第03話 執事、胃袋は底なし。
ふ〜・・・と少しため息をついて、屋上に着いた。
着くまでが、大変だった。
黒夜さんに対して、挨拶してくる学校の方々。(大体の人に対して、黒夜さんがあいさつして、みんなお行儀よく返すからだけど・・)
一人一人に対して、「どうも。」と笑って言う黒夜さん。
丁寧なのは、いいけど・・・ちょい困る。
仕方ないから、あたしが引っ張っていくと、「あの男の人、かわいい〜♪」「あの子のお兄さん??」とか、言う声が聞こえた。
かわいいのか?? あたしにはよく分からないよ。
とりあえず、ベンチに座る3人。
黒夜さんは、「失礼します。」といってあたしの隣に座った。
「で、この人は誰なんですか? 凛ちゃん。」と花音があたしに聞いてくる。
「あ・・・・私は、今日から、お嬢様の執事になった、黒夜と申します。」と丁寧な自己紹介をする黒夜さん。
花音はびっくりする。
「執事さん・・・!?」
朝、あたしも聞かされてそうだったけど・・まぁ・・・そうだよね。
信じられないもん。
「すいません・・・・おいくつなんですか??」と花音は聞く。
「まだ、18です。」と黒夜さんは言う。
「18ですか!!」
「18!?」
あたし達は揃ってびっくりする。
けっこう大人の顔立ちしてたから、20代は、いってると思ってたよ。
「ま・・・私の話はいいですから・・・お弁当をどうぞ。」といって黒夜さんはお弁当を薦めた。
お弁当を見ると・・・・・朝とはまた違った感じのお弁当。
サラダなんだけど、シーザーサラダ、それにプレーンオムレツと、鶏肉が焼いてある。
それに、タマゴサンドとベーコンとレタスのサンドイッチ。
あたしは食べてみる。
「う〜ん・・・・おいしい。」と思わず、笑みが出る。
「あたしにもください!」と花音が一つ、サンドイッチをとった。
「おいしいですー!!」と笑う花音。
確かに、すさまじくおいしいのだ。
どうしたら、こんなにおいしくなるの??って言うくらいに。
「喜んでいただけて、私も嬉しいです。」という黒夜さん。
「黒夜さんは、お昼どうするの??」とあたしは聞いてみた。
「あ、心配には及びません。ちょっといい情報が入りましたので・・・」
「いい情報??」
「あ・・いや・・・私、そろそろお家のほうに戻ります。晩御飯はなにがいいですか?
お嬢様。」と聞いてくる黒夜さん。
お嬢様ははずかしいって・・・・!!
「う〜ん・・・・じゃあ、今日は黒夜さんが来たお祝いで、黒夜さんの好きなものにしよ!」とあたしは言った。
あんまり、いい考えも浮かばなかったから、これなら黒夜さんも喜ぶだろう。
「はい、では、そうさせていただきます。」と言って、黒夜さんは帰って行った。
一人一人に挨拶しながら・・。
おいおい・・・。
挨拶はいいって!!
「凛ちゃん・・・あの黒夜さん・・・いい人ですね。」と花音はぼそっと言う。
なぜか顔が赤い。
「それに・・・かっこいいし・・・。」
あ〜・・・・・惚れちゃったかな・・??
まぁ、いい顔なんだろうけど、あたしの好みではないし。
あたしは、「花音、応援するよ!」といってあげた。
「が・・・がんばります!」と花音は言う。
ま、何にせよ、いいんじゃないかな・・??
黒夜さんが帰った後、すぐにあたしたちは午後の授業を受けた。
まぁ、あたしの得意な英語と数学だったから、問題はなく終わった。
キーンコーンカーンコーン。
とうとう放課後。今日も一日、(執事さんが来てくれて、お弁当を届けるまでのハプニング以外は)何の問題もなく終わった。
今日は掃除もないし、このまま家に帰るだけでは、勿体無い。
せっかくだから、ケーキでも買っていこう!
花音も好きなケーキ屋さんに、二人で行くことにした。
あたし達が、ケーキ屋さんに行く途中に、信じられないものを見た。
買い物袋を両手に、ケーキ屋さんに入る執事さん。
あたしと花音は遠くから、見ている。
「花音、なんか様子変じゃない??」とあたしは聞く。
「・・・・・・・・・(う〜・・・・やっぱり、かっこいいです♪ 黒夜さん♪)」
「花音??」
「あ、は、はい!?」
何でびっくりするのさ。しかも顔が赤いぞ。
すると、黒夜さんはケーキを買って、そのあと・・・馬鹿でかいケーキを食べてました。
花音は、「凛ちゃん! これみてください!」とあたしにケーキ屋さんのチラシを見せた。
「超特大ケーキ! 30分以内に食べたら、無料!!」
と、書いてあった。
黒夜さんの前に人だかりができてる・・・・・。
みんな、黒夜さんのたべっぷりにびっくりするばかりだ。
30分どころか・・・15分で食べちゃった!!
「おめでとう!」と全員から拍手される、黒夜さん。
黒夜さんは服をきちんと整えて、「ありがとうございます。」とお辞儀をして、ケーキ屋さんから出て行った。
あたし達は、その後も黒夜さんをつけようとしたけど・・・・・曲がり角を曲がって、小道に入ったら、黒夜さんが、消えちゃった。