11日目 拉致事件前夜
今日はアランとティファが用事があるみたいなのでお休みする事にした。
でもやる事もあまりないので布団でゴロゴロしたり部屋の掃除をした。まったり過ごすお昼ご飯もゆっくり食べて夜寝ようとした瞬間、
「ゆっきー助けて今始まりの町にいるんやけど――――」
ダークさんの声だったが、すぐに叫び声と一緒にTellは切れる。すぐにダークに連絡をするが全然繋がらない。仕方がないので着替えて始まりの町に行くと、何か夜なのに町が騒がしかった。近くの冒険者の男に尋ねてみる。
「あの、何かあったんですか?」
「小人族の女の子や男の子が拉致られているらしい」
「あれユキちゃんじゃない?」
その情報に驚くのもつかの間後ろから肩を叩かれて、後ろを見ると見慣れた金髪の美女が慌ててる様な顔をして俺の眼前にいた。
「ティファさん何でこんなとこにいるんですか?」
「ジャンヌから連絡貰ってね、リーユやギルドの女の子が数人攫われたらしいのよ、ユキちゃん今時間ある?よかったら一緒に協力してほしいんだけど」
ティファは焦った様に手を合わせて頼む、リーユも攫われたのか俺も大事な用事があるので冷静になりながら事情を説明する。
「ティファさん手伝いたいのは山々なんですが、どうやらダークさんも拉致られたみたいです」
「は?どういう事?」
身近の友達ダークも拉致られた事を知ったのか額には冷や汗をかき、ものすごく焦っている。
「ユキちゃんダークの事はお願いしてもいいかしら?あちらも人手なくて大変みたいなのよ」
「わかりました、何かわかったら連絡お願いします」
ティファは頷くと、すぐに走り出す俺はティファを一番頼りにしていた分パニックに陥る、どうしようと頭を抱えながら考えていると、上から熊の着ぐるみが降って来る。
「お久しぶりクマ、ダークを助けに参上クマ」
サラコが決め台詞を決め俺の両手に着地をする。サラコだけではなく物陰から薄い紫髪の女の子が顔を出す。
「師匠来てくれたんですか?というか二人とも小人族なのによく無事でしたね」
「空飛んでいたから大丈夫だったクマ」
「……今まで釣りやっていた」
トラコは今の時間まで釣りを楽しんでたみたいだった。サラコはどうやら屋根の上にいたみたいだったので助かったみたいだ。これで戦闘職は確保できたがタンク職がいなかったアランを呼ぶかなと思っていると笑い声が聞こえてくる、
「アッハハ、白い妖精さんの登場ですぞ」
目の前に頭に白いタイツを被った大きな男テーヒュ巨人族が現れた。肌もぴっちり着ている服も白いせいか外見は人の影の白いバージョンだった。
「変態だー」
「変態クマ、誰かー」
「少し待って欲しいですぞ、私は白い妖精、親友ダークの救援要請に応えてきたのですぞ」
俺とハラコは大声を出しながら叫ぶと、白い妖精は慌てた様に俺とハラコの口を手で押さえながら小声で説明をする。
「あの、ダークさんのお友達の方ですか?」
「はい私は白い妖精のホワイト・フェアリーといいます。以後お見知りおきを」
礼儀正しく挨拶をするが変態にしか見えない、
「そうなんですか俺達ちょっと用事思い出したので帰りますね」
「帰るクマ」
「ちょっと待ってくださいですぞ、見た目は変ですがきちんとしたタンク職なんですぞ、役に必ず立ちます」
変態に構っている暇がないので、どこかに行きアランを呼ぼうとすると、熱い動作に引き止められてしまった。しょうがないのでお願いするしかないと思った。
「じゃあタンク職お願いします見る限り【ハンマーシールド】ですか?」
「よくわかりましな、ご褒美に妖精の舞を――」
「4人揃ったクマ、出発するクマ」
職業を当てられて喜んだのか踊ろうとした瞬間ハラコが踊りを無視する。
「行くって何か当てはあるんですか?」
「さっき空の上にいたら羽根生えた気持ち悪いおっさんが大きい袋を抱えてたクマ」
「面白い情報ですな」
当てがあるのかハラコは西を指差してレッツゴーと言っていた。ダークを拉致した気持ち悪いおっさんには何か引っかかる部分はあるが、とりあえずハラコの情報に掛ける事にした。
「西門に向かっていたクマ」
「西門方面に何かありましたっけ?」
「うーんすぐに出た場所に壊れた教会があるくらいですな、そこでいつも私は妖精の舞を踊ってますぞ」
くねくね体を動かしながら踊ろうする、
「……急ごう」
トラコは走り出しハラコと俺も追いかける白い妖精さんは踊りながら着いて来る。一応ティファさんにも連絡を取る、
夜遅いせいか、いつもより視界は悪かった。西門から少し離れた場所に壊れた大きい教会を見つける、俺はホワイトに尋ねる、
「あれですか?」
教会というより病院の廃墟に近かった。夜だったせいもありかなり怖い。
「よくこんな不気味なとこで踊れるクマ」
「私も一人ではこんなとこには来ないんですな、妖精フレンドの集会に使っている場所ですな」
何人もこんな変態がいるのかと深くは聞きたくなかったので廃墟を観察していると、少し明かりがついていて人影が見えたりしている。
「ここですね」
俺は確認を取りながら明かりの方を指差すとトラコがコクリ頷く、ティファを待つのも時間がおしかった4人で作戦を練りながら忍びこもうとする。突入する前に、俺の防御呪文がみんなに掛かる、
「私が先行しますぞ」
白い変態が前に立ちながら進んでいくとなぜかわからないが安心をする。体が大きいからだろうか、1階のトイレの窓を壊して中に入る。
「こんな建物ゲーム時代にありましたけ?」
「地震があったあと出てきた場所らしいですな」
「なんか何処かのゾンビゲームを思い出すクマ」
俺の苦手な物に幽霊があるのでいつもよりブルブルしていた。ハラコがゾンビの話をするとお約束の様に突然前から腐った生物が出てきた。ゾンビが2体が目の前に現れる、
「ぎゃーークマ、本当に出たクマ」
怖いのか突っ込みながら思いっきりゾンビAに攻撃をすると、怒ったのかハラコを噛み付こうとする前に白い物体が突進していった。
「お前の相手はこの私だ」
白い妖精さんが真面目な声を出し、左手の盾で思いっきり突進をするとゾンビAは吹き飛ばされる。追撃でトラコの釣竿攻撃を食らうとゾンビAは気絶してしまったがゾンビBは怒ったのか白い妖精さんに噛み付こうとする。
「私がゾンビB受け持っていますから3人は追撃お願いしますぞ」
「わかったクマ」
ハラコはそういうと上にジャンプをしたが天井がありぶつかって落ちてきた。ヒヨコマークが出ており何秒かは戦闘不可能状態だ、トラコの釣竿秘技BによりゾンビAが爆発をすると塵になって消えた。
ハラコも混乱が解けたのか前線に復帰していた。
「痛かったクマ」
「大丈夫ですか?」
気ぐるみで涙目になっているか、わからないハラコを慰める。タンクさんは本気を出すと本当に頼もしい、変態だったと思っていた白い妖精があそこまで仕事を真面目にしていると感嘆な声が出てしまう、さすがダークのフレンドだけはある。
残り敵が一人になった事と安定していたので光属性の技を敵にぶつける。
「闇を斬り滅ぼせ【ビーナス斬り】」
槍が光輝きながらゾンビAを斜めに斬り裂く、その技では倒れなかったのか俺を睨んで来るとハンマーを持った大男が思いっきりゾンビAを叩き潰す。
「潰れろ【ジャイアントスタンプ】」
当たった瞬間ゾンビの顔が吹き飛ぶと活動を停止したのか後ろに倒れていく、
「倒したクマ」
「……急ごう」
トラコに言われて急いでた事に気づかされた。階段を上り光っていた部屋に入ると人はいなくなっており、不思議な次元が歪んでいる場所を発見する。
「何でしょうねこれ?」
「わからないクマ」
「おかしいですな、私が踊りに来たときはこんな物はなかったのに」
吸い込まれそうになりながらも開いている穴には不気味な感じがする。とりあえずティファに連絡をする事にした。
「ティファさん今どんな感じですか?何か進展ありましたか?」
「まだ何も情報は入ってないわActive Debuと【ホームガードマン】のギルドメンバーも消えて大騒ぎみたいなの」
「ハラコちゃんの情報により始まりの町から西側の壊れた教会にいるんですが、そこで変な目の前が歪んでいる場所を発見したんです」
「そうね、なにも情報ないし私達もそっちに向かうわ、あと少しだけ待ってくれる?」
3人にその事を説明をするとホワイトは床に座りながらトラコは抱っこさせてというと快く妖精さんは足の上に乗せていた。色素が薄い紫髪の小人の子は恥ずかしいのか暗がりの端っこに座っている。時間が1時間くらいは過ぎただろうか、外が騒がしくなってくる。ティファが人数を連れてきてくれたみたいだった。何人か知らない顔はいたが白髪の美女ジャンヌがいた。
「ごめんね、ユキちゃん遅れたわ、これが歪んでいる場所ね」
「始めてですぞ、私は白い妖精さんです。よろしくですぞ」
「ギャーお化けが出た」
妖精さんの登場により救援に来てくれたジャンヌがかなり驚く、ティファは白い変態を見て臨戦態勢に入る。
「ティファさん待ってください、こちらダークさんのお友達の方なんです」
ティファは驚いていたのか武器を鞘に戻すのに時間が掛かる。
「まったくあのチビスケの友達には禄なのがいないわね」
「お久しぶりクマ、またよろしくクマ」
ハラコは可愛かったのかティファは頭を撫で撫でしている。トラコも頭をぺこり下げて挨拶をする。
「とりあえず、どうするかね触ってみるのはちょっと腰がひけるわね」
「突入に決まってるだろぉが」
「私もそれしかないと思いますが――」
知らない人の声にびっくりする、一人は女の人だったのだが移動をするたびに建物が揺れる見た目はかなり大きい、180センチ以上に体重は200キロ以上だろうかお相撲さん体系の女子が荒い言葉で言ってくる。
もう一人はピンク髪のエルフ男でナルシストなのか鏡を持ちながら喋っていた。
「あのどちら様ですか?」
「おっと紹介がまだだったな、俺はActive Debu副マス、メアリー・ゴードだ、よろしくな」
「醜い紹介ですね、私はホームガードマン副マス、ルーズ・ワークユと申します」
ピンク髪のエルフはウィンクをしながら挨拶をしてきた。
「とりあえず話をしたら着いて行くってやかましくてね」
ティファは疲れたように溜息を付く、
「とりあえずだな、今ここには52人の冒険者がいる4人ずつで入って攻撃に攻撃で攻める」
「4人で入るのは賛成ですが、攻撃だけが作戦ではありません。サポートのために少し残しておいた方がいいと思うのですが聖女殿はどうでしょうか?」
「その二つ名で呼ぶのは辞めてもらっていいかしら?廃人の魔術師殿」
トッププレイヤーの会話にはそれなりの雰囲気があった、空気が何か重い気がする。
「やっぱりあの二人もすごい方なんですね?」
「ええ、メアリーさんは攻撃力だけでもトップクラスのプレイヤーです。付いたあだ名が象怒」
「おぉい、ジャンヌ余計な事は教えるんじゃねぇよ」
灰色髪のメアリーにジャンヌが怒られてしまった。あのジャンヌが畏縮してしまっている、それほどにメアリーの怒気は凄かった。
「俺のとこの部隊5PTが最初に突撃をする、それで後はお前等がサポートをするそれでいいな?」
「真ん中は私達マザークレア3PTで突撃をします」
「ユキちゃん悪いんだけど私はこっちで指揮を取るから後ろについて来てくれると嬉しいわ」
「私の美しい部隊が後ろを2PTで守り他の2PTは待機させますので大丈夫でしょう」
作戦が決まりみんなに確認を取る、時間は夜の35時55分になっており、もう少しで次の日だった。
「みんな準備はいいかな?」
「私はいつでも大丈夫ですぞ」
「……大丈夫」
「大丈夫クマ」
メアリーが猛獣の様に号令を上げると、5PTの太っているメンバーからは歓声があがる。
「いくぞてめぇら俺についてこいよ」
象の行進の様に地響きをしながら突撃をしていく、
「私達の後ろには聖女が守っています突撃します」
白い髪の美女が号令をすると、女の子だらけの3PTが突撃をする。
「じゃあ、みんな行くよ」
俺達の出番になり歪んだ場所に入り込むと風景が一瞬で変わる。