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93 三日目

 とりあえず、具体的になにを作っていくかは今日救出した人たちの疲労も考えて明日以降話し合うことにした。


 そして今日も今日とて半宴会状態。うちのメンバーは呑気だからわかるけど、六花の皆さんも元々ノリがいいメンバーだし、今日は生産活動が楽しかったらしくテンションも高い。なにより美味しいものが食べられるというのが嬉しくて仕方がないらしい。


 ちなみに本日の料理はチヅルさんと私の合作。ウイコウさんとアオがゲットしてくれていた魚が主体だったけど、意外と好評だった。まだいろいろ試行錯誤中だったので一番人気が串に刺して焚火で焼いた塩焼きだったのは今後の課題だ。


 あとは村の人たちの表情も意外と明るい。ミスラさんの怪我は未だに予断を許さないし、まだ行方がわからない人たちもいるけど、少しずつ無事に合流出来ていることが希望になっているうえに、今回のマチさんとライくんルイちゃんの再会できたことも大きかったらしい。まあ、まだお父さんが見つかっていないのにいいのかなと思わなくはないけど、きっと無事を信じているということだと思う。


「え、いいんですか? マチさん」

「はい、幼いとはいえルイもこの古の森を守るリュージュ村にて技術を受け継ぐ者のひとりです。その技は出し惜しみしてはなりません」


 そんな食事の最中にライくんがマチさんに、ルイちゃんの探索参加を打診したところ、予想外にあっさりと許可が出てしまった。

キリッとした顔のマチさんだけど、理由を聞いてもなぜ了承してくれたのかよく分からない。古の森というのはイベント専用のこの森のことで……あとは技術を受け継ぐか。


 確かに村人の皆さんは今のところ何かしかの技術に秀でている。それがこのイベントの重要な要素なんだろうけど、だからといってこんな小さな子を危険なところに連れ出してしまって、本当にいいのだろうか。まあ、すでに二歳しか違わないライくんを連れ出してしまっている私にそんなことを言う権利はないのかも知れないが。


「は、はあ、そうなんですか……でも」

「ふふ、もちろんあなたたちが安全を保障してくれるという信頼があってのことですよ」


 真面目な顔から急に笑顔になったマチさんは、この拠点に着いたときの悲愴感が薄れ二児の人妻とは思えないほど綺麗だ。


「……わかりました。明日はルイちゃんをお借りします」

「お兄ちゃん、ちゃんとルイを守ってね」

「う、うん。私と仲間たちがちゃんと守りますから」


 隣に座って話を聞いていたルイちゃんが、私の袖を掴んで上目遣いに見上げながらケモミミをぴこぴこと揺らしている。もちろん狙っている訳じゃないんだろうけど、8歳にしてこの可愛さとは……末恐ろしい。


◇ ◇ ◇


「さて、今日も一日頑張りましょう」

 三日目の朝を迎えた。今日からはさらに分業して作業を進めていくことになる。


「アル、ミラ。シロ、アカ。今日もよろしく頼む。多分、村の人たちが森で耐えていられるのも今日、明日が限界だと思う。モックさんたちから聞いたポイントはなるべく早く確認してください」

「任せとけ、なんだったら今日中に全部まわりつくしてやるぜ」

「回るのは問題ないと思うんだけどね、村の人が見つかったら放っておくわけにはいかないじゃない?」


 ポイントをたくさん回れば村の人を見つける可能性が上がる。でも村人を見つけたら、放っておくわけには行かないから拠点まで戻らなくちゃいけない。そうなると他のポイントに回る時間が減ってしまう。ミラの言う通りだけど、そこは迷うところじゃない。


「それはもちろん助けた人を優先でお願いします」

「ま、コォチならそういうと思っていたけどね」

「だな、じゃ行ってくるぜ」


 アルたちを見送って、拠点を振り返ると六花のメンバー、避難してきた村の人たち、そして親方とファムリナさんたちが、周辺で手に入れた素材と昨日持ち込んだ魔物素材の山を前に拠点に必要なものを作成するための話し合いをしている。

 漏れ聞こえてくるところでは、簡易小屋や特殊な武器や防具などを作ろうとしているらしい。なにが出来上がるのか気になるところだけど、知らないほうが面白そうだから取りあえず今日一日は放っておこうかな。

 そして残った私たちは西門前に集合中。


「じゃあ、ウイコウさん。今日はよろしくお願いします」

「ああ、この周辺の地形などは昨日までに把握したからね。採掘ができそうな場所も確認済みだよ」


 さすがはウイコウさんだ。昨日まで食材の探索と周辺の確認をお願いしていたけれど、どちらもしっかりとこなしてくれている。


「じゃあ行こうかルイちゃん。今日はいろいろ教えてもらうね」

「うん! いっぱいお兄ちゃんを助けてママに褒めてもらうんだ」


 ウイコウさんと一緒にルイちゃんを連れて新素材を捜しに行くことになっている。今のところ必ずしも新素材が役に立つという情報はないけど、様々な生産活動に携わる身としては新しい素材と出会える機会は逃したくない。それにイベントも今日が終われば約三分の一が終わることになる。そろそろ誰かがフラグを立てて何かが起こってもおかしくないから今のうちにやれることはやっておかないとね。 

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お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです

書籍第1巻も2020年2月10日に発売ですので、是非書店でご確認頂けたら幸いです。下のタイトルから紹介ページにとべると思います
i435300/
勇者?賢者? いえ、はじまりの街の《見習い》です~なぜか仲間はチート級~
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