普通ってなに?
「……え?」
「付き合うって……あの、あれか? 男と女がちゅっちゅっイチャイチャする……あれかな?」
「えっと……表現が適切かどうかは置いておいて、概ねそうだけど」
実のところ、たよりからの僕への好意には薄々気付いていた。
いつからか、と聞かれるとはっきりとは分からないが。
いくらさばさばしていて、考えが表に出にくい性格と言っても、長い時間を共に過ごしていれば見えてくる事も多い。それに気付かないほど僕は鈍感ではなかった。難聴鈍感ラノベ主人公ではなかった。
今かよ!と思う気持ちが無いわけではないが、いつかこんな日が来るかもしれないとは思っていた。
ただ……
「何言ってるんだよ。僕とお前が付き合うだなんて、あり得ないだろ。なんであんな男とつきあってるんだ!? って噂になるぞ。たより、お前はもっと周りからの自分の評価を理解した方がいい。お前が思っているよりも、お前は周りに影響を与えるんだぞ。お前と僕じゃ釣り合わないよ」
出来るだけ明るく、茶化しながら話す。その場の雰囲気が暗くなる事が怖かったのだ。
「ふーん。それって答えはノーって事?」
「ノーって言うか……普通に考えて無理があるだろう。」
「普通って何?」
「何って…それは、一般的にと言うか。な、何となく分かるだろ! 僕より頭良いんだから」
「何でも言うことを聞くって言った。」
「うぅっ……そ、それは……」
「た、たかがゲームだし、まさかそんな事を言われるとは思ってなかったし……」
「何でも言うことを聞くって言った。」
「お、お前こそ本気なのかよ? 俺なんかと付き合いたいって」
「冗談でこんな事言わないよ。ゲームで勝ったのはただのきっかけ」
「そうか……そりゃそうだよな」
「うん。私、文人が好き」