8日目 水ゲットクエスト 上
今日は、これまで暑い中でもかなりのものになっていた。水を飲もうとお水を鞄から取り出し口に運ぶとペットボトルの水から何も出てこなかった。かなりの水不足だった、早くクエストをクリアしないといけないなと意気込む。
朝ご飯を食べていざ集合場所に出発というところで、父がフラフラし始めると急に倒れた。
「大丈夫か?」
俺は心配そうに聞くと母が急いで手を当てる、熱中症みたいだった。弟と一緒に母が父を担いで寝室に眠らせている間に、事の経緯をダークに連絡をすると、
「まじか、ゆっきーのところもか実はアラ坊の父も体調不良で来れんみたいんよね」
集合時間ギリギリで出発する前の出来事だったので俺も焦るように連絡を取ったのだが、アランの父の体調もどうやら悪いみたいでどうしようと思っていると、
「まあ二人は俺の知り合いで、いそうやから、なんとかしてみる」
「すみませんお願いします」
ダークは俺に任せとけと言うと連絡が切れた。俺は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
大丈夫だろうか、母と弟で集合場所に向かうとダーク以外のみんなは座って待っていた母と弟は申し訳なさそうに早歩きになる。
「すみません遅れました」
「ユキさんおはよう、これで殆どの人は揃ったかな、あとはダークさん待ちですね」
俺は遅れた事を頭を下げて謝ると事情を知っているのか白髪の美女ジャンヌは大丈夫ですよと言っていた。横でティファがマザークレアのメンバーと再会をして話し込んでいた。
ジャンヌとリーユ以外の5人は全員女性で攻撃近接型の武器を持っていた。そうこうしている内にダークが小さい子を二人連れてくる、一人は俺の知っている子だった。
「すまんヘルプ頼んでて遅くなった」
「大丈夫ですよ、さすが人脈はありますね」
黒髪小学生の子は息を切らせながら頭をジャンヌに下げるが、逆に関心したように褒めていた。
「じゃ紹介するな、俺の妹分のトラコとハラコちゃんや」
「よろ、私トラコ・アザラシ」
ダークに隠れてあまり喋るのが得意じゃなさそうに色素が薄い紫髪の女の子が喋る。
「ハラコちゃんは偶然町で会ってな、俺がスカウトしといた」
「そうなんだクマ、よろしくクマ」
熊のきぐるみを着た小人族の少女?がくるくる回りながら、自己紹介をする。アランの姿が見えないと思ったら母と弟と話をしているみたいだった。
「とりあえず班分けからやな」
「そうですね、の前に私達の話を聞いてほしいんです」
ダークが仕切りだすと慌ててジャンヌが困った顔で話があると言う。
「実はですね、他のギルドの情報で入り口は二つあって一つはLV制限があるみたいなんです」
「へえ、LV制限があるって珍しいわね」
「そうなんですのよ、一つはLV50以下そして、もう一つはLV50以上で入らないとダンジョン攻略は出来ないらしいですわ」
「じゃあ最初に行った奴らは立ち往生してるのか、こっちに戻ってきているの?クスクス笑えるんやけど」
白髪の美女は困った顔で喋り出すと、みんなが頷くようにジャンヌの話をきちんと耳に情報を入れる。話を聞き終わった小学生の男の子は笑っていた。
「じゃ、まず最初はLV低い子からPT組ませた方がいいな」
「そうなんです、うちは私とリーユ以外は5人が50以下で揃えて来たので、そちらは3人出してもらえば大丈夫です」
ジャンヌはこうなる事をわかっていて50以下の子を揃えて来てくれたみたいだった。
「トラとハラコちゃんって以上だっけか?」
「そうだくま」
ダークは二人に近づきながら喋ると、ハラコは飛び跳ねながら元気によく頷き、トラコも無言で頷く、
「じゃあもう決まったようなものね、私の旦那とゆきちゃんとこのお母さんと弟さんしかいないでしょ」
「そうですね、私説明してきますよ」
「お、じゃ頼む」
ティファがいうとアランが楽しそうに3人の元に走って行った。おいおいコミュ力高いなあもう仲良くなっていた。まだ話は終わってないみたいでジャンヌが続きを喋りだす、
「あとですね、これはまだ、たしかな情報ではないんですが死んで神殿に行くと今ある寿命の0.1パーセントが減るらしいです」
「へえ、もう試したやついるんか?」
初めて聞く情報に俺達は驚きの声を上げる中、ダークが怪訝そうな顔で聞くとジャンヌは頷く、
「殺人ギルドはご存知だと思いますが、そこの一つが人体実験をしたらしいです」
「嘘やろ?そんな事許されるのか」
「情報によると、死にたい人を集めて実験したらしいですわ」
ジャンヌ・リーユが暗い顔をする中ダークの顔も曇る。死にたい人を集めるとはどういう事なんだろう、俺も少し吐き気がした。
「胸糞悪いのはたしかやな、名前はわかってるん?」
「ギルド名は【死髑髏死】ですわ」
PKギルドはたくさんあるが、初めて聞く名前だった。
「あまり聞いた事がないギルドやな」
「最近結成されたギルドらしいです。構成員は殆どは刑務所の中の死刑を言い渡された極悪人ばかりらしいです」
刑務所の情報を何処からか聞いた、ジャンヌが冷や汗をかきながら説明を続けた。
「刑務所って何かあったんですか?」
俺は不安そうに尋ねると、ジャンヌは顔を曇りながら話す。
「この世界になってから電子機器を使えなくなったのはご存知ですね、情報源は明かせませんが武器や兵器も使えなくなっていて大混乱だったみたいです」
「それで刑務所内は大暴動が起きたらしいですわ、止めに入った刑務官を倒して殆どの刑務所は今機能されていません、そしてその人達が作ったギルドがそのセカンドスカルですわ」
ジャンヌ・リーユは交代しながら話をした。そんな事が起こっていたなんて、ブルブルと体を震わす、絶対には会いたくない人達だなと思った。ティファは不思議そうに、
「そんな大きな出来事があったって事は、死者はすごいわよね?」
「いえ、ティファお姉さま実は死者は0人なんです」
リーユに言われてティファは驚いていたようだった。そこまで暴動が起こっているなら大惨事を俺も予想したが実は違うみたいだ。
「リーユの話でも出ましたが死者は0人です。そうなぜなら倒された人はその人が生まれた地域の神社や教会で体が復活したからです」
ゲーム時代のシステムが反映されているみたいなので、死者0人に納得がいった。
「じゃあ、その人達は全員が色々なPKギルドになったって事ですか?」
アランは恐怖にかられた顔で、白髪の美女に尋ねる。
「いえ、全員ではありませんが9割型は殺人ギルドに加担していますね」
「情報では、もしかすると犯罪ギルドも水クエストを受けてるかもしれないので、注意をするようにと言われていますわ」
リーユの注意にみんなの表情は強張る。
「では出発しましょう」
ジャンヌが号令をあげると、みんなはえいえいおーと言って歩き出した。北門から町を出ると同じグループが何組かいた。ダークが1組知っているギルドを発見する。
ダークが指差す方を見ると強い地響きと共に、全員太っている人が横並びに歩いていた。
「あれはたしか有名なギルドやね、たしか名前は【Active Debu】やな」
「ダークよく知ってるわね」
赤髪の小学生は昔を思い出すように喋ると、ティファは関心していた。
「俺、前入ってたギルドで会ったんやけど、狩の手伝いをして貰った事あるだけや」
「でも面白い名前ですわね」
日本名で訳すと動けるデブと読む面白い名前を付けるなあと思っていると、リーユも同じ事を思っていたのか口に出して話に混ざってきた。
「名前のとおり見た目太っている人しか入れんギルドなんよ、でもみんな熟練者だけあって動きがプロなんよな、それであんな名前にしたんやと思うどうやろな?」
「私も何回かお会いした事ありますが戦闘技術は素晴らしかったですね、兵法三十六計を元にした戦術を使うギルドですね」
ジャンヌは目を輝かせ熱く語っていた。見た目は太っている人が多かった、熟練者の冒険者らしく威圧感は凄くて侍の格好をみんなしており今から戦に行くような感じだった。
先頭の3人は太っている次元が違く、力士並みに体が大きく熱気が凄かった。始まりの町から北に行くと森林があり洞窟があった。
洞窟に着くと初めて見る物に母と弟は驚く、
「鍾乳洞みたいね」
「まあ、そんな感じかな俺は来るのは久しぶりだけど」
二人が感嘆な声を出していると俺は落ち着きながら言った。そうすると急に目の前にグループが現れ掴み合いの喧嘩が始まる。
「おい、こらてめえ等のせいでクエスト失敗しちまったじゃねえか、こっちは命かけながらやってんのにふざけんじゃねえよ」
「私達はこれでも初心者なんですよ、失敗する事もありますよ」
初心者さん8人と熟練者さん8人の喧嘩に遭遇してしまった。熟練者の男が殴ろうとした瞬間にジャンヌは走り出していた。
「そこまでです、落ち着いてください」
ものすごい早業で男の武器を手刀で殴りつけ装備を下に落とさせる、熟練冒険者は弾いた女を睨めつけている様子だった。
「外野はすっこんでろよ、痛い目見たくなかったらな」
仲間の冒険者も臨戦態勢に入るが、仲間の一人がジャンヌの制服をまじましと見て驚いたように言う。
「おい、もしやその制服はマザークレアじゃねえか」
「何い、あの日本でも5本の指に入ると言われる戦闘ギルドか?」
男は恐怖に引きつらせた顔をしたが怒りを抑えられずに、
「あんた等には悪いが俺達も言い分がある。今回の水クエストはボスを倒せば手に入るはずだったのに、こいつ等がボス部屋で全滅してしまって報酬がなしだよ」
「どういう事ですの?」
緑髪の女の子が詳しい話を聞きたいと尋ねると、
「今回のクエストは2PTで同時に入るのはわかっているだろう?だが報酬の部屋に行くのには、それぞれ入ったとこのボスを倒さないといけないんだ。俺達はすぐ倒したのにこいつ等は時間が掛かった挙句倒せなかった」
「そうだったんですね、ですが初心者さんに当たっても仕方がない事でしょう?」
熟練者冒険者はかなり気性が激しいらしく持っている武器を地面に叩きつける、ジャンヌは冷静になりながらも母のように熟練者組を諭す。
「そうだな、とりあえずはまた始まりの町でクエストを受けてもう1回挑戦してみるよ」
「あの、有難うございました。私達初心者で急ごしらえのPTだったんで、あたふたしてしまって……熟練者さん達が呼んでいるので私達いきます」
熟練者の男は頭を下げて初心者さんに謝っていた。初心者の女の子がジャンヌにお礼を言って始まりの町に帰っていった。
「一回失敗するとクエストキャンセルになってしまうのは痛いわね」
「そやな、まあでもやってみるしかないな」
ティファ・ダークが話している中、ティファの旦那さんがわからない感じに聞いてくる。
「質問があるんだけどティファさっき全滅したって聞いたけど、神殿で蘇るんじゃないの?」
「ああ、そうねそこのところの説明はまだだったわね、ユキちゃんお願いね」
急に俺に話を振られて、え?としか言わなかった。みんなが俺を見続けてくるので仕方なく説明をする事にした。
「フィールドでは死ぬと神殿で復活するんですが、ダンジョンだとまた違ってくるんです。なぜかはわかりませんが入り口近くにワープする事が多いです。でも今回は失敗するとクエスト自体がキャンセルになるものらしいので、注意をして進んで行きましょう」
「へえ、色々なシステムがあるのね」
母は感心したように言った中みんなも俺の説明を得心がいったように頷いていた。
「とりあえずは50以下の人達から出発をしましょう」
「わかりました、緊張しますが行ってきます」
ジャンヌが出発を促すと母が頷き、タンクなので緊張しながらも1PT目が出発をした。何分か経った頃に出発をする事になった。俺は待っている間にトラコに挨拶をしようと近づいた。
俺はトラコに近づき頭を下げる、
「師匠、お元気でしたか?」
「……元気」
俺が近づいていくと気づいたのか色素の薄い紫髪の子は俺を見つめる。トラコは俺の釣りの師匠だった、色々なところにも連れて行って貰えたし極意も色々教えて頂いた。
「そういや、ゆっきートラコと結構仲良かったもんな」
「どういうお知り合いですの?」
リーユは詳しい話を聞きたいのかダークに尋ねた。
「トラコは偶然レイドであってな、そこで意気投合をして今は俺の妹分や」
ダークは思い出した様に話すと懐かしいなと言っていた。レイドと言うのは、24人以上のPTで難しいダンジョンを攻略する時にいう言葉である。
「ゆっきーが始めて俺等のギルドに入ったときに調度おってな、色々教えてたみたいなんよ」
ダークが説明するとトラコはコクリコクリ頷いていた。そうあの頃はまだ全然初心者でやり方がわからずにあたふたしていたところを、トラコに付いて行きながら教えて貰った事を思い出す。
「トラコさんはわかりましたわ、でもその熊みたいな子はなんですの?」
「私はクマだクマ」
リーユは疑いの目を熊の気ぐるみを着た子に向けながら指差す、ハラコと呼ばれた少女が可愛くきゃぴきゃぴと言ってくる。
「実はな俺の前入ってたギルドに二人目頼みにいったんやけど、断られてな空から降ってきたのがハラコちゃんや」
「そうだクマ、空飛んでたら落ちたクマ」
「絶対嘘だな……」
ダークは驚いたように上を指差すと、俺・アラン・ティファ・ジャンヌ・リーユは内心で同じ事を思った。
「それは置いといて二人のご職業は何なんですか?一応私はさっき見てわかったように速さだけを極めた職業【クイックソード】という職業です」
「私もジャンヌと一緒で速さを特化した職業ですわ【トゥーウィピア】といいますの」
リーユは腰の2本を取り出して両手で構える。
「トラコはな【釣り師】やな」
「はい?どういう事ですの、それは採取職業ですよね?」
「驚くとは思うんやけど、トラコはなこれで戦うんよ、釣り針を上手く使ってな相手を切り刻んだり回復アイテムを遠い味方にサポートする事も出来る職業なんやで、俺も最初見たときは驚いたよ」
ダークは自慢気にトラコを褒めていた。初めて聞く戦闘職?に俺・アラン・リーユは信じられないという顔をした。
「それでサラコさんは何の職業なんでしょうか?」
ジャンヌは不思議そうに熊のきぐるみを着た女の子に目を移す。
「私は、【格闘熊】だよクマ」
サラコは飛び跳ねながら喋る。
「格闘熊ですの?始めて聞く職業なのですが戦えるんですの?」
リーユは疑問に思いながら首をかしげる、それもそのはずで柔らかそうな拳を空中でパンチをしているのだが可愛いとしか思えなかった。
「戦えるクマ、多分この中で一番強いのは私クマ」
「わかりました、そろそろ時間なので行きましょう」
本人が戦えると言っているので、それを信じて白髪の美女が号令をした。2PT目はアランさんを先頭に、ジャンヌ→サラコ→リーユ→ティファ→ユキ→トラコ→ダークの順番で進む事になった。
「暗いと思っていたのに明るいクマ」
「本当ですね、何で明るいんだろう」
「まあそれを考えるのは後にしましょう」
洞窟内は明かりが無かったのだがなぜか目視が出来る程明るかった。熊の女の子?が大きな声でわあと驚き、先頭にいる黒髪の青年が不思議そうに考えるとジャンヌが落ち着きながら言った。
「なんか出そうやな」
「……怖い」
「師匠大丈夫ですか?」
後列組の後ろでトラコが少し震えていた。ダークが慰めているところをみると本当に兄妹みたいだった。
「お姉様はいつ見ても綺麗ですね、色々なところを暗いところを理由に触りたいですわ」
「そんな事したらわかってるわね、拳骨だけじゃ済まさないわよ?」
中列組の前にいるリーユが手で怪しい動きをする。ティファが鎌を持ちニコニコ笑っている。
「おいおい、そんな婆の何処がいいねんクスクス」
洞窟内に拳骨の音が鳴り響く、
「……ダーク兄大丈夫?」
トラコは心配そうにダークを見るが涙目になっていた。そうこうしている内にモンスターの雄たけびが聞こえてきた。
「前にドラゴンがいます」
「待ち構えてるわね」
アランが小声で言うと金髪の美女とジャンヌが頷く、大きな龍が俺達を見据えて、そこに居座っていた。
「青いドラゴンですね」
「そやなたしか階級で言うと真ん中あたりやな」
青いドラゴンは俺達を待っていたのか臨戦態勢に入る。最初に俺が守護呪文をみんなにかけ終えると、アランが走り出しそれにみんなが続く戦闘開始である。
最初にアランが盾でドラゴンの前足を殴る。ドラゴンは痛いのかアランを睨みつけるそうすると前足を宙に浮かして踏み潰すように攻撃をしてくる。
大きい動作だったのか攻撃が当たる瞬間、アランはよけるがダメージ量が半端ないHPの半分は持ってかれた。回復呪文を唱える前にアランの方に回復アイテムが宙を浮きながら渡る。トラコが回復呪文が間に合わないのですぐに行動をする。
俺は少し安心をしながら一呼吸をすると周りの状況を確認しながらみんなにヒールを掛け続ける。 リーユ・ジャンヌ・ティファが同時に走り出すと、3人は高速で攻撃を与え続けていた。コンビネーションのように3人はダメージを稼いでいくさすが元仲間である。
赤髪の小学生は魔法を当ててドラゴンを出血や毒状態にしていた。ハラコちゃんは地味に後ろ足をペタンペタン攻撃している。
痛いのかドラゴンは雄たけびを上げ空へ飛び上がる、この場合は近接は攻撃出来ないので遠距離タイプの護衛をしながら戦った。
ドラゴンは1分間しか空が飛べないので時間が立てば降りてくるのだが、急に喉が膨らむと火炎弾を吐いてきた。ダメージは大きく少し立て直すのに時間が掛かった。
「まったく空に飛ばれると俺達近接は何も役に立ちませんね」
ジャンヌは歯軋りをして悔しがるが、降りてきた時のためにすぐに臨戦態勢を取れるようにする、
ドラゴンが火炎弾をまた履く瞬間、空から何かが降ってくる。さっきまで姿をみせなかったハラコが降ってきたと思ったら、右手の拳を握り締めると頭に重い一撃を放った。
「【べあーすとらいく】だクマ」
「本当に空から降ってきましたね」
アランはそれを見て驚いていた。他4人も驚きのあまり開いた口がふさがらなかった。攻撃が当たったドラゴンは体勢を崩し背中から落ちてくる。
立ち上がるとドラゴンの羽はボロボロになっており飛べなくなっていた、ドラゴンは怒ったのかものすごく暴れていた。
暴れていて近づけない中でトラコが釣竿を大きく振ると、釣り針がドラゴンの右目を切り裂く、
ドラゴンは右目潰されたのか怒ったのか、羽をボロボロにして怒ったのかわからなかったが、明らかに様子がおかしくなっていた。前と同じ用に左目から血が流れ出し体の周りには赤いオーラみたいな物が纏わりつくとものすごい声で鳴き叫んだ。
「おいおい、これはまさかあの時のか」
「知っているんですの?」
「3日前マスターと狩に行った時追い詰めたモンスターと同じ現象があのドラゴンにも起こっているんです」
黒蛇人の事を4人は思い出し、小学生の子と黒髪の青年はその現象に少しこわばる。
「その時は何が起こったクマ?」
「あの時はたしか敵の全部のステータスが一気に上がった感じでしたよね?」
「そうねあとまだ確認してないけど、あれより先のパワーアップがあるわ」
ハラコは落ち着きながら聞くと、俺・ティファは詳しく説明をしてあげた。
「……来る」
説明終えるとドラゴンが突っ込みながら突進をしてくる中トラコが呟く。大きく口を開けてアランの盾を噛み付きながら攻撃を加えていた。
「面白くなってきましたね」
ジャンヌは目を輝かせ走り出し、ドラゴンに向かって何回も攻撃をしていた。意外とHPが高く中々モンスターが倒れない。そうこうしている内に赤いオーラは少しずつだが黒くなっていく。
「何かやばそうね、それにしても決定打がないわね、ダークは洞窟内だと役に立たないし」
「しょうがないやろ、俺の技は室内用の技じゃねえもん」
ダークのフレアやトースサンダーは万能の技ではなかった。洞窟内や狭いとこで使うとこっちにも被害が来てしまうので、洞窟内では状態異常を頼りに戦って貰うしか出来ないのだ。白髪の美女は笑いながら戦いを楽しんでいた。
「ジャンヌさんってもしかして戦い好きですか?」
「ええ、ジャンヌはうちの現エースですからね、ですが戦い始めると我を忘れてしまう事があるんですわ、今回はティファお姉様がいますから大丈夫でしょう」
「ジャンヌそろそろ止めときなさい」
ティファは白髪の女の子を凄みで睨むと、あれほど暴れていたジャンヌは攻撃を止めて深呼吸をしながらティファの近くに戻ってきた。
ティファが的確な指示をどんどんしていく、そうするとみんなは頷きあって最初に金髪の美女が歌いだすとジャンヌ・リーユが前足を攻撃する。アイオーンソングでもっと速度が速くなるドラゴンが傾くと空からサラコが頭を殴りつける。
そうするとドラゴンの体勢は前のめりに崩れていき無防備な姿を見せた。
「みんないくわよ」
ティファの号令にみんなの最高の攻撃を無防備なドラゴンに与え続けていく、そうするとドラゴンは倒れそうになるも踏ん張る。
「硬いわね」
「硬いクマ」
「そうですわね」
「そうですね」
前衛4人は苦戦をしていた。タンクのアランや後衛の俺たち3人も少し疲労していたが、釣り師の女の子が動きだすと釣竿をぶんぶん振り回す。そうすると釣り針の先端がドラゴンの口に入っていき、爆発した。
「……釣竿秘技B」
変な技の名前にも驚いたが、その技が決定打になりドラゴンは煙を吐きながら倒れていく。
「ちょっと今の技はなんですの?」
「釣り師すごいですね」
ジャンヌは目を輝かせながらトラコを褒めていたが、恥ずかしいのかすぐにダークの後ろに隠れる。
「まあこれはこいつにしか出来んからあまり見ないかもな」
「まあそれは置いときましょう、まずは剥ぎ取りをしましょう」
まだ口から煙が出ている指差しながらアランは疲れたのか早く休みたい風に言った。
「一番最後に倒したのはトラコさんなのでお願いします」
ジャンヌは言うと小さい女の子はふるふる首を横に振りながら、ダークの近くに行く、
「トラコは美味しいとこはもっていくんやけど剥ぎ取りはしないんよ、ゆっきーお願いしてもいいか?」
「わかりました」
俺は槍をドラゴンに突き立て切り取っていく、ドラゴンの肉9・青い大きい翼2・青龍の左目1取得する事が出来た。他のモンスターのようにあまり血は出なかったのであまり汚れてはいなかった。
「アランさんも疲れていますので、そろそろ休みませんか?」
「はぁ、あのボロテントで寝る事を考えると溜息しか出ませんわ」
「仕方ないですよ、うちは殆ど脳筋ばかりですからね」
リーユは溜息を付きながらボロテントで寝る事を嫌がっている様だった。白髪の美女はそれを聞き苦笑している。
「その問題は大丈夫よ、うちのユキちゃんがテントのLVが最高値だからかなり綺麗なテントよ」
「えー、よく上げる気になりましたね、もうそれは趣味のLVだったので私無視しましたよ」
「最高にするにしても莫大なお金が必要なはずですが、それはどうしましたの?」
「俺のメイン職業は採掘なので1日12時間くらい掘ってたらすぐに溜まりましたよ?」
俺のプレイに二人はものすごく驚いているようだった。戦闘特化さんの人は採取が苦手な人が多く2時間掘ると疲れるのが特徴だった。緑髪の子は俺を驚いた顔で見る。
「もうそこまで行ったら廃人と呼んでもいいくらいですわね」
「いやー、俺なんかまだまだですよ師匠なんて釣りで20時間釣ってるときもありましたよね」
俺はトラコを指差すとこくりと頷く、
「トラコとゆっきーはまったり勢やからな、それくらいは当たり前やろ」
ダークは自身ありげに言う、テントを広げみんなが入る。
「うわー綺麗ですね、ユキさんうちのギルドに来ませんか?」
「お願いしますわ、ユキお姉様」
二人の女子にお願いされて俺が困っているとダークが止めに入る、二人はぶーぶー言いながらも綺麗な部屋に満足しているみたいだった。なぜかリーユは俺の事をお姉様と呼び方を変えているみたいだったなぜだろう。
「広いクマ」
「……さすがえらい」
熊の気ぐるみの子はぴょんぴょんベットを跳ね回り、トラコは俺の頭をなでなでしながら言った。
「ドラム缶風呂は4人なので、分けながら入りましょう」
「じゃあユキお姉様とティファお姉様とジャンヌで入りましょう」
リーユがニタニタ笑いながらうっとりしながら提案をしてきた。
「ユキちゃんでもいいんだけど、アランちゃん疲れているでしょう一緒に来なさい」
「俺はいいですよ、ダークさんと師匠と入りたかったのでお先にどうぞです」
俺はお先にどうぞと手でジェスチャーすると、リーユはぶつぶつ言いながら金髪の美女に鎖で連れて行かれる。そうこうしている内に30分くらいが過ぎ上がって来ると俺たちが入る事になった。
「おー仲間クマ、気ぐるみ好きなクマか?」
「恥ずかしいのもあるんですが、どっちかというと好きな方です」
俺は入る時に気ぐるみに着替えるハラコと俺はお互いを見つめ合い奇妙な邂逅だったように、二人は手を取り握手をしていた。そう同士に会えた気持ちだった。
「そういえば思ったんですが小人4人いるので一人が抱っこして入ればいけたんじゃないですか?」
「まあいいやろ、やっぱりお風呂は一人で入るのが気持ちいいしな」
「そうだクマ」
師匠もこくりこくり頷くと、今日の疲れを落とし夜ご飯にする事にした。今日の晩御飯は、ドラゴンのステーキ・マッシュポテトを8個ずつダークがすぐに作る。じゃがいもは保存食用に持ってきてた、ジャンヌ達のを少し分けて貰い作る事が出来た。
「美味しいですね今日はじゃがいも1個で終わらせようとしてたので、疲れた体に染み込みます」
「そうですわね、認めたくはないんですが美味しいですわ」
「美味しいクマ」
ダークの料理を初めて食べる3人は交互に感嘆の言葉を述べる。
「地味に安定しているギルドですよね幸運の犬」
「そうね」
ジャンヌが言うと思い出したように魚人族の美女が笑い出す、みんなはご飯を食べてふかふかのベットでその日は就寝をした。