番外 王子様と暗殺者② さよなライミア
『ねえ、なんでお友達に本当のこと言わないの?』
「えっ? 急にどうしたんですか? 昼間に出るなんてラマーらしくない」
『だって、心配してるよ』
「そりゃあ、友達だししてくれるよ。でも、私の病気は他人に理解できないものですから」
『あっそ、別にオレには関係ないけどね!』
「わかってますよ」
ライミアは頭の中でもう一人の自分と会話しながら、いつものように庭を散歩していた。
『……でも、このままだと君は何もわかってもらえず死ぬかもしれないんだよ?』
ライミアはクスッと笑う。
それはそれで面白いから構わないと思ったのだ。
それに彼女が自身の存在を、若くして死した親友だったといつか思い出してくれればいい。
綺麗な記憶であればいいのだ。本当のこと、素性など汚いものは隠して墓場にもっていこう。
「ごめんね王子様」
彼女は誰にも聞こえぬように呟く。
フォーネがライミアを救おうとしているのは知っていた。
だがそれは無理だ。魔王がレインの従妹、同じ病をもつ彼女を治療したことは知っていた。
ライミアはレインにもフォーネにも秘密を明かす気はない。だからリスクある行動は絶対にしない。
「いまは死ねない」