2日目 体の変化とゲーム仲間の再会
目を覚ますと、朝になっていた。いつもより体が軽くなっていて、胸がいつもより少し重く苦しかった。
まああんなに体を動かし野菜しか食べてなかったので、体に負担をかけたからだろうと思いながら立ち上がり、洗面所に向かい風呂用手桶で水を汲もうとお風呂を覗き込むと、そこにはいつもと違う顔が水面に映っていた。
肌の色は色白で背は小さく犬耳を生やした、綺麗な銀髪の翠色の目をした少女がそこには映っていた。最初は疲れているからそんな物が見えるのかと思い、瞬きをすると少女も同じ動作をした。5秒間だろうか水面を凝視するしかなかった。同じ動作をしている事によりまた体が変化している事に気づく、
「嘘だろう何で体がまた変化してるんだよ」
お風呂場で綺麗な声を響かせる。はっといつもと違う音に、気づき自分の手で口を抑える。
声もどうやら変化しているみたいだった。男の低音から女の綺麗な声になっていた、俺の体はどうなってしまったんだろうと恐る恐る体を確認するように触る、手は小さく色白になっており髪は肩まで伸びていた、いつのまにか水面に映った自分の姿に釘付けになってしまっていた。
胸が膨らんでいる事に気づく、触ってみると柔らかい……胸みたいだ大きさはDはあるだろうか、そしてもちろん下半身も変化しており確認するとあるものがなかった。この起こっている現状にしゃがみながら頭を抱えるしかなかった。
よくよく自分の顔を見る。
この顔は何処かで見た事がある。一瞬考えてみるとすぐに思い出す地震が起こる前にやっていた、あの大人気オンラインゲームで使っていたキャラに似ている。
ふと茶の間から話し声が聞こえてくる、何かあったんだろうかと茶の間に向かい高音な声で挨拶をする。
「みんなおはよう」
みんなは昨日と同じように呆然とするように俺を見つめてくる最初に母が言葉を発した。
「あのどちらさまですか?」
他人のように聞いてきた時には、少し悲しくなったが深呼吸をして俺だよ、
自分の名前を言おうとした時最初の音が出ないし思い出せない事に気づく、部分的にしか思い出せなくなっていた、自分が言える精一杯の言葉を母に伝えた。
「母さん俺ユキなんだ。わからないか?」
母の目は充血し始め涙が流れ始めながら体を震わせながら聞いてきた。
「本当にユキなの?」
「ごめんみんなも驚いているだろうけど朝起きたら、また体が変化していたんだ」
伝えるとお母さんは手を口に当て落胆したように膝をつき父と弟はすっかり変わってしまった俺の姿を、見たくないように顔を背けていた。
話題を変えようとなにかあったのかを聞くと父が重い口を開く、落ち着きながら語り始めた。
「ポストに家族4人分の手紙が入っててな、お前が起きて来たら開けようと思っていたんだ」
「じゃ開けてみよう」
手紙は白い封筒に入っており、のり付けのあともない綺麗な物だった、勇気を出して俺が言うと父が4枚あるうちの1枚を、横の方をびりびり汚らしくあけてみる、出てきた物は見た事がないお金1枚にチケットが1枚と真っ白な用紙が出てきた。
急に真っ白な用紙がカタカタと動き出すと、引き込まれるように俺の目の前にくる。ふと脳に男の人の知らない人の声が聞こえてくる。喋った内容がまるでワープロが生きているかのようだ、用紙に刻まれていった。
『熟練冒険者の皆さん、お久しぶりです。ようこそ新たなディファレント・トライバルオンラインの世界へ、世界は新たなステージに進化をしました勝手ながら【共有世界】と名前を付けさせていただきます。貴方がやっていたゲーム時代の素材・食べ物・お金は一度リセットされますが、ディファレント・トライバルオンラインでやっていた装備とLVはそのまま引継ぎになります、あとはチケットを破ってもらうと共有スタートになります。ご武運をお祈りいたします』
まるでゲームの序盤の様に用紙に書かれていく。
家族3人の文章は、熟練のところが初心者になっていて、お久しぶりのところが始めましてになっていた、それに装備とLVが抜け落ちてる文章になっている。
「もしもし...ユキさんですよね」
また脳に話しかけるられるように、別の人の声が響いてくる。周りをきょろきょろと見て父親・弟と目があった俺は確認をするように父・弟に、
「なにかいった?」
父は首を振り弟は無視をしていた。気のせいだったみたいだ、空耳なんだろうかと思っていたらまたイケメンな男性声で、
「もしもしユキ・マネキイヌさんですよね私アラン・センベイなんですが覚えていませんか?」
聞き覚えのある名前が聞こえてきたと思ったら、次の言葉が頭に鳴り響いた。
「Tell機能を使って話しかけているんですが、よかったら返信お願いします」
【Tell機能】とはゲーム時代の言葉である、登録してある友達リストから名前をクリックして二人だけで話す事ができる機能である。
本当に俺が、やっていたあのゲームなのかもしれない、疑いを持ちながらも何もないところを、指でタッチしてみるとゲーム時代の言葉が目の前に広がっていた黒くなっていて使えないシステムが多かったが、なんとかフレンドリストは使えた。
メニュー画面の右下には時間も書いてあった。今は、2020年7月25日9時55分になっている、時間を見た事に少し安心をした。6時に起きたつもりだったのだが、もしかすると体に変化があって体内時計が崩れたのかもしれないなあと思いながらも、フレンドリストからアランさんの名前を探しTellをしてみる事にしたが、名前を何回もタッチしても何も起こらない使い方が全く分からなかった。
俺は真剣に考えて、二通りの方法を思いつくその一つを実践してみることにした。
まず一つ目は、声を出して相手に伝える方法である名前をクリックしながら家の天井に向かって大きな声を出す。
「もしもしアランさんですか?」
天井に喋っても何の反応もなかった。父がどうしたんだと不安な顔を見せると少し恥ずかしくなりながらも二つ目の方法を試してみる事にした。
口を動かさずに思った事を心に念じて話す方法である。
「もしもしアランさんですか?」
強く心で念じるように聞くと返信があった。
「ユキさんお久しぶりです」
成功した事と久しぶりに会う友人の声にほっと安心をする。
「アランさんお久しぶりです」
本当に繋がった事に興奮を抑えられず同じように返しているとアランが怪訝そうな声で、
「ユキさん女性の声なんですが、もしかしてユキさんも体に変化があったんじゃないですか?」
気づくのが遅かったが、アランはゲーム時代はリアルが女性で、男性キャラを使う人だった。そうだとするとアランにも体の変化があったのかもしれない。
イケメンボイスで男性声だったので男だと思ってしまっていた。
「あのよかったら私、今始まりの町にいるのでそこで再会をしませんか?」
恥ずかしそうに聞いてきた俺も冷静に判断をして、
「そうですね色々わかるかもしれませんし行ってみます」
話した直後にTell機能をお互いに切った。家族にアランと話をした説明をした、やった事のある自分から状況を確認してくるから家で待っていて欲しいと頭を下げ行く事にした。
机に置いてあったチケットを破った瞬間に頭に声が聞こえてくる。
『ワープ機能の実装です、今から3日間のワープ無料権を送らせて頂きます』
さっきと同じ男性の声で頭に語りかける。急いでメニュー画面を開くと黒くなっていたワープリストが使えるようになっていた。
【始まりの町】がワープシステムの中に表示されていた。家族に手を振りながら胸を高ぶらせて震える手でクリックをしようとした瞬間に母に呼ばれた、
「少し待ちなさい。ちょっとこっちに来なさい」
少し怒ってる様な顔をして手招きをしていた。
「何かあったの?」
何がいけないのか、わかってないふうに尋ねると母が怪訝な顔で、
「ユキそんな格好で行くの今は女の子なんだからブラジャーだけはしなさい」
女に変化していた俺はノーブラだった、母は自分の部屋に行くと母のブラジャーを俺に渡してくる、……少し沈黙が続いた頃に、は?と返してしまった。
「ユキは気にならないならいいけどみっともないからね」
怒り出してしまったのでしぶしぶ着用する事にしたのだが、母のは小さくてサイズがきつかった、母に無理やり手伝ってもらってようやく着けた、だがものすごく恥ずかしい。
着けてみるとわかるがものすごく気になる、締めつけられてることにより胸に違和感があるし、くすぐったいし、痒いような気もするよく女はこんな物付けていられるなあと関心する。
昔、外国の記事で男が豊胸体験をしてブラジャーを着て、モンスターだといってたのがわかるように邪魔な感じだ。まあ慣れるしかないのだろうなあと思った、母に別れを言い、急いで町をクリックすると急に体が光に包まれる。目の前がぼやけていき真っ暗になる瞬間目に光が差し込んだ時には始まりの町に着いていた。
一番最初に驚いた事は、満員電車並に人がいることだった、町並みや色々な人種はゲーム時代で殆ど見慣れているので、そこはあまり目は行かなかったが本当にすごいお祭り並の人が大勢いた。
福島の片田舎では見られない光景に少し興奮する、こっちに来るのが楽しみすぎて忘れていたが、急いでいたせいかキャラクター物のオタクが着そうな寝まきの姿できてしまった。
アランに連絡を取りながら集合場所に向かおうと歩き出すが、人が多くて中々前に進まないし町はとにかく広かった。
ゲーム時代のときは画面越しだった事もあり、集合場所に行くにしても2~3分くらいで着いた。
その時はそんな広くない町だなと思っていたのだが、現実で歩いてみるとこんなに広い町なんだなあと実感をする。
考え事をしながらお祭り並に混んでいるところを掻き分けながら歩いていると、集合場所に着いたが何分待ってもそれらしき人は現れないし出会わない、とりあえず町の武器屋前から動かないようにしたのだが、何度周りを見てもアランは見つからなかった。
それなりの時間を使い探しただろうか、足も歩き疲れたのか筋肉がすこし張っていた。あきらかに何かがおかしい事に気づく、町の人のひそひそ話を聞いてみるとやはりゲーム仲間と再会ができてないという不思議な現象が起こっていた。
足が痛いので止まっていると、いい情報を聞く、やせ細っていた男が話していたのだが、日本や世界各地で人が集中しているせいか始まりの町が分裂しているんじゃないかと仮説を立てていた。
なぜそのような話になっているのかというと、このゲームは実装直後人気がありすぎてよくサーバーが落ちたり、初心者さんが始めれらない苦情がたくさんあり、対応に困った運営の最終手段で、始まりの町の複数を作り緩和をして苦肉の策でその時は凌いだ。
もしそれが今のこの現状を作り出しているとしたら、何か対策を立てないといけない、でも考えていても何も思い付かない。頭を抱えていると違う女の冒険者からPTを組んでリーダーの所にワープすればいいんじゃないかという話を聞く、他の人も聞いていたのか試す人が何人かいた。
数分が立ちその内の1組が成功したみたいだ。それを聞いた仲間の優しい一人が、情報をみんなに伝えるために大きな声でみんなに教えながら走り出す情報を聞くと、みんなはその人にお礼を言いながら実践し始めた。
俺もアランに連絡をし、状況を説明して、アランにリーダーになってもらいPTを組み始まりの町にワープすることになった。光に包まれて気がつくと目の前には髪型は短髪黒髪の赤い瞳の大きな細いマッチョイケメンがいた。
顔はかっこいいジャニーズ系にいそうな顔立ちで、女性物の寝巻きだろう、ピンク色の女性が着るような服をぱっつんぱっつんになりながら着ていた。少し不安そうに自信がないように小声で尋ねる、
「アランさんですか?」
相手も不安だったのか震えるような声で尋ねてきた、
「そうですユキさんで合ってますよね?」
二人は頬を染めながら恥ずかしそうに軽く会釈をする、ゲームの中では何回も会っていたがやはり現実で喋ると恥ずかしい。現実では顔をみないで喋るせいか、あまり恥ずかしくはないのだがそう考えていると顔がどんどん熱くなってくる。アランは提案をしてくる、
「とりあえずお互い寝巻きですし、きちんとした服に着替えた方がいいですよね」
アランも今着ている物に気づいたのかものすごく恥ずかしそうにしている、アランはメニュー画面を開き装備を変更すると、すぐに装備が構築されていった装備一式機能によりアランがきちんとした冒険服になったので、俺もメニュー画面の残っていた装備に着替える事にした。
アランは【シールドブレード】という職業で、黒色の重鎧装備をつけていた。重いですねーといいながらも重そうな剣を軽々と持ち身軽に動いていた、黒髪イケメンに感心をした。
俺も着替えようとしたのだが、俺の職業は【ヒールランス】という職業柄、槍は持っているのだが装備は露出系で上はふわふわ系のお腹出しファッションにスカートという装備だった。
着替えるのは勇気がいった、クリックする事により俺の何かが壊れてしまうんじゃないかと心配をするが、今着てるキャラ物の寝巻きよりはマシそうである。クリックする事により同時に自分の何かが崩れていく音がした。
一瞬で自分の着替えてる物も変わる、やはりスカートだと下は寒く、他の人の目線が気になった、ブラジャーも変わったんだろうか自分サイズの物になっていてあまり苦しくはないが気にはなるところは変わらなかった。
お腹も出てるし、もしかすると、さっきより恥ずかしい格好なんじゃないかと思うと肩をがっくり落とした。落ち込んでいるとアランさんが尋ねてきた。
「どうですか?」
「似合いますよ」
イケメンの笑顔で尋ねてくると、俺は反応に困りながらも一言しか言えなかった程アランの顔は整っている。思ってしまうが俺もこんなイケメンに生まれてきたらなあと、本気で思ってしまう。アランにも同じように聞いてみた、
「似合いますか?」
「ユキさんも似合いますよ可愛い服ですね」
アランは頬を染めながらグッジョブとジェスチャーしていた。本当にイケメン死ねばいいのにと思ってしまう自分に嫌になる、アランと少し会話をしてこの世界の確認からしていきましょうという話になった。
武器屋前で人が多く混んでいて立ち話はつらかったのだが、一刻も早くこのつらさをアランと分かり合えたかった。突然だったがそんな感じの話から始まったと思う、
「あの大きな地震から、変化が起きて現実世界とオンラインゲームの世界が繋がったと思っているんです」
「たしかにそれはありますね私も地震が、起こる前はオンラインゲームにログインしていて、気を失った瞬間こんな状況になっていたんですよね」
「マスターさんにも連絡を取って置いた方が、やっぱりいいですよね、マスター含めた二人と合流しましょう、あと今は夏ですし出来れば早く、一番大事な水の確保から始めたほうがいいと思うんですよね」
「そうでしたねマスターさんと副マスさんの事すっかり忘れてました」
おもむろに思い出したようにアランさんは二人に会いたいなあという顔をする。イケメンを横で見ながら俺は見とれている事に気づき焦った様に、メニュー画面を開く、ギルドチャットを使おうとするがまだ使えませんと警告文が出てきた。
俺は首をかしげるように、
「これはどういう事なんでしょうね、最初の手紙の時も思ったんですがゲームシステムが動いていたり動かなかったりしてますよね、それにあのアナウンスの声ゲームの時は女の人だったはずなのに少し気になりますね」
「私もそれを思っていましたがとりあえず、お二人に合流しましょう」
アランは二人に会うのがものすごく楽しみなのか、他の話は耳に入らないみたいだった。
【幸運の犬】マスターダーク・メテオさんに連絡をする事にした。
「ダークさんいますか?」
心に語り掛けるようにTellをしてみると、
「驚いたな。もしやゆっきーか?久しいなあ」
すぐに元気な幼い子供のような声で、返事が返ってきた久しぶりではないけど2日ぶりのダークの口調に、目頭が熱くなったような気がした。俺は今アランと二人でいる事を話す、
「俺、今アランさんと一緒にいるんですがよかったら合流しませんか?」
「おう、俺も丁度連絡して合流しようとしてたとこだったんや、俺がリーダーで組むから二人はワープしてくれると有難たいんやけどいいかな?」
頼むような声で言ってきたので、アランと組んでいたPTを解散させてダークが誘ったので二人して入る、俺が最初にワープを押すと目の前が始まりの町の一番最初に変わった、目の前には可愛い小学生のような赤髪の男の子が少し笑いながら手を振っていた。
「ゆっきーあいかわらず犬耳少女で、可愛い姿してるやん、アラ坊も相変わらず普通の人間にしては大きいのう、クスクス」
九州出身の人なのだが仕事の都合上神奈川県に住んでいる、大阪の友達も多く大阪弁っぽい喋り方をするのが特徴である。
外見はというと、服は紫色のローブに太陽のような赤髪に瞳の色は綺麗な黒で身長は、小学生低学年に近かった。顔は将来イケメンになりそうな小生意気そうな顔をしていた。
「相変わらずマスターは小さくて可愛いですね、抱き潰したいですね」
アランは大きいと言うワードに怒ったのか可愛いぬいぐるみを抱きしめる様に手をぼきぼきしながらダークに近づいていくと、
「怒ったんかすまん」
ダークはすぐに謝ったが潰されそうな恐怖に少し震えていた。
ダークの種族は、チャイス「小人」族と言う種族だ、成人になっても最高100cm~120cmにしかならないのが特長の一つで、女の子の場合は一部のマニアに人気な種族の一つである。
ダークは比較的大きい方なのだが見た目は小学生だった。
「あらもしかしてゆきちゃんとダークじゃない」
大人っぽい妖艶の声の人が俺達に話しかけてきた、金髪のモデル体系の女が目の前にいた。話かけらた方を振り返ると40代のおばちゃんが、着てそうな服を着て、青目の美女が綺麗な目で見つめてくる。
「お、ティファやん2日ぶりだけど元気だったんか?クスクス、着てる物がもう婆くせえなあ」
「まあ元気だったわよ相変わらず失礼なやつね」
馬鹿にしたようにダークが言うとティファと呼ばれた人が眉毛を吊り上げ腰に手を当てて少し怒ったように言った。彼女が最後のメンバーのティファ・チェーンさんだ。
「奇遇ねー、私もみんなに連絡しようと思ってたとこなのよ、でもちょっと旦那が弱気な事言ってたから時間取られちゃってね」
ティファはかなり疲れたような顔をしながらさばさばと言った。
「ティファさんお疲れ様です」
「ティファさんお久しぶりです」
「あら、ユキちゃんお久しぶり。声は聞いた事あったけど、女の子の声に変わったのねその声と見た目じゃ完全女の子ねアランちゃんもこんなに逞しくなっちゃって声は、イケメンボイスだし旦那よりイケメンだしいいわね」
俺とアランが会釈をするとすぐに気づいたのか、俺とアランを抱きしめながら体を触ってくる。
「おいおい、一応この4人の中で一番のイケメンはどう考えても俺やろ」
小学生低学年の子がいきなり騒ぎ始めたがティファは聞かないふりをする、
「まあそれはいいとして何処まで話は進んでいるのかしら、何かするか決まった感じかしら?」
「いや俺もさっきゆっきーとアラ坊に会ったばかりなんや、だからまだ何の話もしてないんよ話をすると思ったらお前が邪魔してきた感じやな」
「邪魔じゃないですよティファさんには連絡しようとは思っていたんです」
話の状況を確認したいのか、ティファが俺達を抱きしめ終わるとすぐに尋ねるとダークはすこし不機嫌になりながらもティファを指差す、俺はティファに連絡しようと思っていたその事を伝えた、
「とりあえず大事な水の確保から進めてみようとさっきゆきさんと話していたんですがどうでしょう?」
「そやな俺は賛成や」
「私もゆきちゃんとアランちゃんの意見に賛成よ」
アランとさっき会話してた内容を説明すると、ダークとティファは笑顔で頷く。
夏の一番大事な飲み水の確保からだが、まずどうしようかと考えていると、朝に届いた手紙の事を思い出した。
差出人は不明だがその中に見たことのないお金が入っていた事に気づき、メニュー画面を開くと今ある所持金のところに数字で1000が入っている事に気づく、そうどんなゲームでも最初にこの所持金を上手く使って狩になり冒険にいってお金を稼がないとゲームは進まないのである。後一言言うならば、お金を増やさない限り今この世界では生きていけないのだ。
「お金が1000ギルあると思うのでこれを使って水の確保をしましょう」
メニュー画面のお金を確認しながら3人に伝えると3人は賛成といい頷きあうと商店街に行く事になった。
店に行く途中、人の多さにティファとダークはびっくりしていた、さっきと同じ様に行くのだが明らかにさっきより人が増えていて人を掻き分けながら行くのもかなりの一苦労であった。やっとNPCのお店に着いた頃にはみんな顔には出さないが少し疲れた顔をしていた。
何があるのか店の品物を覗いてみる、売っている物は【お水】150ギル【パン】200ギル【回復アイテム】100ギル【蘇生アイテム】400ギル【簡易トイレキット】50ギルだった。
目を通して一番必要な物と言えば、回復アイテム1と蘇生アイテム1は狩りに行くにしても絶対に必要になってくるものなので買う事にした。とりあえずは、食料より暑さがひどいので水があれば安心できる。お水は2つ買っておくべきだろうと考えここで800ギルを消費した。
残りはパンかゲーム時代には存在しなかったアイテム簡易トイレキットである。
説明文には、
『冒険、狩に行くときトイレにいきたくなるでしょう。そんな時に1個で小、2個で大を消失させる事が出来るアイテムです』
心の中で「マ、マジでか」と叫びたくなった。なぜならリアルの事を思い出したからで、仕事中にトイレ行って来ていいですかとも言えず、我慢をし結局何回も行くと白い目で見られる苦い思い出が頭に蘇ってきたのだ。
「現実世界でこれ本当にあったら便利ですね」
「たしかにねトイレ近い子や女の子に大助かりね」
俺は興奮しながら言うとティファが大きく頷きながら同調していた。
歩いてばかりでそんなには気にしてはいなかったが、女の姿に変わってから恥ずかしくてトイレに1回も行ってなかった。そう思うとさっきから我慢していた事に気づく、
「せっかくなので俺が実験台になります」
トイレに行くのも恥ずかしかったので、こんな便利な物があるなら、早速使いたいと思いすぐに立候補をした。1個を買って使ってみる、メニュー画面から選んでアイテム一覧からそのアイテムをクリックする事で使うことが出来た。
アイテムをクリックした瞬間、あれほどトイレに行きたいと思って我慢をしていたのに不思議な様に消失した事に驚く。
「このトイレキットすごいですね世紀の発明だ」
苦しみから解放された。歓喜のように言った、アランもかなり我慢してたらしく使った後に何かから開放された様にすっきりした顔をしていた。これを後3つ買うことにした。
「まあ水も確保出来たしな、せっかくやからとりあえずこの後の話でもしとこか」
みんな買物がある程度終わったところを見計らってダークがこれからの事を話したいと言って来た。少し周りを見るとベンチがあったのでそこで座りながら話し合う事にした。
「何で世界はいきなり繋がったんでしょうね」
最初に俺が疑問に思っていた事を語り始めるが、すぐに赤髪の小学生が手を上げる。
「ちょいまってな、その話する前にみんなも感じてると思うんやけど、何か結構時間たってるのに日が全然落ちてなくねえか」
「たしかに今18時なのに日が真上の時点でおかしいわね」
「もしかすると、私の仮説なんですがゲーム時代の時間がまだ生きていてそれが影響してたとしたらどうでしょうか?」
ダークは、空を見上げると時間がおかしい事を指摘してくる、ティファ・アランもその事を言われて気づいたみたいだった。俺も頷きながら考えていたそうゲーム時代のこのゲームの1日の流れる時間は36時間なのである。もしそれが影響していたとしたら、この不可解な時間に理由もつく、
「アランさんが言うのは1日が36時間という話ですね、そうなると今18時20分ということは現実世界でいう12時20分と同じ時間になりますね」
「マジか、でもそう考えるとさっきまでは腹減ってなかったけど、お腹すいてきたなあ、ここでお昼ご飯にしよか調度おにぎり4個作ってきたからそれ食べようか」
俺はすぐに計算をしてみんなに時間の事を話すとダークのお腹の音が鳴る、みんなもお腹がすいたみたいでお腹を押さえながら頬を赤く染めていた。ダークが鞄から見慣れた黒い三角形の物を取り出すとみんなはかなり喜ぶ、おにぎりを食べるているとティファが考える様に喋り出す、
「でもよく作れたわね私も作って持っていこうとしたら作り方すら忘れていたわよ」
「クスクスとうとう認知症始まったんじゃねえの」
「ダークさん俺も作ろうとしたんですがティファさんと同じ現象が起こったんですよ」
ティファがおにぎりをまじまじ見ながら夢中で頬張っている、ダークは影で少し笑いながら俺の耳に囁く、俺もティファと同じ現象をダークに話した、
「そうなんか何でやろうな」
首をかしげダークが考える。ご飯を食べ終えると、また町をみんなで色々見ながら歩きだし、色々な話をしたころには日が落ち始めた頃だった。ダークは明日の予定を聞いてきた、
「明日はどうしようか?俺は一人暮らしやからな、あまり家族の心配しなくてもいいんやけど3人は家族大事にしてるやろ」
「そうね私も明日は、旦那に付き合わないといけないわね。ダークもたまには実家に帰りなさいよユキちゃんとアランちゃんはどうする?」
「俺もとりあえず説明はほしいと思うので出来れば明後日からがいいです」
「私もです」
明日は別々で活動する事が決まり、明後日の約束をして手を振りながら別れの挨拶をしてメニュー画面を開き、ワープをして家に帰ってきたのだが、玄関の標識を見ながらドアを開こうとすると標識が明らかに違う事に気づく、俺のゲーム時代の苗字マネキイヌに変わっていた。
もう驚くことはあまりしないが、家に入ると俺を待っていてくれたのかすぐに家族が迎えてくれた。
ワープの事や町の話をして晩御飯を食べた頃には眠くなり始めており、今日は、明日に備えて眠る事にした。