4日目 仲間との腕鳴らし 上
ゆっくり気持ちよく寝ていると急に大きな声で起こされてしまった。
「ゆっきーいねえのか」
あまり大きな声で一瞬体がびくりとし、心臓が破裂しそうにドキドキしている。眠い体を起こし声の主に、返信しようとメニュー画面を開く。
「ダークさんおはようございます何かありましたか?」
半分寝ながらも頑張って声を出す。
「いやーさすがに暇でさ昨日は飼っている犬の世話で終わったんだけどさ今日こそはみんなで狩にいきたいなあと思ってな、一回始まりの町に集合してからそれから今日の事色々話し合おうぜ」
ラッキーのお世話で暇をもてあましている感じだった、犬の名前はラッキーでギルドの名前はそれから来ているらしい。
眠いながらも体を起こし顔をお風呂の水で、洗ってご飯を食べる。身だしなみを整えて、ワープで始まりの町に行くとアランとティファはもうすでに着いていた。
「おはようです。ティファさんアランさん早いですね」
「おっはーユキちゃん眠たそうね」
「おはようございます」
半分眠いのか中々声が言葉にならないが、お腹に力を入れて声を出す。挨拶をしたらティファとアランが右手をあげておはようと返してきた、アランは前と会った時の黒い重たそうな鎧を装備していた。
モデル体系の金髪美女は布製のチャイナ服の黒い感じの装備をしていた。前は寝巻きで見えなかったがこの服だと足と腕が露出しているために、魚の鱗みたいなものが見える。ティファの種族はフィンス「魚人」族という足の生えた人魚に近かった。
人間とは変わらないが鱗とエラがあるのが特徴の一つで、エラはわき腹あたりにあることが多く服を着ていると殆ど見えない。
「すまんのう遅れた」
集合時間を何分か過ぎ赤髪の小学生は息を切らしながら集合場所に着くと挨拶しながら喋る、
「ダーク遅いじゃない呼びつけた本人が遅れるってどういう事なの」
ダークも前に会った時の紫色のローブを着ている。遅れた事に腹を立ててるのか魚人族の美女は文句を言う。
「まあしょうがないやろ」
「呼びつけたって事は何か用があったんですか?」
ダークは両手で謝る中、黒髪の青年は何で呼ばれたのか聞こうとしていた。
「お金もないし狩にいこうかなと思ってなみんなはどうや?」
赤髪小学生の子に提案をされるとみんな考えたがすぐに頷き会って賛成をする事にした。
「何処にいきましょうかね?」
「そやな肩慣らとかもしたいしな、スキルの確認もしたいんよね、スネーク族の集落あたりどうやろね」
俺が赤髪の子に尋ねると、うずうず体を動かすようにダークが言った。
「いいわね50LVくらいの敵だし丁度いいんじゃないかしら」
「そやな俺らLVは80以上やし調度いいやろ」
「そうですね」
ダーク・ティファ・アラン・ユキは戦い赴くべく、武器をカチンと、あわせ頷きあう。
「じゃあそういうことだと始まりの町から南南西に進みながらスネーク族の集落を見つけたほうがいいですね」
俺が明確な方角を示した、やみくもに探しても見つかるものも見つからないスネーク族には習性があった、なぜかわからないが町の南南西に集落を築く事が多く攻略サイトにも書いてある情報なので信用は出来ると思う。
このゲームのいいところはモンスターのいる場所が毎回変わる事だ、変わる事によってリアル感をもたせて飽きさせないようにするのが面白かった。
だが気がかりな事もある今はゲームの世界ではない事、ここが現実世界である事で情報もゲーム時代のものであり確かな情報ではない。
「まだ何の情報もないものね。ユキちゃんの提案に賛成だけどアランちゃんとダークはどうなの?」
「私はマスターに従いますよ」
「よしそれでいこっか」
おさえた静かな声でティファが言うと、3人は交互に頷きあう。
話し合いが終わると持ち物の確認と装備の確認をして出発した、南門から出ると夏風だったが少し冷たく気持ちがよく日差しもあまり強くなく心地良い暖かさだった。深呼吸をすると空気が澄んでいて美味しかった。
「つーかあれやな本当に現実の世界と同じように風が吹いて日照りがあるんやなー」
「そうねゲーム時代の時は画面越しで何も気にせず素通りだったけど自然は現実世界よりは綺麗ねー」
「そうですね私も感動してしまいました」
どうやら俺だけじゃなくみんなも、自然を感じているみたいだった。ダークは興奮が抑えられないのかぴょんぴょんと小さい体でジャンプをしている。
「やっぱり俺達と同じように狩に行くグループは何組かいますね」
周りを見ると武装したPTが何組か出て行く、赤髪の男の子は俺をまじましと見てくるどうしたんだろうと思っているとダークが喋りだす、
「そうやなでもあれやなゆっきーその声と容姿で喋ると俺っ娘みたいやなー」
「ぎくり...せっかく忘れていたのに思い出させないで下さいよ」
変化している事をふいに言われたせいで体がびくっとしてしまった、ダークはそれを見ながらニヤニヤしていた。
「そういやアラ坊は超無口になったなー、まだ体には慣れてないんか?」
「私ですか、そんなすぐには慣れないですよ、でも朝起きたらお手入れしなくてもよくなったので時間も掛からずのんびりできるようになったのはいいことですね、とりあえずは元の姿に戻るまでは気にしないことにしました」
ダークは黒髪の青年が喋ってない事に気づいて同じ質問をするとアランは、愛想笑いをしながらも嫌な話題だったのか顔をピクピクとひきつらせている。
「そやなーそれが一番やな」
「たしか超レアアイテムの一つで容姿を変えれるアイテムがあったはずよね」
ダークはアランの顔を見てまずいと思ったのか少し言動を抑える、ティファがそんな小学生を見て助け舟を出す、
「あったな、たしか伝説級のアイテムやから手に入ってもアラ坊かゆっきーがいるからじゃんけんで決めてもらうしかないなあ」
「まあその時はアランさんが先でいいですよ」
ダークは俺とアランを指差しながら考えている風に言った、俺には迷いはなかった今の状況はそんなに悪い感じでもないのですぐにアランに譲る旨を伝える。
「ゆっきー……もしや気に入ったんかその体?」
「気に、気にいるわけないじゃないでひゅか」
綺麗な黒の瞳で俺をジト目で見つめてくるので、俺は動揺して、あたふたしてしまう。
「ユキちゃん可愛いわねえ、語尾が動揺しているわよ」
「その時は有難く使わせて頂きます」
ティファは微笑みながらこちらを見てくる黒髪の青年は何の事かわかってなく譲ってもらった事に有難い表情をしていた。
「あ、前にモンスターですよ。とりあえず行きましょう」
「有耶無耶にされた……」
二人に何か見抜かれている事に何か恥ずかしい、今すぐにこの状況を変えたいと思ったら、急に闘牛みたいなモンスターが目の前に現れた。
ナイスタイミングで現れたモンスターに感謝をした、これで話題を変えるしかないと思って走り出すようにその場を逃げ出すと、ティファとダークが声を揃えて小声で呟く。
ダークは久しぶりのお肉に興奮をしていたLVの低いオックス2匹を指差しながら今日は何作ろうかなと涎を出している。
「おー今日の食料発見や」
オックスは闘牛みたいなタックルばっかりしてくる最初に出てくる、敵だこっちに気づいたみたいで突進をしてくると同時にアランも走り出す。
「ライトシールド」
叫びながら左手で防御をしながら、オックスに突進していく目の前に行くと左盾を上に持ち上げながら盾が光に包まれる。そうするとオックス2体は光が眩しかったのか怒った様に目を血ばらせてアランに突進していった。
アランの職業は【シールドブレード】右手に剣を持ちながら左手の盾で防御をする一番安定しているタンクである
アランやみんなの周りに光の透明な盾が包んでいく、俺が守りの呪文を唱えみんなに守護の呪文を唱える、【ガーディアンプロテクト】味方対象者に防御+魔法防御を上げる効果の一つである。
俺が呪文を唱え終わると後ろから歌が聞こえてくる。金髪の美女は口ずさむように右手で鎌を回していた。ティファのスキルで【シルエットソング】味方のタンクさん以外の敵視を抑え相手を油断させてクリティカル率を上げる歌でPTメンバーを敵の視線から少しぼかしてくれる。
ティファの職業は【スィクルバード】歌いながらPTメンバーを支援し鎖鎌と分銅で攻撃する中近距離タイプのアタッカーである。
オックス2体に紫色みたいな氷が横からぶつかってくる。あれはダークの技【ポイズンブリザード】効果は氷属性の範囲攻撃+毒が付与されている技である
ダークの職業は【ポイズンエレメンター】状態異常で弱らせつつ高火力で敵を殲滅する事が出来る遠距離タイプの超攻撃型職業で人気職である。
「よっしゃー、きまったでーざまあみさらせ」
技が決まると喜びを体全身で感じるように、ダークはジャンプをしながら嬉しそうに言った。
俺とティファが同時に動く、【鎌斬り】→【二段突き】で交互に2匹いる内の1体に集中砲火をする、そうするとその1匹は断末魔を上げ倒れていき塵となって消えた。
「とりあえず残り1体ですね頑張りましょう」
アランがもう1体の攻撃を受けながら叫ぶと3人はおーと気合を入れた。
アランは敵視の安定をするために【ブレード斬り】→シャインブレード斬りを残り一体に技を叩き込むと、オックスは怒ったのかどんどん目が赤く充血をする、
「ここは俺が一発で決めたる【フレア】で燃え尽きろ」
全魔力を込めた最強魔法の一つ決め台詞を決めるとダークの杖からものすごい大きな炎が出たのか俺も当たるなと思った瞬間オックスは気づいたように避けた。
「ががーん」
「もらうわね」
ティファが左手で思いっきり鎖鎌に付いていた分銅を投げる【分銅投げ】である、分銅はダークの頬あたりを横切り牛の頭に当たると鈍い音と共にオックスが重い体を震わせながら倒れていった。
「おいこら俺が決めようとしてたのに、何で最後の美味しいとこだけもってくんや」
小学生の子は地団駄を踏み悔やしそうだ。ティファは鼻歌をしながら無視していた。
「あれおかしいですね、なぜかこの倒したモンスターは塵になって消えませんねバグですかね?」
「いやバグはおかしいやろ今はこれが現実だとすると、もしかすると剥ぎ取るのかもな」
なぜかはわからないがモンスターの死体が残っていた、アランが不思議そうに言うとダークが何かを閃いたように言った、どうやら共有世界になってから素材の取得条件が変わったみたいだ。
「俺解体するにしても何処の部分切るかとかわかりませんよ」
「私もそんな知識は持ってないわよ」
「よっしゃ俺がやってやるマスターやし4人の中で調理スキル高いの俺だけやしな」
初めての事に動揺した3人は首を振り、ダークは鞄から包丁を取り出すと、やる気まんまんに空中で包丁を振り回す。
「そうねプロがいるんだしお願いしたほうがよさそうね」
「マスターお願いします」
俺達はお願いすると少し離れた。もし本当に解体をするなら血が飛び出るはずである血だらけになるのは嫌だった、ダークは包丁を握り締め切り始めたのだ。
リアルに切ったところから血が吹き出し、ダークに掛かっていく切り落としたとこから素材アイテムに変わっていった
【オックスの腿肉】×6、【オックスの胸肉】×4、【オックスの角】×1と160ギルが手に入れたところでオックスが塵になって消えたのだ。
「ふう~。とりあえず終わったで何でみんな離れてるんや」
ダークは全身血だらけになっており、血生くさかったのだ。
「仕方ないやろここまで血が出るとは思ってなかったしな、とりあえずここで休もうか」
「マスター何か小さいのも相まってプチトマトみたいですね」
ダークが肩を落としていたらアランが止めの一撃を言い放った。ダークは激怒しながらアランを追いかけまわした。
「ユキちゃんそういえば、テント私達の中で一番LV高かったはずよね?」
二人の様子をニヤニヤ見ているとティファが俺に近づき耳元に話しかけてくる。
「ぎくり何で知っているんですか」
「お姉さんの情報網を侮らない事ね」
みんなには秘密にしてたのに、ティファの妖艶の笑みを見た瞬間、身構える程に背筋が寒くなったティファが怖い。仕方がないので川辺にテントを開く事にした。
【テントシステム】とは冒険やダンジョンに入ってる時にしか使えない消えないアイテムの一つで、最初はボロテントからスタートする。
LVを上げる事によりテントが豪華になっていく、そう俺のテントは実装最高LVの30なのだロッジテントといって名前が変わっていた。
中に入るとロッジのような広さとベットが4つ×2の8人が寝れる部屋になっていた、ベットは2段になっており外にはドラム缶風呂が用意されているのだ。
「綺麗だし中広いですね初めて見ました」
「マジか俺も見ようかな」
アランが中に入り感嘆な声を出していると、ダークもプチトマトの妖精になりながら近づいてきた。
「ダークはお風呂が先でしょ、というかその臭い状態で入ってきたら……」
「わかってるやん」
入ろうとしたプチトマトの妖精をティファが冷たい目で睨む、
「せっかくなので俺も行きますよ」
「みんな入るなら私も入っておこうかな」
「そうね今日は疲れたし丁度いいかもね」
みんなは装備を水着装備に切り替える。ダークはトランクスみたいな紫色の海パン、アランはダイビング用ティファは白ビキニで脇腹から魚のヒレが見えていた俺は昨日家族で入ったままの着ぐるみだった。
「ユキちゃんせっかく女の姿なのに勿体無いわね、戦闘の時は女の子の服着て戦っているじゃない」
「いや本当はまだ慣れないんですよ」
ティファはため息をつきながら俺に言ってくると、着ぐるみの手で恥ずかしさを表現する。
「アランちゃんはかっこいいわね」
「海パンだと恥ずかしいのでこっちを選んでみました」
アランはピチピチのダイビングスーツを着て、もじもじしてる感じだった。
「ティファは今はその姿だけでいいけど実際はあかんやろう、なんやねん白ビキニってクスクス」
「チビスケに言われたくないわね、いつも紫の服なのに海パンも紫の方がおかしいとおもうわ」
いつものように二人の喧嘩が始まった、3人は入ると極楽といいながら顔を緩めている。結構歩いて戦闘をしたせいか体は疲れていた、温かいお湯が体に染み渡りリラックスしていた。
ダークは最初に上がって料理の用意をする事になった。俺も一緒に上がったのだがダークはいつもと違う料理人の顔になっていた。
「よしご飯の準備をするで」
「期待してるわよ」
ティファもお風呂から上がってくるが手伝わずにロッジの方に向かって休みに行く感じだった。
「そういやゆっきー素材少ないから何か採取してくれへんかな、たしか園芸スキル上げてたよな」
「上げていましたね」
ダークに近くで何かを取ってきて欲しいと頼まれたので着替えをして行く事になった。
園芸スキルを持っていると持ってない人に比べると普段は見えない草木や木に実っている果実をゲット出来るのである、地味な作業になるのであまり取っている人はいない職業だった。
アランもお風呂から上がってきて見てみたいと言うので一緒について来て貰った。近くの草木で【ブラックペッパー】×3と緑色の実がなった【塩の実】×7いつも毎日のように見ていた赤い食べ物【林檎】×5をゲットできた。
「おーたくさんもってきたなー」
ダークは嬉しそうに腕を捲し上げた。素材を一つ一つ手際よく捌いていく、ダークはオックスの胸肉4個にブラックペッパー3個と塩の実4個をすり潰した物をふりかけて炭火で強引に焼いた。
久しぶりに肉の焼く匂いによだれが出てきてしまった。次に林檎5個を使って、細かく切ってエキスを搾り出す、残ったリンゴのカスにはさっき少し余ったブラックペッパーを振り掛ける。
出来上がったのは【オックスの塩コショウ焼き】4個【林檎ジュース】4個【林檎の簡単サラダ】2個ができた。
いい匂いに感づいたのか黒髪の大きい青年と金髪の美女が近づいてくる
「出来たのねものすごく美味しそうな匂いね」
「私よだれが出てきました」
「よっしゃ飯にしよか」
テーブルに並べるのを二人が手伝う、ダークが椅子に座ると、いただきますと言って食べ始めたら絶句した。うまい、肉を口にいれると溶けるような柔らかさで味もしっかりしていて心もお腹も満たされる。
「肉なんて久しぶりやな俺、家では肉そんなに食べないんやけどこれは本当にうまいな」
「見た目は硬そうだったのに高級肉みたいに柔らかいですね」
もぐもぐ子供みたいに食べているダークの横でアランは久しぶりの肉にうっとりしているみたいだった。
「旦那にも食べさせてあげたいわね」
「そうですね父にお土産として持って帰りたいです」
二人は本当に家族思いさんだなと思った、俺も母と弟に持っていければいいのにな、思いながら肉を頬張った。
「林檎ジュースも上品な甘さで、すーと喉に流れていくし美味しいですねさすが調理師さんは違いますね」
「でもよくそのスキル取る気になったわね」
「一人暮らしやからな、それでレパートリーないときに思ったんやけどこのゲームの調理って結構凝ってるやん、だから極めてみようと思ったんよね、まあ美味しさの秘訣はやっぱり俺の腕がいいからやな」
3人は黙り込みまた黙々と料理を食べ始める、
「おい何か反応したってや」
ダークが泣きそうな声で言うと3人は吹き出し、小学生の子も笑顔になり、4人は一緒になって笑っていた。
「まあそろそろ集落も近い事やし明日に備えて寝とこうか」
「その前に歯を磨かないとね、ユキちゃん確か塩の実余ってたわよね」
ダークは眠たそうに目をごしごしする、ダークが目を閉じそうになるとティファがさっき俺が取ってきた木の実の事を聞いてきた。
「余ってましたね、あれをどうするんですか?」
「昔の人は歯ブラシがないから塩で磨いていたのよ」
勉強になるなあと俺とアランは頷いていた。
「塩の実とりあえず2つで4人分はいけそうね」
「流石一番年食ってるだけあるなクスクス」
「失礼なやつね」
失礼な事を言ったダークに思いっきり拳骨をしていた、ダークは涙目になりながら塩で磨くみんなが磨き終わった後ロッジテントのベットで夜を明かした。