第12話 凛、犯人の異常性に気づく。
それは一瞬のことでした。
後から聞いた話では、この言葉が最初にきます。
お嬢様をさらった男はベランダから飛び降りたらしいのですが、ここは5階なのに、平然としてそのまま逃げていったとの事。
どう考えても人間業ではないですね。
すこし、厄介なことになりそうです。
私がそれに気づくのは少し後の事だなんて思いもしておりませんでした。
「黒夜、凛ちゃんがさらわれた!!」
「何ですって!?」
「今、恭子が発信機を相手につけてるから大丈夫だ。相手さんがどのような動きをするかわからないが・・・。」
「すぐに行きましょう。」
「でも、お前、体が・・・。」
「私の体よりも、お嬢様の方が大事です。」
私が立ち上がっていくと、花音さんと奥様がリビングにいました。
SPの方も増援部隊をよぶそうで、大山さんが今、手配をしているそうです。
「黒夜さん。」
「何ですか?? 奥様。」
「凛が・・・まさかこんなことに巻き込まれるなんて・・・。それに担任の先生のほうからも、お電話が来たりしていて・・もうどうしたらいいか・・・。」
「・・・・・・私も信じられない気持ちでたくさんです。しかし、これからの方がもっと疲れます。奥様が気丈でおられるのも大変になるくらいに・・・」
「もう、なってるわよ!」
奥様が声を荒げた。
無理もない。
自分の一人娘が誘拐なんていう危険なことに巻き込まれれば、誰でも不安でたまらなくて、いらだつでしょう。
そんなとき、花音さんが「凛ちゃんは大丈夫です。」と言ってくれました。
何故、こんなときに、そんな台詞を言うのかは分かりません、私を元気付けたいのか、奥様に大丈夫だという自信を植え付けたいのかもしれません。
「ごめんなさい・・黒夜さん。」と奥様が冷静になられて謝られた。
「黒夜! 発信機が止まった!」
台風さんからの連絡が大きな声で響いています。
「はい。では・・・・行きましょう。」
「私も付いていきます。」という大山さん。
「おう。」とうなづく台風さん。
私達3人は、お嬢様の発信機の反応から居場所を見つけ出し、その場所へと向かっています。
「黒夜。」と言って、台風さんは私に銃を渡しました。
大山さんは、「もしものときのためです。きちんと許可も得てありますし、手入れもしてあります。」
と、言って渡されました。
台風さんは、「もしも、やばくなったら撃つしかないんだ。いいな。」
そういうと、普段と違ってシリアスな表情をしながら台風さんは目を閉じています。
車が止まりました。
どうやらここです。
今は使われていない、廃ビルのようです。
ん・・・・・。
あたしが眼を覚ますと、そこは見たこともない場所だった。
暗くて、どこかもわからない。
動けない・・・・。
は!
あたし、そういえば・・・・・黒夜さん!!!!!!
「お目覚めですか?」
どこかで聞いたことのあるような声、でも・・・・はっきりとは思い出せない。
「あなたの前では、ボイスチェンジャーを使うのは止めておきます。」
犯人の顔は覆面で隠されていて分からない。
声はでも・・・どこかで聞いたような声。
「思い出せませんか??」
思い出せない・・・。
「誰・・・??」
「ま、おいおい分かりますよ・・・・。」
ガシャン!
ドアの開く音がする。
「お嬢様〜! どこですか〜!」と遠くから黒夜さんの声が聞こえる。
「凛さん。すいませんが、覚悟しておいてください。」と犯人が笑って言う。
「覚悟? 一体何の?」
「黒夜 一夜が今日死ぬかもしれないからです。でも、あなたは殺しません。」
そういうと、犯人は大きな弓を持って私を引き連れて、ドアの外に出ていく。
「待って!」
「はい。なんですか?」
「あたしを誘拐した目的は何!? お金??」
あたしがそう聞くと、犯人はフン・・・と笑って・・「違いますよ・・・・・・。フフ・・・。私はただ・・・・ね(笑)」
この人は・・・普通の人じゃない・・・。
あたしはそう感じた。
そう感じるとすごく怖くなった。