第53話 執事、昔のお嬢様に出会う。
「黒夜さん、お久しぶり。」
と声をかけるあたしよりも美人で赤いドレスを着た女の人、後ろの執事さんがあたしをみてお辞儀をしたので、あたしも返した。
でも、あたしは後ろの執事さんを見てびっくりしてる。
だって、顔の右半分に目からほほにまっすぐに黒いイナズマのようなタトゥーが入ってるんだもん・・・。
顔はやせこけてて、髪が長くて、少しパーマがかかってなんか変わってる。
髪の右側には、少しピンクが混じってる。
「あ、マリアお嬢様、お久しぶりです。」と黒夜さんは笑って言う。
あたしがあまり見たことがないような、黒夜さんの笑顔であたしはちょっぴりなんか嫌な気分。
「黒夜さんはお元気そうね。そちらの方は?」とマリアという女の人が言う。
「はい。こちらは今、私がお仕えしている、凛お嬢様です。」
「神崎 凛と言います!」と笑って言うとあたしはペコっとお辞儀をした。
「どうも、ご丁寧に。水無月マリアと申します。こっちは執事の大月と言います。黒夜さんに昔、お仕えしていただいたの。今はこんなかわいい子だなんて、黒夜さんも隅に置けないわね。」
と笑ってマリアさんが言う。
「黒夜さんに昔、仕えていただいたころが懐かしいわ。」と笑って言う。
黒夜さんも笑ってる。
なんか・・やだ。
あたしがそう思って・・・・
「あ、あたし料理とってくるね!!」とその場を立ち去った。
「ふ〜・・・。」とため息をあたしがつくと、
「凛様」
とあたしを呼ぶ声が
誰かと思うと、マリアさんの執事の大月さんだ!!
声が意外にハスキー。
「凛様、先ほどは私の主人が失礼しました。」
「いえいえいえ! と・・・・とんでもないです。」
「主人は、黒夜さんに幼少期にお世話になったんだそうで・・・その為か、黒夜さんの思いが人一倍強いようで・・・。」
「そ、それって・・・。」
「黒夜さんがマリアお嬢様どう思っているかはわかりませんが、マリアお嬢様には初恋の人だそうです。」
マリアさんは黒夜さんのことが好き?
そんな・・・。
嘘でしょ???
「・・・マリアさんはそういえばいくつ?」
「今年で17歳です。思春期のころに黒夜さんとお別れになったそうで、私はその後出会いましたが、あった当初はそのショックもあってか、体調を悪くされていました。」
大月さんは話を続ける。
「凛様がどう思われるかは分かりませんが、私がこういうことを申し上げるのは、マリアお嬢様は特別な感情を抱いているという可能性があるためです。」
「そんな・・。」
「あなたもそうなのではないですか?」
「え・・・・?」
「あなたも黒夜さんのことが好きなのでは? これは私のカンですが。」
大月さんはそういうとグラスを手に取り、ジュースを飲んだ。
あたしに差し出してくれた。
あたしは、答えをさがして・・・「あの、えっと・・・。」
と、戸惑っている。
「戸惑うってことはそうなのですね?」
「・・・・・(ポッ)」
「顔が真っ赤ですよ??」
そういうと、大月さんは意地悪く笑う。
「凛様。」
「は、はい。」
「そうやって戸惑ううちに、黒夜さんをとられてしまうかもしれませんよ?」
「え・・??」
「欲しい物なら、欲しいと言わないと、誰かにとられてしまいますから。」
そういうと、アナウンスが流れた。
「そろそろ、ダンスのお時間が始まります。やられる方はパートナーとご参加ください。」
それを聞いた大月さんは「お嬢様のところへ向かいます。」と言う。
あたしはついていくことに。
あたしはでも・・・黒夜さんと踊りたいの。
教えてもらったダンスを黒夜さんと一緒に。
だって、好きだから・・・。
いないんなら、踊らなくていいの。
壁の花になってるから。
あたしと大月さんが、マリアさんと黒夜さんを見つけると・・・・
マリアさんと黒夜さんが踊ってた。
でも、あたしを見ると黒夜さんはすぐに離れて・・・。
あたしのそばに来た。
「お嬢様。」と黒夜さんが呼ぶ。
「何??」とあたしは答える。
「その・・・踊っていただけますか・・・?」と黒夜さんが言う。
でも・・・あたしは、
「マリアさんと踊ればいいじゃない!!」と断った。
自分でも何でそういったのか。
それは分からない。
でも、あたしはそう言うと、泣いてその場を立ち去った。
だっていたくない。
あたしは泣きながら、その場を走った。
走って、走って、走って。
でも、転んじゃった・・。
馬鹿みたい・・。