第08話 執事、凛の臨時SPになる。
あたしは、起きると自分の部屋のベッドにいた。
あれ・・・・・・??
夢・・・・・・??
起きてとりあえず、時間を見ると、5時になっていた。
あ・・・・そろそろ晩御飯の準備しなきゃ・・・。
あたしは、起きてキッチンへ向かう。
リビングに行くと、ママがいる。
ママ、お仕事は・・・??ってあたしが聞こうとしたら、ママが抱きしめる。
「凛!」
へ?? どうしたの・・・??
何で、ママ泣いてるの??
あたしがそう言おうとする前に、ママが口を開く。
「執事さんから連絡があって、心配で心配で・・仕事なんてできないから・・・すぐに飛んで来たのよ。あなたも執事さんも命には何ともなくて、良かった・・。」
ママはあたしを抱きしめる。
く、苦しい・・・・。
「ママ??」
「なぁに??」
「黒夜さんはどうしたの??」
「あ、執事さんなら、今、晩御飯を作ってくれて、それで部屋にいるわよ。」
「分かった。」
あたしは、何故だか分からないけど、黒夜さんの部屋に行った。
「凛、ごはんは??」
ママがリビングで大きな声で呼ぶのが聞こえる。
あたしは、「あとで食べる!!!」と返して。
黒夜さんの部屋は、うちの幾分と使われていない部屋だ。
コンコン。
「どうぞ。」と黒夜さんの声が中からする。
ギィィィ・・・。
あたしがドアを開けると、そこには少し目が赤くなっていて、ほっぺたに絆創膏をはった黒夜さんがいた。
部屋の中は電気はついていない。
真っ白な壁紙がついていて、変わっていない。
変わったところは、ダンボールが多くなっているところ。
黒夜さんの引越しの際の荷物なのかな?? 多分、そんな感じ。
あたしが、部屋をこうして見回すと、黒夜さんと目が合う。
すると・・・・黒夜さんはあたしに頭を下げた。
「お嬢様、このたびは申し訳ありません。執事としてお嬢様に怖い思いをさせてしまいました。」
黒夜さんはおじぎをしたまま。
あたしの言葉を待っている気がするけど、次の言葉が見つからない。
どうしていいのかもわからない。
とりあえず、あたしは・・・「大丈夫だよ。」と返してあげた。
黒夜さんは、「ありがとうございます。」と頭を下げたまま言う。
「だから・・・・頭上げて??」とあたしが言うと、黒夜さんはしばらくして頭を上げた。
黒夜さんが口を開く。
「奥様とお話をした結果、しばらくの間は、その・・・SPさんがお嬢様についていただけるそうです。」
「え・・・??」
「今回の襲撃で、いつお嬢様の命が危険にさらされるか分かりません。そこでSPを雇うんだそうです。」
「で・・・でも、黒夜さんは!?」
「早く犯人が逮捕されれば、SPは終了となります。もちろん私の執事としての業務はきちんと続けさせていただきます。それに、出かける際もSPの方々には着いてもらいますが、目立たないように。という風にしていただきましたし、私もお嬢様の命を守るために、執事をしています。ですから、私もSPです。」
「そっかぁ・・・。」
あたしは納得した。
ママはあたしの相談とかなしで決めてしまうことがあるけど、今回は仕方ないことだ。
ママもママなりに、あたしを心配しての行動だと思う。
「では、お嬢様。晩御飯にしましょう。」と黒夜さんは言う。
あたしは、「うん!」とうなづいた。
今日の晩御飯のおかずは、カキフライ。
なんでも、ママのお知り合いから届いたそうな。
う〜ん・・・美味!!
「どうですか?? お嬢様?」
「おいしいよ。」とあたしは言って、にこっと笑う。
それをみて、ママは嬉しそうに笑う。
きっと、ママは心配だったと思うから、あたしが普通にしてるだけでも嬉しいんだと思う。
あたしも、そばから大切な人が消えたら困るもん。
あたしが消えたらママはどんな感じになるんだろう??
いつも元気なママが落ち込むところは、見たことがない。
落ち込むのかな??
「凛??」
「なに??」
「どうしたの??」
「大丈夫。」
そんなこと考えてるなんていえないよ。
あたしは、晩御飯をたべたあとお風呂に入って、テレビ見てた。
だって、そうしてなにかしてないと不安でしょうがなかったんだもん。
とりあえずそんなことをしてたら、午後11時になってた。
あたしは自分のベッドに入るけど、「眠れない・・・・。」とうなっていた。
だって、なんか怖いんだもの。
あたしは、自分の部屋を出た。
ママの部屋に行く。
「凛、どうしたの?」
「ここで寝ていい??」
ママは少し考えた後、「いいよ。」と笑ってくれた。
今日はママと一緒に眠ることにした。
ずっと一人でいるより、幾分か安心できるもの。
すると、コンコンとドアを叩く音がする。
「はい。」
「失礼いたします。奥様。」と黒夜さんが言う。
「どうぞ。」
「あ・・・お嬢様もおられましたか、SPの方、明日から来られると思われます。私も、全力でお守りいたします。」
「執事さん・・・」
「はい??」
「凛のこと、守ってね。」
「分かりました。」
そういうと、黒夜さんは頭を下げて「失礼致します。」と言って、ドアを閉めた。
カツカツカツ・・。
廊下を歩く音がすこし寂しそうに聞こえた。
「凛、もう寝ようか??」
「うん。」
そういうと、ママとあたしは同じベッドで眠った。
ママと寝るのなんて、何年ぶりだろう。
そう思いながらあたしは眠りについた。