第71話 終わりと始まり
涙が止まらない黒夜。
あたりはすかり、暗くなっていても、涙が流れるのが見える。
白い聖夜と黒い一夜。
彼らは、苗字は同じでも全く違う。
外見は双子で似ていても、内面はまったくもって似ていない。
人間を愛する兄と人間を忌み嫌う弟。
「お嬢様・・・・花音さん。」
黒夜は声なき声でそう言った。
「・・・黒夜さん・・・。」
と言葉が出る凛。
花音は走って、黒夜に駆け寄る。
「黒夜さん!! 大丈夫ですか!?」
黒夜は顔をしっかりと向け、
「・・・大丈夫です。」
と弱弱しく言った。
その時である。
聖夜が立ち上がった。
「聖夜・・。」
「兄さん。
僕は
黒夜 聖夜は、あなたを許さない。
人間にこびへつらうあなたを許さない!」
そう言うと、聖夜はどこかへと消えた。
「早く、狼君を・・・助けないと・・・・。」
黒夜はそう言うと、倒れた。
凛と花音は急いで、119番をして連絡を取る。
二人は怪我をして今は病院について眠ってる。
凛のママ、栞が来ていた。
「凛、花音ちゃん!!」と二人を呼ぶ。
「ママ!」と凛が言うと、抱きついた。
何故だかわからないけど、ママに抱きつく凛。
涙が止まらなかった。
「ママ・・。」
「大丈夫、大丈夫よ、凛。
黒夜さんがついてたでしょ??
何があったの??」
「大丈夫です。」と黒夜さんは言う。
しかし、黒夜は笑っているけど、
心からは笑っていなかった。
短い付き合いだけれど、凛にはそれが分かった。
「あ、二人はどうしてます??」
「あ、ベル君とみぃちゃんなら、うちで仲良くお留守番してるわよ。
大丈夫。」
「じゃあ、私はお家のほうにお先に失礼します。
奥様、すみませんがお2人をよろしくお願いします。」
「・・ええ。」
黒夜はそう言うと、足早に病院から消えた。
花音が、
「黒夜さん!」と呼ぶが、聞こえていなかったかのか、
黒夜はただ進む。
黒夜がいなくなる。
何故か知らないけど、凛はそう思えて仕方なかった。
凛の中で、何かがはじけるような、
そんな感じが頭の中でした。
あれ・・・??
そう思った時、凛の意識は飛んだ。
「凛!」
「凛ちゃん!?」
凛はそのまま気を失ってしまった。
黒夜さん・・・
どこ??
黒夜への思いしか頭の中にはなかった。
「ふ~・・・。」
その頃、聖夜は魔界へと向かおうとしていた。
彼は黒夜に負けたが、まだ彼には計画があった。
「なんだ、ぼっちゃん、マケた??」
「あぁ・・・。」
「やけにスナオね。」
「だから、お前らの協力をお願いしたいんだよ。」
「ワかった。」
その頃、黒夜は
「ぼっちゃん、みぃ。」
「あ、おかえり♪」
「おかえりなさいですにゃあ!」
と明るく迎えるみぃとベルゼブブ。
二人はご飯を食べて遊んでいたそうな。
「弟さんはどうしたんですにゃあ?」
「大丈夫です。急用が出来たそうで帰りました。」
「そうにゃんですかぁ・・・・急ですにゃあ…。」
「言ってくれればいいのにねぇ~。」
とがっくりする、みぃとベルゼブブ。
「まぁ、そのうち会えますよ。また来るでしょうから。」
そう言うと、黒夜はふらっとベランダに消えた。
「黒夜さん。にゃあ~??」
とみぃがベランダに行くと、黒夜の姿がない。
「どうしたの?? みぃ??」
「黒夜さんがいないんですにゃあ・・・。」
「あれ?? どこだろ??」
黒夜は一人、屋上にいた。
「黒夜 一夜か。」
「ええ。あなたが来ると思って一人でお待ちしていました。」
「弟聖夜は罪を犯した。
まぁ・・かるく挙げると
不法入界罪。人間界に勝手に入った。申請もなく。
暴行罪。
なにより、重い罪は・・・」
「不法入界よりも重いものがあるのですか??」
「あぁ、あるよ。裁判長、直々にここに来てるんだから
罪を言う。脱獄幇助罪〈だつごくほうじょざい〉だ。
あいつは刑務所から、何人かの悪人を出した。
俺も、責任がある。あいつの仲間を裁かなくてはならない。」
黒夜は黙る・・・。
「まぁ、黒夜という名家がこのような罪を犯すとは考えにくいとは思うので、
慎重な捜査をしているが、99%、お前の弟さんが犯人だと思っている。」
「黒夜、俺が人間界にいる間はお前にも手伝ってもらう。
借りを返せ。」
「はい・・・。分りました。
私の友人と言うことで、今日から私の主の家にお泊りください。」
静かに黒夜は言う。
「黒夜、お前いまだに忘れてないのではないか??」静かに聞いた。
「いえ・・・大丈夫です。エンマさん。」
「なら、いいが・・・。」とエンマと呼ばれた男は銜えていたたばこから、
煙を吐いた。
少し陰った月に煙草の煙があたり、月がさらに陰った。