7日目 アイテム補給と水不足
ぐっすり寝ていると急に尿意に襲われた。鞄の中の簡易トイレキットを取り出そうとして鞄を逆さまにするが、1個も出てこない。そういえば冒険で全て使い切っていたんだった。
ものすごく焦る。我慢をしながら母の部屋に行き叩き起こして土下座をして、少し分けてもらうことにした。その場はそれでなんとかなったのだがすぐに補充しないといけないなと思いすぐにダーク・アランに連絡を取り一緒に買い物に行かないかと誘う。ダーク・アランは快く了承をしてくれた、3人で買い物に行く事が決まり、寝巻きから着替えて町の入り口に着くとアラン・ダークがもう着いていた。
「すみません、遅くなりました」
「大丈夫やで、俺等も今来たところや、それで何買うんや?」
俺が最初に誘ったのに2人より遅く着くなんて、恥ずかしすぎた。息を切らしながら二人が待っているとこにいき頭を下げ謝った。
「実はですね簡易トイレキット切らしてしまって、もしもの時のために多めに買っておこうかなと思いまして」
「あー、私も切れていたので調度欲しかったんですよ」
「大変やな俺はそこらへんでも出来るけど、二人出来ないんやもんなクスクス」
俺は頬を染めながら恥ずかしく言うと、アランもあーと思い出したように大声を上げて忘れていた事に気づいたみたいだった。そんな二人の深刻なトイレ事情にダークは吹き出していた。
「じゃあ、まずは市場からやな、せっかくやしどんな物売ってるかとか情報収集したいな」
「ダークさんありがとうです」
ダークは辺りを見回しながら言った。市場を歩くとやっぱり人が多いせいか町の周りで取れる素材や肉はかなり安かった。1個9ギルのもあれば55ギルのものもあった。
市場というのは冒険者がやっている店で、LVがある程度上がると自分で値段を決められる露天というシステムを始められるようになる。
色々店を見ながら最初アイテムを買った店に行くとやはり人が多くて並んでいるみたいだった。最後尾から待つ事40分店主に話しかけて買おうとすると値段に驚く、簡易トイレキットが60ギルに値上がっていた。
「すみません。トイレキット60ギルなんですが」
「そりゃそうだよ、それはかなり売れてるからね在庫もあまり無くなってきてるんだよ」
俺は慌てた様にNPC商人に食ってかかる、NPCなのに在庫とか関係なしにあるだろうと思うが、忘れていた事に今更ながら気づく、まさかこんな事が起こるなんてNPC人も本当に意思を持っているし店には在庫があるのだ。
「他のNPC人も見たり思った事なんやけど、やっぱりゲーム時代と少し違うらしいよ」
色々な店を見てきたダークが俺の側に近づいて店主に聞こえないような静かな声で耳打ちをする。
「どうするね?」
「とりあえず12個下さい」
店主は中々答えを出さない俺にイライラをしているみたいだった。俺は仕方なく720ギルを払い鞄に品物を入れた。水も切れそうだったので買っておこうと思ってた計画が全て瓦解する。
「水どうにかしないといけないですね」
「そうですね現実世界もまだ水出ないみたいなので、このままだとかなりきついですね」
アランも水を買おうと思っていたらしく簡易トイレキットの値上がりはかなりの痛手になっているみたいだった。日差しが俺等を虐めるようにジリジリ攻めて汗がたくさん頬から下に流れ落ちていた。頭を抱えながらも暗い表情をしていると、ダークが口を開いた。
「実はな、さっき聞いた話なんやけど水クエストってあるみたいなんよね」
「本当ですか?ダークさんすぐ受けましょう」
水クエストと聞いて俺は興奮したように、その情報を聞いてくれたダークの両手を握りながら話しかける。簡単なクエストだったりもう水の心配もしなくて済む、でもその提案をしていたダークは困った顔をしていた。
「でもな問題があってな人数制限があるみたい」
「え?何人ですか?」
人数制限があるのか頼むから4人にしてくれと神様に頼む様に目を瞑りながら両手を合わせる。
「16人専用クエストみたいやな家族も呼ぶとすると、俺1でティファは2だとするとアラ坊とゆっきーは家族全員呼べるか?」
「すみません。うちは父だけしか参加できません」
「俺の家は全員大丈夫ですが圧倒的に足らないですね」
赤髪黒目の小学生は一応人数確認をするが全くというほど人数が足りていなかった。ダークは手を使ってす計算しているみたいだった。
「それで9人かあと7人かうーん」
「それなら私のお友達ご紹介しようかしら?」
完全にお手上げの状態だった。3人はそれでも水が欲しいのか頭を抱えて悩んでいると聞きなれた声がふと聞こえる。ティファがひょこっと目の前に現れる。
「何でお前ここにいるんや」
「旦那と来てたんだけど水クエストの事をお友達に聞いたのよ、それでね旦那には帰ってもらったのよ、前のギルドのお誘いがあってね一緒に行かないかって誘われているのだけどみんなどうかしらね?」
「行きます」
旦那さん見たことないから紹介して欲しかったなと思う反面こんなチャンスが恵んでくるなんて俺はものすごく嬉しかった。水クエストを受けれるのが嬉しいのか3人はグーで喜びを分かち合う。お友達の話をもっと詳しく聞きたい俺はティファに尋ねてみた。
「お友達は何処のギルドなんですか?」
「MotherKureaよ」
「あの有名な大規模戦闘ギルドですか?」
戦闘ギルドでは有名なギルドだった。日本サーバー戦闘5大ギルドの一つで女性キャクラーしかいないと言われるところだった。ティファはさりげなく答える横で俺とアランはものすごく驚いていた。
「お前よくそんなとこに友達なんかいたな」
「私前はそこに所属してたのよね、そのころの付き合いのお友達ってわけ」
でも何でそんな有名なところを抜けてしまったんだろう理由は聞けない横で小学生の子はふーんと言った。
「それでね指揮を取る人と話し合いする事になったんだけどみんなこれから時間はある?」
俺・アラン・ダークはお互いの顔を見ると、ティファの方を見て大きく頷きあった。指定された酒場で待ってる事にした。
中に入ると暑すぎた外と違って中はひんやりしていて気持ちがよかった、座りながら何分か立つと白髪の美女剣士と緑髪の小さい女の子が酒場のドアから入ってくるとこちらに近づいてきた。
「来たみたいね」
「おー白髪美女やんけ、なーなー後で俺に紹介してくれよ」
あまりにも整っている美女にお近づきになりたいのかダークは耳打ちをするとティファがメニュー画面の時間を確認しながら小さく頷きながら呆れた顔でダークの耳元に小声で言った。
「いいけど彼女中身男よ、それでもいいならいいけど?」
「あ、……やっぱりいいです」
中身が男と知った瞬間ダークの黒い目から生気が抜けた感じだった珍しく敬語で断る、
「お久しぶりです。ティファさん」
「お姉様会いたかったですわ」
二人はティファに会えて嬉しいのか抱きしめ合いながら挨拶すると小さい方が俺達を舐め回すよう見てくる。
「御姉さま一人だと思っていたのにメンバーさんも呼んでしまったんですか?」
緑髪の女の子がしかめっ面で聞くとダークに目線を合わせて激しい憎しみの目で睨みつけている。
「私が今いるところのメンバーを紹介しておきたかったのよ、せっかくだから貴方達から紹介してあげて」
両手を合わせてティファが頼むと、白髪の美女から自己紹介をしてきた。
「それなら俺からご紹介させて頂きますねマザークレア副マスターのジャンヌ・オルレアンです」
白髪の女の人が紹介をしたので仕方ないと手を振りながらも緑髪の女の子が自己紹介をする、
「私は同ギルドメンバーのリーユ・デヴリーズです」
赤髪の男の子を睨みつけたまま機嫌が悪そうに挨拶をする。
「じゃあ水クエストのお話始めましょうか」
自己紹介が終わり二人が席をつくと沈黙が続く俺は待てないのか話を切り出すがあれほど睨んでいたリーユが涙を流しながら言ってきた。
「少し待って欲しいですわ、実は水クエストの件は会う口実だったんですわ、ティファお姉様またうちに戻ってきて欲しいんです」
手で顔を覆いながら涙を流し緑髪の女の子がティファに訴えかける。
「ちょっと待って下さい。ティファさんはうちには必要な存在なんですよ勝手に連れていかれては困ります」
アランは席を立ち慌てた様に渡さないぞと手でティファを守る様にする。
「実はですねマスターが一人だけで夜逃げをしてしまい今大混乱の中なのです。俺達も纏めようとしたんですが中々話を聞いてくれなくてギルド崩壊の危機なんです」
両手をテーブルにつき深刻そうな顔でジャンヌは喋りだす、今更ティファが戻ればなんとかなると思っているのか不思議に思って尋ねてみる、
「なぜティファさんが行けば解決するんですか?」
「ティファ御姉さまはうちのエースでマザークレアの聖女と呼ばれていたトッププレイヤーだったんです」
リーユは顔をぐちゃぐちゃになりながらも一生懸命涙声で呟く、
「えー」
初めて聞いた事に俺とアランは驚く、ダークはそこらへんの事情がわかっているのかあまり驚いていない。
「それなのにそこにいる、ちゃらんぽらんのせいで御姉さまが変わってしまったんです。急にギルドを抜け出してその人とギルドを作ると言った時は殺す程憎みましたわ」
「リーユ話が脱線してますよ、それに落ち着きなさい」
涙目になりながらもダークを指差し睨みつけながら文句を言うがジャンヌがリーユをなだめる。
「ごめんなさいね私は戻る気はないわ、もしアランちゃんとユキちゃんが一緒に着いてきてくれるなら考えてもいいけど」
「おい俺の名前入ってないやんけ」
ティファは俺とアランの真ん中に来て手を取るとジャンヌに提案をする。横で小学生の子はふてくされたように言う、
「メンバーさんに空きがあるのでそこのとこは大丈夫です」
無理だとわかっていながら白髪の美女が提案をするが俺の心は決まっていた。ダークやこの幸運の犬ギルドが好きだった。それをジャンヌにやんわり断るように言う、
「すみません俺はお断りします。元々まったりするために入ったとこなのにそれに大規模ギルドは俺には合ってないです」
「ちょい待ち、だからそこは違うやろ俺が好きやからでいいやん」
「私もユキさんと殆ど同じですね」
俺が意見を言うとアランも同調しているみたいだった。二人で頭を下げる、ダークは自分の名前が入ってないのに不満がありそうだったが俺の気持ちが伝わったのかニコニコしていた。
「少しの間だけでいいんですわ、私もギルドを無くしたくなくて頑張っているんですの」
涙を流されて懇願された、ギルドのところで俺も同じ気持ちな分、ちくりと胸が痛くなった。やっぱり涙を見てて気分はいいものではない少しの間だったらと承諾しそうになったときに、
「ちょい待てや、おいこらそこのチビそろそろ嘘泣きやめとけよ」
「あらわかっていましたの貴方も人が悪いですわね」
ダークが言うとさっきまであんなに涙目で見てられなかった顔が普通の顔に戻ったときに女って怖い生き物なんだなと思った。
「ゆっきー今危なかったやろ」
「危なかったですね、あれもしかして俺だけですか」
「そうね私もアランちゃんも女の子だし、そこんとこはわかっているつもりよ」
「ユキさん気づいていると思っていました、すみません」
ダークは昔から感が鋭かった事もあり、気づいたんだろうアラン・ティファはリアル女性だから気づいている感じだった。やべえ危なかったわと胸をなでおろした。
「残念ですわせっかく可愛い女の子一人ゲットできるチャンスでしたのに」
俺を舌なめずりしながら見てきた、背中がぞわぞわした。
「そろそろ止めときなさい仕方ないですね水クエストの話をしましょう」
「はーいお母さん」
ジャンヌが言うとリーユは手を上げながら言った。お母さん?不思議なあだ名に首を傾げる、
「こっち9人なんやけど7人出してほしいんよね」
「7人ですね、わかりました報酬の分け合いは6対4でいいですか?」
「そうねLVもそちらが高いし4だけ貰えるだけでも嬉しいわ」
今こちらを出せるメンバーを伝えると白髪の美女は報酬の話に切り替えるその提案にティファが笑顔で頷いていた。
「明日の9時に北門で待ち合わせでいいでしょうか?」
「了解や、とりあえず交渉成立やな」
ジャンヌはしゃがみながら小学生の子に合わせると二人はがしっと握手をした。
「そういえば名前を聞いていませんでしたね、よければ教えて欲しいのですが」
「俺かダーク・メテオや、よろしくな」
「俺はユキ・マネキイヌです」
「私はアラン・センベイといいます」
ジャンヌがうっかりしてたといい名前を聞いてきたので3人はそれぞれ自己紹介をしてジャンヌと握手を交わした。
「それではダークさん皆さん明日頑張りましょう」
ジャンヌとリーユは手を振って帰っていった。時間も暗くなりその日はすぐに解散になり家に帰り家族の了承を取って就寝する。