第23話 執事と狼。
「は、花音さん! 血が・・・。」と黒夜さんが言うと、花音の頬から血が出ていた。
それを見た後、狼は不良たちを追いかける。
「待ちなさい! お嬢様、花音さんをお願いします!!」
そう言って追いかける黒夜さん。
でも、狼は思いっきり殴り倒した。
馬乗りで殴りつけた。
ガシ!
ゴキ!
何発も何発も。
黒夜さんが幸い止めたからいいもの・・・。
黒夜さんはパイプをつかんだ手を、すぐにポケットに入れた。
空の満月を少し見た後、狼にこう言った。
「不良に絡まれて喧嘩ですか?? 怪我がなくて良かったです。しかし・・・やりすぎですね。」
狼は、「やりすぎた。反省してるよ・・・。」と申し訳なさそうな顔で言う。
そして、花音の方をむいて、「巻き込んでしまってすまない。・・・怪我は??」と少し申し訳ない感じで言う。
喧嘩してるときとは違って、学校のときの少しぶっきらぼうだけど、優しい口調で言う。
黒夜さんが絆創膏を持っていて、幸いかすり傷みたい。
花音が言うには、黒夜さんが止めようとしたときに、ぎりぎりかすってしまったみたいだ。
「申し訳ないです・・!!」と黒夜さんは深々と頭を下げる。
「黒夜さん、狼くん・・・・大丈夫です!」と花音は明るく言う。
「あたしも大丈夫・・・。」とあたしは少し遅れて言う。
だって、喧嘩なんて目の前で見るのは初めてじゃないけど・・・・・そのあたしも女の子だし。
それに花音の怪我もあるし。
ちょっと、まだ心臓がいやな感じでどきどきしてる。
不安な感じの心臓の高鳴りが分かるよ。
「お嬢様、大丈夫ですか??」と聞いてくる。
あたしは、「あぁ・・・・うん。」と答える。
「花音さん、お嬢様、本当に申し訳ありません・・・・・。」
その時、地面にポタ・・。と何かが落ちた気がした。
水滴みたいな・・・。
ひょっとして、黒夜さん・・・・涙を流したの??
「皆さん・・・一緒に帰りましょう。不良の仕返しがあるかもしれないですし。」
狼は、「いいのか??」とあたしと凛に聞いてくる。
あたし達は『もちろん!』と言って返した。
こうして、あたし達は4人で帰ることになった。
狼は転校してきたばかりで、まだこの街の場所とかが分からないみたいで携帯電話のGPSで地図を見ていた。
そんな帰り道、
「結構、この辺入り組んでいて、分かりにくいんだな。」と狼が言ったら、花音が、「はい。あたしも小さいころ迷子になりました・・。」と花音は言う。
「あったねぇ。小さいときに迷子になった花音をあたしが探したの。
で、夜になっても見つからないから、花音のお父さんが、警察に連絡して大騒ぎになっちゃんだよね。」
「はい・・・・お父さんが心配してくれたのは、嬉しいんですけど・・・。」
黒夜さんが話を聞いて少し笑ってこう聞いた。
「で、どこに花音さんはいたんです??」
「そ、それは・・・・・。」
「公園のコンクリートで作ってある山みたいなのの、土管の中で寝てたんだよね!」
それを聞いた狼が・・・・「ぷ・・。」と笑う。
どうやら、笑いを我慢してるようだ。
花音は狼に、「だ・・・だって、寝ちゃったものは仕方ないじゃないですか〜!!」と起こり気味に言う。
あたしは、「でも、あの時は本当に心配したんだよ?? 見つかってよかったけど。」というと、花音は、「一番最初に見つけてくれたのが、凛ちゃんでよかったです〜!」と笑った。
すると、狼が「あ、俺んちここ。」と言って指を差す。
狼の家は、マンションだった。
「ここの、8階の804号室に住んでるから、良かったら遊びに来てくれ。」というと、狼は「じゃあな。」と言って家に帰った。
「また明日ね!」
「寝坊しちゃダメですよー!!」
と、あたし達が言うと、黒夜さんが、「あ・・・鍵が落ちてますね。」と行った。
804と書いてある。
「多分・・・。」
「狼くんのです。」
黒夜さんは笑うと、「届けてきます。ですので、マンションの入り口で待っていてください。」と言って、足早にマンションの中にはいっていった。
さて・・・・お二人もいないですし、急いで上がりますかね。
「あれ、鍵がない!!」と慌てている人もいるようですし。
「あの、鍵をお忘れですよ。」
「あぁ、ありがとう・・・確か名前は。」
「黒夜 一夜です。」
「あぁ、黒夜さんありがとう。じゃ・・・・」
私は彼の腹部を触ります。
「な、何すんだよ!?」
「おかしいですね?? あなた、不良の方に殴られたじゃないですか。
あの殴られ方は、普通の人間なら、アバラ骨が折れたと思ったんですが・・・」
「何が言いたいんだ?」
「あなたも私の仲間かと思ったもので。私は、この世界の者ではないですから。」
フッと笑うと狼さんは、「・・・・・ばれたか。あんたは有名だろ? 吸血鬼。」
私は、ばれていたのを少しびっくりしながら、「いえいえ。 あなたは・・・・?
狼さんは、「俺は狼男だ。満月に人間の血を見ると、一時的に狂戦士化する。最悪の場合、狼になる。
まだ、俺は修行不足だから、完璧にコントロールできないんだ。でも、最悪の場面は防げてる。そのためにこっちに修行に来た。」
「そうでしたか・・・・・・。」
「黒夜さん。」
「はい??」
「あいつらには秘密にしておいてな。」
「もちろんですよ。しかし・・・・。」
「しかし??」
「お嬢様は、私の正体を知っています。」
神妙な顔で私の顔を見る狼さん。
「どうかなさいましたか??」
「いや・・・なんでもない。この世界でもよろしくな。」
「はい、こちらこそ。」
そういうと、狼さんは部屋の中に入りました。
魔界の修行は基本的に、子供でまだコントロールできないような人たちがします。
彼のような場合、種族的にも多く、この世界には多くいらっしゃるのです。
きちんとコントロールできるまではいるみたいですが。
さて、お嬢様も待ってることだし、早く降りましょう。
「黒夜さん、遅いよー!」
「すいません、狼さんと話があったもので。」
「どんな話だったんです?」
「それは男同士の秘密です。」
「え〜!!??」
「教えてくださいよー!!」
「秘密です。」
彼と約束しましたから。
約束を破る。
私は、それを致しません。
約束を破ることは、私の美学に反するからです。
ですから、お嬢様を守るのです。
奥様との約束。難しい言葉で言うなら、契約です。
「黒夜さん?」
「はい。」
「何考えてたんです???」
「いやぁ・・・綺麗な月だと思いまして。これなら狼男も喜ぶくらいの。」
「黒夜さんは冗談が上手いんですね。」と花音さんは言う。
いえいえ、冗談ではありませんよ。
意外とそばにいるんです。
そう、そばに。