第24話 黒夜、人間について考える。
9月に入りまして、初の更新です。
これからも、頑張ります!!
さて、花音さんをきちんと送って、家に帰りますと、奥様がちょうど良く帰っていらっしゃいました。
「ふ〜・・・疲れたけど・・・・お仕事が今日は早く終わったの。」
「おかえりなさい。ママ。」
「おかえりなさいませ、奥様。」
「ただいま! 黒夜さん、晩御飯いただける??」
「はい、奥様。今日はお嬢様と一緒にカレーを作ったので、それをどうぞ。」
「あら? 凛も手伝ったの??」
「うん。黒夜さんにはかなわないけど、手伝ったよ。」
私がテーブルに運ぶと奥様は、嬉しそうに、「いただきます。」と食べ始め、「美味しいわ♪」と笑顔がこぼれました。
この幸せそうなお二人を守ること。
お嬢様を命に代えて守ること。
それが今の私の使命です。
「黒夜さん、すこしだけおかわりくれる??」
「はい、ただいまお持ちします!!」
忙しいですが、今の生活が一番です。
はい(笑)
「ふ〜・・・ご馳走様。凛、黒夜さんとってもおいしかったわ♪ すごい美味しいカレーだったわ。」
「本当??」
「ええ、本当よ。」
「あたしも頑張ったけど、黒夜さんが上手だからだよ!!」
お嬢様が笑って言う。
「いえいえ、まだまだですよ。」と私が答えると、「でも、とても美味しかったわ。」と奥様が笑う。
「じゃあ・・・・あたしはお風呂入ってくるわね。凛は入ったの??」
「いや・・・まだ。あたしは洗いものしてから、はいるよ。ママはお仕事して疲れてるでしょ??先に入って。」
「じゃあ・・・・お言葉に甘えて。でも・・・凛と一緒に入りたかったなぁ・・・(笑)」
「な・・・・ママったら!!!!」
「冗談だから。じゃあ、入ってくるわね。」
そう言って奥様はお風呂に向かう。
お嬢様は洗い物を手伝ってくれるようです。
ありがたいですね。
「あ、黒夜さんちょっと待って!」
お嬢様が救急箱を持ってきた。
??
「手を見せて。」
「手ですか??」
「いいから!!」
「はい・・・。」
私が手を見せると、少し手の皮が剥けていた。
吸血鬼として意識してないと、ダメージを負ってしまうんです。
でも、あまり痛みはないんです。
今は意識してますから。
「黒夜さん・・・ありがとね。今日は。」
そう言って手の剥けている所を消毒するお嬢様。
「お嬢様、大丈夫です・・・。私はお嬢様を守るためにいますから。」
「でも、あたしじゃなくて、花音を守ってくれたでしょ??」
「あれは・・・お嬢様の大切な方ですから。お嬢様にいわれた仕事は、私の美学に反さなければ、全て行います。」
「黒夜さんの美学って??」
「怒りに任せて勝手な行動をしないとか・・・。そういう私の中で決めていることです。」
「そっか・・・。でも、今日は本当にありがとう・・・・。」
そう言って、お嬢様の目から少し涙が出てきた。
「大丈夫・・・・大丈夫ですよ。お嬢様。」
私はそう言って、お嬢様の目の涙をふき取ってあげた。
人間とは何故、こんなに涙を流す生き物なのでしょうか?
私達の世界では、涙を流す生物はあまりありません。
血も涙もないというような者が強い。
そんな定説もあります。
しかし、私はこの不器用でしかし、意外にも強い「人間」という生物が好きです。
誰かのことを思い、尊い、愛したりして、涙を流せるという脆さにも似た強さを持つ生物。
わたしは、そんな人が好きです。
「・・・黒夜さん?」
「はい??」
「洗い物しないの??」
「あ、はい!! ぼけっとしてまして。」
「じゃあ、あたしも手伝うから、早くしようね。」
「はい。ありがとうございます。」
「それと・・・手が痛くなったら無理しないでね。」
「はい。痛くなったらいいます。」
ジャー・・。
私は水を流して、お皿を洗います。
お嬢様も手伝ってくれて、ありがたい限りです。
「じゃあ・・・終わりましたし、お嬢様、奥様が上がったらお風呂をどうぞ。」
「うん。」
「あー!!さっぱりしたわ〜・・・。
あら、黒夜さん、右手どうしたの??」
「少し怪我をしてしまいまして。」
「そうなの・・・・。あまり無理をしないようにね。」
「じゃあ、あたしお風呂はいってくる。」
「どうぞ〜♪」
お嬢様がお風呂に行った後、奥様がすこし顔を神妙にして、「ねぇ・・・黒夜さん??」
「はい?」
「半分、吸血鬼のあなたが怪我するだなんて・・・。」
「はい。すこし油断して意識をしなかったのです。申し訳ありません。」
「いえ、いいのよ。凛を堕天使から守ってくれたから。その点は感謝してる。」
「はい。」
奥様は、私の手を取り、「黒夜さん・・・・あなたと契約したことはあちらの世界からのプレゼントだったからで、あたしは・・・契約するかどうかは最初、悩んだけど・・・。」
「はい。」
「今では、正解だと思ってるわ。あの子に・・・父親のいない寂しさや、家族にそばにいてもらえない寂しさを今では、少し和らいでるみたいだから。」
「そうですか・・・。」
「だから・・・凛のこと、これからもお願いね・・・これは母親としてのあたしのお願い。」
「はい、分かりました。奥様。私、黒夜一夜。命に代えてお守りします。」
「ありがとう・・・。」
奥様はそういうと、明日も仕事があるから・・・と言って寝室に向かわれた。
人間の愛は強い。
奥様に握られた手から、私はそれを感じました。
愛とは私達は持ちえない力、なのかもしれません。