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まさちょこ

前書き(あらすじ)


マサシのチョコレート。この物語に出てくる主人公はとても馬鹿である。

チョコレートに含まれるポリフェノールが癌に良いと聞いた彼は、がん予防の為にチョコレートを食べまくった。そしてすっかりその味にハマッてしまい、より美味しい物を求めて、様々なチョコレート食べる日々が続いていた。

そして、さらにチョコレートを美味しく食べる為に、どうしたらいいのだろうか?そんなことをずっと考えていた彼は、好きなチョコレートを全部そろえて一気に食べてみたりしていた。また、チョコレートを食べる時の環境や雰囲気にも拘って、学校の授業中という、チョコレートを食べたらまずいやろ的状況こそ、美味しく食べることが出来るのだと気づいた彼は、ひたすら授業中にチョコレートを食いまくっていた。

そんなマサシがあることがきっかけとなって、自分のオリジナルチョコレートを作ることになる。

 マサシのチョコレートとは、馬鹿らしくも、ちょっと感動出来るラブコメディー小説なのだ。まぁ、一流の漫小説作家になる為の駆け出し小説なので、多々多々多々誤字脱字文法ミス構成の甘さ等あるのだすが、気にしないで読んでくだしゃい!それではマサシのチョコレートの始まりです…。





















『マサシのチョコレート』

          なんでも ええわ

一部『神童』


春の陽射しが不幸な人たちの不幸を除菌するが如く、晴天が続いていた。

 …田崎マサシは学校の教室で、五感を研ぎ澄ませながらチャンスを待っていた。何故なら、家から持ってきたチョコレートを授業中に貪り食う為だ。

持って来たチョコレートは、

たけのこの里

傘チョコ

ペロティー

カプリコ

チョコベビー

ビックチョコ

ぬ〜ぼ〜

チョコ棒

チョコあ〜んぱん

エブリバーガー

カカオの実

フラン

キットカット

マーブルチョコ

チョコバット

いも作君

きこりの切り株

きのこの山

チョコフレーク

小枝

アーモンドチョコ

ビックリマンチョコ

麦チョコ

チップチョコ

ポッキー全種全味つけ一本ずつ!

等多数

その為、鞄や机の中には教科書類は一切入ってはおらず、テーブルの上にはノートと教科書的な物、そして全教科書の表紙が置いるだけだ。(つまり、勉強している様に見せかける為のカモフラージュである)

 今日こそは帰る頃までにチョコレートを食べつくさなくては…。田崎マサシはそう決心していた。しかし、教師の監視の目が光っていて、なかなか食べるチャンスを与えてはくれない。

今日も食べつくすことは無理なのか!?

早くもマサシの心に不安の影が差し込む。

 昨日は惜しくも、あとチョコフレーク二十七枚というところでチャイムが鳴ってしまい、全てを平らげるにいたらず、悔しい涙を飲んだのだ。

大丈夫、今日はチョコフレークもファミリーパックではなく、普通のサイズに変えている。マサシは自分にそう言い聞かせた。

 そして、とうとう最後の授業の時間になってしまった。

けれど、チョコレートはなかなか減らず、まだ、

板チョコ

チョコもなか?

エリーゼ

焼きチョコ?

小銭チョコ

煙草チョコ

チョコパイ

パイの実

それに一番好きなピックルさえも残っている。

ふとマサシの脳裏に、敗北と言う言葉が浮かんで、それが次第に大きくなり、焦りと不安が押し寄せてきた。

けれど運はマサシに味方した。なんと、幸運にも教科の先生が休んでいて、最後の授業が自習になったのだ。

 マサシは大チャンスとばかりに、早速一番大きなチョコパイから手をつけ始めた。

 勿論、先生がいないからと言って気を抜く訳にはいかない。何しろ他の生徒達にも見つかる訳にはいかないからだ。仮に見つかってしまい、

『俺にもくれ攻撃』

や、

『私にもくださいませんか?わかったよ!先生にちくればいいんだろ!攻撃』

にあったら、たちまち大事なチョコレートを奪われてしまう。

そうなれば、チョコレートを食い尽くすという偉大な目標は達成できないのだ。

また、見つからない為には、匂いや音にも注意しなければならず、いくら自習といえども、状況は極めて過酷に変わりなかった。

 そして、

ムースポッキー

パイの実

小銭チョコ

を食べ終えたあたりの時だ。

 誰かがそっとマサシの肩を叩いた。マサシは一瞬ヒヤッとして、振り向くとそこには紺野あけみの姿があったのである。

マサシはホッとした。あけみはマサシの良き理解者であり、親友なのだ。

あけみは静かにマサシの手に紙くずを渡すとすぐに平静になり、勉強を始めた。

マサシが貰った紙くずを広げると、そこにはこう書いてあった。

 …頑張って!

 マサシの胸中に、熱い物が込み上げてきた。

もう後戻りは出来ない。何しろあけみが応援してくれているのだから!

マサシは頑張った!

チョコもなか?

焼きチョコ?

煙草チョコ

エリーゼ

と次々にチョコレートを平らげていった。

そしてパイの実を食べ終え、皮肉にも最後の大好きなピックルに取り掛かり始めた時、マサシに敗北を告げるチャイムが鳴り響いた。

 …帰り道。マサシは肩を落としながら歩いた。

別に、マサシもチョコレートを全て食べることが出来なかったからといって、悲しみにくれるほど精神的に脆くはない。ただ、あけみの慰めの言葉だけが辛かった。

 「大丈夫よ!あなたなら次こそできるわ!

わたし、マサシを信じているもの。」

 …そう、まだあきらめたら駄目なのだ!このままではただの駄菓子(駄目な菓子の子)になってしまう!

マサシはもう一度勇気を振起し、お菓子屋さんへ向かった。けれど、そこで待っていたのはさらに悲しい結末だった!

マサシの大好きなピックルが置いていなかったのだ!マサシはあちこち探した!けれど見つからない!そして店員に聞かされた言葉は残酷な言葉だった!

 「ああ、あのお菓子ならもう何処にも売っていませんよ。たぶん人気がなかったから販売停止になったんでしょう」

 …マサシはその夜、一晩中泣き明かした。悲しみに落ちて、マサシはもう生きる気力さえ残されていなかった。そんな時でさえ時間は流れ、朝が来るのだ。

 マサシは身体を引きずる様にして、学校へ向かうと、その途中、あけみとばったり会ってしまった。いつもなら嬉しいはずなのに…

 「おはようマサシ!」

 「う、うん。おはよ…。」

 「どうしたの?元気ないね。」

 「ただの寝不足。」

 その時、あけみはふとマサシの鞄がいつもより嵩が少ないのに、重量感があることに気がついた。おかしい…もしかしたらお菓子が入っていないのでは?それっておかしい?等とくだらない事を考えてしまったあけみは、心の中でちょっと反省した。けれど、今はそんなことよりマサシと、鞄の中身が心配だ。あけみは気になって、マサシに言った。

 「マサシ、鞄の中身見せて。」

 「…わかった。」

 そう言って二人は立ち止まり、鞄を置いた。マサシは出来ればあけみに鞄の中身を見せたくはなかったが、どうやら全て見透かされている様である。マサシは覚悟を決めて、鞄のファスナーを手に掴むと、思い切って鞄をあけた。すると、

 「私のじゃないわよ!」

 と激しく突っ込まれて、マサシも言い返す。

 「痛いなぁ!なんで僕の鞄見せなあかんねん!?」

「私こそどうして自分の鞄の中身見せられなきゃならないのよ!そんなことより、あな    たの鞄、今日はチョコレート入ってないでしょ!?」

「別にええやろ!チョコが入ってなくても教科書が入ってりゃ!」

「そんなの絶対におかしいわ!」

「何がおかしいねん!?」

「お菓子に異なるを付け足して書いてお菓子異のよ!」

「そんな駄洒落聞きたくないわ!」

「…マサシ、どうしてなの!?昔、私に言ったじゃない!何でも一生懸命やるこてが大事なんだって!」

…今から二年ほど前のことである。あけみには特に人に自慢出来る得意なことがなく、どちらかと言えばおっちょこちょいで、何をしても平均以下で、失敗やドジばかりだった。

勉強や運動は勿論、図工や音楽、それに料理や、その他の家事手伝いなんかさせても上手く出来た例がなかったのだ。

 唯一、あけみの得意なことと言えば、折り紙くらいだった。けれど、そんなものが得意だからといってもなんも役にもたたない。

そして不運なことにも、クラスの学級会の時間に、宿題として出された

『自分の得意な事』

を題材とした作文の発表会が行われたことがあった。

あけみは自分の得意なことをあれこれ考えてみたが、結局何も浮かんでこなかった為、作文を発表することが出来ずに、みんなの前で得意なことがないのだと言わなければならない破目になった。

すると、先生に。

「それは宿題を忘れた言い訳でしょ!」

と言われてしまい、あけみにとってあまりにも屈辱的な思いをさせられたのである。

そんな時、マサシが前に出て発表したのが。

『チョコ命』

と言う題の作文だった。

『チョコ命』

            田崎 マサシ

僕はチョコレートが大好きです。理由は色々あるけど、一つを上げてみると、チョコレートの原料、カカオに含まれているポリフェノールが癌の予防に良いからです。

他にも血液の流れも良くなるので、冷え症にも良いのです。

だから女の子にも大変お勧め!ただし、食べ過ぎて太らない様に!

また、ストレスを解消する働きもあるので、僕みたいに多忙な毎日を過ごしている人にも最適なのです。

優れた栄養食品でありながら、保存食にもなるのですから、チョコを作ってぼろ儲けしている企業の皆様に感謝したいです。

まぁ、チョコレートの凄さをみんなに知ってもらったところで、僕が一番チョコレートを好きになったあるエピソードをお話します。

これはだいぶん前の話になるのですが、僕には妹がいて、その妹は、一度癌の手術をしたことがあります。幸い手術も成功して、今はとても元気なのですが、やぶ医者には近い将来また再発する可能性があると言われ、また、僕の家族が信頼している医者には絶対に再発するので、この幸せの壺を五百万で買いませんか?と言われています。

しかも悲しいことに、その時たまたまお金がなくて壺を買うことさえ出来なかったので、妹は毎日病気の再発に怯えながら暮らしてきていました。

どうやら僕の家族は癌になりやすい体質らしく、壺無しでは健康に暮らしていけないみたいです。

そして、僕の家族はみんな、すっかが途方にくれていました。そんな時、ポリフェノールのことを知ったのです。僕と妹は肩を叩きあいながら、喜びました。そして誓い合ったのです。ポリフェノールがたくさん含まれているチョコレートを山ほど摂取して、お互いに癌にならないようにしようと…。

最近では、よく妹と新製品のチョコの話とか、どっちの買ってきたチョコが美味しいのか?等の話で盛り上がっています。だから、今僕の得意なことを一つあげるなら、それは、色々なチョコレートをたくさん、美味しく食べて、癌にならないことです。」

発表を終えると、たちまちクラス中が大爆笑だった。けれど、マサシには拍手喝采に聞こえた。また、あけみはあまりにもストレートで、正直な作文に感心したのだった。

そして放課後、マサシが一人で日直をしていた時、あけみが

「今日の作文面白かったわよ。」

と言うと

「ふん!どうせなら感動したと言ってくれよ!僕と妹にとってあの話は命にかかわったことなんやで!」

とマサシはあけみに突っかかったのである。

「なによ!せっかく誉めてあげたのに!」

「別に誉めてくれなんて頼んでない!そっちこそ今日の作文なんで何にも書かんかってん!?」

マサシのその質問にあけみは一瞬たじろいだ。そして、言い訳をする様に、言い返した。

「だ、だって私!得意なことなんてないもん…。」

するとマサシは不思議そうな顔をして

「そんなことないやん。この前授業中折り紙してるのん見たで。」

「お、折り紙なんて恥ずかしいこと書けるわけないでしょ!」

すると

「何言うてんねん!あれはかなり芸術的に折れてたで。あんな難しいカブトムシやら薔薇やらネッシーの折り紙なんてなかなか作られへん。」

「あんなの作れたからって何の役にも立たないじゃない!」

「阿呆!あんなんてよく知らへんけど作ってる間が楽しいんちゃうん?それに完成した時、難しいのが綺麗に出来てたらそれこそむっちゃいいやん!」

「でも…。」

「他の人からしたらなんでもないことかもしれへんけど、一生懸命にやったことって無駄じゃないで!俺もチョコ食ってるだけの男やけど、それで妹とも今まで以上に仲良くなったし、色々教えられたことだってあるんやで…。」

…それ以来あけみは、くだらないと思うことも一生懸命取り組むことにしたのである。

すると、自分でもビックリするくらいに毎日が楽しくなってきたのである。

勉強して誉められることが楽しくなり、出来なかった運動も少しずつ上達した。

中でも特に嬉しかったのが、折り紙の新しい作り方のアイデアの募集(言わばコンクールの様なもの)に出展して、見事最優秀作品に選ばれたのだった。その作品は折り紙の作り方の本の中に、ちゃんと名前入りで掲載され、すぐにマサシにも見せたのである。

するとマサシも

「見事なガンダムやなぁ!」

と一緒に喜んでくれ、それ以来二人は仲良くなったのだった。あけみを好きなことに振り向かせ、一生懸命にしてくれたそのマサシが今、チョコレートを食べることを諦め、鞄の中にチョコレートではなく、教科書を入れている。マサシが好きなことに一生懸命になれないでいるのだ。あけみはそれが辛くて、マサシに問いかけたのだった。

「…知っているでしょ?私、マサシに言われたから、今は一生懸命な自分に変われたのよ!」

「好きなことに一生懸命なんは今だって一緒や!けど…ピックルないねんで!?」

「ピックルがない?…知ってるわ、あなたの一番好きなチョコレートね、でもだからって他のチョコレートも食べないつもり!?チョコレートをたくさん食べ続けて癌を予防するんでしょ!?妹さんとも仲良くなったんでしょ!?」

「そんなんもう昔の話や!今じゃあ千代子もぶくぶく太ってしまって醜くなってしまった!」

「そんな!…マサシ酷いわ!それに自分の夢まで捨てることないでしゃ!」

「しゃ!?」

「ち、ちゅっと噛んだだけよ!」

「噛み過ぎ!もう俺のことはほっといてくれ!ピックルが販売中止になった時点で俺の夢も終わったんや!」

そう言ってマサシは走っていってしまった。

そして時間が経ち、夕方になった。

結局、あれからマサシは学校に行かずにブラブラと公園等を歩いた。下校の時刻になっても、家に戻ることがなんだか気がおもたくて、しばらくはうろうろとしていたが、いつまでも外にいるわけにもいかない。

仕方なく自宅まで帰ってくると、扉をあけて、家の中に入り、玄関で右足の靴を脱いでは、すぐさま左足の靴を脱ぎ、臭い足の匂いと共に床暖房の付いていない冷たい板張りの廊下に上がった。すると廊下の奥から、鶯の鳴き声の鳴る廊下を踏むとやかましいと思ってか、地面に足を付けない様に、マサシの母親のキュウコが、壁に両手両足を突っ張って、ドッコイショのコラショのドッコイショ!と言ってやってきた。

マサシが学校を休んだことを知っているのか、厳しい表情をしている。

「マサシ!ちょっと話があるから来なさい」

「学校から連絡があったわ!今まで何処に行っていたの!?それとあけみちゃんから電話があって、理由は聞きました!だからって学校は休んだら駄目でしょ!…ごめんなさい」

マサシは素直に謝った。

「お母さんの台詞を全部言わないの!」

「ごめんなさい。」

マサシはまた謝った。そして、次の瞬間ピシャン!と平手打ちが飛んできたのである。

「わかっているならそれでいいわ!でもあなたは一つ忘れている。お母さんもあけみちゃんもどれだけ心配したかわかる!?」

厳しい母の顔には、それと同時に宝石の様な涙が光っていた。

「心配かけてごめんなさい。」

「あけみちゃんにもちゃんと謝るのよ!」

母はマサシにそう言い残して、今度はドリフを見る為に、リビングに戻っていった。

一方、あけみは自分の家で家事をしていた。本当はマサシがちゃんと家に帰っているのか電話をかけてみたかったが、なんとなく恥ずかしくて止めておいた。それに自分の両親の為に、晩御飯の仕度をしなくてはならない。

あけみの両親は病弱で、いつも仕事から帰って来るとフラフラと倒れてしまう。だからあけみは、少しでも身体に良い物を両親に食べさせてあげたいと思っていた。

あけみが、今夜の晩御飯

『日本料理中華料理イタリア料理インド料理タイ料理ベトナム料理沖縄料理台湾料理フランス料理スペイン料理その他ありとあらゆる料理の盛り合わせ』

という料理をせっせと作っていると、寝室から不気味な声がする。

「め、飯はまだかい?」

あけみの母、好子の(よしこ)の唸り声だ。そして、その声に反応して、父、拓也の低くこもった声がウゴ〜ンと鳴り響く、どうやら

「母さん、飯ならさっき食べたたりょ」

と言っているそうだ。

「そうだったかしら?」

この拍子抜けた二人の会話に我慢出来なくなったのか、あけみが、

「今作ってるわよ!!」

と怒鳴ると、

「ああ、そうなの!?」

「ああ、そうかりゃ!?」

と、声のタイミングぴったり同時に返事をする。そして、いよいよ料理が出来ると三人で食事をとった。

「それにしてもあけみ、料理上手くなったりょ」

そう言ってあけみを誉めているのは父、拓也だが、勿論、普通の人間にはウゴ〜ン!としか聞こえない。

「そうね、二年ほど前はとっても不味かったもの…それもすごく…とても大胆に…思い出しただけでウェ〜ゲロッパ!」

「ほっといて!」

「母さんはそれほど今の料理が美味しいって誉めているりょ…ウェ〜ゲリョッパ!(ウゴ〜ン)」

あけみは二人の話にあきれたのか、無視してさっさとご飯を食べる。すると電話が鳴り出して、あわててあけみは電話に出た。…きっとマサシからじゃないかしら?

「あっもしもし、田崎マサシって言うんですけど」

思った通り、マサシからの電話である。

「あら?どうしたの?」

あけみは、電話がかかってくるのをずっと待っていたかの様に思われたくなかった為、わざととぼけた感じの対応をした。

「あけみ?」

「そうよ。」

「…今日はゴメンな。」

あけみはマサシに素直に謝られて、戸惑ってしまった。本当は許したりせずに、文句を散々言ってやって、少しの間からかってやりたかったのだ。

どうやら好きな相手に対して、お互いに素直になれない性格のようである。

「い、いいのよ。それよりマサシは大丈夫なの?」

「うん…いや、大丈夫じゃないかもしれへん」

そう言ってマサシは電話の向こうで苦笑いを浮かべたのか、小さく笑った。

「元気出して、私も力になるから…。」

「そんなこと言うなよ。あけみにそんなこと言われたら無理にでも頑張らなあかん…でも、ありがとうな。」

いつもあけみの前では強気なマサシだったが、今日ばかりは何か違っていた。

そう、いつもは勝手なことばかり言って、冗談にしてしまうマサシは、頼りなくとも、必ずなんとかなるんだと信じてしまえるような、そんな不思議な魅力があった。

その為か、マサシの傍にいると、あけみはどんな時も不安になるようなことはなかったのである。

けれど、今のマサシは弱気で、何か不安げな感じがした。そしてあけみはマサシに対して初めての感情が込み上げてきたのだった。

それは、胸に何かが入り込んできた様な感じで、それが零れ落ちてしまわない様に、心が締め付けられてゆく感じだ。そして、守ってあげたいという思いを大切な何かに約束する。そんな不思議な感情なのである。

あけみは、マサシに今何をしてあげたらいいかわからなかった。

「私、マサシに何かしてあげたい…」

「じゃあ僕の話の聞き役になってや、なんか、いっぱい話したいことがあるねん。」

「うん」

あけみは、何故かまた胸が締め付けられて、

その痛みのせいだろうか?ちょっとだけ、目が涙でうるんだ。それが、恋のせいだとはあけみにはまだわからなかった。

 そして、電話越しにマサシの後ろで、マサシの母親、キュウコの声がした。

「マサシ!あんた電話代高いんやから早く切りなさい!それか向こうからかけてきてもらいなさい!」

「わかった〜!…そう言うわけやから電話かけてきてな。じゃあ切るわ」

マサシ!ちょっと待ちなさいよ!と、あけみが文句を言う前に電話は切れてしまった。

あけみは仕方なく電話を掛けなおそうとしたが、だんだん馬鹿らしくなってきて、そのまま電話も掛けずに自分の部屋に戻ろうとした。すると、その途中、またしても不気味な声がコダマした。

「あけみ〜ちゃんと洗い物するのよ〜!」

「ウゴ〜ン!(今日も阪神勝ったりょ〜!)」

そして、一日が明けたのである。また、時間設定の為、(作者である私の勝手な都合の為)学校も終わり、今は夕方下校時刻だった。マサシは帰り道、あけみに声をかけた。

「一緒に帰ろうや…」

「い、嫌よ!」

「さっきから何怒ってるん?」

「さっきから?昨日の夜から怒っているわよ!どうして電話切ったのよ!」

「だって切らんとおかんに怒られるもん。あけみかてあの後電話掛けてこんかったやんか。」

あけみは呆れて言い返す気も無くなり、マサシを無視してさっさと歩き始めた。けれど、マサシのその後の言葉に少し引かれて、またその場に立ち止まってしまう。

「昨日電話切ったこと怒ってるんやろ?確かにいきなり切って悪かったけど、すぐに掛けなおしてきてくれると思ってた。あんな失礼なことしてしまったのは、あけみが優しくしてくれたからつい甘えてしまっただけやねん。だから怒らんといて…そんなに怒ると思わんかった。ごめんな…。」

マサシは、心から反省していた。

その気持ちがあけみにも伝わったのか、あけみは少し考えこんで、

「…わかった。その代わり…今からマクド奢ってよ。」

と言った。

本当はマサシが甘えていただけということがわかってすぐに、あけみはマサシを許していた。けれど、昨日話が出来なかったぶん、マサシと話をしたかったのだ。

そして、マサシはあけみにマクドを奢ってと言われて焦った。何しろ財布の所持金が、チョコレートを買いすぎていた為に、五百円しか無かったからだ。ここは素直に言っておいた方がいいだろう。

「わかった!今日は奢ってあげる!その代わり五百円までやで!」

そう言って二人はマクドナルドに向かったのである。二人はマクドナルドに着くと、さっそくレジに並び、注文をする。あけみはその時、マサシが五百円までと言ったのを考えて、一番安いハンバーガーだけを頼んだ。

「なんや、それだけでええんか?」

「うん、家に帰ったらお母さん達の御飯作らないといけないしね。それにどうせマサシのことだから調度五百円しか持ってないんでしょ?」

マサシはすっかり見抜かれていたことに少し恥ずかしくなって、照れ隠しにさっさと自分も注文をする。

「あの…ハンバーガーを一つだけ。」

マサシがそう言うとあけみが、

「チョコシェイクも頼んだら?」

と言う。

「でも、あけみ飲み物頼まへんの?シェイク一つ買ったらそれだけでお金無くなってしまうやん。」

「別にいいわよ。でも私にもチョコシェイクちょっと頂戴ね。」

「…じゃあチョコシェイク一つください。ごめんなあけみ。」

「あけみは別にいいわよとでも言うように「ん」と一言返すと

「じゃあ私席取ってくるね。」

と言って、先にテーブルへと向かった。

そして、マサシは出てきた料理のトレー運ぼうとした。

「あれ?」

マサシが振り返ると、そこにはあけみの姿はなく、どうやら上の階に上がったようである。

前からあけみは高い所が好きで、確か前に私一番上の階が好きなのと言っていたことを思い出した。だからきっと今も一番上の階にいるはずである。

そしてマサシは一階を後にして、階段を上がって行った。

二階、三階、四階に上がった所で、マサシは一度立ち止まった。まだまだ上に続いているようである。

これだけ高い店だから、エレベーターがあるかもしれない。そう思ってマサシは四階からエレベーターを探し、それで上に上がることにした。

案の定エレベーターはすぐに見つかり、中に入って階数のボタンを押そうとする。

「ん?なんやろこの千って…」

よく見ると、0〜9のボタン以外に一、十、百、千のボタンがついている…マサシはまさかと思って、千、9、百、9、十、9、一、9の順でボタンを押してみる。すると

「上の階に上がります。」

とお決まりにアナウンスが流れて扉が閉まり、上の階へと上がり出した。

いったいどのくらいの時間がかかるんやろう?マサシは当然の心配をした。せっかく9999階も上がるのなら、せめて窓の景色くらい眺めていたいものである。けれど、そんな気の利いた物はなく、マサシはただひたすら上昇していく階数表示板の数字を眺めていた。

二十階くらいまでは他の人の乗降もあったが、それもついに無くなってしまい、百階あたりに辿り着いた時、マサシはあまりにも退屈だったからか、

「たいがいにせぇよ!!」

と愚痴を零した。

もしかしたらあけみもいいかげんに疲れてしまって、4674階とかで降りてしまったら、それこそ探しようがない。そう考えると、マサシはぞっとした。けれど、あけみの私一番上の階が好きなのと言う言葉を信じて、ただひたすら辿り着くのを待つことにした。

そして目的の階に2時間30分もかかって、ようやく辿り着いたのだった。

そして、窓際の席であけみが手を振っているのを見つけたマサシは、出産並みのアドレナリンを分泌して席に着いたのである。

すると、あけみは

「ずいぶん料理出来るの遅かったのね。」

と言った。

「料理のせいじゃないと思うで…。」

「でも、エレベーターの時間が二時間二十四分かかるでしょ?料理が出来るまでに5分もかかっているじゃない。」

マサシは頭の中で、たったの五分やないかい!と突っ込みを入れて、口には出さないことにした。

「わざわざこんな上まで来なくても…。」

「高さにして約5百kmだって!見て!あれがエベレスト山脈よ!その右上が今問題になっている北朝鮮!」

すごいはしゃぎ様である。マサシは半ば呆れた感じでチョコシェイクを飲んだ。勿論溶けてしまっていて美味しいとは言えない。すると、あけみが、

「あら、それはそこのシェイクボックスで冷やしてから飲むのよ」

「そんなんあるん!?」

「うん!それ!」

あけみにそう言われて、あけみの指の指す方向に目をやると、テーブルの横にCOOLとHOTと書かれたボックスがあり、どうやらそのボックスを使ってから食べるようになっているみたいだ。

マサシはチョコシェイクやハンバーガーをそのボックスにいれて、それぞれボタンを押してみると、チン!と鳴って、出来立てと思えるほどの美味しそうなハンバーガーと、ちゃんと冷えたこれもまた美味しそうなチョコシェイクが出来たのである。

そしてようやく食べる準備が整って、二人はハンバーガーに噛り付いたのである。

「どう?ちゃんとした出来立ての味になっているでしょ?」

「うん!けど、あけみ、ようこんな所知ってたなぁ。」

「私だけの秘密の場所だったの…」

「僕なんか連れてきて良かったんか?」

「うん。本当はもっと早くに連れてきたかったんだけど、マサシこんなに時間かかる所じゃ嫌かなって思って。」

「確かにいつもこんなに時間かかる所は嫌やけど、たまに来るんならええ所やなぁ。」

そう言ってマサシは外の景色を眺めた。そこには青い地球がま近に見えて、空にはいつもより大きな月が昇っていた。

「どう?気に入った?」

「うん。でもよう教えてくれたなぁ」

「ほんとはね、今日マサシを連れて来ようかまよったんだけどね。」

「じゃあなんで教えてくれたん?」

「…マサシがチョコレートのことで落ち込んでいたから。」

「ありがとう。でももう大丈夫やで。あけみのおかげや!こんな景色のええ所に連れて来てくれたし、久し振りにチョコシェイクも口にしたし、何よりあけみが傍にいてくれるんが一番嬉しい。」

ほんとに!?あけみはそう口にしようとしたが、なんだか恥ずかしくて声にならなかった。

「マサシ。私にもシェイク頂戴!」

あけみが照れ隠しにそう言うと、マサシは「ん。」

と言ってあけみにチョコレートシェイクを差し出した。

「うん!美味しい!…そういえばマサシが学校で食べているチョコの中にチョコシェイクって無かったわね。」

「そうやな。チョコシェイクは確かに好きやけど、解けてしまうし、マクドナルドのオリジナルやもんなぁ。」

その時だった。マサシのその言葉にあけみはハッとなったのである。

「そうよ!たくさんの美味しいチョコを過酷な状況で食べるよりも、もっと美味しいチョコがあるじゃない!」

「阿保、たくさんのお気に入りのチョコを学校の先生の目を盗んで全て食べる以外に僕を満たしてくれるチョコなんてあるかい!」

「それがあるのよ!」

「んな阿保な!」

自分を満たしてくれる究極のチョコを求めていたマサシにとって、あけみの言うようなチョコがあるなんて信じがたかった。

「ちゃんと聞いてよ!マサシが求めてる本当のチョコがあるのよ!」

「そんなんあるはずないやん!唯一求めてたチョコに一番近いって言うたらピックルくらいやもん!」

「だからそれがあるんだって!…マサシのチョコレートよ!」

「…自分で一生懸命作った理想のチョコ。か…もしそんなチョコ作って学校の先生の目を盗んで食べたらむちゃくちゃ美味しいやんか!色んな意味でその話美味しい話やで!」

「でしょ!私が自分で考えた折り紙の造り方だってどれほど嬉かったか!」

「そうや!何も食べる時に美味しいと思える要素は味覚だけじゃない!嗅覚や視覚、それに心の気持ちだって大事や!」

「まさに料理は真心ね!」

「よっしゃ!最高のチョコ作ったるで!身体に恐ろしく健康的でダイエットにもなる、見てて幸福、食べて成仏出来る恐ろしく美味いチョコ作ったるで〜!」

そして二人は究極のチョコを作ることを誓い合ったのである。

…帰りのエレベーターの中で、二人は二時間半の間を二人きりで過ごすことになった。

はじめはチョコの話だったが、途中からだんだんとあけみの可愛さの話になっていき、マサシはムラムラしてしまい。

「なぁ、KISSしてや。」

「だ、駄目よ!私達小学校六年生よ!」

「なぁ、お願いやから…。」

「じゃあ私に最高に美味しいチョコレートを食べさせてくれたら…。」

とあけみが言おうとすると、途中で口を塞がれてしまう。

そして二人は短いKIっSSをしたのである。

「なぁ、もっとDEEPなんしようや!」

「もう!それはマサシがチョコ作るまでしないからね!」

「ごめん。」

マサシは少し度が過ぎたと思ったのか、素直に謝った。そして付け加えて、ありがとうと言ったのである。

そして時が流れ、ムラムラしてしまったエレベーターでの出来事から何日か過ぎた土曜日のことである。

マサシはチョコレートを買いに甘屋さん(駄菓子屋)に立ち寄った。

「やっぱりチョコレート作ろうとしたらベースの板チョコにかぎるわ〜。」

マサシは色んな種類の板チョコを買い物カゴの中に放り込んだ。勿論、三つに二つの割合で、従業員にばれないように、口の中にも放り込んだりもした。マサシが買い物カゴの中にちゃんと入れたチョコは、まず、ベースとしてそのまま使える、あまり加工されていないものを選んだ。

マサシの一番好きなスィートビターチョコ、を先ずはそっとカゴに入れて、次にミルクチョコ、ストロベリーチョコをカゴの中に放り込んだ。それに、目に優しいと言われているブルーベリーの健康食品等の栄養剤なんかも各種、カゴの中に叩き入れた。(カゴの入れ方でマサシの好みが現れている!)

他には、パフやピーナッツやクランチ、ナッツやジャム等も購入した。また、泡だて器やボール、型を好きなように作れる機材なんかも買って、最後にココアを買って家に帰ることにした。

マサシがただいまと言って家に帰ると、マサシの母親、キュウコが奥から出てきた。

「おかえりマサシ、あけみちゃん来ているわよ。今、千代子の部屋で一緒にプレステ2の神宮寺さぶなんたらしているわ。」

「わかった〜。それはそうと、お母さん、今、廊下歩いてきたのに、鶯の鳴き声聞こえんかったやん。」

マサシの家の廊下はなんと、鶯張りなのだ。だから、いつも歩く度に鶯がうるさくてかなわない。その為に、いつも地面を踏まないように、足や手なんかを、壁につっぱって渡ることもしばしばあった。

マサシは、今日もいつものように、母親のキュウコが壁に手足をつっぱりながらやってくるものと思っていたが、普通に廊下を歩いてやってきて、マサシは内心、鶯に何かあったのかと心配したが、意外にも返ってきた母の言葉はこうだった。

「やかましいから食べたわよ。それより早く行ってあげなさい。千代子とあけみちゃんが、お互いに気を使ってギクシャクしているわよ。」

そう、うるさいのなら、もっと早くにそうするべきだった。何故今まで気づかなかったのだろう?

マサシは、まぁ、たまにはそんな見落としもあってもええやないかと、あまり深く考え込むことはやめにした。そして、

「はぁい。」

と元気よく返事をし、千代子の部屋がある二階へと上がった。

「千代子、入るで。」

「あ、おにいちょん。あけみ姉さん来ているよ。」

そして、扉を開けて中に入ると丸々太ったマサシの一つ下の妹、千代子とあけみが二人並んでテレビを凝視している。

「マサシ、お邪魔しているね。さっき神宮寺三次郎クリアーして、今ぶよぶよしていたのよ!すごく面白いね!」

「そうやな、ところであけみ、なんか用事があったんか?」

「何が?」

「いや、いきなり家に来たから。」

「だって今日、日曜日だしチョコレート作るんでしょ?」

「まぁね。でもよく僕の家わかったなぁ。」

「うん、至る所の標識にマサシの家って書いてあるんだもん。迷わず来れたわ。」

「そんな標識あったっけ!?」

「じょ、冗談よ!信じないで!電話したらお母さんが教えてくれたわ。」

「なんや、びっくりしたわ。」

二人の馬鹿なくだらない掛け合いに、千代子は、

「え?お兄ちゃんチョコ作るの!?」

と聞きそびれてしまい、再度聞き出そうと試みた。マサシ同様に、千代子もチョコレートに目がないのだ。

「おに…。」

「それにしてもあの暗号みたいなのなんとかならないの?」

「おに…。」

「暗号?」

「おに…。」

「電話した時に、マサシのお母さんに合言葉を聞かれたのよ。」

「おに…。」

「あれは、もしもしの代わりに使う挨拶みたいなもんやからなぁ…。」

「おに…。」

「ほんとビックリしたわ、電話に出たらマサシのお母さんずっとアセンブル言語で話だすんだもの!」

「おに…。」

「あれを解読出来るなんてなかなかやるやないか!」

「おに…。」

「まぁね!合言葉もマサシにドラクエ2のもえもとがヒントだって聞いていたしね。私もちゃんとアセンブラ言語で有名な復活の呪文言っといたわよ。」

「おにいちゃん!!!!」

「どうしたん千代子!?いきなり大きい声出して?」

「チョコレート作るってほんと?」

やっとの思いで千代子は話を聞いてもらえた。

「そうや、でもはじめて作るからあんまり自身がないけど…。」

千代子は自分も食べたいと言おうとした。「わた…。」

すると、あけみが。

「千代子もちゃんも食べたいって顔しているわね!」

と先に言われてしまう。

マサシはあけみの意見に同感だったのか、「確かに千代子も食べたいって体系してるよな!」

と付け足す。

「マサシ!」

「ごめん!」

マサシの軽いノリで言った悪い冗談も、千代子にはどうでもよかった。

「ち、千代子も食べていい!?」

「うん、ええよ。でも食べ過ぎるなよ。」

マサシは自分でも少し千代子に甘いと思った。本当は少し甘い物を控えさせて、ダイエットさせてやりたかったのだが、一度妹を亡くしかけたことがあってか、つい甘やかしてしまうのだ。

…ちよこ(チョコ)だけに甘いってか…マサシは心の中で駄洒落を思い付いて笑ってしまった。するとあけみが気味悪そうに、

「なに笑っているのよ!どうせチヨコだけに甘いとかくだらない駄洒落でも考えていたんでしょ!」

「そ、そんなことないで!」

「まぁいいわ、じゃあみんなでチョコ作りしましょうか!」

あけみはそう言って明るい笑顔を作った。

いよいよチョコ作りが始まるのである。けれど、千代子がその時、

「私やっぱりチョコ食べるのやめとく…。」

と言った。あけみがその言葉に、

「どうして?」

と聞くと、

「今日ね、夕方に青井英明君って言う男友達が遊びに来るの、友達の話じゃその子痩せている子が好きなんだって…。だから少しダイエットしよっかなんて思ったりなんかしてね。」

千代子はそう言って小さく舌を出して照れた。

するとあけみが、

「そっかぁ、じゃあここの部屋で私の魚拓でも見ている?実はこの前すごく大きい魚を釣ったのよ!」

「うん!そうする!」

二人のその会話を聞いて、マサシが、

「阿保!そんなんやったら食べるんやめて作るんだけ手伝ったらええねん!そんでもってその赤井秀和とか言う子に食べさせてあげたらええねん!」

と、男の子の名前以外はまともなことを言った。

そして、3人のチョコ作りが始まったのである。

「まずはみんなでベースになる板チョコを刻む!…しまった!包丁二本しかない!」

「大丈夫!私の包丁は自分で作るわ。」

あけみはそう言って持ってきた鞄から折り紙を取り出すと、見る見るうちに包丁の形に折っていく…。

「折り紙で包丁が作れるかいな!」

「あけみお姉ちゃん上手!」

「…出来た!」

あけみは自分の折った折り紙を手に持って、まな板に置かれたチョコに目掛けて振り下ろした。サクッ!

「んな阿保な!!」

マサシは、あけみの特殊能力を少し羨ましいなと思った。

そうして、三人の手によって見事にチョコが刻まれ、今度は幾つかのボールに移されて、ボールごとにお湯に浸けられる。五十度を越えない程度のお湯に、チョコレートは溶けはじめて、クリーム状になる。

「次は色んな材料を混ぜ合わせて、一番美味しいベースを見つけだすんや!

まずは苦味が足りんと思ったら純ココアを入れる。味がしつこいなら牛乳混ぜたりして薄めて、あと牛乳の代わりにミックスジュースのサラダ味や、果物味で薄めたりしてみて!最初のは出来るだけ甘みの少ないあっさりしたチョコを作りたい。

あと、クレープ生地や、ウエハース、パンや、クッキーやスポンジケーキチョコは少し甘いくらいに作らんと味が引き立たへんから、甘味料はここに砂糖と、グラニュー糖、蜂蜜、ジャム、それにキシリトール置いておくから…。

あと、超オリジナルチョコを作る為に乾燥カカオとチョコの油分になるエンカバンから、少し油分を取り出して、出来るだけ脂肪分の少ないココアバターを作って、体の栄養バランスを考えた栄養と油を燃焼させる成分の多い野菜や果物の栄養ミックスジュースを使って調理してほしい。」

「おにいちゃん、そんな材料とかどこで手にいれたの!?」

「39円ショップ!」

「安!」

と、あけみがビビる。

…そして、三つのベースになるチョコレートが完成した。


1ブルーベリーや、ストロベリーベースのビターチョコ。『ビターベリーチョコレート』

2どこか自然の食感を感じさせる。とろり甘〜い『ハニーミルクホワイトチョコレート』

3甘さ控えめ、バランス栄養たっぷり、健康チョコ、『ココアサラダバターカットチョコレート』の三つである。 


いずれも、溶けた状態でボールに入れられている。そしてここからさらに本格的なチョコレートを作る為に、二人に指示を出す。


「よし!1番のチョコはとろ〜りとさせたまんまクレープ生地に包んで。」

壱 『ビターベリークレープ』


「2番はエアインチョコにするために泡だて器で泡を作って、それをフランスパンの柔らかい生地の部分にたっぷりつけて。」

弐 『チョコフランス』


「3番のは薄い板状にして、ゴマと、クランチと、パフをまぶして、ウエハースに挟んで。」

参 『養命チョコ』


「あと、それぞれのチョコの味を生かした形にこだわって、チョコを作る。1番のチョコは小さな板状のハート型チョコ

1 『恋チョコ』


「2番はまず型を作って、薄くチョコを塗って、型を取り出す。そのあと、またチョコレートをくっつけて、熊さんの形にする。」

2 『甘えん坊ベアー』


「3番は自然の健康をイメージして、葉っぱの形。」

3 『ベジタリアンチョコ』


…そして、余ったボールの中のチョコレートを板チョコにして、合計九つのお菓子が作られた。

マサシは初めて創った自分のオリジナルにチョコレートを目の前に並べてみて、思いに耽った。もしかしたらとんでもなく美味しいチョコレートを創ってしまったかもしれないのだ。マサシは

「うふふふふふふふふふふふふふ。」

と言った。

「お兄ちゃんカッコイイ!」

千代子がそう言ってマサシを誉めると、あけみが

「カッコイイじゃなくて不気味なのよ。」

と釘を刺す。

そしてさっそく千代子は一番カロリーの高いチョコフランスに手を出した。それを見て、間髪を入れずにマサシが千代子の頭を叩いた。

「痛!」

続いてあけみの跳び膝蹴りがマサシに炸裂する。

「膝!」

「コラ!千代子ちゃんの頭叩いたら駄目でしょ!」

マサシは膝で溝打ちをきめられてヒットポイント2になった。

「だ、だって…さ、さっき自分からダイエットするって言うたのに…チョコフランス…。」

「い、いいのよ!ちゃんと運動すればいいんだから!」

あけみはマサシの赤い文字に変わってしまった瀕死の台詞を聞いて、少しやり過ぎたと思い、マサシの苦しみが和らいだらいいのになぁ〜と願った。

するとマサシのヒットポイントは全回復して、4になった。

また、あけみのさっきの言葉を聞いて、千代子は運動するの嫌だなぁ〜と思い、

「食べないって言ったの私なのにごめんなさい。私ちゃんとダイエットするね」

と謝ったのである。

それを見て、マサシは少し千代子が可哀想になり、

「で、でもあれやな、目の前に食べ物があって、みんな食べているのに一人食べれへんのは辛いな…。よし!食べるんは青井英明君だけにしよ!僕もあけみも今は我慢することにする。」

するとあけみが

「でも味の方は大丈夫かしら?」

と当然の心配をする。

「大丈夫や、ちゃんと味を確認しながら作ったから、不味くはないはずや。」

「わかったわ。マサシは信じることにするね!」

「ありがとうお兄んゃち!」

「千代子ちゃん、ちゃんが反対よ。」

「ごめんなさい。えへへ。」

そう言って千代子は舌をだら〜りと出して照れた。

「ほんましょうがないな千代子は!あはははは!」

千代子の天然ボケが炸裂し、皆が笑って、なんとか完成したチョコレートに手をつけずにすんだ。

そして、完成されたチョコレートを残して、材料のジャムやパン等を、三人で仲良く食べたのだった…。

夕方になり、青井英明が田崎家に遊びに来た。

また、その5分ほど前に、あけみの両親、紺野拓也と好子もチョコレートの匂いにつられてやってきていた。

「うご〜ん!(母さん、ここの家から良い匂いするりょ!)」

「あなた、それより仕事を探さないと…。」

「ご〜ん(まさか二人揃って会社首になるなんてりょ…。)」

青井英明は友達の田崎千代子の家の前をうろうろしている変な夫婦が気になって、なかなか家に近づくことが出来なかった。

仕方なし携帯電話から千代子の家に電話をかけてみる。プルルルルルル!プルルルルルル!ガチャ!

「もしもし。」

「はいもしもし。」

「いやしかし最近いたずら電話が多くてねぇ!困っているんですよ!」

「そうなんですか。」

「まぁ僕もその悪戯電話するうちの一人なんですけどね!」

「まぁ偶然!実は私もそうなんですよ!」

「お前もかい!」

「青井君ね!」

「…あのさぁ、この合言葉みたいなの絶対言わないと駄目なの?」

「え〜、面白くない?」

「そう言う問題じゃなくて、面倒臭いじゃんか!」

「そう?でも、うちのお兄ちゃんやお母さんの合言葉なんてもっと長いよ?」

「それはちょっと聞いてみたい気がするけど!でも最初ビックリしたよ!電話番号のメモ書きに合言葉なんて載っているんだから!」

「ふふ、変わった家族でしょ?ところで今、何処からかけているの?」

「それなんだけど、今君の家の前からかけているんだ。けど、玄関のところに変な夫婦がいて、怪しそうだから電話したんだ。警察呼んだ方がいいかな?」

「うそ!?ちょっと確かめてみるね!じゃあ一度電話切るから。」

「気を付けてね!」

そして、千代子は電話を切ると、マサシとあけみを呼んで、玄関に向かった。三人は用心深く玄関のドア穴から様子をうかがった。

「ほんまや!怪しいのおるで!」

とマサシは眉間にシワを寄せて、眉毛と眉毛をひっつけた。

そして今度は

「千代子にも見せて!」

と千代子がそう言って、マサシと代わり、千代子が覗き込む。

「ほんと!でも夫婦みたいだから悪い人じゃないかもよ?」

千代子がそう言うと、あけみが怒って、

「何を言っているのよ!お金に困って夫婦で悪いことする例なんていくらでもあるんだから!すぐに警察を呼んだ方がいいわ!」

そう言って今度はあけみがドア穴を覗き込む。

「…あの、警察はちょっと待って。(…なんでこんな所にうちの親がいるのよ!)」

あけみはすっかり呆れてしまい、その場に膝をついた。

「どうしたんや!?」

「いい!ほっといて!」

そして、仕方なしにあけみはドアを開けて両親に文句を言いに行ったのだった…。

「なんでこんな所にいるのよ!?」

するとあけみの父拓也は。

「んご?(母さん、何故かここの家から出てきた子がうちの娘に見えるんりょ〜?)」

と首をかしげている。そして母好子は、

「あらほんと!うちの娘そっくり〜!」

と喜んでいる。

あけみは怒って、

「あんた達の娘よ!!」

と怒鳴ったのだった。

「なんや?あけみのおっちゃんとおばちゃんやったんかぁ。あけみ、親にそんな怒鳴ったりしたらあかんで。」

「へぇ〜!あけみ姉ちゃんのお父さんとお母さん格好いいだね!あっ、私英明君心配していると思うから呼んでくるね!」

そして、マサシはみんなを家の中に招き入れて、チョコレートの試食会を賑やかにすることになったのである。

「もう!ほんとはそれ私とマサシの分なんだからね!」

あけみは恥を掻いてしまった上に、自分のチョコレートまで取られてしまった両親に対して、文句を言ってみたが、二人とも一考に聞く耳を持つ様子がない。

そして、あけみが「マサシ」と言った所だけに反応して、父親の拓也が

「うご〜ん!(ありょ?君があけみの好きなマサシ君だったりょ?)」

とマサシに聞く。

「お父さん!」

「あけみ、おっちゃんはなんて言うてるんや?」

「なんでもないわよ!」

あけみは余計なことを聞いてくるマサシに蹴りを入れて、余計な事を言った父親に裏拳を入れたいと思った。

しばらくして、青井英明と、田崎千代子が、台所に用意されていたチョコレートを持って、マサシ達のいるリビングにやってきた。

「おまたせ!」

「待ったで〜!ほな青井君とあけみのおっちゃんおばちゃん食べてみて!」

マサシがそう言うと、英明は椅子に座って、

「ありがとうございます!じゃあいただきます!」

と言った。

あけみの母、好子はそれに続いて、

「じゃあ、お言葉に甘えて、お口に甘い物をいただくことにしますわ。」

と言って、上品にチョコレートを口に運び、

「失礼します。どうぞいらっしゃいませ!うぃ〜ん。」

と言い、口の中にチョコレートを放り込んだ。好子は続けて、

「ほびは、ひまりま〜す!(扉しまりま〜す!)バリボリバリボリ!お茶もいただきますわ。熱いのでお気をつけます!」

と言いながら、お茶目に食べた。

「いちいち変な食べ方をしなくてもいいのよ!」

母親の可笑しなお菓子の食べ方に腹を立てて、あけみが怒る。すると、好子はさらに

「あらやだ〜あなた〜娘におこられちゃった!」

と甘えてみせた。そう、好子はつい、たっぷりと甘さを味わいたくなったのだ。

紺野拓也は相変わらずウゴ〜ン!と奇声をあげて、

「いやりょ〜まさか仕事首になってこんな処でチョコレート食べることになるなんてりょ!」

と言った。あけみがその言葉の重大さに気づくのは、これから半日経ってのことだった…。

マサシは初めて作ったチョコレートを食べてもらえるのがなんとなく恥ずかしく思えて、顔に血液をだいぶん集中させてしまった。

そして、一番初めにチョコレートを口にした青井英明から、ちゃんとしたチョコレートの感想を聞いた時も、マサシを嬉しくなった。

「このチョコレートほんとに美味しいですよ!」

英明はそう言って、正直な感想を述べた。英明が最初に口にしたチョコレートは『甘えん坊ベアー』だ。

英明は続けて感想を述べる。

「食べた食感はキャラクターの形のチョコレートとか、エッグチョコレートに似ているけれど、味の深さとチョコの薄さが全然違うんですよ!こっちの方が薄くて、パリパリ崩れる感じがなんていうか楽しい!チョコがすごく薄いのに味がしっかりしていて食べた後もしばらく味が残っている感じがする!」

英明にそう誉められて、マサシは誇らしげにチョコレートを自慢した。

「そうやろ!実はそれの形を作るんすごい難しかったんやけど、幸いあけみがそういうの作るん上手いから助かったわ!」

そう言ってマサシはあけみを誉めたが、いつの間にかいなくなっていて、どうやらトイレに行っているようである。そして、

「すっきりした〜!」

と言いながらトイレからあけみが帰ってくる。

マサシはもう一度誉めるかどうか迷ったが、後で二人きりの時に誉めることにした。

そうした方が良いムードになる機会があるかもしれないからだ。

青井英明が一つのチョコレートを食べて感想を言っていた間に、紺野夫婦、拓也と好子は自分達のチョコレートを全部食べてしまった。そして、好子の感想が

「私、このビターベリークレープデクリッパーが美味しかったと思うわよ。」

だった。

そして拓也は

「ウゴウゴ!ウゴ〜ン!(恋のチョコレートが美味しいりょ!)。」

と言っている。

いまいち人気の無かったのは『ココアサラダ、バターカットチョコ』がベースのチョコレートだ。

このチョコレートは、糖分を控えめにしていて、油分を燃焼してくれる成分が含まれている栄養分の豊富な野菜や果物の自然な甘さを強調させたチョコレートで、いまいち味がはっきりしなくて苦いらしい。

マサシは味が気になって一口、口にしてみた。

「あっ!お兄ちゃんずるい!」

マサシはココアサラダ、バターカットチョコを食べてみて、不思議な感じがした。

確かに甘味がはっきりしなくて、苦い。少し油分や甘味料をたしてやれば美味しくなるような気がするが、そんなことしたら、健康的なダイエットチョコにならない。出来れば美味しく完成させて、千代子に食べさせてやりたかった。

「千代子、ちょっと食べてみぃ。」

「え、でもいいの?」

「大丈夫や、これはダイエットさせる為のチョコレートやから少し食べてみぃ。」

マサシがそう言うと、千代子は頷いて、『カカオサラダ、バターカットチョコ』『養命チョコ』『ベジタリアンチョコ』を一気に平らげた。

「…いまいち美味しいと言えないね。油分が少なくて、パサパサするし、苦い。」

どうやら千代子にも不評?の様である。そして、あけみにも食べてもらう。するとあけみが

「何か不思議な感じがしない?」

と言うのである。

「そうか!なんかに似てると思ったら、焼きチョコに似てるんや!」

「ああ!甘さが足りなくてわかりにくかったけれど確かにそうね!」

「確かにこんなに甘味が薄くて苦かったら美味しくないわな…。でもこれとニンニクと炒めて食べたら美味いかもな。」

「もはやチョコレートと呼べないわね。」

あけみのその最後の一言で皆が笑った。そして、チョコレートの試食会は無事に終わったのである。その後、千代子と英明の二人は宿題をする為に千代子の部屋に行き、マサシとあけみの二人は洗物や後片付けで忙しかった。また、あけみの両親、拓也と好子の二人は、コンビニにアルバイト雑誌を買いに向かった。そして応募先に電話をして…。

「ウゴーン!(だからりょ!紺野拓也と言いますりょ〜!)」

「はぁ!?ウゴンって言われてもねぇ〜。」

次の日、マサシは意気揚々と学校に向かった。何しろ鞄の中には自分で作ったありとあらゆるチョコレートが詰め込まれているのだ。

あのあと、マサシはチョコフレークや、エブリバーガー等、市販されているチョコを作り、また、今では生産されていないチョコ、鉄砲の形をしたチョコレートや、どんぐりチョコ、サカナッチョ等を自らの手で復元させた。勿論、ピックルも例外ではなかった。

それは、マサシの凶暴までの情熱と利きチョコの能力が実現させた、まさに神業だ。

一方、あけみはあれからしばらくマサシを手伝った後家に帰って、自分が何か大事なことを見逃している変な感じがして、それがなんなのかしばらくの間わからなかった。

いや、もしかしたら気づきたくなかっただけかもしれない。

けれども、夜中遅くに突然、父が仕事首になったと言っていたことにハッ!となった。

そして、両親に事情を詳しく聞いて大喧嘩になったのである。

しかし、すぐに一番傷ついているのは仕事を辞めさされた本人達だと気づき、悲しくなって責めるのをやめた。

だからといって、悲しみが消えることはなく、布団に入っても明日への不安ばかりが押しよせてきて、とても眠れなかった。

仕方なくマサシに貰ったチョコを取り出して少し食べてみたのである。

すると、なんだか涙ばかりが溢れてきた。そしてふと思い出したのが、マサシの言っていたニンニクチョコのことだった。あけみは、こんな時だというのに笑ってしまった。そして、一度本当に作ってやろうと思い、変なことで、元気になった。まさかそのことがマサシのチョコレートを作ることになるとも知らないで…。

そして、登校の時間になってマサシにあった。

「あはようあけみ!」

「あっ、おはよ…。」

マサシはいつもより元気よく挨拶したが、あけみの方はあまり元気がなかったので、

「どうしたんや?元気ないみたいやなぁ。」

と聞いた。

すると、あけみはマサシに心配かけたくなかったので、両親の仕事のことを黙っていた。けれど、何も話さないでいたら、余計心配するだろうと考えて、

「大丈夫よ。ただの生理だから…。」

と言った。

「…そうか。」

マサシにはあけみが何かに悩んでいることに気づいていたが、何か言いづらいことなのかもしんまいと考えて、あえて深くは聞かなかった。

すると突然、あけみが泣き出して、マサシは驚いた。マサシは周りの人間に泣〜かした!泣〜かした!と言われないかとハラハラしたが、幸い周りにいた人が、車の接触事故を起こして、どちらが何割悪いか揉めている人達だけだったので、冷やかされずにすんだ。

「ほんまどうしたん!?本当は生理なんかと違うんやろ?あけみはいつも言い辛いことがあるとすぐに生理のせいやって誤魔化してることくらい知ってるねんで!」

マサシが心配してあけみに優しく言ってやると、あけみはヒックヒックと涙を堪えながら、昨日の夜のことを話始めた。

「本当は生理なんかじゃなくてね…。

昨日の夜ね、ダウンタウンの番組を見たあとね…トカゲのコントが面白くてね…それからお風呂に入ってね…見たいドラマを見ながらね…晩御飯は鯉の姿焼きを食べたの…。その後気持ちよく布団に入ったんだけど、眠れなくてね、ふとお父さんがリストラされたみたいなこと言っていたことを思い出してね。本人達に聞いてみたの。

そしたらね、お父さんとお母さんが仕事リストラされたことを聞かされてね…。

でも私小学生だから働けないよね、そう考えたらね、だんだん悲しくなってきて…。

その後マサシから貰ったチョコレートを食べたの、そしたらニンニクチョコレートのこと思い出してね、気晴らしのつもりで実際に作ってみたの。

でもだんだんとなんでチョコレートとニンニクを一緒に炒めてんだかわからなくなって、ニンニクとチョコを炒めてんだか心を痛めてんだかわからなくなって…。」

「それで泣いてたんか、で、そのチョコ食べたんか?」

「食べてないけど持ってきた…。」

あけみはそう言ってランドセルからニンニクチョコを取り出した。

「あけみ、そのチョコちょっと食べてみてもいいか?」

マサシがそう尋ねると、あけみはウンと頷いて、銀紙に包んだニンニクチョコを差し出した。

そして、マサシはニンニクチョコを食べてみた。

「…なんやこの絶妙なチョコレートは!甘くて!辛くて!酸っぱくて!ほろ苦い!しかもマッタリしてる!あけみも食ってみぃ!」

マサシに勧められて、あけみもニンニクチョコを少し口にした。

「何これ!?変に美味しいわ!きっとココアサラダ、バターカットチョコがあまり甘くないから良かったんだわ!」

「そう言えば聞いたことある…本場ではカカオが普通の料理の調味料に使われているらしい…。

あけみ!悪いけど用事思い出したから家に帰るわ!大丈夫!あけみのおっちゃんもおばちゃんもすぐに仕事見つけてくれるから!それに俺も働く!」

「は、働くって、あなただって小学生なのよ!」

あけみは大きな声でそう言ったが、すでにマサシの耳には届かなかった。

マサシは家に帰り、さっそく母親のキュウコに相談した。

「…つまり、あなたの言いたいことは、この家を昔の玩具屋だった頃の様に、お母さんの名義でチョコレートの店を出して、あなたが店番をして働くと言うことね。…わかったわ、そのかわりにあなたは学校を辞めることになるのよ?それでもいいの?」

「うん!」

「それと、もしあけみちゃんが大人になって、他に好きな人が出来てしまって、幸福になったとしても、その仕事を続けられる自身はあるの?」

そう言われてマサシは少し考えた。それでもマサシの夢は止まらなかった。

「…続けるよ。僕にはチョコレートしかないんやから…。」

そして、田崎家で、マサシのチョコレートと言う店が開業され、少しずつ評判を集めていったのである。そして、あけみもそこの手伝いとして働き、あけみの考えたラッピングもお客さんの間で流行り、なんとか紺野家の生活をしのぐことが出来たのだ。

それからしばらくして、紺野夫婦も仕事が決まり、全てが丸く収まったのだった。


一部『神童』完


二部『狂牛病ではないですけれども…。』


田崎マサシが、チョコレートの店(チョコレートも色々取り揃えているが、それ以外にも日本では珍しい、カカオを使った料理も作っている。)マサシのチョコレートという店を出してから十年の時が流れた。

現在22歳だ。マサシが大のチョコレート好きだったことと、ある女の子の生活マネーのピンチの時、それを助ける為にマサシがチョコレートの店を出したことは、地域でも有名である。

その、マサシの助けた女の子というのは勿論、紺野あけみのことである。その紺野あけみはどうしているかと言うと…神崎惣一という26歳の男性と結婚していた。

それは今から二年前のことで、マサシは一度もあけみと正式な恋人同士になったこともなかった。

流石のマサシも、その時は真剣に店をたたもうと考えた。けれども母親との約束を思い出しては、あんな約束せんかったら良かった〜!と後悔していた。

どっちにしろ、店をたたんだところで小卒のマサシを雇ってくれるところなどありはしないのだが…勿論日本では義務教育の為、小卒なんて学歴はないが、マサシはそんなことすら知らずにいるのだ。

きっと面接でも馬鹿正直に小卒と書いて落とされる。しかも本人はまさか世の中に学歴が必要で、その為に落とされるなど、微塵も知らないままだった。

…せめてマサシの店が繁盛していたら、転職なんか考えなくてもいいのだが、店の方もあまり繁盛しているとは言えなかった。何故ならそれは、今から5年ほど前から、狂チョコ病が流行った為だった。そのチョコを食べた者は、色んな狂った症状にかかる。

例えれば、カレーのルーをそのままお菓子代わりに食べてしまったり、30代の大人が久し振りにランドセルを背負って登校してみたり…とにかく危険なのである。

その時も、マサシは店をたたもうと考えたが、母親のキュウコに駄目と言われたので続けていたのである。

マサシが店の中で、何人かのお客様を相手にしていると、その中の一人の年をとった老婦人がマサシに話しかける。

「ほんとうにここのチョコレートは大昔に限定で出ていたものも置いてあるのね?それにこれ!チョコレートで造ったファッションドレスでしょ!?」

「おばちゃんなかなか通やな〜!なんやったらおばちゃんここで着替えてみる?この服着てくれてならバイトとして雇ってあげてもいいで!今バイト大募集してるねん!」

「あらあら〜おほほ〜!この通り私おばあちゃんだから〜!あと一時間早く声かけてくれたらおばちゃんもピチピチギャルだったのに〜!残念だわ〜!」

マサシはいつものように、相手を喜ばせるコミュニケーションサービスを忘れない。けれど、バイトを雇いたいというのはあながち嘘でもなかった。

何しろ、チョコレート作りから、カカオ料理、レジに清掃に至るまで全てマサシ一人でやらないといけないのだ。当然のことながら、レジをしている時にカカオ料理を頼まれたら、それもすぐに作らないといけない。幸い料理厨房はレジにすぐ傍で、見通しがきくところにもあるので、なんとかこなしているが、ショーケースのチョコレートがなくなってきたら、補充しないといけないし、作り置きがなくなってしまったらそれまでで、さらに奥の厨房でチョコレートをこしらえる時間なんてどこにもない。だから、店を閉めてから仕込みを深夜三時くらいまでかかってやならいといけないのだ。

マサシには千代子という妹がいて、時々店番をしてくれるが、普段の千代子はここからずっと離れている東京で一人暮らしをしていて、漫才師を目指しているので、滅多にここに帰って来ないのである。小学校の頃太っていた千代子も、マサシのダイエットチョコのお陰ですっかり痩せた為に、とても美人になっていたのである。マサシはお客さんが帰って、一人になり、ポツリと呟いた。

「それにしても千代子の奴…痩せて綺麗になったとたん東京に行ってしまった!…こんな時にあいつがいてくれたら…。」

そう、あいつというのはあけみのことである。やはりまだマサシも未練が残っているのだ。噂をすればなんとやらで、、扉が開き、あけみの旦那、神崎惣一が顔を出す。マサシは心中で、旦那かい!と作者に突っ込みを入れた。

「やぁ、マサシ君、元気かい?」

「そりゃ元気ですよ…。」

「マサシ君が元気ですと言うと説得ちからがないな。」

「…りょく!でお願いします!とでも突っ込めばええんか?

なんや、邪魔しにきただけやったら帰ってくれ。」

「今度来る時はあけみも連れてきてあげるよ…ふっ!」

そう言ってあけみの旦那、神埼惣一は店を出ていった。

マサシは、こんな奴とあけみが何故結婚したのか不思議で仕方なかった。

マサシは思いつめても仕方がないと思い、別のことを考えることにした。

これ以上あけみのことを考えると辛くなるからだ。…それにしてもこの前買った最新のゲーム面白かったなぁ!そういえばあのシリーズあけみも好きやったよなぁ…じ、じゃなくて、そ、そう、今日の夜中にやってるドラマビデオに撮らなあかん。いよいよドラマの二人も結ばれて結婚…ドラマなんか嫌いやもん!…そうそう、男だけの世界っていうたらやっぱアダルトビデオやでぇ〜!最近人気出てきた笠木しのべはやっぱ可愛いなぁ!そういえば口元が少しあけみに似ているよな。…今日レンタル借りに行こっと…。

結局マサシはあけみのことが頭から離れずにいるのだ。

「あかん!まじめに仕事せんと!でもお客さんがいないねんから仕方がない!

なんとかお客さんにうちのチョコレートが安全で健康的な美味しいチョコやってわかってもらわな!よし!ほな看板作ろ!」

マサシはそう考えて看板を作ることにした。なんと、今まで表看板も無しにチョコレート屋を経営していたのである。実は、マサシのチョコレートは評判を集めていたが、その売っている場所を正確に知っている人はごく一部の人だけで、しかもガラス窓もお洒落な模様のすりガラスにしていた為、ほとんどの人がそこにチョコレートが売っているとは思わないのだ。仮にチョコレートを売っていることを知っていても、まさか営業中だとは夢にも思わない。マサシの店では、狂チョコ病を出していないので、それを人に聞いて、安全なチョコを買い求めに来た人がいたとしても、それではざるに水である。

従って、今来るお客さんのほとんどが、ちゃんと場所を交番で聞いたり、中には区役所で調べたり、一日中さんざん探し回った人だったりである。それも、出てきたお客さんに運よく営業中ということを聞いて初めてチョコレートを買うことが出来るのだ。

マサシは早速タウンページを開いて、看板を業者に頼んだ。そして、店の前にはアルバイト募集の貼紙を出したのである。

そして、三日後に看板が完成して、いよいよお店らしくなった。すると、客足が恐ろしく増えて、チョコレートが瞬く間に無くなってしまった。仕方なく、準備中なのだわさ!の看板を出して、チョコレートを作り始めた。

調度その時である。久し振りにチョコレートを買いに、あけみが店の前にやってきた。

あけみは、準備中の札を見て、忙しそうだと考えた。本当なら中に入って手伝いたかったが、一人で入る勇気が持てず、結局店の前をうろうろすることになった。そして、あけみはまだ自分が、マサシのチョコレートで働いていた時のことを色々思い出したのだった。

あけみがマサシと二人きりで働いていた時、よくお客さんに兄弟なんだと勘違いされて、

「二人でお店のお留守番なのかい?偉いねぇ!」

と言われて、お小遣いを百二十万円貰ったり、また、二人を知る人や、友達からはまるで夫婦みたいだと、よくからかわれたりもした。

何しろマサシのチョコレートのコーナーの横に、マサシが勝手にあけみのチョコレートコーナーを作ってしまい、来る人来る人にそこを突っ込まれてしまうものだから、あけみは、

「恥ずかしいから、全部マサシのチョコレートでいいじゃない!」

というと。

「だってこのチョコ、せっかくのあけみのオリジナルやねんからちゃんとわけとかなあかんって!」

と言うのだった。

「じゃあこの二人で考えたのは何処に置くのよ!?」

「大丈夫!それもちゃんとそれ用のコーナー作っているから!僕の名前のマサシとあけみの名前を合わせて『マサあけコーナー』作っているから!」

「ま、マサあけってそのままじゃない!変だってそんなの!」

「じゃあ言いやすくしてマサミのチョコレート!なんてどう?」

「マサミって誰よ!?」

…そんなことで、よく喧嘩したものだと、あけみは少し笑った。けれど、今ではそのあけみのコーナーもマサミのコーナーも無くなってしまっている。でもそれはマサシがそうしたわけじゃなく、あけみが結婚して、店を辞めてからも、マサシがそのコーナーを残していたので、あけみが止めてほしいと頼んだのだ。

何故なら、時々ここにチョコレートを買いに来る度に、空っぽのショーケースがあけみの心を重たくしたからだ。何故そんな辛い気持ちになるのにマサシの店に来るかというと、理由があった。

実はここだけの話、あけみが神埼惣一と結婚してしまったのは、たまたま友達との遊びの帰り、コンビニで買ったチョコレートを食べてしまい、狂チョコ病に感染してしまったからである。そこへ、たまたま通りかかった神崎惣一に、突然結婚を申し込んでしまったのでしまい、惣一は快く了解してくれてしまったのだ。

あまりにも恐ろしい狂チョコ病の症状に、あけみはなすすべがなかった。マサシに相談しようにも、他の店では狂チョコ病にかかるかもしれないからチョコレートは買わないようにと、マサシに止められていた為、言い出せなかったのだ。

だから、あけみは狂チョコ病の恐ろしさを身をもって体験したこともあって、いまさらではあるけれども、他の店でチョコレートを買わないと誓ったのである。

あけみは、いまだにマサシになんて言えばいいかわからないでいた。

店を寿退社で辞める時もマサシのおめでとさんさんが辛かった。

あけみは大きな溜息をついて、

「準備中だもんね。帰らないと…私って嫌な女。」

と言った。そして帰り道に二十歳くらいの女の子とぶつかりそうになり、ぶつかって転げた。そして、相手の女の子は、

「痛い!」

と言って、

「痛くないもん!」

と言った。

あけみは、

「ごめんなさい!」

と言って、

「悪くないもん!」

と言ったのである。そして、二人は立ち上がって、ちゃんとお互いに、

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

と尋ねた。

「ほんとごめんなさい!急いでいたもので〜!」

「私こそ考え事していたから…。」

あけみがそう言って謝ると、相手の女の子は、

「あの、ところで、ここらへんにマサシのチョコレートって店知りません?」

「知っているわ。そこの角を曲がったところよ…。」

「へぇ〜!私何度もここらへん探したんですけど見つからなくて!」

「ふふ、そう言えば、看板も何もなかったもんね。でも、今はちゃんと、取り付けたみたいだからすぐにわかると思うわよ。なんなら一緒に行く?」

「ありがとうございます!とても助かります。でもわざわざ付き合っていただいていいんですか?」

「いいのよ。私も買いに行きたかったんだから、でも今準備中だったのよね。」

あけみは少し嬉しくなった。道案内としてなら違和感なく店に行くことが出来るし、何よりマサシの店を探してまでお客さんが来てくれるのが嬉しかったのである。

そして、二人はマサシの店に向かった。

「マサシ〜!お店の場所がわからないって探してくれていたお客さん連れて来たよ〜外にも何人かまだならんで待っていてくれているわ!」

あけみおが店の扉を開けて中に入り、大声でそう言うと、奥からマサシが顔を出した。

「あ、あけみか!?久し振りやなぁ!ちょっと待っといてな!今少し出来たチョコレートを並べるところやねん!あ、あと、出来たら少し手伝ってくれへんか?」

あけみはそれを聞いて嬉しくなった。

「手伝っていいの!?」

「…嫌か?」

「ううん!じゃあ、私カウンターの中に入るね!」

そう言ってあけみは準備中の札を取って来て、カウンターに入ると、段取りよくお客さんをさばいていった。そして、さっき連れてきた女の子の順番になって、あけみは元気よく、

「お待たせしました!今日はどんなチョコレートをお選びですか!?」

と尋ねると、さっきの女の子は、

「…あの、私実は面接を受けたいんですけど…。」

「面接!?…ちょ、ちょっと待っていてね。今責任者に聞いて来るから…」

あけみは、面接を受けにきたと聞いて少し辛くなった。もしかしたら忙しいことを理由に、前のように自分がここで働けるんじゃないかと、少し期待していたからだ。けれど、従業員が足りてしまったら、それも出来なくなる。

けれど、そんな自分勝手な理由で帰すわけにはいかなかった。

「ま、マサシ〜!面接受けたいって子が」

「じゃああけみが面接してや。」

相変わらずマサシは適当でいい加減に応える。仕方なしにあけみはとりあえずその女の子をレストラン側で、待ってもらい、あとで、面接をすることにする。とりあえず今はお客さん優先である。けれど、隣のレストランから来た店長がやってきて、仕事の話がしたいから時間を取れないかと言われてしまう。

幸いとりあえずお客さんをさばいたあとだったので、少しならと、話を聞くことにした。

「お忙しいところすみません。私は近くのレストランで店長をしているアルバイトなんですけれども…実は、秋の新メニューにカカオの料理と甘くて疲れの吹っ飛ぶデザートのチョコレートアイスクリームをこちらで仕入れたいと思うんですが…。」

どうやら大きい仕事の話で、長くなりそうである。けれどもすぐに忙しいからまたと帰すわけにもいかないので、出来るだけ早く済ませようとした。けれど、すぐにお客さんが何人か入ってきててんやわんやになってくる。どうやら、下校帰りの買い食いをしにきた北町所学校の先生達だった。そして、それをつけてきたのか、すぐに小学生達が入って来て、

「あ〜!先生買い食いしてる!」

「き、君達はうちの生徒の!す、すまない!他の生徒達には内緒にしてくれ!かわりに何かチョコレート買ってあげるから!」

先生達が苦し紛れにそういうと、子供達ははしゃいで喜んで、

「仕方ないなぁ、今日は特別に物で釣られてやるかぁ!」

と言った。そしてまたしてもお客さんが入ってきた。買い物帰りの奥さん達である。あけみは、突然増えたお客さんに驚いて、

「マサシ!ちょっと出てきてよ!お客さんがいっぱいよ!」

「ごめん!今手が離せへんねん!朝からそんな感じで、絶えずお客さんが来てて、チョコ作らな間に合わへんねん!」

すると、面接を受けに来た子が、私手伝います!」

と言って、カウンターに入ってきた。お客さんがいる手前、怒ることも出来ずにいると、レストランの店長が、

「あの…こちらが例のデザートの写真でして、これの上に似合うチョコレートを…。」

そして、お客さんの方は

「それにしてもチョコレートの種類少なくない?噂に聞いていたほどでもないのね。」

等と、好きなことを言っている。

あけみは、まず早く話を切り上げる為に、店長に、

「では、こちらの写真をお預かりいたしまして、私どもの方でいくつかの案を考えさせて戴きますので、連絡先を伺っても宜しいでしょうか?」

と言ってから、レジカウンターにメモとペンを取りに行こうとすると、面接の子が他のお客さんの相手をしている。

「当店のチョコレートは完全な手作りで、狂チョコ病の心配もいりませんし、種類も数多くあります。ですから大変売れていまして、売り切れの物が数多くありますが、今、腕のいいパティシエが出来立てのチョコレートをお作りしておりますので、まもなく商品の方も増えてまいりますので、どうかご了承ください。」

となかなか立派に接客をしている。すると、マサシが、

「出来たで〜!」

とチョコレートを持って出てくる。そして忙しい一日を終えて、21時の閉店の時間になったのである。

「それにしても二人ともよく来てくれたわ、助かった〜!ほんま猫の手も借りたかったくらいやもんな!でも実際猫の手を借りても何の役にもたたへんわ!」

と、一人ボケ一人ツッコミをしている。すると、面接を受けに来た子も負けじと、

「別に猫じゃなくても犬とかでもいいですよね!って犬も猫も一緒じゃい!ううん、犬と猫は別物よ!」

と、一人ボケ一人ツッコミ、一人ボケツッコミをしている。あけみは呆れてしまい、呆れている場合じゃないわ!と考えて、

「じゃあ、今から面接を始めます!」

と言った。

「そうだった!私面接に来たんですよ!」

と、今更なことを言う。そして、面接に来た子は履歴書を取り出して書き始めた。するとあけみがそれに驚いて、

「もしかして今から書くつもり!?」

と聞くと、マサシがその言葉に驚いて、

「えっ?履歴書って面接の時に書くもんじゃないの?」

とあけみにたずねる。すると、面接に来た子が、

「先に書いて来る人もいるみたいですけど、私はちゃんと面接の時に書きます!」

と張り切って言う。するとあけみが、

「先に書いてくるものよ!」

と二人に言うと二人は、

「し、知らなかった…。」

と激しく落ち込んだ。あけみは馬鹿らしくなって、

「馬鹿らしい!じゃあ私もう遅い時間だし帰るからね!」

と言うと、マサシが

「あけみ!馬鹿らしいの馬と、鹿の間にやなぁ(で)か(に)入れてみて!」

「え?馬で鹿らしい…意味のわからんこと言わせるな!」

とマサシを怒ると、面接に来た子が

「馬も鹿らしい…。」

と言う。

「あんたも乗ってる場合じゃないでしょ!はやく履歴書書いて!それから自己紹介くらいしなさいよね!」

と少しきつく言うと、

「…ごめんなさい。あ、あの、名前は原駄目愚美と言います。年齢は二十歳で、趣味はジャイアントカプリコを下から食べることです。」

マサシとあけみの二人は、それを聞いて驚いた。

「…通やな。」

マサシはポツリと言った。その言葉を聞いて原駄目愚美は、

「じゃあ田崎さんや神崎(紺野あけみ)さんもそうやって食べるんですか!?」

愚美は二人の胸に付けている名札を見てそう言うと、マサシは真剣な眼差しで、

「そうや、チョコベビーは綺麗に並べて置いて、ストローで一粒ずつ吸って食べる。」

続けてあけみが、

「それにチョコ棒は周りのチョコを食べてからスナックの所をこんがり焼いて食べるか、捨てるのよ。他にもチョコフレークはケロッグコーンフレークと思って食べるわ。これは思ったよりも甘く感じれて、得した気になるのよ。」

そしてマサシが極めつけに、

「それと、麦チョコはゴハンと混ぜて食べると、結構不味い!けど、このおかずさえあったらゴハン何倍でも食べれるくらい好きなおかずがチョコレートの中にもあってええやろうと思って食べてる。チョコに対する礼儀や。」

マサシがそう言って締めくくると、愚美は嬉しそうに、

「良かった〜!私以外にもいたんですね!通の人が!」

「なかなか話のわかる子やなぁ、まぁとにかに採用にしてあげるから履歴書また今度来る時に持って来て。ところでいつから仕事出来るん?」

マサシがそう質問すると愚美は、

「明日からでも来れます!」

と元気よく答えた。

そして今度はあけみが質問する。

「じゃあ、休みはいつがいいの?」

「それでもいいです!」

「質問の答えになってないわよ。」

「それって言ってしまったところをいつでお願いします!」

「わかりにくいけどつまり、いつが休みでもいいわけね?」

「はい!」

それを聞いてマサシは少し考えて、

「それじゃあ原田目愚美さんは金曜と土曜休みで朝10時から夕方の19時まででいいかな?」

「前の台詞に同じ!」

「つまり、はい!やね。…それとあけみは日曜と月曜休みで、10時から19時で、また働いてくれへんか?」

それを聞いてあけみは少し驚いて、

「わ、私も!?…わかったわ。」

と言った。てっきり働かしてもらえないものだと思っていたあけみは、とても嬉しくなった。

「それからあと一人、部流本・明志君っていう21歳のバイトの子が今から調度一週間後の土曜から火曜水曜休みで来てくれることになってるねん。んで僕は木曜休みで常に3人でまわすようにするから。あと、月曜からコンビニみたいにチョコ以外にも色々置くつもりでいる。そうなっていくと24時間営業の方も考えていくつもりや。」

…そうして、マサシのチョコレート店はなかなか繁盛してくるのであった。

…神崎あけみ(紺野あけみ)は家に帰ると旦那の惣一に、またマサシのチョコレートで働くことを告げた。すると惣一は、

「そうか…と言った。」

と言った。

「わかりにくいボケしないでりょ!」

「最近時々出てくるようになったな。君のお父さんの口癖。」

「仕方がないじゃない!遺伝なんだかりゃ〜!」

「マサシ君はまだ知らないんだろ?」

「…恥ずかしいから言わないようにしているのよ。」

「でも僕にはその恥ずかしい言葉を使っている。つまり僕の前では素直な自分を出してくれていると言うことだね。」

「良いように解釈しないでよ。相手に好意があるから言えないこともあるわ。確かにあなたにも魅力はあるけれど、マサシに対しての気持ちを整理出来たわけじゃないのよ。」

「良いように解釈しているのは君だろ?君はマサシ君が好きだった。けれどその気持ちが僕によってだんだん薄れていることを気づかない振りをしているだけなんだ!」

「あなたに何がわかるのよ!」

「…僕には言葉だけじゃなく、恥ずかしい姿だって見せてくれている。」

そう言って惣一はあけみの服の上から胸をまさぐってキスをした。

「や、今はやめ…ん、んん。」

あけみはわからなかった。マサシのことは今もずっと、変わりなく好きなのだ。けれど、惣一にこうして抱かれて、悪い気にならない。マサシと違い、惣一には大人の持っている優しさがあったのである。しかも男前で、体格もがっちりしている。

あけみはマサシや惣一に愛されて幸せを感じていたのだ。あけみは、そんな自分がたまらなく嫌な女に思えて、心を痛めた。

あけみは時々思った。もしあの時、マサシに抱かれていたらどうなっていたのだろうと…。

原駄目愚美はすごく明るく、よく働く良い女の子だった。かなりの天然ボケの女の子で、そこがかなり面白かった。でも頭が悪いわけではなく、意外と色んな事を知っている子であり、また、そんなことも知らないの?的なところのある、不思議な女の子だった。

F1レースや、M1グランプリ、競艇や競輪にむちゃくちゃ詳しいかと思うと、実際にそういった場所に足を運んだことがなく、また、そういうテレビ番組さえ見たことがないと言うのだ。

マサシが競艇の話で盛り上がっていた時、

「競馬はしないの?」

と聞くと、

「けいば?…場所かなんかを競うんですか?」

と言われ、なんじゃそりゃ!とツッコンでしまったり、また、愚美は釣りが好きらしいので、マサシが、

「泳いだりはしないん?」

と聞くと、

「はぁ?」

と言われてムカッとしたこともある。どうやら愚美は、魚以外の生き物が海で泳げるなんて思いもしなかったらしく、

「じゃあ今度は釣竿無しで魚を捕まえてみます!」

と言うのだ。マサシが呆れて、

「あかんって!魚はすごい早いから!」

と言うと、

「大丈夫です!私バイクの免許持ってますから!」

と言われ、

「ば、バイクは泳げへんねんで!」

と意味のわからない注意をすると、

「練習してもですか?」

と言うのだ。あまりにも知識に偏りがあるので、愚美の家族のことや日常生活などを聞いてみた。すると、愚美の父は横山ぎん色と言う名前の作家をしていて、母は新聞記者をしているという。

姉が一人いて、かなりのギャンブル好きらしい、そして、姉の彼氏がスパイはしていて、裏ルートの情報はかなり詳しい。そして、その彼氏には妹がいるらしく、その妹は七瀬ヒカルと言う有名なタレントで、テレビによく出ている。

そしてよく父が小説の題材に家族や知人に話を聞いたりしているので、自然と知識を吸収してしまうらしかった。それを聞いてマサシは、

「へぇ〜!じゃあ、お姉ちゃんがその彼氏と結婚したら七瀬ヒカルと義理の兄弟になるんや〜。実は僕の妹も漫才師目指してるねんけど、売れたら七瀬ヒカルとも顔合わせることになるかもしれへんな!」

「七ちゃんとは同じ年だし、仲良いんですよ!良かったら七ちゃんのコネで妹さんがテレビに出られるように頼んでみましょうか?」

「そりゃあ助かるけれど、実力で売れんとな!妹信じているし!」

そう言ってマサシは笑った。…そうして、二人は少しずつ仲良くなっていくのである。

そして、新人、部流本・明志が入る土曜日になった。実は、マサシが面倒だからと言って、面接も無しに部流本・明志を雇うことになっているのである。

明志がマサシのチョコレートを選んだのには理由があった。それは、失ってしまった明志の彼女の敵討ちの為だ。

明志は前に、マサシのチョコレートを食べたことがあって、それは、明志の彼女、森永ロッテと言うフランスと日本のハーフの可愛い女の子がバレンタインにくれたチョコレートだ。

二人はお互いに役者を目指していて、東京に住んでいた。(それなのにどうして神戸にある店かもしれないマサシのチョコレートが買えるのかだって?ふふふっ!それはね!ロッテちゃんの実家はマサシの住んでいる近所にあり、里帰りした時にお土産として部流本明志に贈ったものだからかもしれないからだ!)

…そして、明志はそのお返しに市販のホワイトチョコレートを贈ったのである…それがいけなかった。

ロッテは狂チョコ病にかかってしまい、サザンオールスターズの『エロ手がセブン』を歌いながら、包丁で自分の体を滅多刺しにしてしまったのである。

その時、ロッテはこう言いながらこの世を去った。

「め、明志…これ包丁?…マ〜ジに凶器で〜ヘブン〜♪」

そして、明志は役者の道を諦めて、安全なチョコをロッテの実家の神戸かもしれない場所で作る為に東京からわざわざ連絡をして、働くことになったのである。

明志はマサシの店に入ると、カウンター越しに愚美に話かけた。

「すみません!今日から働くことになった部流本・明志です!」

愚美は用事をしていて、後ろ向きだったが、話しかけられたのに背を向けたまま相手したら失礼かな?面倒くさいからいいじゃないのよ!と思って、そのまま話を聞こうとしたが、つい振り向いてしまい、仕方なく明志と話をした。

「今店長さんお風呂に入っているんです。ちょっと待っててくだちゃいね!」

明志は愚美にそう言われて、体に稲妻が走った。

「な、なんて可愛いんだ…。」

「え?」

「いや、なんでもないです!」

所謂一目惚れというものだった。確かに愚美は誰が見ても綺麗で可愛く見える。(愚美は、現実に私の知り合いにいる友達の名前を少し変えて使っているのだが、その人は見た目ちょっと太っていて、三十歳くらいに見えるが実は19歳というツワ者がいます。)

ともかく原駄目愚美は美人だった。

部流本明志は心の中で誓った。この人の為に仕事に燃えよう…。

「さっぱりした〜!」

マサシは風呂から上がり、トランクス姿で長いバスタオルを体にからめて二人の目の前に姿を現した。

「ああ!バスタオルに店長さんが絡まっている!」

「ぐ、愚美ちゃんそれ反対やから!」

明志はとりあえず挨拶をしなくてはと思い、マサシに挨拶をする。

「おはようございます!この間電話させていただいた部流本明志です!」

「…ただいまロード中…ロード中…口ード中…ロードに成功しました。そうか!君がこの間電話くれた男の子やな!しょっぱなから仕事なんて、辛くて嫌で死にそうやと思うけど頑張ってな!…ところで履歴書は持ってきた?」

「あ、はい、これです!」

明志がそう言って履歴書を出すと、マサシと愚美の二人はへぇ〜!とすごく感心した。すると明志がそれが何故なのか気になって、

「どうしたんですか?」

と聞くと、

「い、いや、なんでもない…。ところで明志君に愚美ちゃん、来る時間早くない?今まだ6時やで。」

「え?僕色々説明があるから8時に来るように聞いて、調度に来たつもりなんですけど…。」

そう言って部流本・明志は自分の腕時計を見た。すると8時15分になっている。

そして、今度は愚美が、

「ええ〜!?私の時計は11時5分前ですよ!」

「みんな時間違うとは…。珍しいこともあるもんやな〜。」

そう言ってマサシは笑った。

「それじゃあこの勝負は引き分けってことで!」

何が引き分けなのだろうかわからないが、愚美はそう言って話を締めくくった。

その愚美の言葉に明志は反応して、

「そ、そうですね!引き分けかぁ〜原駄目さんって美味いこといいますね!」

そう言ってみんなが笑っていると、

「さっきから何わけのわからないこと言っているのよ!あっ、おはよう!君が明志君ね!私はあけみです。よろしくね!」

と話の途中からやってきて、成り行きを見守っていたのか、あけみがみんなにツッコんだ。

あけみに挨拶されて、少し照れながら、明志は、

「おはようございます!部流本・明志です!よろしくお願いします!」

「あ、あけみ!いつからおったんや〜。」

「あけみさん!あれ?今日休みじゃないんですか?」

「今日は土曜日だから休み愚美ちゃんよ。」

「え?今日土曜日なんですか?で、でも私の携帯電話、日曜日の11時になっていますよ!」

「狂い過ぎやな…。」

「マサシも人の事言えないでしょ。今9時になったばかりよ。一応念のために電話で時報を聞くわね。」

そう言ってあけみは時報に電話をかけた。

「…ただいま、午前10時、5分、30秒をお知らせします…。」

「ほ、ほらね!やっぱり9時なったばかりよ!あ、そうだ!今日は、せっかくみんな揃ったことだし早めに店をあけましょうよ!」

そうして、あけみの一言で、何がせっかくなのだろうかわからないが、何故かみんなヤル気になったのである。

そうして、いつもより、少し遅れて開店したのだった。

原駄目愚美は、仕方なく家に帰り、マサシは仕込んでおいたチョコレートをショーケースに並べた。明志もあけみに色々教わりながら一緒になって手伝う。すると、早くも?お客さんがお店に入ってきた。明志は何をどうしたらいいのかわからずに、あけみに話かけた。

「あの…僕はどうしたらいいですか?」

「本当ならお客さんが、どんなチョコレートが食べたいのか聞いて、リクエストに応えられるようなチョコレートを選んであげるんだけど、初めのうちはお客さんに言われたチョコレートをトレーに乗せて、私にわた…こっちまで持ってきて。」

すると、さっそく明志はお客さんに声をかけられた。そして言われたようにトレーに乗せて、あけみに渡す。

「こちらお願いします…神崎さん、さっきなんでわざわざ言い直したんですか?」

「それはね、この店ではやったらいけない5つの決まり事があるのよ。…こちら4品でよろしいですか?また当店では日本では珍しいカカオを使ったごっつ美味しい健康でダイエットにも最適な料理もあちらのレストランでお召し上がることが出来ますがいかがですか?」

あけみはお客さんが会計に来たので、明志の質問を一先ず置いて、カカオ料理を勧めた。

「へぇ、そんな料理があるの?じゃあ、軽く食べて行こうかしら?」

「では、こちらの商品はお帰りのさいまとめてのお会計になりますので、どうぞあちらでおくつろぎくださいませ。」

あけみがそう言って、お客さんを座席へと案内すると、お客さんは案内されるまま、レストランの方へと足を運んだ。

「では、ご注文が決まりましたらこちらのインターホンでお知らせくださいませ。」

あけみはそう言ってまたレジに戻った。

そして、明志に色々と説明をする。

「こんな感じで、あとは、ここのランプが光ったらそのテーブルに行って注文を聞いてきてちょうだいね。すると、調度ブザが鳴って、ランプが点灯した。

明志は言われるままにお盆にお水を乗せて、テーブルまで運び、

「お待たせしました。こちらお冷になります。ご注文どうぞ。」

と言った。

「じゃあこれ、T定食でお願いするわ。」

明志は少し緊張しながら、注文を聞き終えて、またあけみのところへ戻っていった。

「じゃあ伝票をここに挟んで、このTのボタンを押せば厨房にいるマサシが作ってくれるわ。

じゃあ、今から大まかなお店のことを言うね。一応、お店の看板にはチョコレートとカカオ料理の美味しいお店、マサシのチョコレートって出ているの。ここがレストランもしていることも書いてるし、お客さんはそれを知ってて入ってくるんだけど、カカオ料理って聞いてもいまいちピンとこないから、すごく美味しいってことをレジで一言添えるのよ。

また、これも壁に紙を貼って書いているんだけど、チョコレートだけ買うお客さんもいるでしょ?でもチョコレートを買っただけで、レストランでくつろげるなんてしらないお客さんもいるから、教えてあげてほしいのよ。

レストランでは軽いおつまみや飲み物も安く置いてあるから意外と知っている人は愛用してくれているわ。

それから、お水はお客さんが注文するまで出さないこと、やっぱり、帰ろうかなって思ってもお水出されると帰りづらいことってあるでしょ?だから注文を聞いてからね。それと、さっき途中になってしまったんだけど、なんで言い直したかだったわね。それはね!駄洒落になってしまいそうだったからよ!」

「だ、駄洒落が駄目なんですか!?」

「そう、駄洒落を言うと、なんとなく空気がしらけるじゃない。だから、駄洒落を言わないのは、この店の5つの決まりごとの一つなのよ!」

「他の4つってなんなんですか!?」

「2つ目はみんなに内緒で恋愛すること!これは以前恋愛関係のごたごたで会社を辞めた人がいるのよ。」

あけみがそういうと、どこからかグサッ!と音が聞こえてきた。

「な。なんなんですか今の音!?」

「な、なんでもないわよ!ち、ちなみに私じゃないからね!私はごたごたしてないんだから!」

あけみは言い訳をするようにそう言うと、続けて明志に禁止事項を話す。

「三つ目は人に殺されたら駄目なのよ!」

「じゃあ、殺すのはいいんですか!?」

「それは人として当然してはいけないことよ!この店では殺されてもいけないのよ。もしこれを違反した場合は…。」

あけみはググッと顔を近寄せて人差し指を立てて駄目よのポーズをすると、その勢いに押されて、明志は生唾を飲んだ。そして、

「…場合は、どうなるんですか?」

「お香典が出ないのよ!四つ目は〜!」

「ちょっと待ってください!なんでお香典がもらえないんですか!?」

けれど、あけみは答えてくれない。

「…4つ目はチョコレートを食べ過ぎて太ること!これはチョコレートを独り占めにしているってことでチョコレートにも他の人にも失礼だからってことよ!」

「さ、最後は?」

「喫煙よ!明志君は煙草吸うの?」

「え?まぁ、一応…。」

「駄目よ煙草は!マサシに見つかったらチョコレートの材料にされちゃうよ!」

「こ、怖いです!」

「ここだけに話、マサシのかかとには触覚みたいなのが付いていて、そこからなんでもチョコに変えてしまうビームが出るのよ!」

あけみがそういうと、突然厨房からマサシの声が聞こえて来た!

「チョコになっちゃえ!!!!」

明志は呆れ果てて、こんな人達に仕事を教わっていたら、二つの意味で、いつか変態にされてしまうと思った。

…もっとしっかりしなくては!明志は自分に言い聞かせた…。

それからと言うもの、明志は愚美ほどではないが、かなり仕事が出来る人材に成長していった。そして、マサシのチョコレートはグングン、ドンドン、バンバン、ジャンジャン、ガンガン、売り上げを伸ばしていったのである。

そして、木曜日の晩のことだった。その日はマサシの定休日だったので、マサシはワインチョコを食べまくって酔っ払っていた。それを見て驚いたのは愚美と明志だった。あけみはたまの休みにマサシが夏子の酒(尾瀬あきら先生の名作。本格的なお酒の物語。に影響を受け、つい自分も好きなものを作る話を書こうと、マサシのチョコレートを迷作してしまった。)を読んでお酒を口にしたくなることを知っていた。

そう、あの時もそうだったのだ…。マサシが酔っ払ったしまい、店のカウンターの上で寝てしまった時のこである。あけみは呆れて、

「なにそんなところで寝ているのよ!?」

と言うと、

「あれ?なんで僕カウンターに上げられているん?」

と寝ぼけている。仕方無しにあけみはマサシをカウンターから引きずり降ろして、寝室まで運んだのである。そして、布団のところまで辿り着いて、マサシを横にした時に、あけみはマサシに抱きしめられたのだった。

「ちょっとマサシ!」

「好きやねん…。ごめん、少しだけこうしていて。」

あけみはその時顔からマグマが出るほど恥ずかしかったが、マサシを支えてやりたかった。

「そういう台詞は素面の時に言うてよ…。」

「素面じゃ怖くて言えへん…僕、情けないな…。」

そう言ってキスをしようとする。

「ちょっと!情けないままなんて駄目よ!私の気持ちはどうなるのよ?あなたは強くなれる人よ…。」

そう言って、今度はあけみがマサシをギュッと抱きしめた。すると二人のところに睡魔がやってきて、眠たくなる呪文を唱えた。

「ネムネムラリホマブタオチグーグ〜!」

そして、睡魔を含め、三人はぐっすり眠ってしまったのである。

…マサシはあの時のように。酔っ払いながら愚美や、明志に話かける。

「ほんま愚美ちゃんや哲明志君が入って来てくれて助かった…。」

すると、愚美がマサシに、

「何言っているんですか!?私はこの店に働くことが出来て感謝しているんですよ!」

明志も何か言わないとと思い、

「ぼ、僕も感謝しているんです!ここって狂チョコ病ないんですよね!僕は一人でも多くの人に安全で美味しいチョコを口にして欲しいです!」

すろと、今度はあけみが何か言わなくてはと思い、話を始めた。知ってのとうり、あけみも狂チョコ病にかかった経験者の一人だ。もしかしたら、いまだにあけみの体の中には狂チョコ病が潜んでいるのかもしれないのだが…。

「二人共ありがとう!私もこのお店にはすごくお世話になったのよ。ね!マサシ!」

そして、マサシも何か言わなくては!とは思わなかったが、

「ありがとう…なぁ〜、一緒にこのチョコレート食べへん?これなぁ、昔売っていたピックルってチョコレートやねん。」

と言った。すると、あけみと愚美の二人は、

「懐かしいなぁ〜!」

と言った。流石、愚美もピックルの存在を知っているようである。

明志は、なんとなくみんなが共感しあっているので、あわてて、

「な、懐かしいですね!」

と答えた。すると、あけみの携帯電話の着信がウゴ〜ンと鳴って、

「あ、お父さんからだ!」

と言って、電話に出ると、電話の向こうであけみの両親の会話が聞こえてきた。

「あなた、晩御飯はまだ?」

「(ウゴ〜ン!)母さん、晩御飯ならさっき食べただりょ?」

「そうだったかしら?」

「(ウゴ〜ン)もしまだお腹空いているなら、あけみがピックル持って帰ってくれるからそれまで我慢するりょ〜。」

「なんで、こっちの状況が筒抜けになっているのよ!」

と、あけみは言った。すると、父、拓也は

「(ウゴ〜ン)母さんの所に今、マサシ君から電話がかかってきてるりょ〜。」

そういわれて、マサシを見てみると、確かに電話をかけている。

「マサシ!あんた、いつのまに電話かけていたのよ!だいたいお父さんがピックルの話を知るのに時間間隔おかしいわよ!」

するとマサシが、

「なんかあけみのおばちゃんが、あけみに変態でごめんなさいって謝っといてって!」

あけみは溜息をついて、

「もう知らない!」

と言い、電話を切ったのである。

マサシも丁寧に挨拶をすませると、

「わかりました!じゃあ、ピックル2ケースですね!ソルジャー!」

と言って、電話を切ったのである。

すると、部流本・明志があけみに、

「今の駄洒落ですよね!?それじゃあとソルジャーかかっていますよね!?」

あけみは、従業員の禁止事項を言った手前、追い詰められて、

「店長は駄洒落を言ってもいいのよ!」

と言い訳をした。電話のあと、話題はピックルの話になって、昔、マサシがピックルの発売がなくなってしまって、へこんだことや、エレベーターの中であけみを迫った話になったりと、昔の話で盛り上がった。また、明志君って彼女いるの?という、いわゆるベタな質問から、狂チョコ病で死んでしまった森永ロッテの話になった。

すると、マサシは自分のことのように悩んで顔つきになって、こんな話をし始めた。「そうかぁ〜そんなことがあったんやな。ほんま狂チョコ病だけは面白い…じゃなくて恐ろしい話やで、何でも今噂になっている狂チョコ患者の収容施設がいくつかあるらしいねんけどな、そこは、狂チョコ病でもとくに危険なことをしてしまう人が集められているらしいねん。んでな、そのうちの一人の患者がボンバーマンしたい!って言うて、施設の部屋すべてに爆弾仕掛けて爆発させて、クリアー出来た〜って騒いでいたらしいで。」

そして今度は愚美が、

「私の知っている話は、ある中学生が痒みなんて大嫌い!って言って、手作りでムヒを五本も作ったらしいわよ。」

と話した。マサシはその話に感心したらしく。

「へぇ〜!」

と納得して、話をこう続けた。

「でも悪い話じゃなくて良かった!ところで、あけみは狂チョコ病の話で知っている話はないの?」

あけみはマサシにそう話を振られたが、さほど面白い話は知らなかった。例を挙げれば、チョコを食べた子供が突然、歌いたい!と言って走り出したことや、共産党の役員が、お金を貰っているから嘘も付く!と言う旗を持ってビラを配ったとかである。他にもいくつか知ってる話はあったが、あまりパッとしない話しか知らなかった。でも、何か言わないといけない雰囲気だったので、あけみはこんな話をした。

「私が知っている話はあまり面白くないんだけどね…。」

少しの間があってから、あけみは続けた。

「…恋をしていたある女の子がいたの。その女の子は自分が困っていた時、弱くなった時にいつも助けてくれた男の子がいてね、彼女はその男の子のことが好きだったの。その男の子は馬鹿なところがあるんだけどね、いつも一生懸命で優しい男の子で、よくその女の子にチョコレートをくれるのよ。」

あけみが話をしていると、マサシがちゃちゃを入れてくる。

「わかった!そのチョコレートを食べて狂チョコ病にかかった女の子が急に告白したくなってあらいざらい自分の今までの人生を全部語ってしまって、恋心がばれてしまうとかいう浅はかなオチやろ!?」

「ち、ちがうわよ!…その女の子はね、いつもその男の子のくれるチョコレートだけを食べていたの。それがその二人の約束というか、絆だった。でもある時に、それ以外のチョコレートを口にしてしまってね、その時に狂チョコになるの。それでね…その男の子と違う、見知らない人と結婚してしまったの。」

あけみはマサシにずっと言いたかった自分の狂チョコ病の話を、告白したのだった。

あけみはとうとうマサシに告白してしまい、マサシからどんな言葉が返ってくるのかと考えてドキドキした。そして、

「あけみ、その話確かにあんまり面白くないなぁ〜。他になんかないの?」

「お、面白くなくて悪かったわね〜!もうマサシには何も言わない!私、それそれ帰るから!」

「あけみ!そろそろのろが1プッシュ足りひんで!小説マサチョコが携帯電話のメール機能で地道に作ったのがばれるやないか!」

そして、あけみは怒って帰ってしまった。

あけみが怒ってしまったことで、その場の空気が重たくなってしまい、マサシはワインチョコを食べながら、

「あけみの奴なんで怒ってんねん!?」

と文句を言うと、明志が、

「今の話、店長と、神…あけみさんの話なんじゃないですか?」

と言った。そして愚美が、

「きっとそうですよ!あけみさんの気持ちわかってあげてください!」

「…そんなんわかってる。よそのチョコレート食べて狂チョコ病になったって言うても、今結婚して幸せに暮らしてるんや…でもあけみの気持ちを知ってしまったらあけみともっと親密になりたくなって、浮気とかさせてしまうかもしれへん。だから気づかんふりしてたんや…。」

すると、愚美が、

「で、でももともとはお互いに好きだったんでしょ!?」

と言った。するとマサシは少し黙って、小さな声で、

「…今もや。」

と言った。そしてマサシはだんだん抑えていた感情が大きくなってきてたまらなく悲しくなってしまった。そして、

「…でももう終わった話や!もう悲しいのはたくさんや!」

と言ってマサシは立ち上がり、店の奥へと入って行こうとした。すると、明志もその場に立ち上がって、マサシの後を追うように、

「あけみさんは狂チョコ病の被害者です!僕は死んだ彼女の為にも!僕は狂チョコ病で悲しむ人を少しでも減らしたくて、この店にきたんですよ!!」

と叫んだ。けれど、もうマサシはとっくに店の中への入ってしまっていたのだ。そして、残された二人に悲しい沈黙が流れた。

…けれどしばらくすると、厨房から突然、マサシの声が聞こえてきた。

「で、出来たでぇ〜!!」

マサシは再び姿を現して、

「このチョコレートは狂チョコ病の薬や!これをあけみに飲ませる!明志君の彼女にも飲ましてみ!生き返るかもしれへんで〜!」

マサシは愚美と明志の二人にそう言い残して、あけみのあとを追いかけたのである。


〜エピローグ〜


あけみが、マサシのことに腹を立てながら家に帰ってくると、夫の神埼惣一が家で待っていた。

「あけみ、ずいぶん遅かったね。またバイトかい?」

「う、うん。最近忙しいからね。ごめんね。すぐに御飯の仕度をするから。」

「御飯はいいからちょっとこれを食べてみないかい?」

「何?」

あけみがなんだろうと思い、惣一の手に持っているものを見ると、一口サイズのチョコレートだった。それは、あけみが昔食べて、狂チョコ病にかかったチョコレートだった。しかも、袋には試本品とかかれていて、あけみが不思議に思い、

「どうしたの?このチョコレート。」

と訊いた。

「君の為にチョコレートの会社を作ったんだよ。食べてみてくれ。」

惣一はそう言ってあけみにチョコレートを勧めてみた。実は、そのチョコレートには狂チョコ病の一種と言われている淫らな気持ちになる成分、ガラナや、惚れ薬のフェロモン剤等が含まれていた。すると、あけみが何故かそれらが入っているのを知って、

「…ねぇ、なんでこれガラナとか入っているの?」

そ言った。

「…流石だな。なんでわかった?」

「この小説のヒロインだからよ。」

「…そんな理由で?せめて、今までに色んなチョコレートを食べてきたからとかにしないか?」

「わかった。じゃあそういうことにする。そんなことよりどうしてそんなものが入っているの?」

「なぁに、狂チョコ病を利用したのさ。狂チョコ病には色々な作用がある。それを組み換えて様々な薬品を作ることに成功した。」

「そんな薬品なんて大量に人体実験とかしないと、とても作ることなんて出来ないわ。だいたい国から許可がおりないでしょ?」

「許可ならおりたさ、むしろ国民を大人しくまとめる為に、国が依頼したことなんだ。元々、狂チョコ病はいざという時の為に国が極秘に開発していたウイルス兵器なんだ。所が、色んな作用がありすぎたことと、人体実験が簡単に出来なかった為、データだなかなか取れなかった。だから、チョコレートの中に混ぜて全国的にデータを集めることにしたんだよ。」

「そ、そんな!」

それを聞いてあけみは信じられなかった。惣一はさらに続けた。

「そのおかげで研究は比較的に進歩し、どのチョコレートを食べるかで、人は何でも出来るようにまでなった。」

惣一のその告白は、あけみにとってあまりにも辛いことだった。

「つまり、そのチョコを食べて今はセックスを楽しもうってことなの!?…私もあなたに告白することがあるの…。」

「なんだい?」

「私…今臭い屁こいちゃった!じゃなくて、あなたに結婚を申し込んだのは…実はその狂チョコ病のせいなのよ。」

すると、惣一はクスリと笑って、

「僕は君にプロポーズされる前から君のことが好きだったんだ。君の買ったチョコレート、あれは僕が置いたものなんだよ。」

次から次に知らされる事実に、あけみは、sdjふぁ;おいgjgklskfにjfごいkttkttなった。つまり混乱したのである。

「む、むあ〜〜!!」

あけみは激怒した。

「そんなに怒らなくていいんだよ!君のその苦しみもこのチョコさえ食べればなくなるんだ!考えてみれば結婚してからも君の中にいつもあのマサシとか言うガキがいたんだ!このチョコさえ食べれば!あんなガキのことなんか忘れることが出来る!…君は僕が幸せにするんだ!」

「そんななんでも薬に支配される不自然な生き方なんてゴメンだわ!」

そして、惣一はあけみにチョコを食べさそうとして、二人の取っ組み合いが始まった。

わん!つう!すり!ふぁいと!…ビシ!バシ!ドカ!バキ!

「食べてくださいませぇ〜!」

「嫌べっそ!」

…ビシ!バシ!ドカ!バキ!

…惣一〜WIN!そうして、あけみは惣一にやられた。

「ぐはぁ〜りょ!」

あけみはスローモーションで地面に倒れて、惣一はチャンスとばかりにあけみの口元にチョコレートを運んでいった。これを食べてしまったら、あけみはマサシのことを忘れてしまうのだ。そう考えると、あけみは悲しく喘いだ。

「嫌りょ〜!」

その時だった。

「チョコになっちゃえ〜!」

マサシのかかとのビームによって、チョコレートを食べさせようとしていた惣一は、チョコレートに変えられてしまったのである。

そして、マサシは倒れていたあけみを抱きかかえ、高〜い高〜いをしながらあけみに声をかけた。

「あけみ!大丈夫か!?」

「…うんマサシ、どうしてここに?」

「あけみの狂チョコ病を治す為や…。」

そして、あけみは高〜い高〜いをされながら、タイミングよくマサシにそっとキスをしたのだった。

「ありがとう。でも私、自力で狂チョコ病治したわ…。最後はマサシに助けられたけどね!」

あけみはそういうと、マサシに微笑みかけた。マサシは高い高いをするのが疲れたのか、あけみを降ろした。そして、二人は抱き合ったのである。そして、あけみは狂チョコ病の真実をマサシに明かして、二人はそのことを世の中に公開した。けれど、誰にも相手にされず、信じてもらえなかった。それでも、ひっそりと狂チョコ病に苦しんでいる人を治療して、二人仲良く暮らしたのだった…。

そして、ここにもマサシの薬によって救われた人がいる…明志は、あれから急いで彼女の眠るお墓に向かい、墓に薬をまいたのだった。すると、墓の中から

「こ、ここどこ〜!誰か助けて〜!とかすかに声が聞こえてきたのである。

そして、愚美はと言えば、つい出来心で薬を味見してしまい、

「あれ!?私なんでこんなボロイ店で働いているのかしら!?早く弁護士の資格取らないといけないのに!」

そう言って、自分の家に帰ってしまったのだ。そうして、みんなそれぞれに幸福な生活を取り戻していったのであったとさ〜めでたし、めでたし           

 完


この小説を読んでいただき、本当にありがとうございます!

これからもコメディー作家として精進していきます。

ずっと執筆を続けてまいりますので、応援よろしくおねがいします。

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