19日目 ブルーサントリー跡 殲滅戦3
赤髪の小学生はむくりと起きる、周りを見ると豪華な部屋にいる事に気づく、
「そういや、昨日は城の中に泊まったんやったな」
立ちあがりダークは窓から空を見る、まだブルーサントリー跡の空は赤く戦いは続いている様だった。暇だったのでみんなを起こす事にした。
「起きろや、朝やで」
ホワイトの胸あたりに乗ってジャンプをしながら巨体の男を起こす。
「おはようですぞ、ダーク早いですな」
「ホワイトみんな起こすの手伝って欲しいんや」
白い変態はまだ眠いのか、欠伸をしながら重そうな体を起こした。待ちきれないのか赤髪の小学生は、アランが眠っている上に乗りながらジャンプする。
「マスターおはようございます」
「アラ坊起きて欲しいんや」
ダークに言われたので黒髪の青年も体を起こす。何ですぐに起こされたのか聞きたいので、アランは尋ねてみる事にした。
「マスターまだ起きるの早いですよね?もしかして何かあったんですか?」
「実はな、いい事思いついたんやけど昨日のイカスミ料理あったやん」
ダークに言われて思い出すのに少しの時間は掛かったが、すぐに思い出す。そうたしか昨日の宮殿料理の中に黒いスープがあった事を思い出した。
「あれは美味しかったですよね」
「美味かったですぞ」
「イカスミだけ貰ったんよな」
ホワイト・アランは昨日の美味しかった料理を思い出しているとダークが鞄からビンを取り出し少し空けながら二人に見せてきた。
「おー、また作るのに貰ったんですか?」
料理をまた食べたいのかアランが喜ぶと、ダークは首を横に振る。
「いや料理には使わなんよ、これで悪戯したいと思っているんよね」
「...悪戯ですぞ?」
白い巨人族の男は少し考えるとダークに尋ねると、赤髪の小学生はイカスミを指に付けながらメイの近くに忍び寄る。
「とりあえずバカって書いておこうかな、起きたら楽しみやな」
「マスターちょっと待って下さい、後で知れたら怒るだけじゃ済まないような」
ダークは額と頬にバカの文字を書いていくと、アランは心配そうな顔をする。
「面白いですな、せっかくなので私も妖精と書いておきますぞ」
大きな手で墨を付ける為、ダークのに比べると大きな太さの文字になる。顔に墨を付けられてくすぐったいのかメイは目を開く。
「おはようなんだぜ、みんな何で俺のベットに集まっているんだぜ?」
「おはようですぞ」
「おはよう、お前起きるの遅いから起こしにきたんや」
「うーん言うべきだろうか、メイさんおはようございます」
メイは起きだすと3人は挨拶をしながら、笑いを堪えながらにやけている。
「ごめんだぜ、そろそろパーティの時間だよな?」
「皆さん、おはようございますパーティをそろそろ始めたいと思いますので、1階テラスに降りて頂けると有り難いです」
茶髪の男はベットの上の眼鏡を掛けながらみんなに質問をすると、執事の人が部屋に入ってきた。
「そういやティファ達はどうしたんやろな?」
「ティファ様・メアリー様はお先に下に降りております、メイ様変わったお化粧をしていますね」
ダークは考えながら喋ると、執事の人が説明しながら少し笑う。
「お化粧、俺はしないんだぜ」
「額と頬にバカと目の瞼に妖精と書いてありますね」
化粧という言葉に不思議そうに茶髪の男は考えながら顔を触ると、すぐに執事の人がネタバラシをする。ダーク・ホワイトは逃げようとすると、メイは二人を掴みながら顔が鬼の形相になりながら眼鏡刀を出す。
「お前等...少し待って欲しいんだぜ」
「待って欲しいですぞ、妖精さんはやってないですぞ」
「おいこらホワイト一人だけ言い逃れしようとするな」
茶髪の男は刀を構えると、ホワイトはすぐに土下座をするが、赤髪の小学生は頭を抱えるしかなかった。
「落ち着け、その前に戦闘区域じゃないから、攻撃してもダメージは与えられないやん」
「そうですぞ」
「でも痛みは通るんだぜ、その言葉が最後でいいんだな?」
ダークは指差しながら勝ち誇ったように言うが、痛みを通る事を忘れていたのかすぐに恐怖の表情になる。
すぐに強い光と共に絶叫が部屋中に広がるが黒髪の青年は目を瞑りながら耳を抑えるしかなかった。
「ホワイトさん・マスター大丈夫ですか?」
二人は痛みで耐えられなく気絶したのか床に突っ伏していてピクリとも動かない。制裁を加えて出て行ったメイが戻ってきたみたいだった。どうやら顔の墨は水で洗い流したみたいで綺麗になっていた。
「全くひどい目にあったぜ、アランさんも言ってくれればいいのに」
「メイさんすみません言おうとしたらマスターに口止めされていたんです」
アランは茶髪の男に頭を下げながら謝る。ダーク・ホワイトは少し落ち着いたのかムクリと体を起こす。
「まだ斬られたとこが痛いですぞ」
「全く手加減しろよな、パーティ出られなくなったらどうすんや」
「大丈夫なんだぜ、気絶している二人をサンピオーシャ伯爵に生贄に出せば、俺達は助かるかもしれないんだぜ」
赤髪の小学生と白い巨体は体中を触りながら涙目で喋ると、メイは懐からロープを取り出す。
「おいおいマジか怖いなあ、それやったら俺お前の事、昨日の夜に縛っておけばよかったわ」
「まだ反省が足らないのか、この眼鏡刀がまた火を噴くぜ」
眼鏡刀をメイが構えるとダークも懐から杖を取り出し睨み合う様にその場で固まる。
「止めて欲しいんですぞ」
「そうですよ落ち着いて――――」
「おぉいこら、てめえら遅いなぁと思ったら喧嘩やってんのかい」
アラン・ホワイトは二人の間に入って止めようとするも、怒りが収まらないのか技を使う瞬間、象の様な大きな声が鳴り響く、その声を聞いてビクリとしたのかダーク・メイは聞こえて来た方を振り向くと山の様な大きなの女が立っていた。
「俺も戦闘したいと思ってたとこなんだ、その喧嘩俺が買ってやる二人して掛かって来な」
大きな武器を両手に構えてダーク・メイを見下ろしている。状況が不味くなったのか争っていた二人は震えだしながらすぐに土下座をする。
「すみませんでした、俺が悪かったんや」
「俺も悪かったんだぜ、許して欲しいんだぜ」
「あぁん?何だつまらん男共だな」
汗を噴出しながら土下座をしているのを、憐れむように見ながらメアリーは溜息を付きながら扉を出て行く。去ったのを見て二人は立ち上がり腰が抜けたのか床にペタンと座りだす。
「ふぅ、助かったぜ」
「全くだな、そろそろ行こうかまたあの女来ると怖いしな」
「私もメアリーさん来た瞬間、心臓が止まるかと思いましたよ」
「ほんとですぞ」
床に座り込んでいる二人をホワイト・アランは起こすと4人は扉から出て大きな広間の扉の前に行くと女性二人が待っていた。
「全く遅かったわね」
「そういえばお二人はドレスに着替えないんですか?」
「まあ俺達は護衛だからな」
ティファは大分待ってようで疲れた顔していた。ドレスを着ていなかったのでアランは不思議そうに尋ねると灰色髪の大きな女は武器を持ち上げながら叫ぶ。
「とりあえずはダークが先頭で話を進めて頂戴ね」
「は?何で俺なんや?」
金髪の美女はダークを指差しながら喋ると、なんで自分が先頭なのかわからずに騒ぎ出す。
「私達は護衛なのよ、4人の中でリーダーに向いているのはダークでいいと思うのだけど、どうかしらね?」
「そうですな」
「賛成だぜ」
「マスターお願いします」
ダーク以外の男はニヤニヤしながらダークに頭を下げると、断りきれないのか涙目になりながらも承諾をする。
「わかったわい、やればいいんやろ」
赤髪の小学生は先頭に立ち後ろに男3人がいて、その後ろには護衛が二人の状態でパーティ会場に入ろうとする。扉は大きく前に押すと、そこには貴族の様な人や商人みたいな服を着た人がたくさんいて、赤い飲み物を飲んだりして談笑をしていた。
時は変わり銀髪の女はリサの部屋で目を覚ます、どうやら二人はまだぐっすり寝ているみたいだった。そういえば俺も枕がやけに気持ちがよくてすぐに寝てしまっていたが枕だった物が急に動き出す。
「え?何で動くんだろう」
暗くてよく見えなかったが、枕を持ち上げながら目を凝らして見るとリサのペットのスライムだった。わかった瞬間叫び声とスライムを壁に投げつけると二人はすぐに起きる。
「ユキさんおはよう也、びっくりした也」
「あらあらスライム泣いているわよ」
壁に張り付いたスライムは元の大きさに戻っていくと、すぐにリサの膝の上に行き涙が流れていた。
「すみません、気持ちが悪かったので...その前に昨日たしか枕で寝たはずなのに、何でその子がいるんですか?」
「お姉さんの機転で枕と交換してたのよね、仲良くなって欲しいから」
俺は青い薄髪の女に怒りながら、頭に何か付いてないか確認をした。
「ドンさん頭に何か付いていませんか?」
「何も付いてないよ也」
涙目で褐色の肌の女に尋ねると、俺の頭をジーと見つめ大丈夫だと言ってくるので、少し安心をした。
「そこまで怖いものね、お姉さん悪い事してしまったわ、ごめんなさいね」
「実はグニャグニャした物って苦手でトラウマがあるんですよね」
リサは少し落ち込むと俺はすぐに深呼吸をしながら理由を喋る。そうあれは確か中学生の頃、弟が生き物が好きで、近場の堀でナメクジを5匹程捕まえて手で握り潰して、俺に見せてきたのだナメクジは潰されてもまだ生きていたのかスライムの様に動いていた。その時からグニャグニャ動く物は大嫌いになった。
その説明を生々しく語るとドンが口を抑えて吐きそうになっていた。リサもいつもと違ってフルフル震えていた。
「想像してしまった也、弟さん怖い也」
「お姉さんも背中がぞわりと寒くなってしまったわ」
本当にあの頃は懐かしく思ってしまう、弟は解剖が好きでよくトカゲやトンボを目の前で切り刻み俺にトラウマを植え付けさせた。
「いやーあの頃は嫌でしたね」
「大変な中学生活送っている也」
「お姉さんも、それやられたらこの子見るのも嫌になるかもしれないわね」
リサはスライムを膝の上に乗せて撫でているとそんな事を言う。
「ダークさん達が行ってる間、暇ですよね?どうしましょう」
「どうしよう也」
「せっかくだから町の様子でも見にいきましょう」
リサは部屋を出て行くと俺とドンも後に続く、どうやら昨日いた子達はいなくなっているみたいだった。外に出ると天気が良く酒場は朝なのでまだ人があまり入っていなかった。
「何処から行きましょうか?」
「海を見たい也」
「海だったら港側だから、東側ね」
この世界の海はまだ一回も見てなかった事もあり褐色肌の女は東側に行きたいと言う。俺も見たかったので了承するとリサも快く頷いて貰えたので向かう事にした。
まだ辿り着いている人は少ないみたいでプレイヤーはあまり見掛けなかったがNPC人が多かった。歩いて見るとやはり広い1時間は歩いたが一向に海が見えなかった。
「疲れた也」
「さすがに広すぎませんか」
「たしかにね、お姉さんも限界に近いわ」
3人は疲れたのか床に座り込むが暑くてすぐに立ち上がる。すると横から赤い色の物体がものすごいスピードで横切る。
「びっくりした也」
「あれってたしか【タウンペンギン】ですよね?」
「丁度よかったわね、せっかだから乗っていかない?」
リサの提案にドンと俺は頷く、タウンペンギンというのは地上で走る赤いペンギンの事で、馬車を後ろに引いている為最高4人乗りなのである。この世界の乗り物はこのペンギンを使っての移動になる、色々なペンギンがいる為、使い分ける事が大事なのである。
もう少し行った先に乗り場がありお金を渡すとすぐに乗せて貰えた。ドンとリサは疲れていたのかすぐに席に座ると手で顔を仰いでいた。
動き出すと、ものすごいスピードで美しい町並みから海が見えてきた。
「早いわね、お姉さんびっくりよ」
「海が見えてきた也」
二人はさっきまでの疲れが吹き飛び馬車の窓から外を覗き込んではしゃいでいた。10分が立ちやっと船の見える場所まで辿り着き、馬車から降りると潮風が当たり気持ちがよかった。眼前には大きな海が広がっていた。
「綺麗也」
「透き通っている海なんて初めて見ましたよ」
「あっちに島が見えるわね」
俺とドンが見惚れているとリサが島の影のところを指差す。
「意外と大きいですよね?」
「何の島なんだろう也」
「現地の人に話、聞いてみるのもいいわね」
ドンと俺は考え込むが一向に答えが思い浮かばない、歩き出していたリサがNPC人に尋ねてみる事にした。
「すみません、あの島って何なんですか?」
「まだわからないんだよ、大きな地震と共に突然現れたんだ」
男のNPC人はわからないと首をかしげていた。突然現れたという事は新たなダンジョンなのかもしれないと思っていると褐色の女性がNPC人に尋ねる。
「あっちは船で渡れる也か?」
「まだサンピオーシャ伯爵様の許可が下りてないんだよ、だからあそこは船で近づく事は禁止されているみたいなんだ」
新たなフィールドの予感がドキドキしたが、ビーチ側が明かにおかしい人だかりが出来ていた。
「何があったんでしょうね?」
「行って見ましょう」
俺が指差す方にリサが走り出す、その後に俺達も続く。
「何かあった也?」
ドンはNPC人の人だかりに聞いてみる。
「海の向こう側から小船が見えるんだよ」
「何も見えませんが何かのスキルですか?」
海側を見ても大きな島の影しか見えない、男のNPC人の目は鷹の様に遠くを見通しているみたいだった。
「僕の右目は【テレスコープアイ】というスキルを使って見ているんだ」
「初めて聞くスキルですね」
「そうね、それでやはり小船の数は多いんですか?」
初めて聞くスキルに俺とリサはびっくりするが、状況を知りたいのか続きを聞き出す。
「かなり多いね、1隻に5人が乗っているみたいなんだ」
数え切れないのかどんどん男の顔は青ざめていく。
「どうやら武装しているみたいだ、大変だ早くサンピオーシャ伯爵様に伝えないと」
「ちょっと待ってください武装しているって人なんですか?」
男は焦り始め急いで走ろうとするが俺が腕を掴んで呼び止めた。
「俺のスキルは遠いところは見えるんだけど人の顔は認識できないんだ、早くしないと不味い状況かもしれない君もういいかな?」
「待ってください俺達冒険者で、仲間が今お城にいるんですよ何か協力出来るかもしれません」
腕を振り解きNPC人の男は急いで馬車に乗ろうとすると俺が声を荒げて言った、そうすると男は冒険者だと気づいたのか俺達のところに近づいてくる。
「本当かい?じゃあ悪いんだけど今の状況を伝えてくれると有難い」
「わかりました」
俺は急いでダークに連絡を取ってみる事にした。
パーティ会場に入って見ると美女が沢山いてアラン・メアリー・ティファ以外は顔がにやけていた。
「美しいお嬢さんがいっぱいやん」
「そうですな、口説いてきてもいいですかな?」
「最初にサンピオーシャ伯爵に会ってからね」
ダーク・ホワイトは目がハートになり美女達を眺め回していた、白い妖精さんが耐え切らず口説きに行こうとしたらティファが嫌な事を言うと暗い顔になった。
「全く俺はこんなとこがいけ好かねえよ」
メアリーが動き回ると地震の様に部屋が揺れ動く、
「もしやあの真ん中にいるのが例の人物かもしれないぜ」
メイは真ん中にいる厳格そうな白髪の男を指差す。冒険者がいる事に気づいたのかその男は近づいてくる。
「これは冒険者の皆さん、私の町にようこそいらして下さいました」
「始めましてダークと言います、エヴィルから伝言があります。聞いて頂けますか?」
ダークは一生懸命丁寧に話すと、気難しい男は頷くのを確認するとメアリーが説明を始める。
「いいでしょう」
「じゃあ俺から話すぜ、ブルーサントリー跡に集まったサハギンは9割殲滅が終わった、だがおかしい点がいくつもある倒したサハギンは1億もいなかった事だ。もしかすると陽動の可能性も考えられるとサンピオーシャタウンは未曾有の危機かもしれねぇ」
説明を聞くとまだ信じられないのかサンピオーシャ伯爵は冷めている。
「それで何が危険なのですか?魚野郎が冒険者の強さに恐れて逃げただけではありませんか」
「エヴィルの予想だと海側から攻めるんじゃないかって言ってたよ多分明日か明後日あたりには上陸するんじゃないかと睨んでいる」
その話を聞いていた商人や貴族の人は悲鳴を上げるがいまだにサンピオーシャ伯爵は冷静だ。
「単刀直入にお聞きしますが、兵をお貸しすればいいんですか?」
「いや兵がいたところで俺達の邪魔にしかならねぇ、この町に住んでいる住人を緊急避難させてくれ」
メアリーの話を聞きやっと顔色が変わると持っていたグラスを床に叩きつける。
「ふざけるな、今この都市に何人いると思っているんだ一介の冒険者風情が口を挟まないで貰いたい」
「俺はただエヴィルの伝言を伝えただけだ、この町が滅びようが俺には関係がねぇ」
メアリーとサンピオーシャ伯爵は睨み合うが、すぐに女の人が止めに入る。
「お父様、冒険者様落ち着いてください」
「ジガーお前は黙っていなさい」
ジガーと言われた女性はそれでも父親を落ち着かせながら意見を述べる。
「そこまでの危機になっているのでしたら、すぐにでも避難をするべきですわ」
「ちょっと待ってください俺の仲間が今港にいるんですが、武装をした小船の大群が迫っているらしいです」
ダークが俺の話をTellで聞くとみんなに伝える、するとサンピオーシャ伯爵の顔が青ざめていく。
「わかった、でもその前にどこに避難をすると言うんだ?」
「それならエヴィルの野郎がブルーサントリー跡に陣を作っているからそこに行けばいいと思うな」
その説明を聞きサンピオーシャ伯爵は頷くが条件を出してきた。
「私が動くんだ、これが終わったら美男子をデートに誘いたい」
「丁度よかったじゃない、この4人から選んでいいですよ」
さっきの厳格の顔から頬を染めながらもじもじしていると気持ちが悪い。ティファがダーク・アラン・メイ・ホワイトを指差すと伯爵は目の色が変わる。
「ほぉ、この者達かどれもいい顔をしているな」
ニヤニヤしながら見てくるので4人はぞわりと背中が寒くなった。
「じゃあ赤髪の子と茶髪の子がいいな」
ダークとメイは選ばれたのかガクガク震えだしながらあれ程嫌っていたのに抱き締めあう、ホワイト・アランは自分が選ばれなくて安心をしたみたいだった。
「よかったですぞ」
「マスター・メイさん成仏して下さいね」
アランは二人を見て念仏を唱える様に両手を合わせる。それを見てサンピオーシャ伯爵が催促をする。
「いいのかな?ダブルデートだな、グフフフ」
「ああ、わかった俺が了承するよ。縄付けても連れて行くから安心をしろ」
先程の厳格な人は何処に行ったのか二人を見る目はもう完全に変態の目だった。メアリーは懐から縄を見せて安心をさせる。すぐにサンピオーシャ伯爵は外に出て指揮を出す会場にいた人も危機的情報を聞いていたのか外に広めようとする。
「お二人様大丈夫ですか?」
メイ・ダークは金髪美女のジガーに慰めて貰うと膝の上で泣いていた。ジガーはどうやら残っているみたいだったのでみんなのとこに行かないのかとティファが尋ねる。
「あれ貴方は行かないんですか?」
「今回私は防衛の任につく事になったんですわ、冒険者の皆さんよろしくお願いしますわ」
凛々しい姿に当てられたのかダーク・メイの顔は変わりやる気が漲っていた。
「兵士は何人程いるんだい?」
「20万人はいるはずですが避難に18万が当てられると思うので実質2万で防衛をしないといけないですわ」
メアリーは兵士の数を確認するとジガー・ティファと一緒に作戦を練っているみたいだった。
「この町に辿り着いた冒険者は40万人はいるはずだ、それで何とか持ちこたえるしかねぇな」
「冒険者を前線に立たせて兵士を後方支援に任せるのがいいわね」
さすがに歴戦の二人なのですぐに作戦を組み上げる。
「エヴィルのとこにいる60万も避難が完了したら海側に攻めて貰えば挟み撃ちで殲滅できるかもしれないしな」
「とりあえず俺が40万を指揮をするティファお前は2万の指示を頼みたい」
真面目な顔でメアリーがお願いするとティファは首を振る。
「嫌だけど?」
「お前俺が頭下げているのにその態度は何なんだ」
金髪の美女と灰色の髪の女が睨み合うと空気が重くなってくる。すぐに元気のいい声が聞こえる。
「じゃあ俺がやろうっかなあ」
紫髪のロンゲの男が軽い口調で喋る。
「あぁん?誰だ、てめぇは」
「その制服は見た事があるわね」
「象怒のメアリーさんと聖女ティファさんとお見受け致します俺は【あ、はいゆとりですが?】副マスターリト・ストロングストです」
日本最後の大規模戦闘ギルドである。たしか集団行動が苦手なギルドでレイドでは度々面倒毎を起こすギルドだがこのゲームの中ではトッププレイヤーである。また変な人が現れたのかティファの顔は引きつっていた。
「どうですか俺達のギルドが2万のお守りをしますよ」
「わかった時間があまりない事を考えると、それがいいかもしれねぇな」
軽く言っていたのかメアリーとティファは信じられなかったが二つ返事で頷く事にした。
「じゃあ俺達はゆっきーと合流するで」
「リサの話だと酒場にGH置いたらしいからそこで集合にしようぜ」
「そうねじゃあ、メアリー武運を信じているわよ」
「ああ、お前もな」
ダークが合流するのに会場から出るとメイが集合場所を提示してきたのでそこに行く事にした。ティファ・メアリーはお互いに握手をしながら別れる。
酒場前に懐かしい銀髪の子と褐色の子とスライムを乗せている子がいて久しぶりに会ったのでハイタッチをしながら喜び合った。
「そこまで大変な話になっていたんですね、アランさん何か清々しい顔をしていますね何かありましたか?」
「そうなんですよ、選ばれなくて安心しました」
「アラ坊あとで拳骨な」
嫌な事を思い出したのかダークは握り拳を作ってアランを見上げる。
「今日もう始まるの也か?」
「どうやら明日らしいわね、船の動きが止まったらしいわ」
「準備を怠らない様にしないといかないぜ」
ドンはティファに尋ねると首を振りながら否定をすると、メイはメニュー画面を開きながら準備をしようとしていた。
「買い物にいっておきましょうね、お姉さんドキドキしてきたわ」
「皆さん大丈夫ですぞ白い妖精さんがいるので守ってあげますぞ」
白い巨体は任せないさいと胸を叩いていた。8人は各自アイテムの準備やスキルの確認をする事にして明日に備えた。