22日目 避難民とサハギン王国の誕生
夢を見ていた真っ暗闇で、もがけばもがくほどに息苦しくなっていった。口を開き溺れるところで目が覚めるといつもと変わらない我が家で安心をする。
「ふぅ、夢か」
あの恐怖がまだ体に残っている為か、少し体を震わせる。すぐに体を起こし茶の間に向かうと疲れていたのか、まだみんなは起きていないみたいだった。
俺は状況が気になったのでダークに連絡をする事にした。
「ダークさん、おはようございます起きていますか?」
「ん?ゆっきーかおはよう、どした?」
丁度起きてたみたいでよかったと思った続け様にあの後どうなったか尋ねてみる。
「あの後って何か情報来ていますか?」
「さっきティファとも話したんやけどな、まだ何もわかってないみたいやな、せっかくやし始まりの町でも行って見るか?」
ダークに誘われたので俺は落ち着かないので了承する事にした。町に着くと最初に来た時よりも大混雑だった。サンピオーシャタウンの避難民だろうか、泣いている子供もたくさん見掛ける。
助けたいが力がない事に握り拳を作りながら悔しさを滲み出す。何分か立った頃に赤髪の小学生が近づいてきて挨拶をする。
「ゆっきーおはよう、避難民すごいな」
「分身しているはずなのに、こんなにも人がいるんですね」
寝るところがないのか歩く道で横になっている人がたくさんいた。ダークと町の中を見るのだが市場も大混乱になっており見れたものではない。
「まるでバーゲンみたいやんけ」
「少し怖いですね」
赤髪の子が指差す方を見ると、食べ物を取り合いしている。それはもうモンスターと戦っているみたいに頭を押さえつけたり殴ったりしていて買おうとしていた。
人がいすぎて前に進めなく暑いのも相まってイライラをしてしまう空を見ていると何かが振ってくる。それはダークの頭に落ちてくると、見慣れたクマさんがダークを押し潰していた。
「お久しぶりクマ」
「ハラコちゃん重い」
潰された小学生がうつ伏せになりながら言うと気づいたのかすぐに降りて謝る。
「ごめんクマ」
「久しぶりやん、元気だったんか?」
赤髪の小学生を起こすと、すぐにダークが尋ねる。クマの気ぐるみを着た女の子が頷くとジャンプをしていた。
「元気クマ、修行をしていたクマ」
職業クエストがあるのだが何かの条件が整うと急に発生をするイベントの一つである。必ず起こるものではないので、もし発生したなら参加すると新しい技を覚える事が出来る。
「あ、だからですか?分からない場所って言ってたから心配してたんですよ」
「そうなんだクマ、秘密の場所で修行したクマ」
何処で修行をしたんだろうか、気になるが違う話題にする事にした。
「ハラコちゃん町の様子見に行くんだけど一緒に来る?」
「ハラコちゃん、おいで」
「行くクマ」
二人の小人は嬉しいのかジャンプをしながら喜んでいるみたいだった。東門に3人で向かうと魔法人形族の病院は人が溢れており大混乱になっていた。
「沢山いるクマ、通れるクマ?」
ハラコが心配になるほど道にはたくさんの人が座り込みながら待っているみたいだった。謝りながら道を通ると東側も人が溢れていた。
情報収集しようとした矢先に緑髪の小人族が俺を抱きしめてきた。
「ユキお姉様お久しぶりですわ」
「リーユさん、お久しぶりです」
なぜか緑髪の子は抱きしめると中々離してくれなく、鼻息が荒くなっていた。
「お姉様、いい――――」
何かを言う前にダークが杖で頭を殴るとすぐに離れて頭を抑える。
「あかん、こいつ変態や」
「お久しぶりですわね」
ダークがいる事に気づくと舌打ちをしながら挨拶をする。
「今舌打ちしたろ?」
「お久しぶりクマ」
赤髪の小学生は耳が良いらしく聞き逃さなかったのだが遮る様にすぐにハラコが挨拶をする。3人小人がいると本当に幼稚園かなと思ってしまうが、それは言わないでおく。
「リーユさんは何しているんですか?」
「私は情報収集ですわね、昨日完敗だったので調べていたんですわ」
リーユは暗い顔になる。どうやらリーユ達も死んだんだろうか情報が欲しかったので尋ねてみる事にした。
「リーユさん何か情報ありましたか?教えて欲しいんですが……」
「いいですわよ、でも条件がありますわ」
条件を緑髪の子が出そうとしている。仕方ないので頷きながら了承をすると、
「じゃあ、デートをして欲しいですわ」
「いや俺お前の事興味ないしなあ」
ダークはやんわり断るとリーユは地団駄を踏みながら怒っているみたいだった。
「ユキお姉様かティファお姉様とデートがしたいですわ」
「いや俺は嫌ですよ、美女の人でいいなら俺心当たりがあるんですが……」
俺は嫌だったので嘘を言うとリーユはすぐに食いついて来る。
「美女ですか、いいですわ交渉成立ですわ」
鼻息を荒げながら両手で頬を押さえながら喜んでいた。心配をしていたダークが俺に耳打ちをすると、
「ゆっきー大丈夫なんか?」
「いやメアリーさんにお願いしようかなと思って」
そういうとダークは噴出すとよく考えたと褒めていた。ハラコは情報を聞きたいのか緑髪の子に尋ねる。
「それでどういう状況なんだクマ?」
「そうでしたわね、サンピオーシャタウンは壊滅して今はサハギン王が統治をしている国になっているらしいですわ、その事を重く見た5大サーバーはブルーサントリー跡に新たな町を建造しているとこですわ」
サハギン王はあの時まだ死んでいなかったのか、ブルーサントリー跡に新たな町は大賛成だ。すぐにリーユは続きを話し出す。
「ブルーサントリータウンになる事から伯爵の名前を変更が決まったらしいですわ」
「サンピオーシャ伯爵ですか?」
俺はリーユの話を聞き尋ねると頷きながら話を続ける。
「今度からブルーサントリー伯爵らしいですわ、今持っている情報はこんな感じですわね、さてと美女を呼んで欲しいですわ、グフフフ」
変態の様な笑い声を上げるとすぐにティファに事情を説明してあの女性を呼んで貰う。するとすぐに大きな灰色髪の女性がリーユの後ろに着た。
「着たみたいやん」
ダークがその女性を指差すとリーユは目を瞑りながら大きな女性に抱きつくと、
「お姉様デートお願いしたいですわ」
「デートだぁ?まあいいが俺の場合は組み手になるな」
聞き覚えのある声にリーユは汗を噴出しながら目を開くとメアリーは笑顔になっていた。
「ちょっと待って欲しいですわ、私は美女をお願いしたのに、こんなのひどいですわ」
「おいおい、俺の事言ってるのかそんなに褒めないでくれよ、さっさと行くぞ」
首根っこを捕まれリーユは叫び声を上げながら連れ去られて行く。
「少し可愛そうな事してしまいましたね」
「まあいいやろ、あいつは自業自得やろ」
俺は連れ去られた方を見て頭を下げながら謝るがダークは大丈夫だろうと言う。
「これからどうしましょうね?」
「サンピオーシャタウン奪還戦行ってもいいんやけど、あれやな今は食料がやばくなりそうや、そろそろ新たな町探すのもいいかもしれんな」
「たしかに人多すぎるクマ」
この多さだと何かしら喧嘩は起こるかもしれない状況だった。さっきの市場の取り合いになっている現状を見ていたので俺はダークがそんな事を言うから少し不安になっていた。
「西側にも行ってみませんか?」
「そやな教会の方行ってみるか」
「わかったクマ」
俺の提案に二人は頷くと西側に行くことにした。東側より人が多いのは気になったが教会の周りにはものすごい人が並んでいた。
「うひゃー、お祭りみたいやな」
「すごいクマ、足踏まれたクマ」
ハラコは痛いのか足を抑えているとダークは慰めているみたいだった。人がいすぎるので南西のカーミラのとこに行ってみるがそこも人がいっぱいだった。
兵士の家族だろうか、棺を後ろに抱えてカーミラに交渉をしているみたいだった。ガラス瓶に入った赤い物を手渡していると喜んでいた。
「色々見ましたね、これからどうしましょうか?」
「そやな、うーん一回帰ろうか明日また状況が変わっているかもしれんしな」
「わかったクマ、また遊んで欲しいクマ」
ダークの提案に熊の気ぐるみは別れの挨拶をするとジャンプしながら消えて言った。ダークも歩き疲れたのか俺に提案をしてくる。
「せっかくやしギルドホールでまったりしとこ」
俺は頷き、家に帰りギルドホールに向かい、二人はまったりする事にした。
場所は変わり、サンピオーシャタウンの真ん中ではサハギン王が新たな王国を作ろうと町を改造していた。
すると忍装束の女性と紫髪の美女が近づいてくる、サハギン王は頭を下げると歓迎しているみたいだった。
「ナナ殿ではないですかギョ、今回の武器は有難かったですギョ」
「久しぶりじゃな、今回の実験は成功をした、わらわは嬉しい限りじゃ、イチもよく頑張ってくれたのじゃ」
「いえいえ、サハギン王が居なかったら、どうなってたかわかりませんよ」
長い髪の女性はイチを褒めていた、それを見てサハギン王は機嫌がよくなったのか酒樽をコップに注ぐとナナ・イチに手渡すと乾杯をしていた。
「うちのマスターが戻って来いと五月蝿いのじゃ、ここはお前さんに任せてもいいじゃろか?」
「という事はこの町は私に任せて頂けるギョ?」
ナナの提案にサハギン王はさっきより喜び酒樽を何本も飲んでいく。
「冒険者はブルーサントリー跡に砦を作っているみたいです」
「砦を作ったとしても、始まりの町も制圧するのもすぐだギョ」
イチの報告にサハギン王はすぐに簡単だと言いと美女二人も頷く。
「それにあやつが動き出すのじゃ、冒険者共はそちらに掛かりっきりになりそうじゃ」
「セスティア殿ですか?」
「そうです」
サハギン王は恐怖の表情になると、ナナは面白いのか笑い出していた。
「面白いのう、さて何人の冒険者が生き残るか見物じゃな」
紫髪の美女は酒を一気に飲み干すと目を輝かせながら、その出来事を想像していた。