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75 四彩召喚

 その後、残りのメンバーにも相談して、ウイコウさんの方針を了承してもらった。カラムさんも嬉し涙を流しながら全面的な協力を約束してくれたので、このログハウスを中心に拠点化を進めることになった。

 

 現在の時間を確認するとまだ一日目の午後3時前、当然寝るには早い時間。夜になる前に出来ることはやっておこう。


「まず、皆を呼ぶか。【召喚:蒼輝】【召喚:朧月】【召喚:雷覇】【召喚:紅蓮】」


 私の呼びかけに応えるように青、黒、白、赤の四本の光の柱が発生し、その光の中に頼もしい友人たちが現れる。


『む……不可思議な場所じゃ』

『ふふふ、わたしに会いたくなったのね、コチ』

『ふぁ……お仕事かい、お兄さん』

『くく、あなた! 今度こそ手応えのある相手なんでしょうね』

 

 頭から、アオ、クロ、シロ、アカの順だ。


「皆、来てくれてありがとう。今回はこれから10日間、継続して力を貸してほしいんだ。いろいろお願いしちゃうことになると思うけど、終わったら出来る範囲でお礼はするからどうか助けてほしい」


 四彩の皆は私の召喚獣という位置付けではあるけれど、私にとって彼らは友達だと思っているので、彼らの意思を無視して命令するなんて出来ない。私に出来るのは協力をお願いするだけ。まあ、力づくで命令なんてしても、私を指先ひとつで潰せるほどの力がある皆に言うことを聞かせるなんて不可能だしね。


『ま、よかろう』

「うん、ありがとうアオ」

『わたしもいいけど、コチの傍にいるのが条件よ』

「わかった。ちょうど頼もうと思っていたことも、近くにいてもらう用事だったから問題ないよ、クロ」

『こっちは向こうより時間があるんだよね、夜だけ寝ても向こうにいるよりたくさん寝られる計算だから、起きている間は手伝うよ』

「ははは、シロらしいね。よろしく頼む」

『強敵はいるんでしょうね?』

「多分、ね。少なくとも普通の魔物よりは強いみたいだよ、アカ」

『ならいいわ、手伝ってあげる』


 四彩の協力を取り付けたところで今日の予定を考える。

 村人の救出を最優先にするなら森の探索は早い方がいい。でも、これから出てもすぐに暗くなってしまうだろう。それに村人をうまく助け出せれば、徐々に人が増えていく。その人たちを守るために、この場所の拠点化も進めなくちゃいけない。


 とりあえず、拠点化のためには生産系スキルを複数持つ私が残る必要があるか……でも、素材の探索も私が森に行く必要があるんだよな。まあでも、今日は時間もないし素材関係は諦めよう。

 そのかわり今日中に柵くらいは作っておきたい。あとはファムリナさんと親方にも協力してもらって……でもミラとアルはじっとしてないだろうな。


「よし。ミラ、アカと一緒に村人の捜索をお願い。魔物は倒してもいいけど、捜索が優先だからね」

「わお! わかってるねぇ、コォチ。任せておいて」


 ミラが外に出られると知って嬉しそうに尻尾を揺らしている。


「お、おい! コチ。俺、俺は?」

「ああ、もううるさいアル! 今、言うから」

「お、おう」

「アルも、シロと一緒に村人の捜索に行ってもらう。ただし、2時間もすると真っ暗になると思うからいくらスキルで暗闇が苦にならないって言っても遅くても3時間後にはもどってくること」

「了解よ」「おう」


 本当に分かっているのかどうかは微妙なので釘を刺しておく。


「ちなみに時間に遅れた場合、夕食は抜きだから」

「にゃ! わ、わかった。絶対に遅れないから」

「うぐ! 俺も大丈夫だ」


 大丈夫と言いつつ小声でシロにスケジュール管理をお願いしているアルはどうなんだろうと思うが、ふたりにとって飯抜きは地獄だろうから、ひとまずこれで大丈夫だろう。あとは……。


「クロ」

『なぁに、コチ』


 私の肩に跳び乗ってきた黒猫が身体を擦りつけてくる。


「ふたりに幻体を付けて、視界を常時投射してもらえる?」

『目と耳が使えればいいのよね』

「うん、この森は何があるかわからないから、なにかあったときに駆けつけられるようにしたいんだ。まあ、あのメンバーなら心配はいらないと思うけど」

『ふふふ、いいじゃない。仲間を信頼するのと、心配しないというのは同じ意味じゃないもの』


 クロはなんでなのか楽しそうに喉を鳴らすと、四つに分かれている尾のうちのふたつをふりふりと振って光に変える。

 その光はふらふらと飛んでいくと、ミラとアルの肩に乗って手の平サイズの子猫の姿になった。


 これは幻術と闇の魔法が得意なクロのオリジナルのスキル。自分の分体を尾の数だけ生み出せる。今回は目と耳の役割だけなので実体は必要ないため幻の体、つまり幻体だけど消耗を考えなければ必要に応じて実体付の分身を生み出すこともできるらしい。

 そして、この技の凄いところは分体たちを監視カメラのようにして、分体たちが見たり聞いたりしたことをクロの前に監視モニターのように投射することが出来るということだ。


「よし、ありがとうクロ。じゃあ、ミラとアルは村人の捜索をよろしく。この森はなにが起きてもおかしくない。こっちでも確認しておくけど、危ないと思ったらすぐに連絡をしてほしい。アカ、シロも気をつけてね」


 おそらく強いふたりは心配されることがあまりないのだろう、私の言葉に妙に戸惑っている。


『むしろわちしは気を付けるほどの相手が出てくることを祈っているわ』

『うん、それじゃあ行ってくるねお兄さん』


 シロとアカを連れて肩にクロの幻体を乗せたアルとミラが二手に分かれて森へと消えていく。そのふたりが見ているであろう景色は私の視界のちょっと上あたりに表示されている。森をすり抜けるように進んでいくのがミラで、シロの後ろを追走しているのがアルだろう。ミラとシロの索敵能力と捜索組の運動能力があれば、短い時間でもかなりの範囲を回れると思うけど、さすがに今日1、2時間の捜索では村人を見つけるのは難しいか。

 なんとか明日以降の捜索でライとルイのご両親だけでも助けてあげたい。


「さて、私たちは私たちに出来ることをしましょう」


<スピンビーの針×3を入手しました

 EP3を取得>

<クラッシュビートルの甲殻×1を入手しました

 クラッシュビートルの角×1を入手しました

 EP2を取得>


 投射映像の中で出会った魔物を瞬殺したふたつのグループからの通知が脳内に流れる……が、ちょっと今は邪魔なので通知はオフにしておく。


「私たちは何をすればいいかな?」

「あ、はい。ここを拠点化するのにまずは防衛力を上げたいと思います。アオ、小屋の裏に貯水池があるからそこで待機して、この広場と小屋、その周辺を守って貰えないかな」

『承知』

「ありがとう、アオ。ウイコウさん、アオを裏の池までお願いできますか、そのあとは私の作業を手伝ってもらいたいのですが」

「いいとも」


 快諾してくれたウイコウさんに地面でのんびりしていたアオを抱き上げて託すと、この場に残っているのはファムリナさんと親方、そしてクロを肩に乗せた私。とりあえずはこの三人で少しでもここが安全な場所になるように頑張ろう。

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お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです

書籍第1巻も2020年2月10日に発売ですので、是非書店でご確認頂けたら幸いです。下のタイトルから紹介ページにとべると思います
i435300/
勇者?賢者? いえ、はじまりの街の《見習い》です~なぜか仲間はチート級~
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