第02話 執事、お弁当とともに
4時間目が終わりに差し掛かる頃、花音が、話しかけてきた。
「凛ちゃん、あの先生、なんか変な感じがするです・・。」
「あの、新任の吉崎先生が、へんな感じ?」
花音は、ほんとうにたまにそういうことを言うときがある。
そういう人は怪我するとか、そういうやつではなくて、なにか悪いことをしている人というのが主だ。
花音が人に対して、そういうことをいうのはまずないけど。
花音は話を続ける。
「気のせいかもしれないですけど・・・あたしには、変な風に見えました。大事なことを隠してるような。」
「あたしには、よく分からなかったけど、花音がそういう風に感じるのなら、あたしは信じるよ。」とあたしが言う。
そういうと、花音は、「ありがとう・・・・・です。」と言って小さく笑った。
キーンコーンカーンコーン。
あ、お昼休みだ。
ゥチの学校は、給食が出ないから、お昼休みにお弁当を持ってくることが決まっている。
学食もあるけど・・・あたしはあんまり好きじゃないしね。
さぁ、花音と一緒に、屋上に行って、お弁当食べよう!
あたし達は、一緒に屋上に行く。
ウチの学校は、屋上にフェンスがついているから、落ちる心配もないし。
なにより、もう、屋上が公園みたいになっているので、お昼休みはそこでたべるのがふつうになっているのだ!!
「さ〜て・・・今日のお弁当は・・・・。」といって、あたしはかばんの中を見る。
でも、あたしはひとつ重要なことを忘れていた。
お弁当を作るのは、あたしの役目。
ママも家事はしてくれるけど、それはあたしの仕事になっている。
でも・・・今日は・・・・
お 弁 当 を わ す れ たー!!!!!!!!!
つ く る こ と す ら わ す れ たー!!!
花音が、「どうしたんです・・???」とあたしに聞く。
「お弁当・・・忘れた・・・」と軽く落ち込みながら言うあたし。
「え・・・!?」
今日はママも仕事だし、届けてもらえない。
あ〜・・・お昼ご飯なしでがんばるしかない・・・・・。
なんて、あたしが思っていると、花音が、「ケータイで、電話して届けてもらったら、どうです??」と言ってくれる。
「ケータイわすれた・・・」とさらに落ち込むあたし。
「じゃあ・・・あたしの!」と花音がケータイを貸してくれる。
よし! これで電話だ!と思ったその時、吉崎先生が入ってきて、「神崎さん。おうちの方がお届け物だそうです。」といってあたしに渡してくれた。
ひょっとして・・・・・。
あたしは、袋の中を開けてみた。
お弁当だ!!
「なんでも、黒いスーツを着た若い男の人が届けに着ましたが、お兄さんですか?」
「あ、いや・・・」と答えにあたしがこまっていると、「親切なお兄さんがいて、いいですね。」といって、吉崎先生は職員室に戻っていった。
「凛ちゃん・・・・ってお兄さんいましたっけ??」と花音は聞いてくる。
「いや・・・・いないけど・・・・。」
「じゃあ、届けに来た人って誰ですか??」
やっぱり、気になるよね。うん。
「いや〜・・・その〜・・・。」
「あたしには、いえない関係の人ですか??」
「うんと・・・・。」
とあたしが答えに困っていると、学校に答えの張本人がいた。
あたしに近寄ってくる黒スーツ。執事さん。
「お嬢様、お弁当は届きましたか?? お忘れして申し訳ありません。」と深く頭を下げる黒夜さん。
「凛ちゃん、このひと誰です?」と花音が聞いてくる。
あ〜・・・お弁当と執事が一緒に来ちゃったよ〜・・。
とりあえず、あたしは黒夜さんにこっちに来て!と声を出して、花音には、「お弁当、食べながら話すね!」と言って、あたし+友達という普通の取り合わせに、執事という異色なのがついた感じで屋上を目指した。