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ガールズトーク2

 食事を終えた私たちは、アパレルショップがいくつか入っているショッピングモールへ移動した。


 姫城さんに案内されながら、普段一人では絶対に入らない様な、ふわふわ、ひらひらした可愛らしい服が陳列された店に入る。



「あ、これ可愛いですね」



「うん。たよりちゃんに似合いそう」



「え?! いや、これは流石に……」



「そうです? 普通に似合うと思いますけど」



 白を基調としたフリフリワンピース。花柄のプリントが女の子らしさを強調する。

 いきなりこれはハードルが高すぎる……



「じゃあこっちはどう?」



「あ、すごく可愛いです」



「いやいやいや、絶対似合わないって!」



 雪でも積もっているのか、モコモコした可愛い上着を両手で押し返しながら首を横にふる。



「そんな事ないですよ。矢野先輩が買わないなら私が買っちゃおうかな」



「も、もうちょっと大人しめのやつでお願いします……」


 せっかく二人で選んでくれているのに、気恥ずかしさで一歩踏み出す勇気がどうしても出ない。

 自分には似合わないとか、文人に笑われたら嫌だとか……そんな事ばかり考えてしまう。



「ま、いきなりハードル上げすぎましたね。姫城先輩、そろそろ少し真面目に選んであげますか」



「そうだね」



「真面目に選んでなかったの?!」



「ふふ。冗談ですよ。あ、これなんか結構いいんじゃないですか?」



「わあ……すごくお洒落」



「これなら……着れるかも」



「では早速試着してみてください」



「わ、分かった」



 二葉に手渡された少し濃いめのブラウンでチェック柄の入ったワンピースを持って試着室に入る。


 制服を脱ぎ捨てる。

 鏡にうつる自分の体をまじまじと見つめる。

 我ながら引き締まったいい体だ。文人は……もっと小さくて、女の子らしい体つきが好きなんだろうな……


 頭に浮かんだ嫌な想像を振り払う様にワンピースに袖を通す。

 見慣れない自分の姿に多少の照れを感じながら試着室のカーテンを恐る恐る開ける。



「ど、どうかな?」



「たよりちゃん、すごくかわいいよ」



「うん。似合ってます」



「そ、そうかな? ちょっと丈が短い気がするんだけど……」



「矢野先輩の足が長いんじゃないですか?」



 「そんな事はない」と、照れ隠しを重ねながら、試着室へ戻る。

 結局、先ほど試着したワンピースと薄手の上着、それに合わせたパンプスも購入することを決めた。


 全身コーディネートで、手痛い出費となったのは否めないけど、服を新調すると何故こうも気持ちが上がるのだろう。


 早くこの服を身に纏い遊びに行きたい、そんな気持ちがとめどなく湧いてくる。


 そんな私の気持ちを察してか、お会計を済ませている私を二人は生暖かい目で私を見ている。


「まあ、デート楽しんでくださいね」


 二葉からの余裕とも取れる発言に、浮き上がっていた心が一転して、一気に不安になる。

 なぜこの子はこんなにも焦りがないのだろう。


 普通、好きな人が他の誰かとデートするのを看過できるものだろうか?

 そんかの絶対に嫌だと思ってしまう私は、臆病者なのだろうか。


「二葉はさ……その、嫌じゃないの?」



「何がですか?」



「何がって……文人が私と……遊ぶの」


 デートという単語を避けた私はやっぱり臆病者だ。どんな答えが返ってくるのか、聞きたい様な聞きたくない様な……



「そりゃまあ、嫌ですけど。でも……矢野先輩ですから仕方がないです」



「なんで?」



「だって……その、まあ……あれですよ」



 珍しく二葉が言い淀んだ。あの、直球ど真ん中全力ライジングボール娘の二葉がだ。



「いやいや、私をどんな奴だと思ってるんですか」



「えっ? いや、それよりもなんでなの?」



「だから、その……ライバル………だからですよ」



 視線を逸らしながらそう言う二葉の姿に、私の胸は[きゅん]という可愛らしい音を立てた。

 なんて可愛い後輩なんだ。尊いとはこういう時に使うべき言葉ではないだろうか。


「二葉……文人なんて放っておいて私と付き合わない?」



「はっ?! な、何を訳わからないこと言ってるんですか。真面目にやってください!」



「私は大真面目だよ」と言いながら抱きつく私を必死に引き離そうとする二葉。


 だけど残念なことに、パワー勝負ならこちらに分がある。


 片手で二葉を抑え込みながら、もう片方の手で頭をなでなでしてあげる。



「ちょ、ほ……本当にやめてください……」


 顔を真っ赤にしている二葉を見てらちょっとやり過ぎたかなと反省し、彼女を解放する。


 そんな二人のいちゃつきを見ていた姫城さんが片手を天高く挙げて、小さな声で「はいっ!」と言っている。まるで横断歩道を渡ろうとする子供か、質問に回答する為に先生に当ててもらいたい小学生の様に。



「わ、私も……ライバル……です」



「やっぱり姫城先輩が一番手ごわいかも知れませんね」



「同意……」



「??」



不思議そうな顔をしている姫城さんを引っ張る形で店を後にした。

 



  

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