう一つは、その右隣。最後に見る予定の部屋の、左隣にもあたる部屋だ。そこには、男物と女物の雑貨や衣類が置いてあった。大きめなベッドや、化粧台。夫婦の寝室のようにも見えた。

 そこで目に付いたのは、室内にあった扉だった。右隣の部屋に繋がる扉らしい。扉の下の隙間から、赤黒いシミが広がっている。

(この部屋に生きてる人間はいない、か)

 アルベラの視線に、「な?」とジーンが素っ気なく頷いた。扉の下の血溜まりを見て、それを哀れんでいるようでもある。

(頼もしい勘です事)

 室内に立ち入るでもなく、ジーンは扉を閉じる。

「ねえ」

「なんだ」

「ジーンはいつから騎士を目指してるの? なんでなりたいと思ったの?」

「急だな」

「嫌だった? 前から気になってはいたの。暇でしょ? 丁度いい機会だと思ったから」

 「暇ではないだろ」とジーンが返す。

「最近、スカートンが聖女様目指しだしたでしょ? キリエは動物の研究者にお世話になってるし。皆、将来に向けて頑張ってるなーって。特に、あなたは会う前から、騎士目指してたから、いつから、どんな切っ掛けがあったのか、結構本気で気になってたの」

「………物好きだな」

「そう? 人のそういう話って、結構参考になるし、面白いじゃない」

「まあ、何となくわかるけど。参考?」

「そ。将来の参考」

 その言葉に、ジーンは不思議そうにする。

 いつの間にかついていた扉の前。そのドアノブに手を掛ける。

 ここは、キッチンの更に奥、玄関からは光が通りきらず、見通せなかった窪みだった。

 そこには、四~五メートル程度の廊下が続き、左右と突き当りの正面に一つづつ扉があった。

「騎士になりたい理由………」

 ジーンが開いたのは、右手側の扉だ。一人部屋で、最低限の物しかない。生活感のない無人の部屋。

「あ、ジーン」

 空の部屋を開いたジーンの後ろ、アルベラが呼びかける。ジーンとは反対側の扉を開いていたようだ。

 アルベラが部屋に入り、ジーンがその後に続く。

 小さな部屋の中、三人の子供の姿があった。

 テーブル。大して物の置かれていない本棚。一つのベッドと、床に敷かれた一つの毛布。

 簡素な部屋に居たのは、十五歳前後の少女と、五~十歳程度の少女と少年だ。

 年長の少女は椅子に腰かけ、力なく俯いていた。少女はベッドに横たわり、少年は壁に背を預け床に座り込んでいた。椅子に座る少女は、小さく何か呟いているので、生きているのが見て取れた。他の二人も、ジーンが脈があるのを確認する。

 三人の生存に、アルベラとジーンは小さく安堵の息をついた。

「手伝ってくれないか?」

「ええ、勿論」

 ジーンが椅子に座っていた、年上の少女の肩を担ぐ。すると、服の匂いや、その汚れが目に付いた。

『寄るな、小汚い』

 以前に街で、貴族が、平民の子供を払い除けた光景が頭をよぎる。

(お嬢様にはきついか?)

 ジーンは、ベッドの少女の元に向かっていたアルベラへ目をやった。

「よいっしょ、」

 何事もなく、彼女は少女を背に乗せた所だった。

 ジーンと目があい、アルベラは「ん?」と首を傾ぐ。

 その少女の服も、大分使い古され、汚れや痛みが目に付いている。きっと、匂いもこちらの少女と変わらないはずだ。視線の先の貴族のご令嬢は、そんな少女を気にせず背負っていた。

「いけるか?」

「ええ。これくらいなら平気。この子凄い軽いし」

 お嬢様は重さについての質問としか思ってないらしい。

(———………余計な心配だったか)

 ジーンは少し安心した面持ちで、椅子に座る彼女の肩を担ぐ。その体は薄く、年上にしてはかなり軽い物だった。



 ———コロサ ナイト………コロサナイ ト

(うっ………)

 耳元に少女の呟きが届き、アルベラはぞっとする。

(これは………ずっと聞いてたら精神に来そう。………………ん) 

「………なにしてるの?」

 様子を見ていたアルベラが、純粋に疑問の言葉を投げかける。

 その目の前には、二人を両サイドに担ぎ、一度で全員運び出そうとしているジーンの姿があった。

「行けると思って」

 極めて真面目な表情で、極めて真面目な言葉が返された。

「欲張りか」

 二人の下半身が、痛々しく引きずられる姿が目に浮かぶ。

(無理があるのでは)

 「いいから見ててくれ」と言い、ジーンの目や髪に赤く光りだした。

 魔力を纏った体が、ふわりと水中のように浮いた。ゆっくりと両脇の二人も、髪や瞳を光らせて、水中にいるように、体を漂わせ始めた。

(どういう………)

「………あぁ」

 驚くアルベラだったが、雑貨屋の、浮く道具類を思い出した。「なるほど」と小さく呟く。

(魔力を出せば浮く、の? よくわからないけどやってみるか。意識すればいいだけかな。発動はさせないで、ただ出すだけ………)

 アルベラの瞳が緑に、毛先の水色が明るく輝く。

(………ここ、魔力が――――――おっと、)

 体が浮き上がる感覚。だが、背中の少女だけが、陸地の時の重力を保っていた。

(そうか。この子にも)

 フライの時に練習した、魔力の共有を試す。すんなりと出来、背中の重みが半分以上無くなった。試しに床を蹴ると、加減が分からず、自分の背丈の半分の高さまで浮かび上がってしまった。

「あ、うわ………まず………」

 アルベラは沈もうと足掻く。

(そうか、魔力出す量減らせば)

 と、苦戦しつつ加減をすると、足がゆっくりと床についた。

 ジーンはその一連を見て、「説明いらないな」と小さく微笑む。

「そっちは頼んだ。お前は先を進んでくれ。俺は後ろからいく」

「わかった」

 少女を背負ったアルベラは、地面を軽く蹴る。すると、浮き上がりながら体が前へ進んだ。前に進みながらも、ゆっくりと沈んでいくので、地面に足がつくと、また力いっぱい地面を蹴る。すると体が浮き上がり、ぐんと前に進む。それを繰り返す。

 水の抵抗のようなものを感じて、動きが鈍くなってもいたが、本物の水の中ほどではなかった。息ができるので苦しさもない。

 面白い感覚だ。

 ジーンは、アルベラの後ろで辺りを警戒していた。だが、ここには一切、魔獣も魔族もいない。アルベラも、ガルカと別れた辺りからそれは意識していた。

「で?」

 アルベラが尋ねる様に振り向く。

 さっきの話の続きだった。

「………あ? ああ。なんで騎士になりたいか、か? かっこいいと思ってたんだ」

「思ってた?」

「ああ。かっこいいだろ? 騎士って。イメージ的に」

「まあ確かに、騎士は『かっこいいモノ代表』みたいなものだし、分かるけど」

「だろ?」

 そこで会話が途切れる。廊下を抜け、玄関を出て、門が目前になって、続きを待っていたアルベラは「………………………え?」とジーンを振り向く。

「え? ってなんだよ。切っ掛けも理由もそれだ。親父が、村の小さい警備団長やってて。初めはそういうのなら何でもよかったんだ。はっきり騎士になるって決めたのは、ザリアスに引き取られた辺りからだけど」

 ジーンは五つになる頃、両親を亡くし、実の父の兄である、伯父のザリアスに養子として引き取られたのだ。それ自体はアルベラも知っていた。聞いたのは去年あたりだったか。

 ザリアスは、城の騎士団の団長だ。個人の貴族が騎士団を抱えもする。だが、一般的に、城の有する騎士団というのは、他のそれらよりも遥かに高潔で、実力的にも磨きあげられているような印象なのだ。

 そんな彼を見て、またはその周辺を見ての憧れという物だろうか。

 そう考えていると、「ここでいいだろ」と後ろから声が聞こえた。振り返ると門があり、ジーンがその前に二人を下していた。アルベラは少し後退し、垂れ流しているようにしていた魔力を止める。自分の体の重みと、背中の少女の重みを全身に感じた。ジーンが子供達を下した場所に行き、少女を下す。抵抗がなくなり、先ほどより動作が早く軽い感じがした。少し跳ねると、足の裏がすぐ地面についた。まるっきり水から上がった時の感覚だった。

「さ、次行きましょう」

「ああ。けど、お前はここで見張りしててくれないか? 魔獣も魔族も見あたらないけど、こいつらが自分でどこか行くとも限らないし。………身の安全は保障してるんだろ?」

 さっき言ってた、ガルカとその他の事を示し、ジーンは「アルベラ自身の心配はしなくて良いのだろう」と尋ねる。

「大丈夫、それなら——————」

 何となく道の先を見たアルベラは、ガルカの居るあたりを見て、やや低めの声で「は?」とこぼす。

「なに、あそこ魔獣多くない?」

「………やっぱりそうなのか? あいつら、ずっと俺に付いて来てたみたいで。あそこら辺から寄ってこなくなって助かった。なんでか、ずっとまとわりつかれてたみたいなんだよな。魔力やら体力やら、消費は激しいし、魔獣も魔族も多いし。襲われる心配はともかく、お前は大丈夫なのか? ………この中、外より少し辛いだろ」

(辛い?)

「ああ………まあ………」

 ジーンの言葉に、アルベラは曖昧に答える。

 よく見れば、ジーンは二人を運び、それなりに疲労しているようだった。普通の陸地のように、二人を引きずらずに運べたが、体力の消耗もそれなりだったらしい。

 ジーンは、腰から太ももの辺りに括りつけたポーチから、魔力回復薬を出して飲む。

(ラツの奴が準備してくれて助かった………いや、ギャッジさんか)

 朝、自分の準備した荷物を開いて確認していたら、回復薬の類が全て入れ替えられていたのだ。自分の準備したものより、遥かに上質なものばかり。その中には勿論通信機も入っていたが、ここではバグって使いようがない。誰がとは言わないが、さぞかし残念がっていることだろう、とこれを見つけた時、ジーンは内心笑ってしまった。

(………そういえば、作戦の前に、一人十本、魔力回復剤を配るとか聞いてたけど、結局来なかったな。今朝皆に聞いたら、送られてきたって言ってたけど………)

 徴収の手紙。届かなかった魔力回復剤。ジーンは記憶を巡らせる。



(———魔力も、体力も、ジーンや王子に劣っている自覚はある………のに、)

 アルベラは自分の運んできた少女を見る。魔力を纏い、さらには共有もしたが、以前と比べて断然やり易かった。体力もそうだ。そんなに削られている様子はない。体を動かせば消耗するが、それは通常の生活と同じような範囲だ。

(聖の力を嫌う水。ガルカに札が貼られた時の様子。ガルカやコントンが、ジーンや王子を『神臭い』という様。あの魔獣………………うーん)

 ヒロインと、その攻略対象の死はゲームオーバー。

 自分が高等学園卒業まで、無事に生き抜くためのルールが、嫌でも頭に浮かんだ。

 ヒロインに嫌がらせをするという役割なのに、その殺生は駄目だったり、ヒロイン含め、その攻略対象も、もし自分が傷つければ神罰が下るかもしれないという謎の縛り。

(………ジーンは、ここに居るべきじゃないんじゃ。帰れって言って帰るはずないし、早くここの用事を済ませて外に出てもらうべきか―――)

「———よし、行こう」

 アルベラはテキパキと歩き出す。

「おい、ここの見張り」

「大丈夫。私の頼もしい護衛さんが見張っといてくれるから。ねえ、いい?」

 影の中で「え、そうなの?」と顔を上げ、コントンは適当な近くの影へと身を移した。

 アルベラの問いに、近くの木が返事をするようにガサガサと揺れる。

「ほら、良いって。行きましょ」

「………わかった。頼む」

 再度、コントンは木を揺らして了解した。



「で、なんでお前が将来の参考?」

「え?」

「ああ。悪い。なんか意外だったっていうか………。そもそも将来の心配とかする必要ないだろ? 公爵様のご令嬢で、生活の心配なんて要らないだろうし。お前のお父様が、爵位の剥奪さえされない限り領土もあれだし」

「そうね。財の心配はない。領地も十分潤ってて金持ちだから!」

 自信満々に答えるアルベラに、ジーンは呆れた視線を向ける。

「けど私だって、たまに、何となくは考えるの。将来、自分がどうしたいのか」

「へえ。…………それこそ、『更に高みへ』とでも言うなら、あいつとの縁談ってかなり魅力的なんじゃないのか? ———けどお前、お父様が勝手にお断りしてたのに、あんまりショック受けてる感じじゃないよな」

「地位で高み目指したいなら、確かに………そうするのが正解よね………。けど、生活自体は、別に、今不満があるわけじゃないし………」

「ああ。なるほど………意外ってわけでもないのか。お前、ラツと似て自由人ぽいところあるし。単純にそういうのに興味無いのな」

「へえ。そう見えるの?」

「こうやって、親の目盗んで、屋敷抜け出してる辺りとかな」

 ジーンは呆れたように言う。

「あら。確かに」

 アルベラはクスクスと笑う。

「そうか、自分らしさを極めて、もっと本能や感情に身を任せるべきなのかも」

 それを聞いて、ジーンは咄嗟に「やめてくれ」と言いそうになった。なんとなく良い想像が出来なかったのだ。

「………よ、よく分からないけど、どうしたいかなんて、そのうち見えてくるんじゃないか。急いで決める事でも無いだろ。人がどうなるかなんて、出会い次第だって、ザリアスが前に言ってた」

「あら。流石騎士長様。良い言葉ね」

(前世が前世だけに身に染みるな………)

 自然と苦笑が漏れた。

(まあ、まずは生き抜くことだけ考えるか)

「そういえば、前にカザリットもいいこと言ってたな」

「カザリットが?」

「やりたい事は片っ端からやれ、無理そうでもやれって。失敗が見えてても、やった方が満足できる事だってある。って、」

「へえ。カザリットなのにまともにいい事言ってる」

(ぐう………結構刺さる………)

「だろ。俺とラツが、初めて城を抜け出した時に言ってたんだ。酒飲んで泣きながら」

「泣きながら?」

「丁度失敗したばっかだったんだ」

(読めた)

「………どんな?」

「女絡みだ」

「でしょうね」

 アルベラは呆れ、ジーンは思い出してくつくつと笑っていた。

(まあ、カザリットもカザリットで、楽しそうに自分らしく生きてて、あれもいい例か)

「…………王子との婚約の話ね。そんなのもあったなぁ」

 そうぼやくと、ジーンが探るような視線を向けてきた。

「なにか?」

「公爵から、婚約候補者以外の事で何か聞いてるか?」

「特に、何も?」

「そうか。ならいい」

 ジーンはほっとしたように息をつき、廊下の先を行く。

(あの魔族は知ってたのに、本人は知らないのか)

 少年の背を見ながら、アルベラはぼんやりと考える。

(もし王子と結婚したいと思うとして、その理由はまず顔? 皆の憧れの、天使みたいな王子から、一途に愛されてみたい、それでみんなから羨望の目を向けられたい、みたいな愛され欲求? いや、承認欲求………………他人を使った自己顕示………………うーん。王子の気が他に行った時点で、色々と状況変わるよな。折角満たした欲求も、他の女に王子取られたら、反動の惨めさが凄そう? その状況を利用して、自分を寛大に見せるとか? 見栄張って心の広さ見せて自分も遊んで………。なんかそんなの、前世で幾らでも聞いたな。やっぱり自分の幸せを、人に委ねるのはだめね。生き甲斐の主軸は、自分の手で握れるものにしておかないと。王子の財力、権力、地位に惚れたとしたら、それを得るために狙うべきは、)

「………王権剥奪。国家反逆」

「は?」

「いや、王子の地位が欲しいなら、するべきは結婚よりそっちなんじゃないかと思って。自分がそのまま、王子の居場所に立たないとって。あ、本当にしようとは思ってないから。別に王子の地位や財が欲しいわけじゃないし。………………実際出来るものかしら。過去にあった内乱とか、城での暗殺騒動とか、調べてみたら手掛かりになるかな………」

「お前な………」

 王子の身辺護衛の前でよく言ったものだ。ジーンは呆れる。

「物騒? けど考えるだけなら結構面白い内容じゃない? もし自分がこの国を奪うとしたら、どう攻めるか。ジーンの立場だと結構いいとこまで行けそうね。王子の信頼と、内部からの犯行。同じ団の騎士たちから説得してって、戦力拡大? おお、凄いかも」

 想像し、アルベラは無邪気に、心底楽しそうな笑顔を浮かべていた。

(内容が内容じゃなきゃな………)

 ジーンは、呆れが過ぎてため息を漏らす。

「………あいつが、過去最悪な独裁者にでもなった時依頼させてくれ。あのガルカって奴に頼んで、魔族でも集めて、城を占拠させるとかどうだ」

 適当に付き合い、適当な提案をしてみる。

「それいい」

「いいわけあるか」

 「やるなよ」と釘を刺され、アルベラは「はいはーい」と軽い返事を返す。

 気づけば、二人は、キッチンを通り抜け、玄関から最奥の扉の前に辿り着いていた。



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