Ⅳ 旅人は悪魔の箱を見つける
それは高校一年生の夏休みだった。
クラスメイトの淳に誘われて、とあるオンラインゲームを始めることになる。
その名は『パンドラの箱-オンライン-』。
彼曰く「VR世界の宝探しは超面白いし戦略性もやばい!頭良いお前ならぜってーハマる」
成績は最底辺、いつも適当な事しか言わない猿だと思っていたが、今回だけは負けた。
このゲームはなんと面白いんだろうか。
ただ難点をあげるとするならチーム三人目がいつも適当に見繕った人間だったというところだろう。
忍者の淳が斥候として走り回り、ボイスチャットで私が情報を拾って敵を撃破する。
三人目は一緒に戦うか宝を探すかといった感じだった。
私たち二人の連携は最強クラスで、丁度オフイベ開催のお知らせがあったのは、そろそろ固定メンバーを迎えて完璧なチームを組もうかと話していた時期だった。
オフイベ会場は秋葉原の共済センタービル内にある大きめの部屋だった。
参加者はいい年してネトゲ廃人のオッサンばかりだと思ったが、案外女性も居るもんだなと驚いた。
まあ比率では六対四と、男の方が多かったが。
「ね、君たち高校生でしょ?私もなんだー。」
そして、そこで葵と出会った。
髪型はショート、肌はほんのり小麦色。
初対面でもハキハキ喋る様子から見るに、明るく活発なスポーツ女子といったところだろう。
彼女は秋葉原に住んでいる高校一年生。
私たちと隣の市に住んでいるが同い年ということで、すぐに意気投合した。
淳の鼻息が荒かったことは言うまでもない。
葵は魔導士として色んなチームの所謂“助っ人”という形でゲームを遊んでいたらしい。
やはり固定メンバーが欲しいという思いが段々と強くなり、今回のオフイベに参加するに至ったという。
私たちと動機はまったくといって良いほど一致していた。
その後は近くのファストフード店に場所を移し、作戦会議のようなものを開くことにした。
他所に聞かれるのはよろしくない。
そこで葵の“お試し”参加は決まり、では夜にでも会おうと約束をして別れる。
どの時代も傭兵というものは、軍直属の兵士よりも強い場合が多い。
きっと色んなチームで経験を重ねた彼女はなかなかの動きを魅せてくれるだろう。
これは期待が膨らむ一方だ。




